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香港日清、本土600万人に試食高級商品浸透へ、味に絶対の自信

日清食品ホールディングスの香港上場子会社、日清食品(香港日清)は今年、中国本土のスーパーマーケットや小売店で大規模な試食販売を展開している。新型コロナウイルスに絡む規制が解除され、対面販売がしやすくなったことから、商品の質を高めて単価を上げたプレミアム商品を消費者に直接訴求する。年内に600万人に提供することが目標だ。【菅原真央】

香港日清の安藤清隆CEOが記者会見で戦略を語った=6日、尖沙咀(NNA撮影)

香港日清の安藤清隆・董事長兼最高経営責任者(CEO)が6日に開いた記者会見で語った。香港日清は日清の香港・本土事業を統括する。
同社は近年、商品のプレミアム化を進めている。本土では地場や台湾のメーカーが大きなシェアを握るが、「競合他社に比べ1グラム当たりのコストが高い分、1グラム当たりのおいしさも違う。食べてもらえば分かってもらえる」と自信を示す。
試食では5月から本土で販売を開始した、日本製と同じ仕様の「カップヌードル」などを提供する。1カ所で1回試食販売することを「1日」と数え、年内に「3万日」分を実施することを目標とする。試食提供量は1回当たり約200人分で、年間で約600万人となる計算。本土に80カ所近くある営業所が、それぞれ管轄する地域のスーパーや小売店で実施する。人口300万人以上の都市はほぼカバーできるという。
同社がプレミアム化を進める理由の一つに、競合他社との差別化がある。本土ではこれまで、おけのような形のカップに入った即席麺が人気で、他社では「安くて大きい」商品が売れていた。このため香港日清は商品の質を上げる方向にかじを切り、縦型カップの「高くて小さい」商品で差別化を図った。
新商品のカップヌードルは本土や香港で従来販売している「合味道(カップヌードルの中国語名)」に比べると塩分が多めで、日本で販売している商品とほぼ同様の味となる。訪日客が増え、日本の即席麺の人気が高まっていることから販売に踏み切った。価格は合味道より高く、日本からの輸入品よりは安く設定する。
プレミアム商品ではこのほか、香港で2020年に北海道産小麦粉100%使用の袋麺「出前一丁」を通常の出前一丁より2~3割高い価格で発売。ベトナム工場では日本の品質とほぼ変わらない「ラ王」を製造し、本土と香港に輸出している。
安藤氏は「プレミアム価格帯に特化しているので、数を売れなくても利益が上げられる環境ができている」と強調した。
日本のACG(アニメ・漫画・ゲーム)とのコラボも日系企業ならではの施策だと考える。若い新規客の獲得に役立つとして続けており、今年は香港で、日本の人気アニメ「呪術廻戦」とコラボしたキャンペーンを展開中だ。
■内製化を推進
原材料から販売までを自社グループで手がける「内製化」を進めていることも明らかにした。利益を拡大するだけでなく、より自由度の高い商品を製造できるからだ。
中でもパッケージ関連はコストが高いとして、昨年から即席麺のふたを内製化した。従来はふたにポリエチレンテレフタレート(PET)素材を貼り合わせることでめくれ上がらない工夫をしていたが、内製化のタイミングで薄いふたに変更。二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながったことで、米MSCIのESG(環境・社会・企業統治)格付けが「BBB」から「A」に引き上げられた。
内製化はマーケティングにもプラスとなっている。昨年から展開している通信アプリ「微信(ウィーチャット)」を使ったポイントプログラムでは、商品についたQRコードをスキャンすることでポイントがたまり、日清側は消費者が「いつ、どこで、何味を食べたか」といったデータを取得することができる。QRコードは商品一つ一つに違うものが印刷されているが、ラミネートを内製化しているためそれが実現できているという。
■本土事業は底打ち
香港日清の23年第1四半期(1~3月)は売上高が前年同期比3.5%減の10億2,440万HKドル(約182億円)。市場別では香港が2.7%減の3億4,840万HKドル、本土が4.0%減の6億7,600万HKドルだった。
安藤氏は「本土はコロナで仕事がなくなり、地方に戻った人が沿岸都市部に戻ってくるのに時間がかかっているため消費が弱まっているが、既に底は打った」との見方を示した。第3四半期(7~9月)の終わりまでには需要が回復するとみている。上半期(1~6月)の業績は前年並みか前年をやや下回ると予測した。
香港では本土からの観光客の回復に伴い、多くの茶餐庁(香港式大衆カフェ)のメニューとして提供されている出前一丁の売り上げ回復が見込める。安藤氏によると、本土客は買い物で消費はするものの、食事は安く済ませるという人が多く、茶餐庁ではそうした観光客が食事を取る。茶餐庁の売り上げは現在、コロナ前の6割ほどに回復しているという。
課題となっていたコストの高騰は既に落ち着いている。原材料ではパーム油が既にコロナ前の価格に戻り、小麦の価格や物流コストも安定してきているとして「コストとしては良い環境になっている」と説明した。一方、原油相場の動向や、穀物の供給地であるウクライナ問題が懸念材料だとした。

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試食では5月から本土で販売を開始した、日本製と同じ仕様の「カップヌードル」などを提供する。1カ所で1回試食販売することを「1日」と数え、年内に「3万日」分を実施することを目標とする。試食提供量は1回当たり約200人分で、年間で約600万人となる計算。本土に80カ所近くある営業所が、それぞれ管轄する地域のスーパーや小売店で実施する。人口300万人以上の都市はほぼカバーできるという。
同社がプレミアム化を進める理由の一つに、競合他社との差別化がある。本土ではこれまで、おけのような形のカップに入った即席麺が人気で、他社では「安くて大きい」商品が売れていた。このため香港日清は商品の質を上げる方向にかじを切り、縦型カップの「高くて小さい」商品で差別化を図った。
新商品のカップヌードルは本土や香港で従来販売している「合味道(カップヌードルの中国語名)」に比べると塩分が多めで、日本で販売している商品とほぼ同様の味となる。訪日客が増え、日本の即席麺の人気が高まっていることから販売に踏み切った。価格は合味道より高く、日本からの輸入品よりは安く設定する。
プレミアム商品ではこのほか、香港で2020年に北海道産小麦粉100%使用の袋麺「出前一丁」を通常の出前一丁より2~3割高い価格で発売。ベトナム工場では日本の品質とほぼ変わらない「ラ王」を製造し、本土と香港に輸出している。
安藤氏は「プレミアム価格帯に特化しているので、数を売れなくても利益が上げられる環境ができている」と強調した。
日本のACG(アニメ・漫画・ゲーム)とのコラボも日系企業ならではの施策だと考える。若い新規客の獲得に役立つとして続けており、今年は香港で、日本の人気アニメ「呪術廻戦」とコラボしたキャンペーンを展開中だ。
■内製化を推進
原材料から販売までを自社グループで手がける「内製化」を進めていることも明らかにした。利益を拡大するだけでなく、より自由度の高い商品を製造できるからだ。
中でもパッケージ関連はコストが高いとして、昨年から即席麺のふたを内製化した。従来はふたにポリエチレンテレフタレート(PET)素材を貼り合わせることでめくれ上がらない工夫をしていたが、内製化のタイミングで薄いふたに変更。二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながったことで、米MSCIのESG(環境・社会・企業統治)格付けが「BBB」から「A」に引き上げられた。
内製化はマーケティングにもプラスとなっている。昨年から展開している通信アプリ「微信(ウィーチャット)」を使ったポイントプログラムでは、商品についたQRコードをスキャンすることでポイントがたまり、日清側は消費者が「いつ、どこで、何味を食べたか」といったデータを取得することができる。QRコードは商品一つ一つに違うものが印刷されているが、ラミネートを内製化しているためそれが実現できているという。
■本土事業は底打ち
香港日清の23年第1四半期(1~3月)は売上高が前年同期比3.5%減の10億2,440万HKドル(約182億円)。市場別では香港が2.7%減の3億4,840万HKドル、本土が4.0%減の6億7,600万HKドルだった。
安藤氏は「本土はコロナで仕事がなくなり、地方に戻った人が沿岸都市部に戻ってくるのに時間がかかっているため消費が弱まっているが、既に底は打った」との見方を示した。第3四半期(7~9月)の終わりまでには需要が回復するとみている。上半期(1~6月)の業績は前年並みか前年をやや下回ると予測した。
香港では本土からの観光客の回復に伴い、多くの茶餐庁(香港式大衆カフェ)のメニューとして提供されている出前一丁の売り上げ回復が見込める。安藤氏によると、本土客は買い物で消費はするものの、食事は安く済ませるという人が多く、茶餐庁ではそうした観光客が食事を取る。茶餐庁の売り上げは現在、コロナ前の6割ほどに回復しているという。
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