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初の揚水発電所、本格着工電力需給を平準化、日本も参画

インドネシアの西ジャワ州西バンドン県で、アッパーチソカン揚水発電所の建設が本格始動した。出力は1,040メガワット(260メガワット4基)で、完成すれば国内初の揚水発電所となる。国内で増加する再生可能エネルギー発電の開発により懸念される、電力需給の不安定化を平準化することが期待されている。建設の施工監理は、総合建設コンサルタントの日本工営(東京都千代田区)とニュージェック(大阪市北区)などが担当する。

アッパーチソカン揚水発電所の完成イメージ(日本工営、ニュージェック提供)

西バンドン県とプルワカルタ県にまたがるチラタ貯水池に流れ込むチソカン川とそれに合流するチルマニス川に上部ダムと下部ダムの2つのダムを建設し、約270メートルの落差を利用し発電する。
揚水発電では、電力需要のピーク時には水を上部ダムから下部ダムに落下させることで水車を回転して発電し、発電に使用した水は下部ダムに貯留する。下部ダムの貯留水は、電力需要の少ない時間帯の余剰電力を用いて上部ダムへ引き上げられ、翌日のピーク時には、再び発電に用いられる。アッパーチソカン揚水発電所では可変速水車を採用する予定で、再エネ発電の増加による電力需給の変動に順応することが期待される。
建設工事の施工監理は、国営電力PLN傘下の電力コンサルティング会社、プリマ・ラヤナン・ナショナル・エンジニリング(PLNエンジニリング)を筆頭に、日本工営、ニュージェック、日本工営の現地子会社インドコーエイ・インターナショナルおよび地場ウィラトマンの4社からなる共同企業体(JV)が担当する。
土木工事は中国国有発電所建設会社の中国能源建設(CEEC)傘下の中国葛洲ハ集団(ハ=つちへんに覇、CGGC)、韓国中堅財閥の大林グループ傘下のDL E&C、インドネシアの国営建設ウィジャヤ・カルヤの3社によるJVが担当する。
工期は50カ月を見込み、2028年の運用開始を予定する。
事業費は8億5,000万米ドル(約1,200億円)。このうち建設工事費(送電線を除く)は、世界銀行が3億8,000万米ドルを、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が2億3,000万米ドルを、それぞれ融資する。21年に世銀による融資が決定し、22年4月からアクセス道路の補修などを開始している。建設現場の一帯には計15カ所(計425ヘクタール)が生物多様性重要エリア(BIA)として指定されている。特定の植物が影響を受ける場合は移植し、建設工事によって動物の移動が妨げられるのを防ぐために、横断専用のトンネルや橋などを設置し、環境負荷を低減しながら工事を進める。自然・社会環境マネジメントプラン(C—ESMP)が、このほど融資機関からの承認を得られたため、本格工事に着工した。

アッパーチソカン揚水発電所の建設現場。右の山の斜面にスイッチヤードが、奥の山との谷に下部ダムが建設される=6月22日、西ジャワ州(NNA撮影)

生物多様性重要エリアであることを示す看板=6月22日、西ジャワ州(NNA撮影)

■世界的にも最高速度で施工
アッパーチソカン揚水発電所事業でプロジェクトマネジャーを務めるニュージェックの筒井勝治氏と、施工監理統括を務める日本工営の松井義幸氏は、「電力開発プロジェクトは早期の竣工(しゅんこう)・発電開始が絶対的な使命である。だからこそダムの建設では世界的にも最高速度での施工が要求されている」と口をそろえる。
上部ダム(高さ75.5メートル、堤頂長375メートル)と下部ダム(高さ98メートル、堤頂長294メートル)の建設では、超硬練りのコンクリートをローラーで締め固めながら施工するRCC工法を採用する。松井氏は、「コンクリートは24時間連続して打設する予定で、1年のうち半年に及ぶ多雨期による工程への影響を最小限に抑えるため、スロープレイヤー工法など、現代の最新の設計・施工技術を導入する必要がある」と述べた。
一方、発電所は、高さ50メートル、幅26メートル、長さ270メートルに及ぶ大規模な地下空洞を山中に掘削する。筒井氏は「山の尾根がとても薄いので、地下空間にかかる荷重を正確に見積もり、地盤の変位を計測しながら施工を進める必要がある」と説明した。
今後の施工監理業務の方針について筒井氏は、日本や海外で、揚水発電所建設の設計・解析などを手がけた熟練のエンジニア約25人が現場入りして安全で高品質な施工を進めると述べた。
アッパーチソカン揚水発電所の建設を巡っては、1990年代に事業化調査を開始し詳細設計の段階まで進んだものの、ダム建設による環境負荷などの懸念から開発は一時停止。石炭が安価に手に入れられることから、これまで石炭火力発電所で電力をまかなっていた。
PLNによると、2022年末時点で同社が運営する全国の発電所の発電容量は45ギガワット。このうち、再エネを用いた発電容量は約9%にとどまる。一方、政府はエネルギーミックス(電源構成)に占める再エネの割合を25年までに23%に引き上げる目標を掲げており、PLNも火力発電所の早期廃止や再エネ発電の増強を続けている。
再始動したアッパーチソカン揚水発電所の建設は、再エネの増加に貢献するとともに、太陽光や風力発電などの他の再エネの増加に起因する電力需給の不安定化を、可変速水車による順応性で平準化することが期待されている。

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建設工事の施工監理は、国営電力PLN傘下の電力コンサルティング会社、プリマ・ラヤナン・ナショナル・エンジニリング(PLNエンジニリング)を筆頭に、日本工営、ニュージェック、日本工営の現地子会社インドコーエイ・インターナショナルおよび地場ウィラトマンの4社からなる共同企業体(JV)が担当する。
土木工事は中国国有発電所建設会社の中国能源建設(CEEC)傘下の中国葛洲ハ集団(ハ=つちへんに覇、CGGC)、韓国中堅財閥の大林グループ傘下のDL E&C、インドネシアの国営建設ウィジャヤ・カルヤの3社によるJVが担当する。
工期は50カ月を見込み、2028年の運用開始を予定する。
事業費は8億5,000万米ドル(約1,200億円)。このうち建設工事費(送電線を除く)は、世界銀行が3億8,000万米ドルを、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が2億3,000万米ドルを、それぞれ融資する。21年に世銀による融資が決定し、22年4月からアクセス道路の補修などを開始している。建設現場の一帯には計15カ所(計425ヘクタール)が生物多様性重要エリア(BIA)として指定されている。特定の植物が影響を受ける場合は移植し、建設工事によって動物の移動が妨げられるのを防ぐために、横断専用のトンネルや橋などを設置し、環境負荷を低減しながら工事を進める。自然・社会環境マネジメントプラン(C—ESMP)が、このほど融資機関からの承認を得られたため、本格工事に着工した。
[caption id="attachment_14384" align="aligncenter" width="620"]アッパーチソカン揚水発電所の建設現場。右の山の斜面にスイッチヤードが、奥の山との谷に下部ダムが建設される=6月22日、西ジャワ州(NNA撮影)[/caption]
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■世界的にも最高速度で施工
アッパーチソカン揚水発電所事業でプロジェクトマネジャーを務めるニュージェックの筒井勝治氏と、施工監理統括を務める日本工営の松井義幸氏は、「電力開発プロジェクトは早期の竣工(しゅんこう)・発電開始が絶対的な使命である。だからこそダムの建設では世界的にも最高速度での施工が要求されている」と口をそろえる。
上部ダム(高さ75.5メートル、堤頂長375メートル)と下部ダム(高さ98メートル、堤頂長294メートル)の建設では、超硬練りのコンクリートをローラーで締め固めながら施工するRCC工法を採用する。松井氏は、「コンクリートは24時間連続して打設する予定で、1年のうち半年に及ぶ多雨期による工程への影響を最小限に抑えるため、スロープレイヤー工法など、現代の最新の設計・施工技術を導入する必要がある」と述べた。
一方、発電所は、高さ50メートル、幅26メートル、長さ270メートルに及ぶ大規模な地下空洞を山中に掘削する。筒井氏は「山の尾根がとても薄いので、地下空間にかかる荷重を正確に見積もり、地盤の変位を計測しながら施工を進める必要がある」と説明した。
今後の施工監理業務の方針について筒井氏は、日本や海外で、揚水発電所建設の設計・解析などを手がけた熟練のエンジニア約25人が現場入りして安全で高品質な施工を進めると述べた。
アッパーチソカン揚水発電所の建設を巡っては、1990年代に事業化調査を開始し詳細設計の段階まで進んだものの、ダム建設による環境負荷などの懸念から開発は一時停止。石炭が安価に手に入れられることから、これまで石炭火力発電所で電力をまかなっていた。
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