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重大災害法で初の有罪判決地場建設会社CEOに懲役刑

労災事故が発生した場合に経営者を処罰できる「重大災害企業処罰法(重大災害法)」の初判決が6日、出された。議政府地方裁判所高陽支部(京畿道高陽市)は建設現場で起きた死亡事故について、地場建設会社オンユーパートナーズの最高経営責任者(CEO)に対して懲役1年6月、執行猶予3年の一審判決を言い渡した。労災事故によって企業トップが処罰されるリスクが高まっただけに、経営者の懸念も深まると予想される。

ソウル市内ではいたるところでマンションの建設が進む。今回の判決で、建設会社には安全対策のより一層の徹底が求められそうだ=韓国(NNA撮影)

重大災害法は、事業現場で従業員の死傷事故が発生した場合、事業主や現場の責任者、企業の経営者に対して懲役または罰金を科す法律。死亡者が1人以上発生した場合、経営者には1年以上の懲役または10億ウォン(約9,950万円)以下の罰金が科される。工場長などの現場責任者だけでなく経営トップも処罰対象とする法律は世界的でも珍しい。
オンユーパートナーズのCEOは、昨年5月に高陽市内のある建設現場で下請け従業員が墜落し死亡した事故の責任を問われ、昨年11月に重大災害法違反の容疑で起訴されていた。
検察は「CEOらが安全帯の使用や作業計画書の作成といった安全に関する措置を怠り、労働者の死亡につながった」として、懲役2年を求刑した。裁判所は起訴内容の大部分を事実と認定。有罪判決の理由として「有害・危険要素の確認および改善手続きや、重大産業災害に対するマニュアル不備など安全に関する一連の義務を怠った」とした。
CEOのほか、オンユーパートナーズと下請け会社アイコニックACの現場監督者2人にも懲役8月、執行猶予2年の有罪判決が宣告された。また、オンユーパートナーズには3,000万ウォンの罰金刑も命じられている。
■経営者の懸念が現実に
今回の判決は現在進行中の重大災害法違反の裁判14件のうち最初の刑事裁判の判決となるだけに、財界を中心に大きな関心事となっていた。被告側が控訴する可能性はあるが、元請け会社のトップに懲役刑が宣告されたことで、経営者の懸念は現実のものとなった。
重大災害法については、経営者からの批判の声が絶えない。経済団体の韓国経営者総協会は今年1月、「(同法は)実効性がなく、法執行にも混乱を招いている」とする報告書を発表していた。処罰される「経営責任者」の範囲が明確でない上、事前に取るべき安全管理措置について不備の有無を追求するのは難しいのが実情で、多くの企業が対応にとまどっているという。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、年内にも具体的な修正案を示すロードマップ(行程表)を発表する予定だが、野党が議席の過半数を占める国会で法改正を実行できるかは不透明だ。
■初の重大市民災害適用の可能性も
今月5日には京畿道城南市盆唐区の亭子橋が崩落して2人が死傷する事故が起きたが、申相珍(シン・サンジン)城南市長に重大災害法が適用されるかどうかにも注目が集まっている。京畿南部警察庁は、亭子橋崩落事故が「重大災害法の適用条件を満たしている」と判断して崩壊原因の究明などの捜査を進める方針を明らかにした。
重大災害法における重大災害には、工場や建設現場などでの事故(重大産業災害)だけでなく、不特定の市民が死傷した事故(重大市民災害)も含まれる。橋の場合は長さ100メートル以上のものが対象となるが、亭子橋は108メートルであるため重大災害法の適用範囲内だ。
申市長が重大災害法で起訴されれば、重大災害法上の「重大市民災害」が適用される初のケースとなる。

4月5日に崩落し、2人の死傷者を出した亭子橋。復旧作業が進められている=韓国(NNA撮影)
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検察は「CEOらが安全帯の使用や作業計画書の作成といった安全に関する措置を怠り、労働者の死亡につながった」として、懲役2年を求刑した。裁判所は起訴内容の大部分を事実と認定。有罪判決の理由として「有害・危険要素の確認および改善手続きや、重大産業災害に対するマニュアル不備など安全に関する一連の義務を怠った」とした。
CEOのほか、オンユーパートナーズと下請け会社アイコニックACの現場監督者2人にも懲役8月、執行猶予2年の有罪判決が宣告された。また、オンユーパートナーズには3,000万ウォンの罰金刑も命じられている。
■経営者の懸念が現実に
今回の判決は現在進行中の重大災害法違反の裁判14件のうち最初の刑事裁判の判決となるだけに、財界を中心に大きな関心事となっていた。被告側が控訴する可能性はあるが、元請け会社のトップに懲役刑が宣告されたことで、経営者の懸念は現実のものとなった。
重大災害法については、経営者からの批判の声が絶えない。経済団体の韓国経営者総協会は今年1月、「(同法は)実効性がなく、法執行にも混乱を招いている」とする報告書を発表していた。処罰される「経営責任者」の範囲が明確でない上、事前に取るべき安全管理措置について不備の有無を追求するのは難しいのが実情で、多くの企業が対応にとまどっているという。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、年内にも具体的な修正案を示すロードマップ(行程表)を発表する予定だが、野党が議席の過半数を占める国会で法改正を実行できるかは不透明だ。
■初の重大市民災害適用の可能性も
今月5日には京畿道城南市盆唐区の亭子橋が崩落して2人が死傷する事故が起きたが、申相珍(シン・サンジン)城南市長に重大災害法が適用されるかどうかにも注目が集まっている。京畿南部警察庁は、亭子橋崩落事故が「重大災害法の適用条件を満たしている」と判断して崩壊原因の究明などの捜査を進める方針を明らかにした。
重大災害法における重大災害には、工場や建設現場などでの事故(重大産業災害)だけでなく、不特定の市民が死傷した事故(重大市民災害)も含まれる。橋の場合は長さ100メートル以上のものが対象となるが、亭子橋は108メートルであるため重大災害法の適用範囲内だ。
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