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就業時間及び時間外労働に関する法規制の概要

1.日本

(1) 労働時間

労働時間は、原則として1日8時間、1週間に40時間を超えてはなりません。1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を与える必要があります。

(2) 時間外労働

労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との労使協定において、時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合には、法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められます。ただし、時間外労働時間には限度が設けられており、原則として1か月45時間、1年360時間を超えないものとしなければなりません。

(3) 時間外、休日、深夜の割増賃金

法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた場合、割増率25%以上の時間外労働手当を支払う必要があります。時間外労働が1か月60時間を超えた場合には、割増率50%以上の時間外労働手当を支払う必要があります。
法定休日(週1日)に労働者を勤務させた場合、割増率35%以上の休日労働手当を支払う必要があります。
22時から5時までの間に労働者を勤務させた場合、割増率25%以上の深夜手当を支払う必要があります。

(4) 変形労働時間制

変形労働時間制は、労使協定または就業規則等において定めることにより、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができます。「変形労働時間制」には、(1)1ヶ月単位、(2)1年単位、(3)1週間単位のものがあります。

(5) フレックスタイム制

フレックスタイム制は、就業規則等により制度を導入することを定めた上で、労使協定により、一定期間(1ヶ月以内)を平均し1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、その期間における総労働時間を定めた場合に、その範囲内で始業・終業時刻を労働者がそれぞれ自主的に決定することができる制度です。

出典:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/

2.タイ

(1) 就業時間

労働時間は、原則として1日8時間を超えてはなりません。ただし、就業日のいずれかの日の労働時間を8時間より短い時間とし、8時間に満たない残り時間を他の就業日の労働時間に加えることについて、会社と従業員は合意することができます。ただし、この場合でも、1日の労働時間は9時間を超えてはならないとされています。また、1週間の総労働時間は48時間を超えてはならないとされています(労働者保護法第23条)。
休憩時間は、1労働日の労働時間中、労働を開始してから連続労働時間が5時間を超えない間に、1時間以上付与する必要があります。この休憩時間は1時間より短い時間に分割することが可能ですが、1労働日における休憩時間が、合計1時間を下回ってはならないとされています。また、通常の労働時間に続く時間外労働時間が2時間以上ある場合は、時間外労働の開始前に、20分以上の休憩時間を付与する必要があります。ます(同法第27条)。

(2) 時間外労働

会社が従業員に対して時間外・休日労働を行わせる場合、原則として、従業員からその都度、個別の同意を得ることが必要となります。ただし、業務の性質・形態により連続して行うことが求められ、中止した場合に損害が生じる業務、緊急の業務、または省令により定められたその他の業務については、必要な範囲内で、会社は従業員に対して、時間外・休日労働を行わせることができます(同法第24条)。
時間外・休日労働の合計時間は、週36時間を超えてはならないとされています(同法第26条)。

(3)時間外労働手当

労働日の通常の労働時間外に、従業員に時間外労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働した時間数に応じて、労働日の時間当たりの賃金の1.5倍以上の時間外労働手当を支払う必要があります(同法第61条)。労働日の時間当たりの賃金とは、月額賃金を30で割り、それを通常の労働日における一日の平均労働時間数で割った額とされています(月給で賃金を受領している場合)(同法第68条)。

(4)休日労働手当

休日に賃金を受領する権利を有する従業員に、休日労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働日の時間当たりの賃金の1倍以上の休日労働手当を支払う必要があります。
休日に賃金を受領する権利を有しない従業員に、休日労働をさせた場合には、労働日の時間当たりの賃金の2倍以上の休日労働手当を支払う必要があります(同法第62条)。

(5)休日時間外労働手当

休日の労働時間外に、従業員に休日時間外労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働日の時間当たりの賃金の3倍以上の休日時間外労働手当を支払う必要があります(同法第63条)。

3.マレーシア

(1) 就業時間

マレーシアでは、雇用法(Employment Act 1955)により、原則として、1日の労働時間の上限を8時間まで、1週間の労働時間の上限を45時間までと定めています。また、8時間未満の労働時間の日が生じる場合には雇用契約において同じ週の他の日について8時間以上の労働時間を設定することができるとされていますが、この場合でも1日9時間、1週間45時間を超える労働時間を設定することはできません。
さらに、雇用法は、休憩時間に関し、30分以上の休憩時間を挟むことなく5時間以上の勤務をさせてはならないと規定する他、全体の拘束時間に関し、休憩時間を含めた1日の拘束時間が10時間を超えてはらないと規定しています(雇用法60A条(1))。

(2) 時間外労働

マレーシアでは1980年雇用(時間外労働の制限)規則(Employment (Limitation of Overtime Work) Regulations 1980)により、月104時間に規制されています。
また、原則として、1日12時間以上の労働は禁止されています(雇用法60A条(7))。

(3) 時間外労働手当

所定労働時間を超えて労働をした場合には、時間給の1.5倍の額の時間外労働手当を支給しなければなりません(雇用法60A条(3))。時間外労働手当の計算にあたっては、拘束時間が10時間を超えた場合にはその後の拘束時間が休憩時間を含めすべて時間外労働時間と見做されてしまうことに注意が必要です(雇用法60A条(1))、2条)。
なお、時間外労働手当に関する規定は、原則として月給4,000リンギット超の従業員には適用されません。

(4) フレキシブル勤務形態の導入

マレーシアでは、書面で雇用主に対して就業時間・就業日・就業場所についてフレキシブルな勤務形態の導入を求める申請することができるとされています。雇用主は、申請から60日以内に承認又は拒否する必要があります。雇用主が申請を拒否する場合には、その理由を付す必要があります(雇用法60P条、60Q条)。

4.ミャンマー

(1) 就業時間

ミャンマーにおいては、業種ごとに労働時間について異なる規制が異なる法律において規定されています。すなわち、店舗、商業施設、公共娯楽施設における労働者に関しては店舗及び商業施設法、工場における労働者に関しては工場法、油田における労働者に関しては油田(労働及び福利厚生)法が規定しています。具体的には、店舗、商業施設又は公共娯楽施設における労働者の労働時間は、1 日 8 時間、かつ、1 週間 48 時間以内です(店舗及び商業施設法 11 条(a))。工場における労働者の労働時間は、原則として 1 週間で 44 時間以内、かつ、1 日 8 時間以内です(工場法 59 条及び 62 条)。但し、技術的理由により労働を継続しなければならない場合、週 48 時間まで認められます(工場法 59 条)。また、労働時間及び休憩時間の合計時間についても規制が存在します。工場の労働者の労働時間及び休憩時間の合計時間は、原則として 10 時間を超えることはできません(工場法 64 条)。 店舗、貿易施設、公共娯楽施設の労働者については 11 時間を超えることはできません(店舗及び 商業施設法 12 条(a))。

(2) 時間外労働

店舗及び商業施設法の適用対象労働者について、時間外労働が一週間で 12 時間を超えることは認められません。但し、必要な場合、特別なケースとして、16 時間を超えない範囲で認められます。
しかし、深夜 12 時を過ぎることはできません(店舗及び商業施 設法 11 条(b))。工場法においては時間外労働時間に関する規定は存在しません。

(3) 時間外労働手当

使用者は、労働者を法律上規定された労働時間以上働かせた場合、時間外労働手当として、平均賃金の 2 倍以上の額を支払わなければなりません(工場法 73 条)。休日に働かせた場合も同様に平均賃金の 2 倍以上の額を支払わなければなりません(休暇及び休日法 3 条 2 項)。休日に時間外労働をさせた場合においても、割増率は変わらず、平均賃金の2 倍以上とされています。日本と異なり、深夜労働手当は存在しません。また、日本では管理監督者に対して時間外労働手当及び休日手当の支払いは不要ですが、休暇及び休日法においては適用除外事由にマネージャーは含まれていないため、休日手当はマネージャーに対しても支払う必要があると解されます。

(4) フレキシブル勤務形態の有無

ミャンマーでは、日本のような裁量労働時間制や変形労働時間制は法律上規定されていません。

5.メキシコ

(1) 就業時間

連邦労働法(Ley Fedral del Trabajo)は、1日当たりの最大労働時間を日勤(6時から20時)の場合8時間、夜勤(20時から翌6時)の場合7時間、日勤から夜勤にわたる場合7.5時間(ただし、20時以降の勤務時間は3.5時間未満に限られる。)と規定しています。また、休日は、6就業日ごとに1日設ける必要があると定められていることから、週の最大勤務時間は、それぞれ48時間、42時間、45時間となります。

なお、土曜日の午後を休業にするといった目的であれば、1週間の労働時間を分配することが認められており、雇入れ時に労働者と使用者との書面による合意がある場合において、例えば、日勤の場合において、月曜日から金曜日を就業日、土曜日と日曜日を休業日とした場合に、週の労働時間45時間とした場合、各就業日の労働時間を9時間とすることができます。

休憩時間については、連邦労働法にもとづけば、連続する勤務中に少なくとも30分付与する必要があり、この休憩時間に勤務場所から離れられない環境にある場合は、休憩時間も勤務時間に含めとされています。しかし、連邦労働法が定める30分の休息は、労働者に認められる最低限の権利であり、労務提供場所に留まるか否かに関わらず、勤務時間とすべきとの最高裁判所の判断が示されており、また、休憩時間を就業時間に含めないために必要となる概念「中断のある勤務(jornada discontinua)」が認められる場合として、休憩時間が最低1時間あり労働者の仕事を中断させるものであって、これにより労働者は当該時間を使用者の指揮命令を受けることなく自由に過ごすことができ、労務の提供が完全に停止される場合と判示されています。従って、1時間未満の休憩時間とする場合は、例え労働者がその時間を自由に享受することができる場合であっても、勤務時間に含めることが推奨されます。

(2) 時間外労働

時間外労働は1日当たり最大3時間、週に3日まで、週に3回9時間までと連邦労働法に規定されています。

(3) 時間外労働手当

1日当たりの勤務時間を超えた場合の割増賃金率は100%となり、超過時間については、通常の賃金と併せて通常の2倍の賃金を支払わなければなりません。万一、週の1日の時間外勤務が3時間を超えた場合や週の時間外勤務の時間が9時間を越えた場合、その超過時間に対しては通常の3倍の賃金を支払わなければなりません。

(4)休日労働手当

前述の通り、休日は6就業日ごとに1日設けることが義務付けられており、その休日は、原則として日曜日としなければなりません。ただし、事業の性質上必要である場合は、使用者と労働者の合意によって休日を別に定めることができるとされており、日曜日の就業については少なくとも通常の給与の25%の額の手当を支給する必要があります。
もっとも、使用者と労働者とで合意した労働者の休日に労働させる場合は、割増賃金率は200%となり、通常の賃金と併せて通常の3倍の賃金を支払わなければなりません。

6.バングラデシュ

(1) 就業時間・休憩時間

バングラデシュ労働法では、1日当たりの最大労働時間は8時間、週当たりで48時間と規定されています。(労働法第100条、第102条、EPZ労働法第38条)。
休憩時間は、1日当たりの労働時間が5時間を超える労働者は、30分の休憩(食事休憩含む)、6時間を超える労働者は、1時間の休憩、8時間を超える労働者は1時間の休憩または30分の休憩を2回取得させなければならない(労働法第101条、EPZ労働法第40条)とされています。
女性の労働者は、本人の書面による同意がない限り、午後10時から午前6時までの時間帯に勤務させることはできません(労働法第109条)。EPZの女性労働者は、本人及び検査官の同意がない限り、午後8時から午前6時まで勤務させてはならないと規定されています(EPZ労働法第46条)。

(2) 時間外労働

時間外労働手当が支給される場合は、1日当たり10時間までの労働が認められ(労働法第100条、EPZ労働法第38条)、週当たり60時間までの労働が認められます。しかし、年間で週当たりの平均労働時間が56時間を超えてはいけません(労働法第102条、EPZ労働法第40条)。また、労働者の拘束時間は、政府による特別の承認がない限り、休憩を含めて10時間を超えてはならない(労働法第105条)とされております。
規定の労働時間を超過した場合の時間外労働手当は、基本給(+物価上昇手当+一時又は中間手当(ある場合))の2倍です(労働規則第102条(1)、EPZ労働法第45条)。

(3) 深夜労働

深夜労働に対する手当についての規定は定められておりません。夜間シフトが深夜12:00を過ぎる場合、週休は夜間シフトの終了時間から連続した24時間となります。また、翌日とは、シフトの終了時間から連続した24時間をいい、深夜を過ぎてからの勤務時間は前日の勤務時間として計算されます(労働法第106条、EPZ労働法第43条)。

7.フィリピン

(1) フィリピン労働法における労働時間規制概要

フィリピンにおいては、Labor. Code of The Philippines(以下「フィリピン労働法」といいます。)という日本における労働法に位置付けられる法令が定められており、労働者の健康や福祉を守りつつ、使用者との間における公平な立場を保護する観点から労働時間に関する規制が設計されています。
原則として、フィリピン労働法においては、1日あたり8時間の労働時間が上限とされています。日本の労働時間規制の制度と同様に、この労働時間には休憩時間を含みません。フィリピン労働法においては、1日あたり1時間の休憩時間を労働者に与える必要があります。また、1週間あたりの労働時間は48時間が上限として設定されています。
なお、医療従事者などの緊急性の高い職業については、1日8時間以上の労働が例外的に認められる場合があります。

(2) フィリピン労働法における時間外労働に対する追加的な賃金支払義務

フィリピン労働法においては、使用者が労働者に時間外労働を求める場合は、追加的な賃金の支払いが必要となります。具体的には、1日8時間の労働時間を超過した場合は、超過した労働時間に対して25%増の金額が時間外労働の対価として追加的に支払われることになります。また、22時から翌6時までの夜間労働においては、10%の夜間割増賃金の支払いも必要となります。さらに、休日や祝日に労働した場合は、30%の休日割増賃金が支払われます。ただし、元日など法律に定められたRegular Holidayについては100%を割り増し、合計200%の賃金を支払う必要があります。フィリピンにおいては、毎年政府から休日や祝日のスケジュールが提示されますので、確認することも必要になってきます。
これらの追加的な支払義務は、労働者の過剰な労働を防ぐ目的で設計されているため、労働者に対して別日に休日を与えたからといって免除される義務ではないことに留意する必要があります。

(3) フィリピン労働法における時間外労働規制に違反した場合のリスク

それでは、労働者を雇う企業が万が一労働時間規制に違反した場合はどのようなリスクがあるのでしょうか。
割増賃金を含む賃金について、未払賃金がある場合には労働者への支払義務があり、重大な違反と認定された場合は、業務停止や取得したライセンスの取消しリスクが存在します。未払賃金がある場合は、労働者との間で紛争に発展するリスクがあります。紛争に発展した場合は、Department of Labor and Employment(以下「DOLE」といいます。)において紛争解決を試みることになり、時間や費用がかかるおそれがあります。

(4) DOLEが提示する時間外労働規制に関するガイドライン

DOLEは、時間外労働に関する詳細なガイドラインを提供しています。このガイドラインは、労働法の解釈に大きな影響を与えうるため、できる限りガイドラインに沿った運用実態を構築することが重要です。労働時間の計算方法、時間外手当の支払方法、休日及び夜間労働に関する指針などが具体例とともに提示されています。

8.ベトナム

(1)労働時間に関する規定

①日中の労働時間

使用者は、労働者に通知することを条件に、労働者に適用する労働時間について、下記の所定労働時間の範囲内において日または週単位で自由に規則を定めることができます。
日単位で定める場合、1日あたり8時間、1週間あたり48時間以下
週単位で定める場合、1日あたり10時間、1週間あたり48時間以下

但し、1935年の国際労働機関(ILO)第47号条約に基づき、ベトナムの現行労働法は、使用者に対し、週40時間労働とすることを奨励しています。
また、以下の特別な場合には、所定労働時間が短縮されます。
妊娠している女性労働者が、過酷、有害、危険な業務、または非常に過酷、有害、危険な業務、または母性に悪影響を及ぼす可能性のある業務に従事する場合、賃金およびその他の手当を減額することなく、労働時間を1日あたり1時間短縮しなければなりません。この規定は、子供の出産後、生後12か月に達するまで適用されます。
15歳未満の労働者の所定労働時間は、1日あたり4時間、1週間あたり20時間以下とし、15歳以上18歳未満の労働者の所定労働時間は、1日あたり8時間、1週間あたり40時間以下とされています。

②深夜労働

22:00から翌日の6:00までの労働時間を深夜労働時間と定義され、通常、この深夜労働時間は、シフト制で労働者を使用する使用者に適用されます。そのため、深夜労働時間も所定労働時間とみなされますが、最低賃金やその他の処遇(労働時間中の休憩など)は、日中の労働時間よりも優遇されます。
しかし、すべての労働者に深夜労働時間制を適用できるわけではありません。使用者は、以下の労働者を深夜労働時間に勤務させることができません。
• 高地、遠隔地、国境地域、島しょ地域に勤務する妊娠6か月目以降の女性労働者
• 高地、遠隔地、国境地域、島しょ地域以外のその他の場所で勤務する妊娠7か月目以降の女性労働者
• 生後12ヶ月未満の子を養育する女性労働者(当該女性労働者の同意がある場合を除きます)
• 15歳未満の労働者
• 15歳以上18歳未満の労働者(労働傷病兵社会省の大臣がリストアップした複数の特定職種および業務は除きます)
• 労働能力が51%以上低下した障害者、重度または極めて重度の障害者(当該労働者の同意がある場合を除きます)

③特殊業務を行う労働者に適用される労働時間

特殊業務には、運輸(道路、鉄道、水上、航空)、海洋での石油・ガス探査・採掘、海洋業務、芸術、放射線・原子力工学の利用、高周波の応用、情報技術、技術の研究・応用、工業デザイン、潜水業務、鉱業業務、季節的生産業務および受注商品加工業務、24時間勤務を要する業務、自然災害・火災・疫病への対応、スポーツ・フィットネス関連業務、医薬品・生物学的製剤の製造業務、ガス配給管・ガス工事の運転・保守・修理業務が含まれています。
これらの特殊業務に従事する労働者に課される労働時間に関しては、労働傷病兵社会省および特定の管轄省が決定します。ただし、労働時間の決定に際し、労働時間中の休憩に関する規定の遵守は義務とされています。

(2) 時間外労働に関する規定

法律、労働協約、または就業規則に規定されている所定労働時間以外に行われる労働を時間外労働といい、使用者は、労働者に対して時間外労働を命じる場合には、労働者の同意を得なければなりません。ただし、深夜労働時間に勤務させることが禁止されている労働者に時間外労働をさせることは禁止されています。
労働者に適用される時間外労働の上限は以下のとおりです。

i) 原則として、年間200時間までです。また、1か月あたり40時間を超えてはならず、所定労働時間と時間外労働時間の合計が1日あたり12時間を超えてはならないとされています。

ii) 以下の場合は、年間300時間までとされていますが、使用者は当局に書面で届け出ることが義務付けられています。また、i)と同様に、1か月あたり40時間を超えてはならず、所定労働時間と時間外労働時間の合計が1日あたり12時間を超えてはならないとされています。
• 繊維、衣料、履物、電気、電子製品の製造および加工、農林水産物の加工、製塩
• 発電および電力供給、電気通信、製油所操業、給水および排水
• その時点で労働市場に出回っていない高度な技能を持つ労働者を必要とする仕事
• 季節的な理由、材料や製品の入手可能性、または予期せぬ原因、悪天候、自然災害、火災、敵対行為、電力や原材料の不足、生産ラインの技術的な問題により、延期できない緊急の仕事
• その他政府の定める場合

iii) 以下の場合は、時間外労働の上限はありません。また、原則として、労働者の同意を得る必要もありません。

• 国家安全保障または国防のため、法律に定められた徴兵制度の命令を執行する場合
• 自然災害、火災、伝染病、災害の予防およびそれらからの復旧において、特定の組織または個人の生命や財産を保護するために必要な業務を遂行する場合(ただし、その業務が労働安全衛生法に規定される労働者の健康や生命を脅かす場合を除く)。

9.インド

(1) 概要

インドでは、就業時間や時間外労働等に関する規制は、それぞれの州の店舗・施設法において規定されています。
なお、2020年に就業時間や時間外労働を定めた連邦法である労働基準法典(THE OCCUPATIONAL SAFETY, HEALTH AND WORKING CONDITIONS CODE, 2020)が公布されています。労働基準法典は未施行ですが、施行後は当該法典の規定に従うことになります。

(2) デリーの規制
デリーの就業時間や時間外労働に関する規制は、1954年デリー店舗及び施設法において規定されていま
す。

①就業時間について

いかなる労働者も施設の業務に関して1日に9時間を超えて、又は週に48時間を超えて働くことは許されず、使用者は当該就業時間の上限規定に合わせて 1日の労働時間を固定しなければなりません(デリー店舗及び施設法8条)。労働時間は、連続労働時間が 5時間を超えないように定めなければならず、また、いかなる労働者も、少なくとも 30分の休憩又は食事の間隔を置かず 5時間を超えて労働することを要求され、又は許可されてはなりません(デリー店舗及び施設法10条)。また、休憩又は食事の時間を含めて商業施設では10時間30分を超えない ように労働時間を定めなければなりません(デリー店舗及び施設法11条)。

②時間外労働について

労働者は、上記時間を超えて働くことを許可又は要求される場合がありますが、週に54 時間を超えないようにする必要があります(デリー店舗及び施設法 8条)。また、年間の時間外労働の合計時間は150時間を超えることはできません(同条)。
時間外労働に対しては、時間単位で計算される通常の賃金の2倍の賃金を支払う必要があります(同条)。

(3) その他の州の規制

その他の主要な州の規制は以下の通りです。

10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

アラブ首長国連邦(UAE)での労働法制については、公的機関と私企業に分かれて規定されています。
連邦政府機関は、月曜から木曜日は午前7時30分から午後3時30分まで、金曜日は正午までの週4.5日の労働とされています。
フリーゾーン独自の規則が適用される2か所のフリーゾーン(Abu Dhabi Global Market及びDubai International Financial Center)で設立された会社以外の私企業については、私企業における労働関係に関する規則(2021年連邦令第33号。以下、「連邦労働法」といいます。)及び労働関係に関する2021年連邦令第33号の施行に関する2022年内閣決定第1号(以下「施行規則」といいます。)によって、以下の通り規定されています。

(1) 労働時間

労働時間は、1日8時間または週48時間と定められています(連邦労働法第17条第1項)。1時間以上の休憩を挟むことなく、連続5時間以上の労働は認められません(連邦労働法第18条)。
労働時間の規定は、特定の産業や労働者の種類に応じ、内閣の決定によって伸長・短縮することができ(連邦労働法第17条第2項)、この規定の適用から除外される職種は施行規則で定められています。
なお、ムスリムが断食をするラマダーン月には、通常労働時間は、2時間短縮されます(連邦労働法第17条第4項、施行規則第15条第2項)。

(2) 時間外労働

フルタイム勤務従業員以外は、書面の同意がない限り、時間外労働を求めることはできません(連邦労働法第17条第5項)。
時間外労働は、1日当たり2時間を限度とし、3週毎の合計労働時間は144時間を超えてはなりません(連邦労働法第19条第1項)。ただし、深刻な損失や事故の発生を防止するために必要とされる場合はその限りではありません(施行規則第15条第3項)。

(3) 時間外労働手当

時間外労働に対しては、通常勤務時間の時給に25%以上を上乗せした手当が支払われ(連邦労働法第19条第2項)、午後10時から午前4時までの間の時間外労働については、50%以上を上乗せする必要がありますが、シフト制で勤務する労働者についてはその限りではありません(連邦労働法第19条第3項)。
休日労働に関しては、代休を取得するか、通常勤務時間の時給に50%以上を上乗せした賃金を得ることができます(連邦労働法第19条第4項)。ただし、日雇い労働者を除き、2日以上連続して休日労働を求めることはできません(連邦労働法第19条第5項)。

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1.日本

(1) 労働時間 労働時間は、原則として1日8時間、1週間に40時間を超えてはなりません。1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を与える必要があります。 (2) 時間外労働 労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との労使協定において、時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合には、法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められます。ただし、時間外労働時間には限度が設けられており、原則として1か月45時間、1年360時間を超えないものとしなければなりません。 (3) 時間外、休日、深夜の割増賃金 法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた場合、割増率25%以上の時間外労働手当を支払う必要があります。時間外労働が1か月60時間を超えた場合には、割増率50%以上の時間外労働手当を支払う必要があります。 法定休日(週1日)に労働者を勤務させた場合、割増率35%以上の休日労働手当を支払う必要があります。 22時から5時までの間に労働者を勤務させた場合、割増率25%以上の深夜手当を支払う必要があります。 (4) 変形労働時間制 変形労働時間制は、労使協定または就業規則等において定めることにより、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができます。「変形労働時間制」には、(1)1ヶ月単位、(2)1年単位、(3)1週間単位のものがあります。 (5) フレックスタイム制 フレックスタイム制は、就業規則等により制度を導入することを定めた上で、労使協定により、一定期間(1ヶ月以内)を平均し1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、その期間における総労働時間を定めた場合に、その範囲内で始業・終業時刻を労働者がそれぞれ自主的に決定することができる制度です。 出典:厚生労働省ホームページ (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/

2.タイ

(1) 就業時間 労働時間は、原則として1日8時間を超えてはなりません。ただし、就業日のいずれかの日の労働時間を8時間より短い時間とし、8時間に満たない残り時間を他の就業日の労働時間に加えることについて、会社と従業員は合意することができます。ただし、この場合でも、1日の労働時間は9時間を超えてはならないとされています。また、1週間の総労働時間は48時間を超えてはならないとされています(労働者保護法第23条)。 休憩時間は、1労働日の労働時間中、労働を開始してから連続労働時間が5時間を超えない間に、1時間以上付与する必要があります。この休憩時間は1時間より短い時間に分割することが可能ですが、1労働日における休憩時間が、合計1時間を下回ってはならないとされています。また、通常の労働時間に続く時間外労働時間が2時間以上ある場合は、時間外労働の開始前に、20分以上の休憩時間を付与する必要があります。ます(同法第27条)。 (2) 時間外労働 会社が従業員に対して時間外・休日労働を行わせる場合、原則として、従業員からその都度、個別の同意を得ることが必要となります。ただし、業務の性質・形態により連続して行うことが求められ、中止した場合に損害が生じる業務、緊急の業務、または省令により定められたその他の業務については、必要な範囲内で、会社は従業員に対して、時間外・休日労働を行わせることができます(同法第24条)。 時間外・休日労働の合計時間は、週36時間を超えてはならないとされています(同法第26条)。 (3)時間外労働手当 労働日の通常の労働時間外に、従業員に時間外労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働した時間数に応じて、労働日の時間当たりの賃金の1.5倍以上の時間外労働手当を支払う必要があります(同法第61条)。労働日の時間当たりの賃金とは、月額賃金を30で割り、それを通常の労働日における一日の平均労働時間数で割った額とされています(月給で賃金を受領している場合)(同法第68条)。 (4)休日労働手当 休日に賃金を受領する権利を有する従業員に、休日労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働日の時間当たりの賃金の1倍以上の休日労働手当を支払う必要があります。 休日に賃金を受領する権利を有しない従業員に、休日労働をさせた場合には、労働日の時間当たりの賃金の2倍以上の休日労働手当を支払う必要があります(同法第62条)。 (5)休日時間外労働手当 休日の労働時間外に、従業員に休日時間外労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働日の時間当たりの賃金の3倍以上の休日時間外労働手当を支払う必要があります(同法第63条)。

3.マレーシア

(1) 就業時間 マレーシアでは、雇用法(Employment Act 1955)により、原則として、1日の労働時間の上限を8時間まで、1週間の労働時間の上限を45時間までと定めています。また、8時間未満の労働時間の日が生じる場合には雇用契約において同じ週の他の日について8時間以上の労働時間を設定することができるとされていますが、この場合でも1日9時間、1週間45時間を超える労働時間を設定することはできません。 さらに、雇用法は、休憩時間に関し、30分以上の休憩時間を挟むことなく5時間以上の勤務をさせてはならないと規定する他、全体の拘束時間に関し、休憩時間を含めた1日の拘束時間が10時間を超えてはらないと規定しています(雇用法60A条(1))。 (2) 時間外労働 マレーシアでは1980年雇用(時間外労働の制限)規則(Employment (Limitation of Overtime Work) Regulations 1980)により、月104時間に規制されています。 また、原則として、1日12時間以上の労働は禁止されています(雇用法60A条(7))。 (3) 時間外労働手当 所定労働時間を超えて労働をした場合には、時間給の1.5倍の額の時間外労働手当を支給しなければなりません(雇用法60A条(3))。時間外労働手当の計算にあたっては、拘束時間が10時間を超えた場合にはその後の拘束時間が休憩時間を含めすべて時間外労働時間と見做されてしまうことに注意が必要です(雇用法60A条(1))、2条)。 なお、時間外労働手当に関する規定は、原則として月給4,000リンギット超の従業員には適用されません。 (4) フレキシブル勤務形態の導入 マレーシアでは、書面で雇用主に対して就業時間・就業日・就業場所についてフレキシブルな勤務形態の導入を求める申請することができるとされています。雇用主は、申請から60日以内に承認又は拒否する必要があります。雇用主が申請を拒否する場合には、その理由を付す必要があります(雇用法60P条、60Q条)。

4.ミャンマー

(1) 就業時間 ミャンマーにおいては、業種ごとに労働時間について異なる規制が異なる法律において規定されています。すなわち、店舗、商業施設、公共娯楽施設における労働者に関しては店舗及び商業施設法、工場における労働者に関しては工場法、油田における労働者に関しては油田(労働及び福利厚生)法が規定しています。具体的には、店舗、商業施設又は公共娯楽施設における労働者の労働時間は、1 日 8 時間、かつ、1 週間 48 時間以内です(店舗及び商業施設法 11 条(a))。工場における労働者の労働時間は、原則として 1 週間で 44 時間以内、かつ、1 日 8 時間以内です(工場法 59 条及び 62 条)。但し、技術的理由により労働を継続しなければならない場合、週 48 時間まで認められます(工場法 59 条)。また、労働時間及び休憩時間の合計時間についても規制が存在します。工場の労働者の労働時間及び休憩時間の合計時間は、原則として 10 時間を超えることはできません(工場法 64 条)。 店舗、貿易施設、公共娯楽施設の労働者については 11 時間を超えることはできません(店舗及び 商業施設法 12 条(a))。 (2) 時間外労働 店舗及び商業施設法の適用対象労働者について、時間外労働が一週間で 12 時間を超えることは認められません。但し、必要な場合、特別なケースとして、16 時間を超えない範囲で認められます。 しかし、深夜 12 時を過ぎることはできません(店舗及び商業施 設法 11 条(b))。工場法においては時間外労働時間に関する規定は存在しません。 (3) 時間外労働手当 使用者は、労働者を法律上規定された労働時間以上働かせた場合、時間外労働手当として、平均賃金の 2 倍以上の額を支払わなければなりません(工場法 73 条)。休日に働かせた場合も同様に平均賃金の 2 倍以上の額を支払わなければなりません(休暇及び休日法 3 条 2 項)。休日に時間外労働をさせた場合においても、割増率は変わらず、平均賃金の2 倍以上とされています。日本と異なり、深夜労働手当は存在しません。また、日本では管理監督者に対して時間外労働手当及び休日手当の支払いは不要ですが、休暇及び休日法においては適用除外事由にマネージャーは含まれていないため、休日手当はマネージャーに対しても支払う必要があると解されます。 (4) フレキシブル勤務形態の有無 ミャンマーでは、日本のような裁量労働時間制や変形労働時間制は法律上規定されていません。

5.メキシコ

(1) 就業時間 連邦労働法(Ley Fedral del Trabajo)は、1日当たりの最大労働時間を日勤(6時から20時)の場合8時間、夜勤(20時から翌6時)の場合7時間、日勤から夜勤にわたる場合7.5時間(ただし、20時以降の勤務時間は3.5時間未満に限られる。)と規定しています。また、休日は、6就業日ごとに1日設ける必要があると定められていることから、週の最大勤務時間は、それぞれ48時間、42時間、45時間となります。 なお、土曜日の午後を休業にするといった目的であれば、1週間の労働時間を分配することが認められており、雇入れ時に労働者と使用者との書面による合意がある場合において、例えば、日勤の場合において、月曜日から金曜日を就業日、土曜日と日曜日を休業日とした場合に、週の労働時間45時間とした場合、各就業日の労働時間を9時間とすることができます。 休憩時間については、連邦労働法にもとづけば、連続する勤務中に少なくとも30分付与する必要があり、この休憩時間に勤務場所から離れられない環境にある場合は、休憩時間も勤務時間に含めとされています。しかし、連邦労働法が定める30分の休息は、労働者に認められる最低限の権利であり、労務提供場所に留まるか否かに関わらず、勤務時間とすべきとの最高裁判所の判断が示されており、また、休憩時間を就業時間に含めないために必要となる概念「中断のある勤務(jornada discontinua)」が認められる場合として、休憩時間が最低1時間あり労働者の仕事を中断させるものであって、これにより労働者は当該時間を使用者の指揮命令を受けることなく自由に過ごすことができ、労務の提供が完全に停止される場合と判示されています。従って、1時間未満の休憩時間とする場合は、例え労働者がその時間を自由に享受することができる場合であっても、勤務時間に含めることが推奨されます。 (2) 時間外労働 時間外労働は1日当たり最大3時間、週に3日まで、週に3回9時間までと連邦労働法に規定されています。 (3) 時間外労働手当 1日当たりの勤務時間を超えた場合の割増賃金率は100%となり、超過時間については、通常の賃金と併せて通常の2倍の賃金を支払わなければなりません。万一、週の1日の時間外勤務が3時間を超えた場合や週の時間外勤務の時間が9時間を越えた場合、その超過時間に対しては通常の3倍の賃金を支払わなければなりません。 (4)休日労働手当 前述の通り、休日は6就業日ごとに1日設けることが義務付けられており、その休日は、原則として日曜日としなければなりません。ただし、事業の性質上必要である場合は、使用者と労働者の合意によって休日を別に定めることができるとされており、日曜日の就業については少なくとも通常の給与の25%の額の手当を支給する必要があります。 もっとも、使用者と労働者とで合意した労働者の休日に労働させる場合は、割増賃金率は200%となり、通常の賃金と併せて通常の3倍の賃金を支払わなければなりません。

6.バングラデシュ

(1) 就業時間・休憩時間 バングラデシュ労働法では、1日当たりの最大労働時間は8時間、週当たりで48時間と規定されています。(労働法第100条、第102条、EPZ労働法第38条)。 休憩時間は、1日当たりの労働時間が5時間を超える労働者は、30分の休憩(食事休憩含む)、6時間を超える労働者は、1時間の休憩、8時間を超える労働者は1時間の休憩または30分の休憩を2回取得させなければならない(労働法第101条、EPZ労働法第40条)とされています。 女性の労働者は、本人の書面による同意がない限り、午後10時から午前6時までの時間帯に勤務させることはできません(労働法第109条)。EPZの女性労働者は、本人及び検査官の同意がない限り、午後8時から午前6時まで勤務させてはならないと規定されています(EPZ労働法第46条)。 (2) 時間外労働 時間外労働手当が支給される場合は、1日当たり10時間までの労働が認められ(労働法第100条、EPZ労働法第38条)、週当たり60時間までの労働が認められます。しかし、年間で週当たりの平均労働時間が56時間を超えてはいけません(労働法第102条、EPZ労働法第40条)。また、労働者の拘束時間は、政府による特別の承認がない限り、休憩を含めて10時間を超えてはならない(労働法第105条)とされております。 規定の労働時間を超過した場合の時間外労働手当は、基本給(+物価上昇手当+一時又は中間手当(ある場合))の2倍です(労働規則第102条(1)、EPZ労働法第45条)。 (3) 深夜労働 深夜労働に対する手当についての規定は定められておりません。夜間シフトが深夜12:00を過ぎる場合、週休は夜間シフトの終了時間から連続した24時間となります。また、翌日とは、シフトの終了時間から連続した24時間をいい、深夜を過ぎてからの勤務時間は前日の勤務時間として計算されます(労働法第106条、EPZ労働法第43条)。

7.フィリピン

(1) フィリピン労働法における労働時間規制概要 フィリピンにおいては、Labor. Code of The Philippines(以下「フィリピン労働法」といいます。)という日本における労働法に位置付けられる法令が定められており、労働者の健康や福祉を守りつつ、使用者との間における公平な立場を保護する観点から労働時間に関する規制が設計されています。 原則として、フィリピン労働法においては、1日あたり8時間の労働時間が上限とされています。日本の労働時間規制の制度と同様に、この労働時間には休憩時間を含みません。フィリピン労働法においては、1日あたり1時間の休憩時間を労働者に与える必要があります。また、1週間あたりの労働時間は48時間が上限として設定されています。 なお、医療従事者などの緊急性の高い職業については、1日8時間以上の労働が例外的に認められる場合があります。 (2) フィリピン労働法における時間外労働に対する追加的な賃金支払義務 フィリピン労働法においては、使用者が労働者に時間外労働を求める場合は、追加的な賃金の支払いが必要となります。具体的には、1日8時間の労働時間を超過した場合は、超過した労働時間に対して25%増の金額が時間外労働の対価として追加的に支払われることになります。また、22時から翌6時までの夜間労働においては、10%の夜間割増賃金の支払いも必要となります。さらに、休日や祝日に労働した場合は、30%の休日割増賃金が支払われます。ただし、元日など法律に定められたRegular Holidayについては100%を割り増し、合計200%の賃金を支払う必要があります。フィリピンにおいては、毎年政府から休日や祝日のスケジュールが提示されますので、確認することも必要になってきます。 これらの追加的な支払義務は、労働者の過剰な労働を防ぐ目的で設計されているため、労働者に対して別日に休日を与えたからといって免除される義務ではないことに留意する必要があります。 (3) フィリピン労働法における時間外労働規制に違反した場合のリスク それでは、労働者を雇う企業が万が一労働時間規制に違反した場合はどのようなリスクがあるのでしょうか。 割増賃金を含む賃金について、未払賃金がある場合には労働者への支払義務があり、重大な違反と認定された場合は、業務停止や取得したライセンスの取消しリスクが存在します。未払賃金がある場合は、労働者との間で紛争に発展するリスクがあります。紛争に発展した場合は、Department of Labor and Employment(以下「DOLE」といいます。)において紛争解決を試みることになり、時間や費用がかかるおそれがあります。 (4) DOLEが提示する時間外労働規制に関するガイドライン DOLEは、時間外労働に関する詳細なガイドラインを提供しています。このガイドラインは、労働法の解釈に大きな影響を与えうるため、できる限りガイドラインに沿った運用実態を構築することが重要です。労働時間の計算方法、時間外手当の支払方法、休日及び夜間労働に関する指針などが具体例とともに提示されています。

8.ベトナム

(1)労働時間に関する規定 ①日中の労働時間 使用者は、労働者に通知することを条件に、労働者に適用する労働時間について、下記の所定労働時間の範囲内において日または週単位で自由に規則を定めることができます。 日単位で定める場合、1日あたり8時間、1週間あたり48時間以下 週単位で定める場合、1日あたり10時間、1週間あたり48時間以下 但し、1935年の国際労働機関(ILO)第47号条約に基づき、ベトナムの現行労働法は、使用者に対し、週40時間労働とすることを奨励しています。 また、以下の特別な場合には、所定労働時間が短縮されます。 妊娠している女性労働者が、過酷、有害、危険な業務、または非常に過酷、有害、危険な業務、または母性に悪影響を及ぼす可能性のある業務に従事する場合、賃金およびその他の手当を減額することなく、労働時間を1日あたり1時間短縮しなければなりません。この規定は、子供の出産後、生後12か月に達するまで適用されます。 15歳未満の労働者の所定労働時間は、1日あたり4時間、1週間あたり20時間以下とし、15歳以上18歳未満の労働者の所定労働時間は、1日あたり8時間、1週間あたり40時間以下とされています。 ②深夜労働 22:00から翌日の6:00までの労働時間を深夜労働時間と定義され、通常、この深夜労働時間は、シフト制で労働者を使用する使用者に適用されます。そのため、深夜労働時間も所定労働時間とみなされますが、最低賃金やその他の処遇(労働時間中の休憩など)は、日中の労働時間よりも優遇されます。 しかし、すべての労働者に深夜労働時間制を適用できるわけではありません。使用者は、以下の労働者を深夜労働時間に勤務させることができません。 • 高地、遠隔地、国境地域、島しょ地域に勤務する妊娠6か月目以降の女性労働者 • 高地、遠隔地、国境地域、島しょ地域以外のその他の場所で勤務する妊娠7か月目以降の女性労働者 • 生後12ヶ月未満の子を養育する女性労働者(当該女性労働者の同意がある場合を除きます) • 15歳未満の労働者 • 15歳以上18歳未満の労働者(労働傷病兵社会省の大臣がリストアップした複数の特定職種および業務は除きます) • 労働能力が51%以上低下した障害者、重度または極めて重度の障害者(当該労働者の同意がある場合を除きます) ③特殊業務を行う労働者に適用される労働時間 特殊業務には、運輸(道路、鉄道、水上、航空)、海洋での石油・ガス探査・採掘、海洋業務、芸術、放射線・原子力工学の利用、高周波の応用、情報技術、技術の研究・応用、工業デザイン、潜水業務、鉱業業務、季節的生産業務および受注商品加工業務、24時間勤務を要する業務、自然災害・火災・疫病への対応、スポーツ・フィットネス関連業務、医薬品・生物学的製剤の製造業務、ガス配給管・ガス工事の運転・保守・修理業務が含まれています。 これらの特殊業務に従事する労働者に課される労働時間に関しては、労働傷病兵社会省および特定の管轄省が決定します。ただし、労働時間の決定に際し、労働時間中の休憩に関する規定の遵守は義務とされています。 (2) 時間外労働に関する規定 法律、労働協約、または就業規則に規定されている所定労働時間以外に行われる労働を時間外労働といい、使用者は、労働者に対して時間外労働を命じる場合には、労働者の同意を得なければなりません。ただし、深夜労働時間に勤務させることが禁止されている労働者に時間外労働をさせることは禁止されています。 労働者に適用される時間外労働の上限は以下のとおりです。 i) 原則として、年間200時間までです。また、1か月あたり40時間を超えてはならず、所定労働時間と時間外労働時間の合計が1日あたり12時間を超えてはならないとされています。 ii) 以下の場合は、年間300時間までとされていますが、使用者は当局に書面で届け出ることが義務付けられています。また、i)と同様に、1か月あたり40時間を超えてはならず、所定労働時間と時間外労働時間の合計が1日あたり12時間を超えてはならないとされています。 • 繊維、衣料、履物、電気、電子製品の製造および加工、農林水産物の加工、製塩 • 発電および電力供給、電気通信、製油所操業、給水および排水 • その時点で労働市場に出回っていない高度な技能を持つ労働者を必要とする仕事 • 季節的な理由、材料や製品の入手可能性、または予期せぬ原因、悪天候、自然災害、火災、敵対行為、電力や原材料の不足、生産ラインの技術的な問題により、延期できない緊急の仕事 • その他政府の定める場合 iii) 以下の場合は、時間外労働の上限はありません。また、原則として、労働者の同意を得る必要もありません。 • 国家安全保障または国防のため、法律に定められた徴兵制度の命令を執行する場合 • 自然災害、火災、伝染病、災害の予防およびそれらからの復旧において、特定の組織または個人の生命や財産を保護するために必要な業務を遂行する場合(ただし、その業務が労働安全衛生法に規定される労働者の健康や生命を脅かす場合を除く)。

9.インド

(1) 概要 インドでは、就業時間や時間外労働等に関する規制は、それぞれの州の店舗・施設法において規定されています。 なお、2020年に就業時間や時間外労働を定めた連邦法である労働基準法典(THE OCCUPATIONAL SAFETY, HEALTH AND WORKING CONDITIONS CODE, 2020)が公布されています。労働基準法典は未施行ですが、施行後は当該法典の規定に従うことになります。 (2) デリーの規制 デリーの就業時間や時間外労働に関する規制は、1954年デリー店舗及び施設法において規定されていま す。 ①就業時間について いかなる労働者も施設の業務に関して1日に9時間を超えて、又は週に48時間を超えて働くことは許されず、使用者は当該就業時間の上限規定に合わせて 1日の労働時間を固定しなければなりません(デリー店舗及び施設法8条)。労働時間は、連続労働時間が 5時間を超えないように定めなければならず、また、いかなる労働者も、少なくとも 30分の休憩又は食事の間隔を置かず 5時間を超えて労働することを要求され、又は許可されてはなりません(デリー店舗及び施設法10条)。また、休憩又は食事の時間を含めて商業施設では10時間30分を超えない ように労働時間を定めなければなりません(デリー店舗及び施設法11条)。 ②時間外労働について 労働者は、上記時間を超えて働くことを許可又は要求される場合がありますが、週に54 時間を超えないようにする必要があります(デリー店舗及び施設法 8条)。また、年間の時間外労働の合計時間は150時間を超えることはできません(同条)。 時間外労働に対しては、時間単位で計算される通常の賃金の2倍の賃金を支払う必要があります(同条)。 (3) その他の州の規制 その他の主要な州の規制は以下の通りです。

10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

アラブ首長国連邦(UAE)での労働法制については、公的機関と私企業に分かれて規定されています。 連邦政府機関は、月曜から木曜日は午前7時30分から午後3時30分まで、金曜日は正午までの週4.5日の労働とされています。 フリーゾーン独自の規則が適用される2か所のフリーゾーン(Abu Dhabi Global Market及びDubai International Financial Center)で設立された会社以外の私企業については、私企業における労働関係に関する規則(2021年連邦令第33号。以下、「連邦労働法」といいます。)及び労働関係に関する2021年連邦令第33号の施行に関する2022年内閣決定第1号(以下「施行規則」といいます。)によって、以下の通り規定されています。 (1) 労働時間 労働時間は、1日8時間または週48時間と定められています(連邦労働法第17条第1項)。1時間以上の休憩を挟むことなく、連続5時間以上の労働は認められません(連邦労働法第18条)。 労働時間の規定は、特定の産業や労働者の種類に応じ、内閣の決定によって伸長・短縮することができ(連邦労働法第17条第2項)、この規定の適用から除外される職種は施行規則で定められています。 なお、ムスリムが断食をするラマダーン月には、通常労働時間は、2時間短縮されます(連邦労働法第17条第4項、施行規則第15条第2項)。 (2) 時間外労働 フルタイム勤務従業員以外は、書面の同意がない限り、時間外労働を求めることはできません(連邦労働法第17条第5項)。 時間外労働は、1日当たり2時間を限度とし、3週毎の合計労働時間は144時間を超えてはなりません(連邦労働法第19条第1項)。ただし、深刻な損失や事故の発生を防止するために必要とされる場合はその限りではありません(施行規則第15条第3項)。 (3) 時間外労働手当 時間外労働に対しては、通常勤務時間の時給に25%以上を上乗せした手当が支払われ(連邦労働法第19条第2項)、午後10時から午前4時までの間の時間外労働については、50%以上を上乗せする必要がありますが、シフト制で勤務する労働者についてはその限りではありません(連邦労働法第19条第3項)。 休日労働に関しては、代休を取得するか、通常勤務時間の時給に50%以上を上乗せした賃金を得ることができます(連邦労働法第19条第4項)。ただし、日雇い労働者を除き、2日以上連続して休日労働を求めることはできません(連邦労働法第19条第5項)。" ["post_title"]=> string(63) "就業時間及び時間外労働に関する法規制の概要" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(189) "%e5%b0%b1%e6%a5%ad%e6%99%82%e9%96%93%e5%8f%8a%e3%81%b3%e6%99%82%e9%96%93%e5%a4%96%e5%8a%b4%e5%83%8d%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e6%b3%95%e8%a6%8f%e5%88%b6%e3%81%ae%e6%a6%82%e8%a6%81" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2024-01-05 14:48:56" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2024-01-05 05:48:56" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=17560" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
 TNY国際法律事務所
ティエヌワイコクサイホウリツジムショ TNY国際法律事務所
世界11か国13拠点で日系企業の進出及び進出後のサポート

世界11か国13拠点(東京、大阪、佐賀、ミャンマー、タイ、マレーシア、メキシコ、エストニア、フィリピン、イスラエル、バングラデシュ、ベトナム、イギリス)で日系企業の進出及び進出後のサポートを行っている。具体的には、法規制調査、会社設立、合弁契約書及び雇用契約書等の各種契約書の作成、M&A、紛争解決、商標登記等の知財等各種法務サービスを提供している。

堤雄史(TNYグループ共同代表・日本国弁護士)、永田貴久(TNYグループ共同代表・日本国弁護士)

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