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プラボウォ氏「繁栄導く」大統領選勝利、連立形成も焦点に

インドネシアのプラボウォ・スビアント国防相(与党グリンドラ党党首)は20日夜、中央選挙管理委員会(KPU)が発表した2月の大統領選挙の結果を受けて、「インドネシアを繁栄に導く」と述べ、勝利宣言した。一方、同日発表された国会(一院制、580議席)議員選の結果は、大統領選でプラボウォ氏と争った対抗馬を擁立した最大与党・闘争民主党(PDIP)が得票率で1位となった。今後は10月の新政権発足に向け、閣僚人事や国会での連立形成などでの駆け引きが注目される。
プラボウォ氏は、首都ジャカルタの自宅前で会見を開き勝利演説をした。副大統領に就任する、現職ジョコ・ウィドド大統領の長男ギブラン・ラカブミン氏(中ジャワ州スラカルタ=ソロ=市長)と一緒になって、すべての国民が前を向き再び団結して手を取り合うよう呼びかけていくとし、「インドネシアを繁栄と正義に導く」と語った。
中央選挙管理委員会によると、プラボウォ氏のペアは9,621万4,691票(得票率58.6%)を獲得し、次点のアニス・バスウェダン氏(ジャカルタ特別州前知事)とムハイミン・イスカンダル氏(国民覚醒党=PKB=党首)のペア(4,097万1,906票、得票率24.9%)に大差をつけた。3位のガンジャル・プラノウォ氏(中ジャワ州前知事)とモハマド・マフッド氏(前調整相=政治・法務・治安担当)のペアは2,704万878票(得票率16.5%)だった。
選挙の結果を受けて、岸田文雄首相は20日、プラボウォ氏に祝辞を送った。日本の外務省によれば、岸田氏は祝意を伝えた上で、日インドネシアの国交樹立65周年だった昨年に2国関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げしたことに触れ、幅広い分野での2国間協力や地域・国際情勢について連携していきたいとの考えを伝えたという。
米国のブリンケン国務長官も20日にプラボウォ氏に対して、「10月に就任するプラボウォ次期大統領およびプラボウォ政権と緊密に連携できることを楽しみにしている」と祝意を送った。選挙結果が確定する前にも、バイデン米大統領が祝辞を記した書簡を送付している。

このほか、中国国務院新聞弁公室によると、習近平国家主席が20日、プラボウォ氏に祝電を送った。その中で習氏は、「インドネシアとの関係発展を非常に重視している」とした上で、「プラボウォ次期大統領と協力して運命共同体を構築して、より大きな成果を上げることを期待している」と表明した。
プラボウォ氏は、今年10月に2期・10年の任期が満了するジョコ大統領の政策を継承することを掲げて選挙戦を展開した。
■国会議員選挙、闘争民主党が得票トップ
大統領選と同時実施された国会議員選挙の結果も20日夜に発表された。中央選挙管理委員会によると、闘争民主党が得票率16.72%(得票数2,538万7,279票)となり、2019年の前回選挙から2.61ポイント減らしたが1位となった。闘争民主党は、大統領選ではガンジャル氏を擁立した。得票率2位はゴルカル党で、前回から2.98ポイント伸ばして15.29%となった。同党は大統領選でプラボウォ氏を擁立した政党連合の一角。3位は、プラボウォ氏が党首を務めるグリンドラ党で、得票率は0.65ポイント増の13.22%だった。
4~6位はアニス氏を擁立した政党連合を組んだ、国民覚醒党(PKB、得票率は0.93ポイント増の10.62%)、ナスデム党(0.61ポイント増の9.66%)、福祉正義党(PKS、0.21ポイント増の8.42%)だった。
国会議員選挙で各政党が議席を得るための得票率4%以上の条件を満たしたのは、18政党のうち8政党。現在国会に議席を持つ9政党から減った。今回の結果で議席を失うのは、保守系イスラム政党の開発統一党(PPP)で、得票率は前回選挙から0.65ポイント減の3.87%だった。
また、ジョコ大統領の次男カエサン・パンガレップ氏が党首を務めるインドネシア連帯党(PSI)は、0.92ポイント伸ばしたものの2.81%にとどまり、同党初の国会議席の獲得はならなかった。
■政権安定化に向け政治的駆け引き
日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の水野祐地氏(地域研究センター・東南アジアI研究グループ)は、ジョコ路線の継承をうたうプラボウォ氏が10月に新政権を樹立するに当たり、最初に取り組むべきこととして、「ジョコ政権の例にならった政治的安定の確保」を挙げた。そのためには「可能な限り多くの政党がステークホルダーとして参画する内閣を形成することが必要になる」と話す。
またジョコ政権下では、スリ・ムルヤニ財務相らテクノクラート(専門家)が高い評価を受けていたと指摘。プラボウォ政権もテクノクラートの起用が経済政策への評価を左右するとの見方を示した。
プラボウォ氏の外交について、水野氏は「インドネシアの基本原則である、各国とのバランスの取れた外交姿勢を維持する方針は変わらないだろう」とした上で、「ジョコ氏が中国との経済関係強化に比較的積極的だったのに対して、プラボウォ氏は西側諸国へのアプローチにジョコ氏より力を入れる可能性があると考えられる」と述べた。
プラボウォ氏は、1998年まで続いたスハルト独裁政権時代の陸軍幹部で、複数の人権侵害に関わった疑いで米国への入国が禁じられた過去があるため、「西側諸国の不信感を払拭したいという強い動機がある」と、水野氏は指摘する。
一方、国会の安定運営を巡っては、プラボウォ氏を支持する政党だけでは十分ではないと判断すれば、ガンジャル氏やアニス氏の支持政党にも与党連合への参加を呼びかけることが考えられるとした。ただ、得票率1位の闘争民主党に関しては、プラボウォ氏にとっては取り込むインセンティブはある一方、大統領選での敵対政党である闘争民主党は与党連合に加わっても、主導権を握ることが現段階では考えにくいことから、同党が与党連合に加わるか野党にとどまるかは「今後の政治的駆け引きによって決まる」と述べた。

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米国のブリンケン国務長官も20日にプラボウォ氏に対して、「10月に就任するプラボウォ次期大統領およびプラボウォ政権と緊密に連携できることを楽しみにしている」と祝意を送った。選挙結果が確定する前にも、バイデン米大統領が祝辞を記した書簡を送付している。

このほか、中国国務院新聞弁公室によると、習近平国家主席が20日、プラボウォ氏に祝電を送った。その中で習氏は、「インドネシアとの関係発展を非常に重視している」とした上で、「プラボウォ次期大統領と協力して運命共同体を構築して、より大きな成果を上げることを期待している」と表明した。
プラボウォ氏は、今年10月に2期・10年の任期が満了するジョコ大統領の政策を継承することを掲げて選挙戦を展開した。
■国会議員選挙、闘争民主党が得票トップ
大統領選と同時実施された国会議員選挙の結果も20日夜に発表された。中央選挙管理委員会によると、闘争民主党が得票率16.72%(得票数2,538万7,279票)となり、2019年の前回選挙から2.61ポイント減らしたが1位となった。闘争民主党は、大統領選ではガンジャル氏を擁立した。得票率2位はゴルカル党で、前回から2.98ポイント伸ばして15.29%となった。同党は大統領選でプラボウォ氏を擁立した政党連合の一角。3位は、プラボウォ氏が党首を務めるグリンドラ党で、得票率は0.65ポイント増の13.22%だった。
4~6位はアニス氏を擁立した政党連合を組んだ、国民覚醒党(PKB、得票率は0.93ポイント増の10.62%)、ナスデム党(0.61ポイント増の9.66%)、福祉正義党(PKS、0.21ポイント増の8.42%)だった。
国会議員選挙で各政党が議席を得るための得票率4%以上の条件を満たしたのは、18政党のうち8政党。現在国会に議席を持つ9政党から減った。今回の結果で議席を失うのは、保守系イスラム政党の開発統一党(PPP)で、得票率は前回選挙から0.65ポイント減の3.87%だった。
また、ジョコ大統領の次男カエサン・パンガレップ氏が党首を務めるインドネシア連帯党(PSI)は、0.92ポイント伸ばしたものの2.81%にとどまり、同党初の国会議席の獲得はならなかった。
■政権安定化に向け政治的駆け引き
日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の水野祐地氏(地域研究センター・東南アジアI研究グループ)は、ジョコ路線の継承をうたうプラボウォ氏が10月に新政権を樹立するに当たり、最初に取り組むべきこととして、「ジョコ政権の例にならった政治的安定の確保」を挙げた。そのためには「可能な限り多くの政党がステークホルダーとして参画する内閣を形成することが必要になる」と話す。
またジョコ政権下では、スリ・ムルヤニ財務相らテクノクラート(専門家)が高い評価を受けていたと指摘。プラボウォ政権もテクノクラートの起用が経済政策への評価を左右するとの見方を示した。
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