人材紹介大手ジェイエイシーリクルートメント(JAC)は、マレーシアに進出する日系企業の採用が給与面で難しくなっていると指摘する。未経験でも高額の給与を出す多国籍企業の求人が増えており、採用市場全体の給与のバランスが崩れているためだ。日系企業は福利厚生でも多国籍企業と差が出ており、採用成功に向けては、採用条件の見直しが求められそうだ。【笹沼帆奈望】
公共交通機関のラッシュ時に都心を歩く会社員ら。JACは、マレーシアに進出する日系企業の採用が給与面で難しくなっていると指摘する=15日、クアラルンプール(NNA撮影)
JACのマレーシア法人、JACマレーシアの桐生純子アソシエイトディレクターによると、マレーシアではビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)を手がける多国籍企業は、新卒や未経験でも給与を高く提示している。具体的な職種はBPOのカスタマーサービスや、利用者レベルの知識があればできるIT企業のヘルプデスクなどだ。
ここ10年ほど、BPO、企業の事業部やグループ会社の機能を1カ所に集約し、業務を標準化・簡素化するシェアードサービスセンターの求人は急増しており、給与も高いため、マレーシア人には人気があるという。
特に日本語スピーカーは母数が減少している一方で、ニーズが高い。BPOやシェアードサービスセンターの採用であれば、新卒でも月給4,000~5,000リンギ(約13万~16万円)が提示される。
給与の相場が上がる一方で、日系企業の多くは新卒の場合3,000~3,500リンギが一般的となっている。桐生氏は「社内の給与体系を長期間見直していない企業などもあり、市場の相場や時勢に合わせた改善が必要だ」と話す。
日本語スピーカー以外の中核人材においても、多国籍企業が1万~1万5,000リンギを提示しているポジションで日系企業は8,000~1万リンギ程度にとどまるなど、大きな差があるケースが見られるという。
桐生氏によると、マレーシア人は転職の際に給与の引き上げを希望するのが一般的だ。そのため、中途採用において給与は重要なポイントになってくるとの見方を示す。
給与の引き上げが難しい日系企業は、福利厚生などの待遇面で勝負したいところだが、桐生氏は「福利厚生面も長年、更新されていない日系企業が多い」と話す。
特に、有給休暇の付与日数については、日系企業と多国籍企業で大きな乖離(かいり)が生じている。JACマレーシアが提示した情報によると、日系企業の多くは初年度の有給休暇が8~14日にとどまるのに対し、多国籍企業は14~25日程度となっている。
桐生氏は、外資系企業に数年勤務していたマレーシア人が日本企業に転職を検討した際に、年間20日間の有給休暇が、8日間に激減したケースを例示。「マレーシアは宗教関連のイベントや家族の都合で休みを取る人が多いため、特に直接的なコストはかからない有給休暇の付与日数などは検討する余地があるのではないか」と提言した。
■求人数が伸びるのはITなど
今後求人数が増えていく業界については、桐生氏はIT業界や飲食・小売り、医療関連のサービス業を挙げる。BPO業界も引き続き増えていくと見通す。
言語スキルの高い人材は引き続き、求められやすい。桐生氏によると、マレーシア以外のBPOの会社からも日本語スピーカーを採用したいという依頼がある。また、中華系のマレーシア人は、英語に加えて、北京語や広東語、マレー語も話せることから、他国からも引き合いが多いという。
桐生氏は、採用市場はグローバル化してきているため、マレーシアの市場だけを見て採用を進めると難しくなっていくと指摘。「特に給与については今後は世界的な水準も視野に入れていくべきかもしれない」と話した。
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給与の相場が上がる一方で、日系企業の多くは新卒の場合3,000~3,500リンギが一般的となっている。桐生氏は「社内の給与体系を長期間見直していない企業などもあり、市場の相場や時勢に合わせた改善が必要だ」と話す。
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桐生氏によると、マレーシア人は転職の際に給与の引き上げを希望するのが一般的だ。そのため、中途採用において給与は重要なポイントになってくるとの見方を示す。
給与の引き上げが難しい日系企業は、福利厚生などの待遇面で勝負したいところだが、桐生氏は「福利厚生面も長年、更新されていない日系企業が多い」と話す。
特に、有給休暇の付与日数については、日系企業と多国籍企業で大きな乖離(かいり)が生じている。JACマレーシアが提示した情報によると、日系企業の多くは初年度の有給休暇が8~14日にとどまるのに対し、多国籍企業は14~25日程度となっている。
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■求人数が伸びるのはITなど
今後求人数が増えていく業界については、桐生氏はIT業界や飲食・小売り、医療関連のサービス業を挙げる。BPO業界も引き続き増えていくと見通す。
言語スキルの高い人材は引き続き、求められやすい。桐生氏によると、マレーシア以外のBPOの会社からも日本語スピーカーを採用したいという依頼がある。また、中華系のマレーシア人は、英語に加えて、北京語や広東語、マレー語も話せることから、他国からも引き合いが多いという。
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