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【22年の10大ニュース】コロナに翻弄された1年経済低迷も、来年に光明

2022年の中国経済は新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)された。感染を徹底して抑え込む新型コロナ対策は、感染力の強い変異株「オミクロン株」に対して十分な成果を上げられず、各地で感染が拡大した。
そのたびに強い移動・行動制限が打ち出されたことで、経済は停滞した。3月末から約2カ月続いた上海市でのロックダウンは中国経済に大きな打撃を与え、第2四半期(4~6月)の経済成長率はプラスを維持するのがやっと。その後も各地で断続的に感染が拡大したことで、経済の回復は遅れた。今年の経済成長率が政府目標(5.5%前後)を下回る3%台にとどまるのはほぼ確実だ。
一方、12月になると、新型コロナを巡る政府の対応は一気に変わった。初旬には新型コロナ対策の重点を感染防止から重症化防止に移し、移動・行動制限を大幅に緩和。経済・市民生活の本格的な正常化に向けてかじを切った。来年1月8日からは入国後の集中隔離措置を撤廃することも決まった。ただ急激な緩和は新型コロナ感染者の急増につながっており、当面の経済はこれまでと同様に停滞する見通し。
それでも各種の新型コロナ規制の撤廃がゆくゆくは消費関連の経済指標を押し上げ、来年の成長率を高めるとの声が多い。3期目に突入した習近平政権は経済を“コロナ後”に導くことができるか。
■【第1位】長引いたコロナ対策、上海ロックダウンが世界に衝撃
今年は3月以降に新型コロナの感染が本格的に広まった。政府は徹底した感染防止対策を打ち出したものの、感染力が強い変異株「オミクロン株」の国内侵入を防ぐことはできず、複数回の全国的な感染の波を招いた。今年は結局、現在(12月27日)まで国内症例(中国本土での感染)ゼロの日が1日もなかった。どこかの感染を抑え込んでも、必ずどこか別の地域で感染が広がる。海外からもたらされたウイルスがどこかで必ず隔離施設を飛び出す。そんないたちごっこのような状態が続いた。
特に年前半は広東省深セン市や吉林省長春市、上海市、四川省成都市など各地の巨大都市がロックダウンを実施。中でも中国第一の商業都市である上海市の長期封鎖は世界に衝撃を与えた。当初は3月末から5日間の予定だった上海のロックダウンは最終的に2カ月間に及び、数万人規模の日本人駐在員と帯同家族は家から外に出ることもままならず、苦しい生活を余儀なくされた。
3月1日から12月23日までの全国の国内症例は、有症状と無症状を合わせて約181万人で、1日当たりに直すと6,000人余り。単日の国内症例最多は、有症状が上海ロックダウン中の4月28日の5,646人、無症状が11月27日の3万6,304人だった。
10月末から始まった感染の波はこれまでにないほど広い地域に及び、一時は全31省・自治区・直轄市のほぼ全てで感染が確認された。11月以降の1カ月余りは、1日平均の国内症例が有症状・無症状を合わせて2万1,480人で、3月以降の平均の3倍以上。11月27日には有症状・無症状を合わせた国内症例が初めて4万人の大台を超えた。
■【第2位】GDP低迷、目標には程遠く=コロナ足かせ
新型コロナの全国的なまん延と厳格な新型コロナ対策は中国経済に強い打撃を与えた。市民の外出制限や商業施設・飲食店の営業停止などが消費の落ち込みにつながり、不動産投資の不振も成長率に重くのしかかった。
今年の四半期別の実質国内総生産(GDP)成長率は、1~3月期が前年同期比4.8%となったが、上海のロックダウンがあった4~6月期は0.4%に急降下。四半期別の数値としては20年4~6月期以降の最低で、政府が1992年に四半期別のGDP統計の発表を始めてからは20年1~3月期のマイナス6.9%に次ぐ2番目に低い水準となった。
上半期(1~6月)のGDP成長率は2.5%となり、3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で発表された通年目標「5.5%前後」の達成はこの時点で困難となった。
7~9月期の成長率は3.9%で、1~9月期は3.0%。10~12月期も大きく反発することはなく、通年の成長率も3%前後になるとの見方が大勢を占めており、通年目標の達成は事実上不可能な状態。21年の8.4%からは大きく鈍化することになる。
それでも12月に新型コロナ対策が大幅に緩和されたことはポジティブな要素だ。来年の経済は前半に伸び悩むものの、後半は消費関連の経済指標が上向くとの見方が多い。中国共産党・政府が12月開いた翌年の経済政策の方針を決める中央経済工作会議で、消費の拡大を来年の優先事項に据える方針を決めたことも追い風となりそうだ。市場では来年の成長率が5%台になるとみている。
■【第3位】年末にコロナ対策緩和、正常化に大きな一歩
今年最も大きなインパクトを与えた政策と言えば、12月7日に国務院(中央政府)から発表された新型コロナ対策の大幅緩和だ。特殊な場所を除き、PCR検査の陰性証明と健康コードの提示を原則不要にし、国内の行動・移動制限を基本的になくすことで、約3年続いた徹底的に感染を抑え込む「ゼロコロナ」政策を事実上解除した。新型コロナによる市民生活・経済への影響を配慮したとみられ、社会の正常化に向けて大きな一歩を踏み出した。
新型コロナに感染しても、無症状と軽症の場合は自宅隔離が可能になり、一部地域は無症状と軽症であれば出勤を可能にした。
ただ急激な政策変更によるひずみも発生。対策緩和後は新型コロナの感染者が急増しており、医薬品・抗原検査キットの品薄や従業員の欠勤に伴う企業運営の逼迫(ひっぱく)などといった問題も起きている。来年1月に感染ピークが訪れるとの見方が多く、当面は社会・経済の混乱が続く見通しだ。
12月26日には海外から中国本土に入る際に義務付けている集中隔離措置を来年1月8日に撤廃すると発表。出発前48時間以内のPCR検査が陰性であることを条件に定めた。日本人にとっては中国移動の利便性が大きく高まることになる。
■【第4位】不動産業界が記録的低迷
不動産業界がもがき苦しんだ1年だった。業界企業の業績は伸び悩み、不動産販売や不動産開発投資といった重要指標は低空飛行を続けた。これまで中国経済を支えてきた不動産業界の低迷は経済成長の大きな足かせにもなった。
業界には昨年から不安が漂っていた。政府が不動産投機抑制を目的に規制を強めたことで、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)をはじめとする複数の大手デベロッパーが経営危機に陥り、業況は悪化していた。
今年は、そこに新型コロナ流行の影響が加わった。消費者マインドの悪化は住宅需要を強烈に下押し。移動制限で物件を視察しにくくなったことも需要低迷につながった。
こうした状況の中、22年は不動産販売額が1,000億元(約1兆9,000億円)を超えるデベロッパーは昨年の43社から20社に減るとみられている。
国家統計局によると、22年1~11月の不動産販売額は前年同期比26.6%減の11兆8,648億元。不動産開発投資は9.8%減の12兆3,863億元だった。通年の不動産販売額が前年比2割以上のマイナスとなれば、2000年の同項目の統計開始以来初。不動産開発投資がマイナスとなれば、1997年以来25年ぶりとなる。
不動産開発投資の伸び悩みは、鉄鋼、セメント、電機、家具など幅広い業界の需要低下を招き、今年の中国経済の低迷につながった。
■【第5位】外需の低迷が鮮明に
国内の新型コロナ流行や世界経済の低迷を受け、昨年からの輸出の好調は終わりを迎えた。
21年の輸出は前年比で3割伸び、中国経済を下支えした。新型コロナの影響が比較的軽微だった中国に受注が集まったためだ。ただ22年になると、中国と海外の状況は逆転。中国が諸外国よりも新型コロナに悩まされるようになり、中国企業は海外からの受注獲得に苦しんだ。
さらに、世界的なインフレも輸出に影響した。主要国ではインフレが家計を圧迫し、経済が低迷。各国の経済低迷は海外での中国製品の需要減につながった。
結果、中国の毎月の輸出は伸びを欠くようになり、10月と11月はともに前年同月比でマイナスを記録。1~11月は前年同期比9.1%増となっているものの、伸び幅は21年から大きく鈍化した。
22年は輸入が輸出以上に低迷し、貿易黒字は拡大している。ただ識者からは「今年の輸入低迷は内需低下と密接に結びついており、理想的な貿易黒字の拡大ではない」との指摘が出ている。
一方、年始に地域的な包括的経済連携(RCEP)が発効したことは22年の貿易面の明るい話題となった。中国や日本など15カ国からなる巨大経済圏が構築された形で、RCEPが今後長期的に中国の貿易額を押し上げる見通しだ。
■【第6位】新車販売、NEV好調もコロナ重しに
中国の今年の新車販売は「新エネルギー車(NEV)」の伸びが目立った。減税策や充電インフラの拡充などといった政策支援が押し上げ要因で、最新の統計となる22年1~11月のNEV販売台数は前年同期比2倍の606万7,000台。台数ベースでは既に21年通年を約255万台上回った。
拡大が続くNEV市場だが、今年は世界的な材料価格の高騰により、電池などの部品コストが増大。NEV各社は値上げを繰り返すこととなった。
NEVを含む新車全体の22年1~11月の販売台数は3.3%増の2,430万2,000台。プラスを維持しているが、伸び自体は力強さを欠く。新型コロナの流行が下押し圧力で、今年は春に上海、秋には広東省広州を中心に新型コロナがまん延。流行拡大に伴い販売が落ち込み、4月の販売は前年同月の半分近くまで減少した。不安定な半導体調達なども業界に影を落とした。
業界団体は22年通年の成長予測を年初時点で前年比5%増としていたが、7月に3%増、12月には2%増へと引き下げた。年末に一部の自動車減額措置と購入補助金政策が終了するのは来年のマイナス材料だが、新型コロナに絡む移動・行動制限が撤廃されたことは消費の好材料。23年は3%増との予測も出ており、今後も緩やかな成長が続く見通しだ。
■【第7位】四川の電力不足、工業企業に波及
今夏は記録的な猛暑が続き、中国各地で電力の需給が逼迫(ひっぱく)した。中でも四川省は河川の水不足で主力の水力発電が稼働低下に陥り、工業用電力の供給を制限。8月15~25日の生産を停止するよう通達した。四川省には化学品や電池産業の生産拠点が集積していることから、原材料の供給が不足し、幅広い産業に影響を与えた。
日系ではトヨタ自動車が8月15日から、成都市の工場を一時停止。中国の上場企業20社以上が減産に追い込まれた。電力使用制限の動きは重慶市、安徽省や浙江省、江蘇省など他地域でも広がった。
一連の事態を踏まえ、国家エネルギー局は8月中旬、発電能力と地域をまたぐ送電網の建設を強化し、25年末までに全国的な電力需給の均衡を図ると表明。国有送電最大手の国家電網も8月末、四川省の電力インフラの強化と電力供給体制の最適化に乗り出す方針を示した。
四川省政府も12月に電力インフラを拡充する計画を発表し、発電設備容量を25年までに1億6,560万キロワットに引き上げる目標を掲げた。主力の水力発電のほか、太陽光・風力・揚水など再生可能エネルギーの開発にも注力する方針を示した。
■【第8位】伸び悩む旅行市場、移動制限響く
中国の今年の旅行市場は、新型コロナ対策の移動制限が響き、1年を通じて伸び悩んだ。感染が本格化した3月以降は、国内各地がロックダウンや移動制限を含む厳しい感染防止措置を実施。清明節連休(4月3~5日)、労働節連休(4月30~5月4日)の国内旅行者数はいずれも前年同期から3割前後落ち込んだ。
新型コロナの流行が落ち着いた夏季は、地方政府が省をまたぐ旅行の再開を認可したこともあり、一時は旅行商品の予約件数が2倍以上に跳ね上がった。しかし、秋になると新型コロナが再び広い地域でまん延し、中秋節連休(9月10~12日)、国慶節連休(10月1~7日)の旅行者数、観光収入はともに前年同期に比べ2割前後減少した。
ただ市民の旅行意欲は高く、地域をまたがない“近場旅行”が今年のトレンド。人との接触が少ない中で楽しめるキャンプやアウトドアスポーツにも注目が集まった1年となった。
中国政府が12月7日に感染対策を大幅に緩和し、移動制限を基本的に撤廃したことで、旅行市場は来年回復に向かうことが期待されている。航空会社も運航便数の増加に動いており、来年の元旦連休(22年12月31日~23年1月2日)、春節(旧正月)連休(1月21~27日)は人の移動が前年同期に比べ増える見通しだ。
■【第9位】中国共産党の習近平総書記、3期目に突入
中国共産党は10月23日、第20期中央委員会第1回総会(1中総会)を開き、習近平総書記(69)の3期目続投を正式決定した。習氏は少なくとも向こう5年の政治のかじ取りを行う。
党政治局常務委員で構成する最高指導部は7人体制を維持。新たに最高指導部入りを果たしたのは李強氏(63)、蔡奇氏(67)、丁薛祥氏(60)、李希氏(66)の4人。習氏と趙楽際氏(65)、王滬寧氏(67)の3人が留任した。
共産党序列2位に抜てきされた李強氏は、来春の全人代で李克強首相の後任に選ばれることが確実視されている。
習氏は12年に総書記に就任し、17年に再任されていた。今回の留任で、少なくとも15年間、総書記の座に就くことになった。共産党の総書記は国家主席(元首)を兼任することになっており、総書記と同様に少なくとも15年間、国家主席を務めることになる。
国家主席の任期は従来、2期10年までだったが、18年の憲法改正で制限が撤廃された。
■【第10位】日中国交正常化50年、経済の結びつき強く
日本と中国は9月29日、国交を正常化してから50周年を迎えた。中国経済は製造業を中心に急成長して今や世界第2位の経済大国となり、日中は50年間で経済面でのつながりを強めてきた。
日本と中国は1972年9月29日、当時の田中角栄首相と周恩来首相が北京で日中共同声明に調印し、国交を正常化した。日本は79年に中国に対する政府開発援助(ODA)を始め、中国の発展に貢献。中国のGDPは10年に日本を追い抜いて21年には日本の3.6倍に成長した。
日本企業の進出も広がった。帝国データバンクによると、今年6月時点で中国に進出する日本企業は1万2,706社。一方で日本を訪れる中国人も急増し、新型コロナ流行前の19年には959万人に達し、日本の観光産業を支える存在となった。
岸田文雄首相と習近平国家主席は9月29日、経団連などが東京都内で開いた50周年の記念レセプションで祝電を交換。首相は「地域と世界の平和と繁栄のため、建設的かつ安定的な日中関係の構築を進めていきたい」と呼びかけた。習氏は「新しい時代の要求にふさわしい中日関係の構築をけん引したい」と強調した。
■【番外編】北京冬季五輪、史上初の夏冬開催都市に
北京冬季五輪が2月に開幕し、北京市は史上初めて夏冬両方の五輪開催都市となった。新型コロナ流行下で行われた同大会は、選手や関係者を外部と接触させない「バブル方式」を採用。91カ国・地域から約2,900人の選手が参加した。観戦チケットの一般販売はしなかった。
大会期間中は北京市と河北省張家港市で、7競技109種目が繰り広げられた。「ユヅ」の愛称にちなみ「柚子」(ヨウヅ)の呼び名が定着しているフィギュアスケート日本代表の羽生結弦選手の演技に中国のファンも熱狂した。
メダル獲得数は日本が金3枚、銀6枚、銅9枚の計18枚。冬季五輪で獲得したメダルとして最多を記録した。中国は金9枚、銀4枚、銅2枚の計15枚だった。
パンダをモチーフにした大会のマスコット「氷ドゥンドゥン(ビンドゥンドゥン、ドゥン=土へんに敦)」も大人気となった。
一方、新型コロナ禍を受けて、国内で予定されていた大型イベントは軒並み中止・延期となり、浙江省杭州市で9月に開催予定だった第19回アジア競技大会は23年9月23日~10月8日に延期が決まった。

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一方、12月になると、新型コロナを巡る政府の対応は一気に変わった。初旬には新型コロナ対策の重点を感染防止から重症化防止に移し、移動・行動制限を大幅に緩和。経済・市民生活の本格的な正常化に向けてかじを切った。来年1月8日からは入国後の集中隔離措置を撤廃することも決まった。ただ急激な緩和は新型コロナ感染者の急増につながっており、当面の経済はこれまでと同様に停滞する見通し。
それでも各種の新型コロナ規制の撤廃がゆくゆくは消費関連の経済指標を押し上げ、来年の成長率を高めるとの声が多い。3期目に突入した習近平政権は経済を“コロナ後”に導くことができるか。
■【第1位】長引いたコロナ対策、上海ロックダウンが世界に衝撃
今年は3月以降に新型コロナの感染が本格的に広まった。政府は徹底した感染防止対策を打ち出したものの、感染力が強い変異株「オミクロン株」の国内侵入を防ぐことはできず、複数回の全国的な感染の波を招いた。今年は結局、現在(12月27日)まで国内症例(中国本土での感染)ゼロの日が1日もなかった。どこかの感染を抑え込んでも、必ずどこか別の地域で感染が広がる。海外からもたらされたウイルスがどこかで必ず隔離施設を飛び出す。そんないたちごっこのような状態が続いた。
特に年前半は広東省深セン市や吉林省長春市、上海市、四川省成都市など各地の巨大都市がロックダウンを実施。中でも中国第一の商業都市である上海市の長期封鎖は世界に衝撃を与えた。当初は3月末から5日間の予定だった上海のロックダウンは最終的に2カ月間に及び、数万人規模の日本人駐在員と帯同家族は家から外に出ることもままならず、苦しい生活を余儀なくされた。
3月1日から12月23日までの全国の国内症例は、有症状と無症状を合わせて約181万人で、1日当たりに直すと6,000人余り。単日の国内症例最多は、有症状が上海ロックダウン中の4月28日の5,646人、無症状が11月27日の3万6,304人だった。
10月末から始まった感染の波はこれまでにないほど広い地域に及び、一時は全31省・自治区・直轄市のほぼ全てで感染が確認された。11月以降の1カ月余りは、1日平均の国内症例が有症状・無症状を合わせて2万1,480人で、3月以降の平均の3倍以上。11月27日には有症状・無症状を合わせた国内症例が初めて4万人の大台を超えた。
■【第2位】GDP低迷、目標には程遠く=コロナ足かせ
新型コロナの全国的なまん延と厳格な新型コロナ対策は中国経済に強い打撃を与えた。市民の外出制限や商業施設・飲食店の営業停止などが消費の落ち込みにつながり、不動産投資の不振も成長率に重くのしかかった。
今年の四半期別の実質国内総生産(GDP)成長率は、1~3月期が前年同期比4.8%となったが、上海のロックダウンがあった4~6月期は0.4%に急降下。四半期別の数値としては20年4~6月期以降の最低で、政府が1992年に四半期別のGDP統計の発表を始めてからは20年1~3月期のマイナス6.9%に次ぐ2番目に低い水準となった。
上半期(1~6月)のGDP成長率は2.5%となり、3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で発表された通年目標「5.5%前後」の達成はこの時点で困難となった。
7~9月期の成長率は3.9%で、1~9月期は3.0%。10~12月期も大きく反発することはなく、通年の成長率も3%前後になるとの見方が大勢を占めており、通年目標の達成は事実上不可能な状態。21年の8.4%からは大きく鈍化することになる。
それでも12月に新型コロナ対策が大幅に緩和されたことはポジティブな要素だ。来年の経済は前半に伸び悩むものの、後半は消費関連の経済指標が上向くとの見方が多い。中国共産党・政府が12月開いた翌年の経済政策の方針を決める中央経済工作会議で、消費の拡大を来年の優先事項に据える方針を決めたことも追い風となりそうだ。市場では来年の成長率が5%台になるとみている。
■【第3位】年末にコロナ対策緩和、正常化に大きな一歩
今年最も大きなインパクトを与えた政策と言えば、12月7日に国務院(中央政府)から発表された新型コロナ対策の大幅緩和だ。特殊な場所を除き、PCR検査の陰性証明と健康コードの提示を原則不要にし、国内の行動・移動制限を基本的になくすことで、約3年続いた徹底的に感染を抑え込む「ゼロコロナ」政策を事実上解除した。新型コロナによる市民生活・経済への影響を配慮したとみられ、社会の正常化に向けて大きな一歩を踏み出した。
新型コロナに感染しても、無症状と軽症の場合は自宅隔離が可能になり、一部地域は無症状と軽症であれば出勤を可能にした。
ただ急激な政策変更によるひずみも発生。対策緩和後は新型コロナの感染者が急増しており、医薬品・抗原検査キットの品薄や従業員の欠勤に伴う企業運営の逼迫(ひっぱく)などといった問題も起きている。来年1月に感染ピークが訪れるとの見方が多く、当面は社会・経済の混乱が続く見通しだ。
12月26日には海外から中国本土に入る際に義務付けている集中隔離措置を来年1月8日に撤廃すると発表。出発前48時間以内のPCR検査が陰性であることを条件に定めた。日本人にとっては中国移動の利便性が大きく高まることになる。
■【第4位】不動産業界が記録的低迷
不動産業界がもがき苦しんだ1年だった。業界企業の業績は伸び悩み、不動産販売や不動産開発投資といった重要指標は低空飛行を続けた。これまで中国経済を支えてきた不動産業界の低迷は経済成長の大きな足かせにもなった。
業界には昨年から不安が漂っていた。政府が不動産投機抑制を目的に規制を強めたことで、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)をはじめとする複数の大手デベロッパーが経営危機に陥り、業況は悪化していた。
今年は、そこに新型コロナ流行の影響が加わった。消費者マインドの悪化は住宅需要を強烈に下押し。移動制限で物件を視察しにくくなったことも需要低迷につながった。
こうした状況の中、22年は不動産販売額が1,000億元(約1兆9,000億円)を超えるデベロッパーは昨年の43社から20社に減るとみられている。
国家統計局によると、22年1~11月の不動産販売額は前年同期比26.6%減の11兆8,648億元。不動産開発投資は9.8%減の12兆3,863億元だった。通年の不動産販売額が前年比2割以上のマイナスとなれば、2000年の同項目の統計開始以来初。不動産開発投資がマイナスとなれば、1997年以来25年ぶりとなる。
不動産開発投資の伸び悩みは、鉄鋼、セメント、電機、家具など幅広い業界の需要低下を招き、今年の中国経済の低迷につながった。
■【第5位】外需の低迷が鮮明に
国内の新型コロナ流行や世界経済の低迷を受け、昨年からの輸出の好調は終わりを迎えた。
21年の輸出は前年比で3割伸び、中国経済を下支えした。新型コロナの影響が比較的軽微だった中国に受注が集まったためだ。ただ22年になると、中国と海外の状況は逆転。中国が諸外国よりも新型コロナに悩まされるようになり、中国企業は海外からの受注獲得に苦しんだ。
さらに、世界的なインフレも輸出に影響した。主要国ではインフレが家計を圧迫し、経済が低迷。各国の経済低迷は海外での中国製品の需要減につながった。
結果、中国の毎月の輸出は伸びを欠くようになり、10月と11月はともに前年同月比でマイナスを記録。1~11月は前年同期比9.1%増となっているものの、伸び幅は21年から大きく鈍化した。
22年は輸入が輸出以上に低迷し、貿易黒字は拡大している。ただ識者からは「今年の輸入低迷は内需低下と密接に結びついており、理想的な貿易黒字の拡大ではない」との指摘が出ている。
一方、年始に地域的な包括的経済連携(RCEP)が発効したことは22年の貿易面の明るい話題となった。中国や日本など15カ国からなる巨大経済圏が構築された形で、RCEPが今後長期的に中国の貿易額を押し上げる見通しだ。
■【第6位】新車販売、NEV好調もコロナ重しに
中国の今年の新車販売は「新エネルギー車(NEV)」の伸びが目立った。減税策や充電インフラの拡充などといった政策支援が押し上げ要因で、最新の統計となる22年1~11月のNEV販売台数は前年同期比2倍の606万7,000台。台数ベースでは既に21年通年を約255万台上回った。
拡大が続くNEV市場だが、今年は世界的な材料価格の高騰により、電池などの部品コストが増大。NEV各社は値上げを繰り返すこととなった。
NEVを含む新車全体の22年1~11月の販売台数は3.3%増の2,430万2,000台。プラスを維持しているが、伸び自体は力強さを欠く。新型コロナの流行が下押し圧力で、今年は春に上海、秋には広東省広州を中心に新型コロナがまん延。流行拡大に伴い販売が落ち込み、4月の販売は前年同月の半分近くまで減少した。不安定な半導体調達なども業界に影を落とした。
業界団体は22年通年の成長予測を年初時点で前年比5%増としていたが、7月に3%増、12月には2%増へと引き下げた。年末に一部の自動車減額措置と購入補助金政策が終了するのは来年のマイナス材料だが、新型コロナに絡む移動・行動制限が撤廃されたことは消費の好材料。23年は3%増との予測も出ており、今後も緩やかな成長が続く見通しだ。
■【第7位】四川の電力不足、工業企業に波及
今夏は記録的な猛暑が続き、中国各地で電力の需給が逼迫(ひっぱく)した。中でも四川省は河川の水不足で主力の水力発電が稼働低下に陥り、工業用電力の供給を制限。8月15~25日の生産を停止するよう通達した。四川省には化学品や電池産業の生産拠点が集積していることから、原材料の供給が不足し、幅広い産業に影響を与えた。
日系ではトヨタ自動車が8月15日から、成都市の工場を一時停止。中国の上場企業20社以上が減産に追い込まれた。電力使用制限の動きは重慶市、安徽省や浙江省、江蘇省など他地域でも広がった。
一連の事態を踏まえ、国家エネルギー局は8月中旬、発電能力と地域をまたぐ送電網の建設を強化し、25年末までに全国的な電力需給の均衡を図ると表明。国有送電最大手の国家電網も8月末、四川省の電力インフラの強化と電力供給体制の最適化に乗り出す方針を示した。
四川省政府も12月に電力インフラを拡充する計画を発表し、発電設備容量を25年までに1億6,560万キロワットに引き上げる目標を掲げた。主力の水力発電のほか、太陽光・風力・揚水など再生可能エネルギーの開発にも注力する方針を示した。
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中国の今年の旅行市場は、新型コロナ対策の移動制限が響き、1年を通じて伸び悩んだ。感染が本格化した3月以降は、国内各地がロックダウンや移動制限を含む厳しい感染防止措置を実施。清明節連休(4月3~5日)、労働節連休(4月30~5月4日)の国内旅行者数はいずれも前年同期から3割前後落ち込んだ。
新型コロナの流行が落ち着いた夏季は、地方政府が省をまたぐ旅行の再開を認可したこともあり、一時は旅行商品の予約件数が2倍以上に跳ね上がった。しかし、秋になると新型コロナが再び広い地域でまん延し、中秋節連休(9月10~12日)、国慶節連休(10月1~7日)の旅行者数、観光収入はともに前年同期に比べ2割前後減少した。
ただ市民の旅行意欲は高く、地域をまたがない“近場旅行”が今年のトレンド。人との接触が少ない中で楽しめるキャンプやアウトドアスポーツにも注目が集まった1年となった。
中国政府が12月7日に感染対策を大幅に緩和し、移動制限を基本的に撤廃したことで、旅行市場は来年回復に向かうことが期待されている。航空会社も運航便数の増加に動いており、来年の元旦連休(22年12月31日~23年1月2日)、春節(旧正月)連休(1月21~27日)は人の移動が前年同期に比べ増える見通しだ。
■【第9位】中国共産党の習近平総書記、3期目に突入
中国共産党は10月23日、第20期中央委員会第1回総会(1中総会)を開き、習近平総書記(69)の3期目続投を正式決定した。習氏は少なくとも向こう5年の政治のかじ取りを行う。
党政治局常務委員で構成する最高指導部は7人体制を維持。新たに最高指導部入りを果たしたのは李強氏(63)、蔡奇氏(67)、丁薛祥氏(60)、李希氏(66)の4人。習氏と趙楽際氏(65)、王滬寧氏(67)の3人が留任した。
共産党序列2位に抜てきされた李強氏は、来春の全人代で李克強首相の後任に選ばれることが確実視されている。
習氏は12年に総書記に就任し、17年に再任されていた。今回の留任で、少なくとも15年間、総書記の座に就くことになった。共産党の総書記は国家主席(元首)を兼任することになっており、総書記と同様に少なくとも15年間、国家主席を務めることになる。
国家主席の任期は従来、2期10年までだったが、18年の憲法改正で制限が撤廃された。
■【第10位】日中国交正常化50年、経済の結びつき強く
日本と中国は9月29日、国交を正常化してから50周年を迎えた。中国経済は製造業を中心に急成長して今や世界第2位の経済大国となり、日中は50年間で経済面でのつながりを強めてきた。
日本と中国は1972年9月29日、当時の田中角栄首相と周恩来首相が北京で日中共同声明に調印し、国交を正常化した。日本は79年に中国に対する政府開発援助(ODA)を始め、中国の発展に貢献。中国のGDPは10年に日本を追い抜いて21年には日本の3.6倍に成長した。
日本企業の進出も広がった。帝国データバンクによると、今年6月時点で中国に進出する日本企業は1万2,706社。一方で日本を訪れる中国人も急増し、新型コロナ流行前の19年には959万人に達し、日本の観光産業を支える存在となった。
岸田文雄首相と習近平国家主席は9月29日、経団連などが東京都内で開いた50周年の記念レセプションで祝電を交換。首相は「地域と世界の平和と繁栄のため、建設的かつ安定的な日中関係の構築を進めていきたい」と呼びかけた。習氏は「新しい時代の要求にふさわしい中日関係の構築をけん引したい」と強調した。
■【番外編】北京冬季五輪、史上初の夏冬開催都市に
北京冬季五輪が2月に開幕し、北京市は史上初めて夏冬両方の五輪開催都市となった。新型コロナ流行下で行われた同大会は、選手や関係者を外部と接触させない「バブル方式」を採用。91カ国・地域から約2,900人の選手が参加した。観戦チケットの一般販売はしなかった。
大会期間中は北京市と河北省張家港市で、7競技109種目が繰り広げられた。「ユヅ」の愛称にちなみ「柚子」(ヨウヅ)の呼び名が定着しているフィギュアスケート日本代表の羽生結弦選手の演技に中国のファンも熱狂した。
メダル獲得数は日本が金3枚、銀6枚、銅9枚の計18枚。冬季五輪で獲得したメダルとして最多を記録した。中国は金9枚、銀4枚、銅2枚の計15枚だった。
パンダをモチーフにした大会のマスコット「氷ドゥンドゥン(ビンドゥンドゥン、ドゥン=土へんに敦)」も大人気となった。
一方、新型コロナ禍を受けて、国内で予定されていた大型イベントは軒並み中止・延期となり、浙江省杭州市で9月に開催予定だった第19回アジア競技大会は23年9月23日~10月8日に延期が決まった。" ["post_title"]=> string(97) "【22年の10大ニュース】コロナに翻弄された1年経済低迷も、来年に光明" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(193) "%e3%80%9022%e5%b9%b4%e3%81%ae10%e5%a4%a7%e3%83%8b%e3%83%a5%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%80%91%e3%82%b3%e3%83%ad%e3%83%8a%e3%81%ab%e7%bf%bb%e5%bc%84%e3%81%95%e3%82%8c%e3%81%9f%ef%bc%91%e5%b9%b4%e7%b5%8c" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2022-12-29 04:00:01" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2022-12-28 19:00:01" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=10959" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
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