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EFBペレット燃料を生産へTESSグループ、年産20万トン

省エネや環境対策専門のエンジニアリングなどを手がけるTESSグループ(大阪市)は、インドネシアでパーム由来のバイオマス燃料「EFBペレット」の生産に乗り出す。同国の連結子会社PTECリサーチ・アンド・デベロップメントが、スマトラ島北部に年産能力20万トンの工場を建設する。2025年に生産を開始する計画だ。

TESSグループが開発したEFBペレット(同社提供)

23日にPTECがインドネシアの国営農園持ち株会社プルクブナン・ヌサンタラ(PTPN)と、EFBペレットの製造に関する協定書を締結した。EFBペレットは、パーム油を搾油する際に副産物として発生する「空果房(EFB)」を、砕いたり乾燥させたりするなどの工程を経てペレット化した固形燃料。
PTECは18年にリアウ諸島州バタム島に設立した拠点で、EFBをはじめとするさまざまな農作物の残さ(廃棄物)原料からバイオマスペレットを製造する研究を実施。インドネシアの石炭火力発電所2カ所で、PTECが開発したEFBペレットを試験的に混焼に使用した実績がある。
北スマトラ州のセイマンケイ工業団地に建設する工場の敷地面積は32ヘクタールになる見通しで、用地はPTPNが確保する。年産能力20万トンの工場運営が軌道に乗れば、インドネシアで段階的に複数の生産拠点を設け、30年までに年産量を100万トンに引き上げる計画だ。生産したEFBペレットは、日本のバイオマス発電所や、インドネシア国内の石炭火力発電所などに供給することを視野に入れている。
■新規バイオマス燃料として期待
日本のバイオマス発電所では現在、木質チップやウッドペレット、パームヤシ殻(PKS)が主な燃料として使用されている。EFBペレットは、日本の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)でパーム由来のバイオマス燃料として認められていないため、日本ではまだ使用事例がない。
ただ、世界的な脱炭素化の流れでバイオマス燃料の需要が増す中、ウクライナ情勢の影響でロシア産ウッドペレットの流通が停止したことから、ウッドペレットの価格が高騰。バイオマス発電事業者からは、新たなバイオマス燃料を新規承認するよう求める声が上がっている。
TESSグループの持ち株会社テスホールディングスの関係者は「新しいバイオマス燃料の原料として、EFBペレットの先行きは明るい」とみる。「(EFBペレットについては)日本の資源エネルギー庁でも具体的な議論が進められており、新規燃料として認証される日は近い」との見方を示す。
EFBを使用することは、経済的メリットも大きい。同じバイオマス燃料でも、PKSはそのまま燃焼できるという価値から市場で価格が付いているが、EFBはあくまでも副産物のため調達コストを抑えられるという。加工が必要なことから製造原価はPKSよりも高くなるものの、「販売価格はウッドペレットと同水準、あるいはそれ以下になる」(同社関係者)見通しだ。
■有効活用で環境負荷低減
パーム油生産量が世界最大のインドネシアでは、年間4,000万トンのEFBが発生しているとみられるが、これまではほとんど有効活用されてこなかった。未利用のまま放置されたEFBは腐って温室効果ガスの一つであるメタンガスを発生するほか、土壌汚染の原因にもなっている。
テスホールディングスは、これまで廃棄されてきたEFBを有効活用することで、環境への悪影響を低減させる効果もあると指摘。また、EFBはパームヤシの搾油工程で発生する残さを原料とすることから食料とは競合せず、既存の農園から調達できるため新規農園を開拓する必要がないという点でも、環境負荷が低いとしている。

PTPNと契約を締結したテスホールディングスの山本一樹社長(右から3人目)ら関係者(テスホールディングス提供)
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PTECは18年にリアウ諸島州バタム島に設立した拠点で、EFBをはじめとするさまざまな農作物の残さ(廃棄物)原料からバイオマスペレットを製造する研究を実施。インドネシアの石炭火力発電所2カ所で、PTECが開発したEFBペレットを試験的に混焼に使用した実績がある。
北スマトラ州のセイマンケイ工業団地に建設する工場の敷地面積は32ヘクタールになる見通しで、用地はPTPNが確保する。年産能力20万トンの工場運営が軌道に乗れば、インドネシアで段階的に複数の生産拠点を設け、30年までに年産量を100万トンに引き上げる計画だ。生産したEFBペレットは、日本のバイオマス発電所や、インドネシア国内の石炭火力発電所などに供給することを視野に入れている。
■新規バイオマス燃料として期待
日本のバイオマス発電所では現在、木質チップやウッドペレット、パームヤシ殻(PKS)が主な燃料として使用されている。EFBペレットは、日本の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)でパーム由来のバイオマス燃料として認められていないため、日本ではまだ使用事例がない。
ただ、世界的な脱炭素化の流れでバイオマス燃料の需要が増す中、ウクライナ情勢の影響でロシア産ウッドペレットの流通が停止したことから、ウッドペレットの価格が高騰。バイオマス発電事業者からは、新たなバイオマス燃料を新規承認するよう求める声が上がっている。
TESSグループの持ち株会社テスホールディングスの関係者は「新しいバイオマス燃料の原料として、EFBペレットの先行きは明るい」とみる。「(EFBペレットについては)日本の資源エネルギー庁でも具体的な議論が進められており、新規燃料として認証される日は近い」との見方を示す。
EFBを使用することは、経済的メリットも大きい。同じバイオマス燃料でも、PKSはそのまま燃焼できるという価値から市場で価格が付いているが、EFBはあくまでも副産物のため調達コストを抑えられるという。加工が必要なことから製造原価はPKSよりも高くなるものの、「販売価格はウッドペレットと同水準、あるいはそれ以下になる」(同社関係者)見通しだ。
■有効活用で環境負荷低減
パーム油生産量が世界最大のインドネシアでは、年間4,000万トンのEFBが発生しているとみられるが、これまではほとんど有効活用されてこなかった。未利用のまま放置されたEFBは腐って温室効果ガスの一つであるメタンガスを発生するほか、土壌汚染の原因にもなっている。
テスホールディングスは、これまで廃棄されてきたEFBを有効活用することで、環境への悪影響を低減させる効果もあると指摘。また、EFBはパームヤシの搾油工程で発生する残さを原料とすることから食料とは競合せず、既存の農園から調達できるため新規農園を開拓する必要がないという点でも、環境負荷が低いとしている。
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