ミャンマーの縫製・製靴業界で働く労働者から、国軍による2021年2月のクーデター以降、労働条件の悪化が続いているとの声が上がっている。軍政による労働組合の弾圧などで労働者の権利侵害が横行するようになっているという。ミャンマーの縫製・製靴業界の人件費はかねて競合国・地域に比べ低いとされ、クーデター以降には現地通貨安も重なり、「安い調達先」としての魅力が一段と高まっている。ただ、サプライチェーン(供給網)の人権状況の把握は軍政下でより困難となっており、ミャンマーに発注する国際ブランドのリスクとなり得る。フロンティア・ミャンマーが5日伝えた。
ミャンマーの最低賃金は日額4,800チャット(約300円)。現地通貨チャットの実勢レートは足元で1米ドル=2,800チャット台と、政変前の同1,300チャット台から価値が大きく下がった。軍政支配下の中央銀行は公定レートを1米ドル=2,100チャットとしているが、それでも米ドルに換算した人件費が安い。
最大都市ヤンゴン郊外のシュエピタ郡区の中国系工場で働く20代の女性は「ノルマを達成できないと、(製造業の法定休日とされる)日曜日に働くよう上司から圧力がかかる」と話す。クーデター後は、労働争議を助長したとして労働組合が軍政によって弾圧され、結果として労働者の権利侵害が横行するようになった。休日や祝日の割増賃金の支払いも法律が無視されるケースがあるという。
ミャンマー縫製業者協会(MGMA)によると、23年2月時点で操業している加盟企業の工場数は543カ所。実際にはより多くの工場が存在し、「名もなき工場(Nameless Factories)」と呼ばれる、公式に企業として登録せずに二次、三次下請けを担う悪質な工場が増えているという。
20代のジンマーウィンさんは昨年、人件費削減を理由にラインタヤ郡区のかばん工場を解雇された。知人を頼って見つけた再就職先は、約100人が働く「名もなき工場」だったという。
ジンマーウィンさんによると、この工場は未登録で、役人とコネがあるオーナーが違法に操業している。最低賃金は支払われているが、労働者の権利が一部無視されているという。
縫製・製靴はミャンマーの主要産業の一つで雇用創出に貢献する一方、人権侵害の責任が問われる国際ブランドの間では「ミャンマー離れ」の動きも出ている。
英小売り大手マークス・アンド・スペンサー(M&S)は「(同社の)世界的な調達の原則を(ミャンマーが)満たすことは不可能」だとして同国からの調達を停止。カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも、ミャンマーの工場からの調達停止を決めている。
現地の労働者の心境は複雑だ。30代の女性は「どんなに労働条件が悪くても、養わなければならない家族がいる。無職になるわけにはいかない」と窮状を明かした。労働者の中には、日本など海外への留学・就職を志す声もあるが、初期費用の工面や家族をどうするかなど、実現に向けた課題は多い。
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ミャンマーの最低賃金は日額4,800チャット(約300円)。現地通貨チャットの実勢レートは足元で1米ドル=2,800チャット台と、政変前の同1,300チャット台から価値が大きく下がった。軍政支配下の中央銀行は公定レートを1米ドル=2,100チャットとしているが、それでも米ドルに換算した人件費が安い。
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ミャンマー縫製業者協会(MGMA)によると、23年2月時点で操業している加盟企業の工場数は543カ所。実際にはより多くの工場が存在し、「名もなき工場(Nameless Factories)」と呼ばれる、公式に企業として登録せずに二次、三次下請けを担う悪質な工場が増えているという。
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英小売り大手マークス・アンド・スペンサー(M&S)は「(同社の)世界的な調達の原則を(ミャンマーが)満たすことは不可能」だとして同国からの調達を停止。カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも、ミャンマーの工場からの調達停止を決めている。
現地の労働者の心境は複雑だ。30代の女性は「どんなに労働条件が悪くても、養わなければならない家族がいる。無職になるわけにはいかない」と窮状を明かした。労働者の中には、日本など海外への留学・就職を志す声もあるが、初期費用の工面や家族をどうするかなど、実現に向けた課題は多い。"
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ミャンマー・ラオス・カンボジア情報
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ビジネス全般人事労務