日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所がまとめた、タイで営業している日本食レストランに関する調査によると、2022年の店舗数は前年比21.9%増の5,325店舗となり、過去最多を更新した。新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着き事業環境が改善したことで、増加数は07年の調査開始以降で最大となった。昨年に続き、首都バンコク以外で営業している日本食レストランの店舗数がバンコクを上回り、全国的な普及拡大が続いている実態も浮き彫りとなった。
タイに出店している日本食レストランは5,325店舗となり、過去最多を更新した=タイ・バンコク(NNA撮影)
22年の日本食レストラン数は5,325店舗と、前年に比べて955店舗増加した。新規店舗1,404店に対し、閉店・休業や恒久的なデリバリーへの業態変更などによる減少は449店だった。新規店舗は、ほぼすべてのカテゴリーで増加したが、特に「すし」が448店舗(増加率19.6%)、「日本食(総合和食)」が263店舗(18.9%)、「ラーメン」が185店舗(33.1%)と伸びが目立った。
地域別では、「バンコク」「バンコク近郊(ナコンパトム、ノンタブリ、パトゥムタニ、サムットプラカン、サムットサコンの5県)」「その他の地方」のいずれも伸びているが、伸び率はバンコク近郊が25.2%増、その他の地方が28.5%増と、バンコクの15.5%増に比べて、より増加が顕著だった。
20年、21年の調査に続いて、全77都県で日本食レストランが営業されていることも確認された。特にバンコク、バンコク近郊、観光地、地方都市の店舗数が多くなっている。
日本食レストランの増加数が過去最大となったことについて、ジェトロ・バンコク事務所で日本産食品を担当する谷口裕基氏は、「コロナ収束によって、タイのレストランの事業環境が改善したことが大きいが、目立ったのは、普及型チェーン店(ショッピングセンターの開業に合わせて入居しているパターンも多い)、フランチャイズ(FC)展開店、タイ人経営の個店の増加も寄与した」と説明した。
ジェトロ・バンコク事務所が07年に調査を開始して以降(11年は調査未実施)、タイの日本食レストランの数は一貫して右肩上がりの増加が続いている。谷口氏は、その背景として「日本食に対するタイ人の親和性が高い」「食に関する健康志向が高まっている」「日本を訪れるタイ人が多いことでタイ国内でも日本の味を楽しみたい消費者が増えている」「子どものころから日本食になじんだ世代が増えている」といった理由のほか、近年は「価格帯の多様化による顧客層が拡大している」「ショッピングセンターの増加」「以前に比べて事業者が日本食材を入手しやすくなっていること」も寄与していると指摘した。
ジェトロ・バンコク事務所は、全国で営業している日本食レストランを日本食材の輸出拡大につなげたい意向だ。11月から23年2月末まで「本物の『Made in JAPAN』を味わおう!」と題した日本産食材のPRキャンペーンを展開。バンコクの150店、地方86店の合計236店の日本食レストランと連携し、「日本通」が多いタイにあって、日本産の豚肉やサンマ、ブリなど消費者になじみの薄い日本産食材の普及に力を入れている。生産者のこだわりや生産方法といった食材にまつわるストーリーを紹介することで、認知度向上につなげる方針だ。
■客足回復も原材料価格の高騰が重し
ジェトロ・バンコク事務所が11月15日~12月10日に実施した関係者へのヒアリングによると、日本食レストランの売り上げはコロナ禍前の19年に比べて70~90%まで回復しているとの意見が多数だった。回復しきっていない理由としては、「原材料価格の高騰」「会食・パーティー需要や外国人観光客の回復の遅れ」といった挙げる事業者が目立った。
また、コロナ禍で一気に普及したフードデリバリーについては、日常生活の正常化が進むにつれ、利用は減速している。ただし、フードデリバリーの利便性が広く認知・定着したことで、今後も利用は続くとみるレストラン関係者が多い。フードデリバリーの活用の積極性は、各レストランの主力メニューや戦略によって変わってくるとみられている。
■競争が激化、戦略を変更する店も
日本の外務省と農林水産省の調査によれば、21年の海外における日本食レストランは約15万9,000店。このうち、アジアは約10万900店を占める。タイは4,370店で、アジアの日本食レストランのうち4.3%を占め、東南アジアで最多となっている。
そうした中、日本食レストランの増加が続くタイでは、事業者間の競争も激しくなっているようだ。バンコクポストによると、外食事業を手がけるタイのオイシ・グループは、バンコク中心部の高級商業施設「サイアム・パラゴン」で運営している高級日本料理ビュッフェ「オイシ・グランド」の大規模改装に踏み切った。従来のビュッフェ・スタイルを中心とした運営から、客からの注文を受けてから調理する形態に変更した。店舗面積は600平方メートルから400平方メートルに縮小したものの、すし・刺し身、丼物、鉄板焼き、焼き物、揚げ物、鍋・すき焼きなど、より多くのニーズに応えられるようにした。同様の店舗は来年以降、バンコクの複合施設「ワン・バンコク」などにも出店する方針だ。
オイシ・グループのノンヌット社長は、運営の変更の狙いについて「タイで日本食を提供する外食店が増え、消費者の舌も着実に肥えてきている。より本場に近い、高品質で新鮮なメニューを提供する必要がある」と話した。
ノンヌット氏は、タイにおける日本食の今後について、「タイには日本食以外のさまざまな選択肢があるものの、健康志向の消費者が増える中、日本食店の人気が衰えることはない」との見方を示した。
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日本食レストランの増加数が過去最大となったことについて、ジェトロ・バンコク事務所で日本産食品を担当する谷口裕基氏は、「コロナ収束によって、タイのレストランの事業環境が改善したことが大きいが、目立ったのは、普及型チェーン店(ショッピングセンターの開業に合わせて入居しているパターンも多い)、フランチャイズ(FC)展開店、タイ人経営の個店の増加も寄与した」と説明した。
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ジェトロ・バンコク事務所は、全国で営業している日本食レストランを日本食材の輸出拡大につなげたい意向だ。11月から23年2月末まで「本物の『Made in JAPAN』を味わおう!」と題した日本産食材のPRキャンペーンを展開。バンコクの150店、地方86店の合計236店の日本食レストランと連携し、「日本通」が多いタイにあって、日本産の豚肉やサンマ、ブリなど消費者になじみの薄い日本産食材の普及に力を入れている。生産者のこだわりや生産方法といった食材にまつわるストーリーを紹介することで、認知度向上につなげる方針だ。
■客足回復も原材料価格の高騰が重し
ジェトロ・バンコク事務所が11月15日~12月10日に実施した関係者へのヒアリングによると、日本食レストランの売り上げはコロナ禍前の19年に比べて70~90%まで回復しているとの意見が多数だった。回復しきっていない理由としては、「原材料価格の高騰」「会食・パーティー需要や外国人観光客の回復の遅れ」といった挙げる事業者が目立った。
また、コロナ禍で一気に普及したフードデリバリーについては、日常生活の正常化が進むにつれ、利用は減速している。ただし、フードデリバリーの利便性が広く認知・定着したことで、今後も利用は続くとみるレストラン関係者が多い。フードデリバリーの活用の積極性は、各レストランの主力メニューや戦略によって変わってくるとみられている。
■競争が激化、戦略を変更する店も
日本の外務省と農林水産省の調査によれば、21年の海外における日本食レストランは約15万9,000店。このうち、アジアは約10万900店を占める。タイは4,370店で、アジアの日本食レストランのうち4.3%を占め、東南アジアで最多となっている。
そうした中、日本食レストランの増加が続くタイでは、事業者間の競争も激しくなっているようだ。バンコクポストによると、外食事業を手がけるタイのオイシ・グループは、バンコク中心部の高級商業施設「サイアム・パラゴン」で運営している高級日本料理ビュッフェ「オイシ・グランド」の大規模改装に踏み切った。従来のビュッフェ・スタイルを中心とした運営から、客からの注文を受けてから調理する形態に変更した。店舗面積は600平方メートルから400平方メートルに縮小したものの、すし・刺し身、丼物、鉄板焼き、焼き物、揚げ物、鍋・すき焼きなど、より多くのニーズに応えられるようにした。同様の店舗は来年以降、バンコクの複合施設「ワン・バンコク」などにも出店する方針だ。
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