マレーシアの電子財布サービス市場で過半数のシェアを握る「タッチンゴーeウォレット」が、海外事業を強化している。同社に出資する中国電子商取引(EC)最大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)傘下のバ蟻科技集団(アント・グループ、バ=むしへんに馬)の越境電子決済サービス「アリペイ+(プラス)」を利用した海外展開を進めており、日本でも既に100万カ所以上で利用可能だ。新型コロナウイルス流行後の旅行需要の拡大を見込んで、今後も対応国を広げる方針だ。【降旗愛子】
「タッチンゴーeウォレット」の決済イメージ(TNGデジタル提供)
タッチンゴーによると、同社の「タッチンゴーeウォレット」は現在、中国、日本、韓国、シンガポール、タイ、インドネシアなどで利用できる。
契機となったのは昨年、アントの「アリペイ+」と提携したこと。「タッチンゴーeウォレット」を運営するTNGデジタルはもともと、マレーシア金融大手CIMBグループの全額出資子会社で交通系ICカード「タッチンゴー」を展開していたタッチンゴーと、アリババ傘下のアント・フィナンシャル(現アント・グループ)が立ち上げた合弁企業だが、システム統合によってアリペイ+による越境決済が可能となった。
タッチンゴーeウォレットはこれまでも日本のアリペイ対応店舗で使用できたが、先月にはスマートフォン決済の「ペイペイ(PayPay)」と連携し、利用範囲が広がった。ペイペイは2018年にアントと提携し、アリペイ+を導入している加盟店50万カ所でアントのスマホ決済「アリペイ(支付宝)」を通じた支払いが可能となっている。そのため、アリペイ+を採用したタッチンゴーも、先月15日からペイペイ加盟店で利用できるようになった。TNGデジタルによると、日本での利用可能店舗は100万カ所を超えるという。
マレーシア国外でのタッチンゴーeウォレット利用方法は、国内と同様に「店舗側がアプリ上のQRコードを読み込む」「利用者がアプリで店頭のQRコードを読み込む」の2通り。リアルタイムの為替レートに応じて現地通貨で決済され、電子財布から差し引かれる。クレジットカードなどと比べて為替レートも遜色ないと評判のようだ。
TNGデジタルの広報担当者は、新型コロナの流行収束とともに、マレーシア人の海外旅行熱が再び高まっていると指摘。海外でも日頃から使い慣れたアプリで決済できるようにすることで「便利さと安心感を感じてもらえる」と話した。同社は今後、フィリピンやオーストラリアにもサービスを拡大していく意向だ。
■国内では逆風も
タッチンゴーは、1997年にプリペイド式の交通系ICカードとして始まった。タッチンゴーのプリペイドカードは、首都圏の鉄道やバスなどのほか、高速道路の料金所や一部の民間駐車場でも利用できる。近年は、無線自動識別(RFID)を使った決済システムとの連携で、電子財布からの高速料金決済も可能になった。
マレーシア中央銀行が認可する電子マネー運営事業者は現在50社あるが、政府系企業のCIMBグループを母体とし、交通系の決済を一手に引き受けるタッチンゴーの存在感は大きい。
一方、昨年12月に発足したアンワル・イブラヒム政権は制度改革を進める中で、タッチンゴーによる決済システムの独占を問題視。独占解消の手始めとして、今年9月以降に高速道路の料金所で「オープン決済システム」導入を進めるとしている。新システムの導入によってクレジットカードやデビットカードなどでの支払いが可能となれば、タッチンゴーによる事実上の寡占が阻止されることになる。
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タッチンゴーによると、同社の「タッチンゴーeウォレット」は現在、中国、日本、韓国、シンガポール、タイ、インドネシアなどで利用できる。
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タッチンゴーeウォレットはこれまでも日本のアリペイ対応店舗で使用できたが、先月にはスマートフォン決済の「ペイペイ(PayPay)」と連携し、利用範囲が広がった。ペイペイは2018年にアントと提携し、アリペイ+を導入している加盟店50万カ所でアントのスマホ決済「アリペイ(支付宝)」を通じた支払いが可能となっている。そのため、アリペイ+を採用したタッチンゴーも、先月15日からペイペイ加盟店で利用できるようになった。TNGデジタルによると、日本での利用可能店舗は100万カ所を超えるという。
マレーシア国外でのタッチンゴーeウォレット利用方法は、国内と同様に「店舗側がアプリ上のQRコードを読み込む」「利用者がアプリで店頭のQRコードを読み込む」の2通り。リアルタイムの為替レートに応じて現地通貨で決済され、電子財布から差し引かれる。クレジットカードなどと比べて為替レートも遜色ないと評判のようだ。
TNGデジタルの広報担当者は、新型コロナの流行収束とともに、マレーシア人の海外旅行熱が再び高まっていると指摘。海外でも日頃から使い慣れたアプリで決済できるようにすることで「便利さと安心感を感じてもらえる」と話した。同社は今後、フィリピンやオーストラリアにもサービスを拡大していく意向だ。
■国内では逆風も
タッチンゴーは、1997年にプリペイド式の交通系ICカードとして始まった。タッチンゴーのプリペイドカードは、首都圏の鉄道やバスなどのほか、高速道路の料金所や一部の民間駐車場でも利用できる。近年は、無線自動識別(RFID)を使った決済システムとの連携で、電子財布からの高速料金決済も可能になった。
マレーシア中央銀行が認可する電子マネー運営事業者は現在50社あるが、政府系企業のCIMBグループを母体とし、交通系の決済を一手に引き受けるタッチンゴーの存在感は大きい。
一方、昨年12月に発足したアンワル・イブラヒム政権は制度改革を進める中で、タッチンゴーによる決済システムの独占を問題視。独占解消の手始めとして、今年9月以降に高速道路の料金所で「オープン決済システム」導入を進めるとしている。新システムの導入によってクレジットカードやデビットカードなどでの支払いが可能となれば、タッチンゴーによる事実上の寡占が阻止されることになる。"
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