茨城県は11月から12月にかけて、シンガポールで県産品の試食会や商談会、テストマーケティングなど企業・消費者間取引(BtoC)、企業間取引(BtoB)の複数の取り組みを実施する。輸出促進事業の一環で、常陽銀行(水戸市)に業務委託した。県がシンガポールで今回のような大規模なイベントを開くのは初めて。同国経済が新型コロナウイルス禍から回復しつつある中、県産品の需要を開拓する考えだ。【清水美雪】
試食会には県産品を使った料理が並んだ=23日、シンガポール中心部(NNA撮影)
茨城県は県産品の輸出促進に向け、海外の現地バイヤーの需要開拓などを目的に「いばらきグローバルビジネス推進事業」を進めている。シンガポールを重点市場の一つと位置付けており、今回は同国向けの業務を常陽銀行に初めて委託した。
11月から12月にかけて現地消費者向けの試食会や、県の食品メーカーと現地バイヤーによる商談会、ライブ配信で商品を販売するライブコマース、商業施設でのテストマーケティング、飲食店での県産品フェアといった複数のイベントを開催。県からは食品メーカー約30社が参加する。
茨城県がシンガポールで輸出促進関連の取り組みを行うのは今年で5年目だが、試食会や商談会など大規模なイベントを開くのは今回が初となる。新型コロナウイルス発生後に県の事業者がシンガポールを訪問するのも初めて。商談会やテストマーケティング、県産品フェアはシンガポールの飲食店運営大手RE&Sエンタープライズの協力を受ける。
■試食会で「痛み」を確認
23日にはJR東日本がシンガポール中心部で運営する飲食店「ジャパン・レール・カフェ」で、県産品を使った料理をPRするBtoCの試食会を開催。同カフェの常連客を中心とした現地消費者や在シンガポールの日本人など計約40人が参加した。
県から食品メーカー9社の担当者も出席し、会場で自社製品を紹介。銀杏や納豆、タコ、植物性由来のフレーク、ビーガンヌードル、サツマイモなど33種類の商品を使った料理が振る舞われ、会場は熱気に包まれた。
常陽銀行コンサルティング営業部リサーチ&コンサルティンググループ主任調査役、笠井政義氏はNNAに対し、「シンガポールは(日本産商品の良さを)理解してくれる人が多いが、まだ十分攻め切れていない市場だ。現地の消費者から直接いろいろな意見を聞ける機会は少ないため試食会は非常に貴重だ」と説明した。
現地の嗜好(しこう)に合わないものも含めて率直な感想を聞くことで、県の食品メーカーには「痛み」も感じてもらいながら自主的に輸出促進に取り組めるよう後押ししたいと付け加えた。
植物性由来のフレークを出品した東京バル(茨城県つくば市)の筒井宏明代表取締役は、「当社はえんどう豆のたんぱく質からできた植物性由来の商品を手がける。シンガポールで今回のようなイベントに参加したのは初めて。BtoCとBtoBの両方でどんな需要があるか探りたい」と語った。
即席カップ麺製造のヤマダイ(茨城県八千代町)の取締役経営企画部海外事業室長、森田佳奈氏は「シンガポールには飲食店で食べる高級なラーメンや手軽に試せるカップ麺があるが、その中間の価格帯の商品が少ないと感じる。当社の商品は『ラーメン店の味を家庭で楽しめる』というコンセプトでPRしたい」と述べた。
試食会に参加した50代のシンガポール人女性は「茨城県に行ったことはないが、あまり食べたことのない食品を試食できて良かった」と話した。
試食会では現地の消費者などが県産品を使った料理を楽しんだ=23日、シンガポール中心部(NNA撮影)
■日本食スーパー、集客強化で関心
24日に中心部の商業施設グレートワールド内で行われた商談会には、担当者がシンガポールを訪問中の9社を含め県から20社超の食品メーカーが参加した。9社以外はオンライン商談で商品を売り込んだ。シンガポールからは約15社のバイヤー、飲食店・小売店関係者らが集まった。
商談会に参加した日本食スーパーの担当者は、「シンガポールでは日本産食品を扱う小売店の間で競争が激化している。集客強化で他店にはない商品を扱いたいと思い商談会に参加した」と語った。
24日夜には、シンガポールの食品卸大手アングリス・シンガポールを通じて県産食品のライブコマースを実施した。
11月下旬から12月中旬にかけては西部の商業施設「ジュロン・ポイント」にある和食を集めた催事スペース「WAttention Plaza」でテストマーケティングを行う。12月中旬にはRE&Sが展開する和食店で県の食品フェアを実施する予定だ。
日本で国内市場の縮小が予想される中、茨城県は海外での日本産食品の旺盛な需要を取り込もうとしている。アジア地域で国民1人当たりの実質国内総生産(GDP)が特に高いシンガポールでプロモーションや営業活動を展開することで、中小企業など県内企業の販路開拓を支援したい考えだ。
茨城県はアジアではこのほか、香港などを重点市場としている。今年から台湾でも食品輸出促進に向けて動き出している。台湾では、2011年の東京電力福島第1原発事故後から続けてきた茨城県産などの食品の輸入禁止措置が今年2月に原則解禁された。
シンガポールでは以前からこうした措置は解除されている。コロナ禍からの経済回復が進む中で現地の日本食の需要取り込みを狙う。
中心部の商業施設「グレートワールド」内で開催された商談会=24日、シンガポール中心部(NNA撮影)
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11月から12月にかけて現地消費者向けの試食会や、県の食品メーカーと現地バイヤーによる商談会、ライブ配信で商品を販売するライブコマース、商業施設でのテストマーケティング、飲食店での県産品フェアといった複数のイベントを開催。県からは食品メーカー約30社が参加する。
茨城県がシンガポールで輸出促進関連の取り組みを行うのは今年で5年目だが、試食会や商談会など大規模なイベントを開くのは今回が初となる。新型コロナウイルス発生後に県の事業者がシンガポールを訪問するのも初めて。商談会やテストマーケティング、県産品フェアはシンガポールの飲食店運営大手RE&Sエンタープライズの協力を受ける。
■試食会で「痛み」を確認
23日にはJR東日本がシンガポール中心部で運営する飲食店「ジャパン・レール・カフェ」で、県産品を使った料理をPRするBtoCの試食会を開催。同カフェの常連客を中心とした現地消費者や在シンガポールの日本人など計約40人が参加した。
県から食品メーカー9社の担当者も出席し、会場で自社製品を紹介。銀杏や納豆、タコ、植物性由来のフレーク、ビーガンヌードル、サツマイモなど33種類の商品を使った料理が振る舞われ、会場は熱気に包まれた。
常陽銀行コンサルティング営業部リサーチ&コンサルティンググループ主任調査役、笠井政義氏はNNAに対し、「シンガポールは(日本産商品の良さを)理解してくれる人が多いが、まだ十分攻め切れていない市場だ。現地の消費者から直接いろいろな意見を聞ける機会は少ないため試食会は非常に貴重だ」と説明した。
現地の嗜好(しこう)に合わないものも含めて率直な感想を聞くことで、県の食品メーカーには「痛み」も感じてもらいながら自主的に輸出促進に取り組めるよう後押ししたいと付け加えた。
植物性由来のフレークを出品した東京バル(茨城県つくば市)の筒井宏明代表取締役は、「当社はえんどう豆のたんぱく質からできた植物性由来の商品を手がける。シンガポールで今回のようなイベントに参加したのは初めて。BtoCとBtoBの両方でどんな需要があるか探りたい」と語った。
即席カップ麺製造のヤマダイ(茨城県八千代町)の取締役経営企画部海外事業室長、森田佳奈氏は「シンガポールには飲食店で食べる高級なラーメンや手軽に試せるカップ麺があるが、その中間の価格帯の商品が少ないと感じる。当社の商品は『ラーメン店の味を家庭で楽しめる』というコンセプトでPRしたい」と述べた。
試食会に参加した50代のシンガポール人女性は「茨城県に行ったことはないが、あまり食べたことのない食品を試食できて良かった」と話した。
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■日本食スーパー、集客強化で関心
24日に中心部の商業施設グレートワールド内で行われた商談会には、担当者がシンガポールを訪問中の9社を含め県から20社超の食品メーカーが参加した。9社以外はオンライン商談で商品を売り込んだ。シンガポールからは約15社のバイヤー、飲食店・小売店関係者らが集まった。
商談会に参加した日本食スーパーの担当者は、「シンガポールでは日本産食品を扱う小売店の間で競争が激化している。集客強化で他店にはない商品を扱いたいと思い商談会に参加した」と語った。
24日夜には、シンガポールの食品卸大手アングリス・シンガポールを通じて県産食品のライブコマースを実施した。
11月下旬から12月中旬にかけては西部の商業施設「ジュロン・ポイント」にある和食を集めた催事スペース「WAttention Plaza」でテストマーケティングを行う。12月中旬にはRE&Sが展開する和食店で県の食品フェアを実施する予定だ。
日本で国内市場の縮小が予想される中、茨城県は海外での日本産食品の旺盛な需要を取り込もうとしている。アジア地域で国民1人当たりの実質国内総生産(GDP)が特に高いシンガポールでプロモーションや営業活動を展開することで、中小企業など県内企業の販路開拓を支援したい考えだ。
茨城県はアジアではこのほか、香港などを重点市場としている。今年から台湾でも食品輸出促進に向けて動き出している。台湾では、2011年の東京電力福島第1原発事故後から続けてきた茨城県産などの食品の輸入禁止措置が今年2月に原則解禁された。
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