新型コロナウイルス感染症の水際対策が解除されて1年が過ぎる中、今年7~9月期の韓国航空会社の利用客数がコロナ禍以前の2019年比で約9割の水準まで回復した。とりわけ、日本へ旅行に出かける韓国人が急増したことで格安航空会社(LCC)を中心に運航再開や増便が相次ぎ、回復速度が加速。この勢いは当分続く見通しで、早ければ年末には完全回復に到達する可能性も出てきた。【清水岳志】
海外へ出かける人でにぎわう仁川国際空港の出発ロビー=韓国・仁川、2023年4月(NNA撮影)
韓国国土交通省・航空情報ポータルによると、7~9月期の韓国航空会社の旅客数は計2,080万3,124人で、コロナ禍以前の19年同期の88.6%まで回復した。昨年から新型コロナの水際対策が各国で緩和・撤廃されたことで、国内外へ旅行に出かける人が増えたことが最大の理由だ。
国際線の利用客は計1,287万2,321人と、コロナ禍以前の19年7~9月期(1,515万518人)の85.0%まで回復した。水際対策が緩和され始めた22年7~9月期(372万879人)と比べると約3.5倍となった。
一方、国内線はほぼ、コロナ禍以前の水準に戻った。今年7~9月期の利用客数は793万803人で、19年(831万8,918人)の95.3%の水準に達した。
■「ボイコット日本」は完全克服
特に、日本路線の運航再開・増便が相次いでいることが利用客の急増を後押ししたもよう。地場LCC最大手の済州航空は6月にソウル・仁川—大分路線、7月には仁川—広島路線をそれぞれ新規就航した。コロナ禍の影響で国内・国際線の運航がほぼストップしていたイースター航空も、9月20日に仁川—成田、仁川—関西国際の2路線の運航を再開した。
日韓路線はコロナ禍の収束に伴い、往来が一気に活性化。7~9月期は訪日外国人(計666万1,800人)の4分の1以上が韓国人(計176万6,330人)だった。
訪日韓国人数は、日韓関係が悪化した19年に起きた日本への旅行を拒否する「ボイコットジャパン運動」で急激に減少したが、現在はどこ吹く風だ。韓国人は元々、国内の観光スポットが少ないことなどから海外旅行への欲求が強い。海外渡航が規制されたコロナ禍を経て、最も近い海外である日本に韓国人の旺盛な海外旅行意欲が向かっている。
このほど、夫婦で東京を訪れたというキム・ジヘさん(32)はNNAに対し、「夫は初めての訪日だったが、『また日本に行きたい』と話している。今度は大阪や北海道などの地方にも行ってみたい」との感想を述べた。
一方、韓国を訪れる日本人も増えている。7~9月期は計72万5,023人の日本人が訪韓。国・地域別で中国(74万8,408人)に次いで多かった。
■新興LCC参入も後押し
国際線利用客の増加は、新興LCCのエアプレミアとエアロKの新規参入の影響も大きい。両社は19年3月に航空運送事業免許を取得したが、20年に新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が起きたことで参入が遅れていた。
清州国際空港(忠清北道清州市)を本拠とするエアロKは、今年7月に初の国際線となる清州—関西国際路線を就航。10月末時点で同路線と成田、フィリピン・クラーク、台湾・桃園の計4つの国際線を運航している。
エアプレミアは22年7月にシンガポール路線で国際線デビューし、現在はLCCながら米国やドイツなど長距離路線にも力を入れている。仁川—米ロサンゼルス路線は22年10月の就航から1年で平均搭乗率85.7%を記録。同社は「安定的な運航段階に入った」と評価している。
■10月以降も増加続く見通し
10月以降も航空利用客の増加傾向は続く公算が大きい。韓国人の旺盛な旅行需要を取り込もうと、航空各社が運休していた路線の運航再開や増便を相次いで発表しているためだ。
イースター航空が10月29日、20年2月末から運休していた仁川—福岡線の運航を再開した。済州航空も同日、仁川と愛媛・松山、静岡、広島の3路線を増便すると発表。釜山市に本拠を置くエアプサンは、11月10日に釜山・金海—松山路線を新規就航する予定だ。いずれも、冬季の休暇シーズンで日韓路線の利用客が増えると見込んでいる。
日本以外の路線でも運航再開が予定されている。エアソウルは12月に、仁川とベトナム・ニャチャンを結ぶ路線の運航数を現在の週7往復から11往復に増やす。ニャチャンは韓国から近場のリゾート地としてコロナ禍以前から人気が高く、現在の搭乗率は平均90%を上回っているという。
エアプレミアは、24年上半期に米ボーイングの旅客機「B787—9」を4機導入して米シアトルやフランス・パリ、イタリア・ローマの新規就航を予定する。LCC各社が大韓航空とアシアナ航空の牙城の長距離路線に引き続き挑戦していく計画だ。
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国際線の利用客は計1,287万2,321人と、コロナ禍以前の19年7~9月期(1,515万518人)の85.0%まで回復した。水際対策が緩和され始めた22年7~9月期(372万879人)と比べると約3.5倍となった。
一方、国内線はほぼ、コロナ禍以前の水準に戻った。今年7~9月期の利用客数は793万803人で、19年(831万8,918人)の95.3%の水準に達した。
■「ボイコット日本」は完全克服
特に、日本路線の運航再開・増便が相次いでいることが利用客の急増を後押ししたもよう。地場LCC最大手の済州航空は6月にソウル・仁川—大分路線、7月には仁川—広島路線をそれぞれ新規就航した。コロナ禍の影響で国内・国際線の運航がほぼストップしていたイースター航空も、9月20日に仁川—成田、仁川—関西国際の2路線の運航を再開した。
日韓路線はコロナ禍の収束に伴い、往来が一気に活性化。7~9月期は訪日外国人(計666万1,800人)の4分の1以上が韓国人(計176万6,330人)だった。
訪日韓国人数は、日韓関係が悪化した19年に起きた日本への旅行を拒否する「ボイコットジャパン運動」で急激に減少したが、現在はどこ吹く風だ。韓国人は元々、国内の観光スポットが少ないことなどから海外旅行への欲求が強い。海外渡航が規制されたコロナ禍を経て、最も近い海外である日本に韓国人の旺盛な海外旅行意欲が向かっている。
このほど、夫婦で東京を訪れたというキム・ジヘさん(32)はNNAに対し、「夫は初めての訪日だったが、『また日本に行きたい』と話している。今度は大阪や北海道などの地方にも行ってみたい」との感想を述べた。
一方、韓国を訪れる日本人も増えている。7~9月期は計72万5,023人の日本人が訪韓。国・地域別で中国(74万8,408人)に次いで多かった。
■新興LCC参入も後押し
国際線利用客の増加は、新興LCCのエアプレミアとエアロKの新規参入の影響も大きい。両社は19年3月に航空運送事業免許を取得したが、20年に新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が起きたことで参入が遅れていた。
清州国際空港(忠清北道清州市)を本拠とするエアロKは、今年7月に初の国際線となる清州—関西国際路線を就航。10月末時点で同路線と成田、フィリピン・クラーク、台湾・桃園の計4つの国際線を運航している。
エアプレミアは22年7月にシンガポール路線で国際線デビューし、現在はLCCながら米国やドイツなど長距離路線にも力を入れている。仁川—米ロサンゼルス路線は22年10月の就航から1年で平均搭乗率85.7%を記録。同社は「安定的な運航段階に入った」と評価している。
■10月以降も増加続く見通し
10月以降も航空利用客の増加傾向は続く公算が大きい。韓国人の旺盛な旅行需要を取り込もうと、航空各社が運休していた路線の運航再開や増便を相次いで発表しているためだ。
イースター航空が10月29日、20年2月末から運休していた仁川—福岡線の運航を再開した。済州航空も同日、仁川と愛媛・松山、静岡、広島の3路線を増便すると発表。釜山市に本拠を置くエアプサンは、11月10日に釜山・金海—松山路線を新規就航する予定だ。いずれも、冬季の休暇シーズンで日韓路線の利用客が増えると見込んでいる。
日本以外の路線でも運航再開が予定されている。エアソウルは12月に、仁川とベトナム・ニャチャンを結ぶ路線の運航数を現在の週7往復から11往復に増やす。ニャチャンは韓国から近場のリゾート地としてコロナ禍以前から人気が高く、現在の搭乗率は平均90%を上回っているという。
エアプレミアは、24年上半期に米ボーイングの旅客機「B787—9」を4機導入して米シアトルやフランス・パリ、イタリア・ローマの新規就航を予定する。LCC各社が大韓航空とアシアナ航空の牙城の長距離路線に引き続き挑戦していく計画だ。
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