三越伊勢丹ホールティングス(HD)は18日、フィリピンのマニラ首都圏タギッグ市の新興開発区に商業施設「MITSUKOSHI BGC(三越BGC)」を開業した。同国にはない日本関連商品を求め、開店前には約350人が行列を作った。三越のブランド名を冠した商業施設を東南アジアに設けるのは初めて。高所得層の需要を開拓し地場勢が独占する市場に食い込む狙いだが、どこまで独自色を出せるかが成功を左右しそうだ。
「三越」のロゴが入ったうちわを片手に開店前に列を作る来店客ら=18日、タギッグ市(NNA撮影)
18日午前11時、日本でなじみのある開店を知らせるアナウンスが流れた後、太鼓パフォーマンスとともに行列を作っていた地元住民らが続々と来店した。開業エリアの一部を先行開業し、テナント約120店のうち約6割が営業を開始した。2023年3月の全面開業を目指す。日本の百貨店がフィリピンに進出するのは初となる。
開店と同時に入店する来店客ら=18日、タギッグ市(NNA撮影)
1番に来店した近隣住民のノルマ・アルバレスさん(60)は「ジョギングしているときに見かけた。1番で入店するため、午前2時に起きた。館内の雰囲気もいいし、見たことのない日本の商品を探したい」と語った。
タギッグ市の新興開発区ボニファシオ・グローバル・シティー(BGC)に位置する三越BGCは延べ床面積が2万8,000平方メートル、地下1階~地上3階となる。営業時間は午前10時~午後10時だが、クリスマス期間は規制で午前11時からの営業となる。
旗艦店として地下1階に入るスーパーマーケット「三越フレッシュ」では、日本のすしや刺し身、揚げ物、冷凍食品、ケーキなどを充実させた。すしや刺し身は日本から食材を週数回取り寄せ、日本人の職人が従業員を指導して盛り付けている。開店初日はスーパーに多くの来店客が訪れ、入場が制限された。
多くの来店客で入場規制されたスーパー「三越フレッシュ」=18日、タギッグ市(NNA撮影)
ITコンサルタントでBGCに住むハロルド・カバさん(40)は「すしやパン、ケーキを購入した。従業員の対応が親切で地元企業が運営するモールとは異なるし、日本の商品の種類が豊富で興味深い」と話した。
すしや刺し身のコーナーで商品を手に取る来店客ら=18日、タギッグ市(NNA撮影)
1階のビューティーストア「三越ビューティー」には、フィリピン初上陸のブランドを入れたほか、交流サイト(SNS)向けの「映えコーナー」も設けた。2階には紀伊國屋書店が入居する。
3階には屋内型のアミューズメント施設を設けるがまだ開業していない。独自の商品展開をしつつ、生活用品ショップ「ダイソー」など一般的なモールにも入居するブランドを入れて集客の幅を広げている。
ビューティーストアには交流サイト(SNS)への投稿を想定した「映えコーナー」を設けた=18日、タギッグ市(NNA撮影)
多国籍企業で働くジェロさん(44)は「妻が紀伊國屋書店でお目当ての書籍を購入できた。日本の食料品はほかの近隣のモールより多いし、また来たい」と満足した様子だった一方、「早く全てのテナントが開店してほしい」と注文を付けた。
■商圏絞り、客単価は高く
三越BGCの主なターゲットは半径約1キロメートルになる見込み。BGCには日本や世界の外資企業が集まり、日本人学校もある。住民の所得水準は首都圏のなかでも高い。まずは世帯月収15万~20万ペソ(約37万~49万円)程度を狙い、月数十万人の来店を見込んでいる。
三越BGCの2階に入居した紀伊國屋書店=18日、タギッグ市(NNA撮影)
周辺地区の接続性が高まり、将来は商圏も拡大しそうだ。23年には道を挟んで隣に建つ高級ホテル「グランドハイアットマニラ」と三越BGCを結ぶ連絡通路が完成する予定のほか、28年までにマニラ首都圏を南北に走る国内初の地下鉄が開通し、BGCにも駅が設置される予定になっている。
スーパー近くに設けられた広々とした飲食スペース=18日、タギッグ市(NNA撮影)
三越BGCの開発は、三越伊勢丹HDが主体となる百貨店ではなく、テナント型にしてコストを抑えた。三越伊勢丹HD、野村不動産、フィリピンの財閥GTキャピタルの不動産開発子会社フェデラル・ランドとの合弁会社で進めている。商業施設の上層階には4棟のコンドミニアムが建ち1億円を超える物件もある。
フィリピン経済をけん引するのは、国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費だ。人口は1億1,000万人と東南アジアで2番目に多く、今後も緩やかに増加していくと予想されている。人口ボーナス期が世界でも長く、今後の購買力に期待が持てることが進出の決め手となった。
「三越」のロゴが付いた商業施設の外観=18日、タギッグ市(NNA撮影)
フィリピン国内の商業施設はSMグループやアヤラ・コーポレーション、ゴコンウェイ・グループなど地場財閥が独占している。ただ大半は世帯所得が月5万~10万ペソ程度の所得層がターゲット。BGCには高所得層を狙ったモールもあるが、陳列する商品は三越とは異なる部分が多い。1号店が軌道に乗れば、多店舗化も見えてくる。
フェデラル・ランドのアルフレッド・ティ会長は、2号店の開業について「フェデラル・ランドが保有する土地になるだろう。ただ場所についてはまだ頭の中で考えているだけだ」と話した。
三越伊勢丹HDは東南アジアの事業で苦戦を強いられてきた。伊勢丹ブランドで展開しているが、タイの店舗は20年に閉店し、マレーシアとシンガポールでも店舗数を縮小している。少子高齢化の日本では需要がしぼむ。
フィリピンでも質の高い日本の商品だけでは、地元住民からの関心を継続して引きつけることは難しい。一方で普及帯のテナントが増えれば、ほかのモールとの差別化が図れない。質の高い接客や普及帯のテナントの回転率を高めるとともに、独自の日本ブランドで飽きさせない事業展開が成功のカギとなる。
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タギッグ市の新興開発区ボニファシオ・グローバル・シティー(BGC)に位置する三越BGCは延べ床面積が2万8,000平方メートル、地下1階~地上3階となる。営業時間は午前10時~午後10時だが、クリスマス期間は規制で午前11時からの営業となる。
旗艦店として地下1階に入るスーパーマーケット「三越フレッシュ」では、日本のすしや刺し身、揚げ物、冷凍食品、ケーキなどを充実させた。すしや刺し身は日本から食材を週数回取り寄せ、日本人の職人が従業員を指導して盛り付けている。開店初日はスーパーに多くの来店客が訪れ、入場が制限された。
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ITコンサルタントでBGCに住むハロルド・カバさん(40)は「すしやパン、ケーキを購入した。従業員の対応が親切で地元企業が運営するモールとは異なるし、日本の商品の種類が豊富で興味深い」と話した。
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1階のビューティーストア「三越ビューティー」には、フィリピン初上陸のブランドを入れたほか、交流サイト(SNS)向けの「映えコーナー」も設けた。2階には紀伊國屋書店が入居する。
3階には屋内型のアミューズメント施設を設けるがまだ開業していない。独自の商品展開をしつつ、生活用品ショップ「ダイソー」など一般的なモールにも入居するブランドを入れて集客の幅を広げている。
[caption id="attachment_10255" align="aligncenter" width="620"]ビューティーストアには交流サイト(SNS)への投稿を想定した「映えコーナー」を設けた=18日、タギッグ市(NNA撮影)[/caption]
多国籍企業で働くジェロさん(44)は「妻が紀伊國屋書店でお目当ての書籍を購入できた。日本の食料品はほかの近隣のモールより多いし、また来たい」と満足した様子だった一方、「早く全てのテナントが開店してほしい」と注文を付けた。
■商圏絞り、客単価は高く
三越BGCの主なターゲットは半径約1キロメートルになる見込み。BGCには日本や世界の外資企業が集まり、日本人学校もある。住民の所得水準は首都圏のなかでも高い。まずは世帯月収15万~20万ペソ(約37万~49万円)程度を狙い、月数十万人の来店を見込んでいる。
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周辺地区の接続性が高まり、将来は商圏も拡大しそうだ。23年には道を挟んで隣に建つ高級ホテル「グランドハイアットマニラ」と三越BGCを結ぶ連絡通路が完成する予定のほか、28年までにマニラ首都圏を南北に走る国内初の地下鉄が開通し、BGCにも駅が設置される予定になっている。
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三越BGCの開発は、三越伊勢丹HDが主体となる百貨店ではなく、テナント型にしてコストを抑えた。三越伊勢丹HD、野村不動産、フィリピンの財閥GTキャピタルの不動産開発子会社フェデラル・ランドとの合弁会社で進めている。商業施設の上層階には4棟のコンドミニアムが建ち1億円を超える物件もある。
フィリピン経済をけん引するのは、国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費だ。人口は1億1,000万人と東南アジアで2番目に多く、今後も緩やかに増加していくと予想されている。人口ボーナス期が世界でも長く、今後の購買力に期待が持てることが進出の決め手となった。
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フィリピン国内の商業施設はSMグループやアヤラ・コーポレーション、ゴコンウェイ・グループなど地場財閥が独占している。ただ大半は世帯所得が月5万~10万ペソ程度の所得層がターゲット。BGCには高所得層を狙ったモールもあるが、陳列する商品は三越とは異なる部分が多い。1号店が軌道に乗れば、多店舗化も見えてくる。
フェデラル・ランドのアルフレッド・ティ会長は、2号店の開業について「フェデラル・ランドが保有する土地になるだろう。ただ場所についてはまだ頭の中で考えているだけだ」と話した。
三越伊勢丹HDは東南アジアの事業で苦戦を強いられてきた。伊勢丹ブランドで展開しているが、タイの店舗は20年に閉店し、マレーシアとシンガポールでも店舗数を縮小している。少子高齢化の日本では需要がしぼむ。
フィリピンでも質の高い日本の商品だけでは、地元住民からの関心を継続して引きつけることは難しい。一方で普及帯のテナントが増えれば、ほかのモールとの差別化が図れない。質の高い接客や普及帯のテナントの回転率を高めるとともに、独自の日本ブランドで飽きさせない事業展開が成功のカギとなる。"
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