インドネシア・ジャカルタ首都圏の軽量軌道交通(LRT)が12日、乗客を乗せた試験運行を2路線で開始した。8月18日の本開業に向けて同月15日まで毎日運行する。今月26日までは、政府関係者やメディアなど向けで、一般市民の試乗は27日から開始する予定。ドイツ総合電機大手シーメンスのシステムが採用され、自動運転となる。首都圏LRTが本開業すればジャカルタの交通渋滞の緩和につながると期待されている。
試験運行を開始した路線は、中央ジャカルタのドゥクアタス駅—西ジャワ州デポック市のハルジャムクティ駅を結ぶチブブールライン(全長24.3キロメートル)と、ドゥクアタス駅—同州ブカシ県のジャティムルヤ駅を結ぶブカシライン(全長27.3キロ)の2路線。
全18駅で、両線ともドゥクアタス駅から東ジャカルタのチャワン駅までの8駅を経由する。始発から終点までの所要時間はチブブールラインが約40分、ブカシラインが約45分となっている。
運輸省によると、試験運行は段階的に実施する予定で、12日から26日までの第1段階と、27日から8月15日までの第2段階に分ける。
第1段階では1日計22本を運行し、うち午前8時から午後0時半までの4本に政府関係者やメディア、インフルエンサーなどの招待者を乗客として乗せる。乗客は1本当たり150人に限定し、1日最大600人とする。第2段階では、1日計434本を運行する計画で、一般市民はうち6本に乗車できるようにする予定。
首都圏LRTを運行・運営する国鉄クレタ・アピ・インドネシア(KAI)によると、一般市民の乗車については、10日から首都圏LRTの公式インスタグラムなどの交流サイト(SNS)を通して事前登録を開始したが、開始から約2時間で2万4,000人の登録があり、即日に募集を停止した。段階的な試験運行の実施は、運輸省の方針で決まったという。
すでに登録を済ませ、今後首都圏LRTから確認のメールを受理した人は、メールに記載されているスケジュールに沿って試乗ができる。
試験運行中に乗車できる駅は、◇ドゥクアタス駅◇ハルジャムクティ駅◇ジャティムルヤ駅——の3駅のみで、降車は東ジャカルタのハリム駅を除く全ての駅で可能とする。
期間中の運賃は1ルピア(約0.009円)で、支払いはICチップ付き電子マネーカードなどのキャッシュレス決済のみとなる。KAIの首都圏LRT事業部、広報マネジャーのクスワルドヨ氏は、支払いのプロセスも含めて試験をするという意味でも料金を設定していると説明した。
また、開業後の運賃については最初の1キロを5,000ルピア、その後1キロごとに700ルピア、最大で2万5,000ルピアとなるとみられるが、運輸省が最終的に決定する予定。
■国営INKA製の車両、自動運転も
使用する車両は、国営鉄道車両製造のインダストリ・クレタ・アピ(INKA)が開発した6両連結の計31編成。座席は1編成で174席あり、混雑時は最大1,308人が乗車できる設計となっている。
信号システムなどは国営電子部品製造LENインダストリが整備。シーメンスのシステムを採用し、車両は自動運転となる。自動運転のレベルを示す「GoA」のうち、運転士は不要だが係員は乗車する「レベル3」を採用した。ブカシの車両基地に設けたオペレーション・コントロール・センター(OCC)から管理する。時速は平均50~60キロで、最大80キロで走行する。
■公共交通機関への切り替えに期待
首都圏LRTは、2015年にジョコ・ウィドド大統領が同LRT建設事業に関する大統領令『2015年第98号』を施行し、国営建設アディ・カルヤを建設事業者に任命。15年9月に着工した。
近郊地域からジャカルタに出入りする車両を減らすことを一つの目的とし、特にジャカルタと東部の工業地帯を結ぶチカンペック高速道路、ジャカルタとボゴールを結ぶジャゴラウィ高速道路の渋滞緩和を見込み、同高速道に沿う形で軌道が敷かれている。
12日に行われた試験運行の開始を祝う式典で、ブディ運輸相は「開業後には少なくとも14万人近くの市民がこれまでの自家用車での移動から首都圏LRTに切り替えると予測している」と期待を込めた。
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