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【新首都】スマート都市の青写真公表自動運転や低炭素化、外資協業も

インドネシアの東カリマンタン州に整備中の新首都「ヌサンタラ」の行政機関ヌサンタラ首都庁はこのほど、新首都の開発コンセプトの一つである「スマートシティー」に関する青写真「ヌサンタラ・スマートシティー・ブループリント」を公表した。行政や交通・モビリティーなどの6領域から街づくりの方向性を提示し、電気自動車(EV)を利用した自動運転や、エネルギー効率を高め低炭素化に貢献するスマートグリッド(次世代電力網)などの先進技術について、外国企業などとの協業を見据えている。

ヌサンタラ首都庁が公開した、新首都が掲げる開発コンセプトの一つ「スマートシティー」に関する青写真「ヌサンタラ・スマートシティー・ブループリント」(同庁提供)

ヌサンタラの開発は、2022~24年の第1期から計5段階に分けた45年までの中長期計画が立てられている。第1期で優先的に開発を行う中央行政地区(KIPP)から段階的に範囲を広げ、45年までに約170万~190万人の人口を擁する都市になることを描く。スマートシティーは、面積の75%を緑地とする「フォレストシティー」、土壌流出の最小化や雨水吸水の最大化などを目指す「スポンジシティー」と並ぶ開発コンセプトの一つだ。
ブループリントでは、スマートシティーを構成する領域として、◇行政◇交通・モビリティー◇生活◇天然資源・エネルギー◇産業・人材◇環境に配慮した建物・インフラ——の6つを示し、さらに21のサブ領域、そこから派生する計67の要素に分けた。

首都移転を開始する24年から段階的にコンセプトを導入する。開発の第2段階に当たる25~29年については、ヌサンタラの重要達成度指標(KPI)である「10分で主要施設と交通拠点にアクセスできる」という指標を実現する段階に入ることが示されている。こうした目標から、スマート技術を活用した交通網の整備は、比較的早く取り組みを推進する分野になるとみられる。
スマートシティーにおける交通・モビリティー領域では、自動運転によるミニバスの運行が一例に挙げられており、車両には電気自動車(EV)が利用される予定だ。オンデマンドで運行する公共交通も計画されている。ヌサンタラでは、移動手段の80%が公共交通機関、徒歩、電動キックボードなどの「マイクロモビリティー」の利用が想定されている。こうした取り組みで、各交通拠点から徒歩10分で主要施設にアクセスできるようにする。
■先進技術の実装を成長機会に
先進技術が活用されるスマートシティーは、技術的な優位性を持つ海外企業の参画が期待される領域でもある。
ヌサンタラ首都庁のモハメド・アリ・ベラウィ次官(グリーン・デジタルトランスフォーメーション担当)は、23年12月29日のオンライン会見で、先進的な技術プロバイダーとの協力の下で、地場タクシー最大手ブルーバードや陸運公社ダムリのような事業者が24年中に自動運転を始めることに期待を示した。
ブループリントでは、都市航空交通システム(UAM)の開発についても触れられており、空飛ぶタクシーの運行も含まれている。UAMについて、アリ次官は、技術開発段階でまだ商業化に至っていないからこそ、プレーヤーとして参画する機会があると指摘。「ブループリントを示すことで、先進技術をヌサンタラで実現することを促し、技術移転をする企業は、45年に先進国入りを目指すという国家目標にも貢献できる」と述べた。
UAMを巡っては、韓国の現代自動車との導入計画が進行中で、アリ氏は、国営航空機製造ディルガンタラ・インドネシア(DI)との開発協力が進むことにも期待を示した。ほかにも、米ボーイングの子会社で電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発する新興企業ウィスク・エアロと協議しており、近く協業内容の大枠に合意したい意向を明らかにした。

ヌサンタラ首都庁のアリ次官(グリーン・デジタルトランスフォーメーション担当)はオンライン会見で、データセンターや都市航空交通システム開発などの進捗(しんちょく)について説明した(同庁提供)

人の移動に限らず、ドローンを利用した荷物の配送も計画されている。共通プラットフォームによる効率的な物流システムを構築し、指定時間に沿った配送システムの構築などを目指す。
こうした先端技術の導入計画が示される一方、足元ではモビリティーを担う民間企業による具体的な動きが出ている。ブルーバードは昨年末、2,500億ルピア(約23億4,500万円)を投じて、電気バスを利用した高速バス輸送(BRT)システムやEVタクシーなど、環境に配慮した公共交通開発をヌサンタラで行う計画を発表した。

タクシー最大手ブルーバードは、ヌサンタラで電気バスを利用したBRTシステムやEVタクシーなど、環境に配慮した公共交通開発を行う計画を発表した=2023年12月(大統領府提供)

■スマート技術によるネットゼロへの貢献
また、スマートシティーの実現に向けて導入される技術は、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現に貢献するとみられるものが多い。ヌサンタラでは、国の国際公約よりも15年早い45年に、ネットゼロの達成を目指す。
ブループリントで定めている天然資源・エネルギー領域では、EVを交通手段としてだけではなく、効率的にエネルギーを利用するための電力源として使用し、低炭素化に貢献することも想定している。EVの蓄電池に蓄積されている電気エネルギーをスマートグリッドに送る「V2G(ビークル・ツー・グリッド)」、建物に送る「V2B(ビークル・ツー・ビルディング)」、住宅に送る「V2H(ビークル・ツー・ホーム)」を実装することが示されている。
アリ次官は、面積の75%を緑地とするヌサンタラでは、生育する木々のデータを迅速に把握するための大量のデータ収集と分析なども必要になるとし、ハイパフォーマンス・コンピューティング (HPC)を活用することが重要になるとの認識を示した。
■遠隔診療からバイオなど多岐に
ヌサンタラでの市民生活を支える「スマートリビング」領域は、「保健・福祉」「公共の安全と空間マネジメント」の大きく2つに分けた。前者では遠隔診療やデジタル保険証サービスの提供、後者では犯罪予防のためのビデオ録画体制、安全・災害情報通知サービス、市街地の混雑情報の共有、大気質のモニタリングなどを行うことが計画されている。
スマートシティーを支える通信インフラとしては、第5世代(5G)やLTEなどの移動通信システムの、低消費電力で長距離のデータ通信を可能とする「LPWAN」、クラウドを含むデータセンター構築などを主要技術とする。
さらに、モノのインターネット(IoT)、5Gやセンサーのアンテナなどを搭載するスマートポールの設置、微生物を活用した廃棄物処理から環境に優しい燃料までカバーするバイオテクノロジーなど、多岐にわたる分野をヌサンタラで活用が期待される支援・補助技術として示した。
■データセンター、米国や韓国が関心
主要施設の一つとなるデータセンター開発については、米国、韓国、中国、ドイツ企業などから協業意向が示されている。アリ氏は、米国政府から無償資金協力によるデータセンターの概念実証の提案を受けていることや、韓国、中国、ドイツ企業からデータセンターや通信指令センター開発への協業意向があると明らかにした。
ヌサンタラ首都庁のバンバン長官は、ブループリントの公表に当たり、ヌサンタラ開発を行うステークホルダー(利害関係者)や市民のための指針となり、住みよく愛される街の実現に向けた道筋となることに期待を示した。

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ブループリントでは、スマートシティーを構成する領域として、◇行政◇交通・モビリティー◇生活◇天然資源・エネルギー◇産業・人材◇環境に配慮した建物・インフラ——の6つを示し、さらに21のサブ領域、そこから派生する計67の要素に分けた。

首都移転を開始する24年から段階的にコンセプトを導入する。開発の第2段階に当たる25~29年については、ヌサンタラの重要達成度指標(KPI)である「10分で主要施設と交通拠点にアクセスできる」という指標を実現する段階に入ることが示されている。こうした目標から、スマート技術を活用した交通網の整備は、比較的早く取り組みを推進する分野になるとみられる。
スマートシティーにおける交通・モビリティー領域では、自動運転によるミニバスの運行が一例に挙げられており、車両には電気自動車(EV)が利用される予定だ。オンデマンドで運行する公共交通も計画されている。ヌサンタラでは、移動手段の80%が公共交通機関、徒歩、電動キックボードなどの「マイクロモビリティー」の利用が想定されている。こうした取り組みで、各交通拠点から徒歩10分で主要施設にアクセスできるようにする。
■先進技術の実装を成長機会に
先進技術が活用されるスマートシティーは、技術的な優位性を持つ海外企業の参画が期待される領域でもある。
ヌサンタラ首都庁のモハメド・アリ・ベラウィ次官(グリーン・デジタルトランスフォーメーション担当)は、23年12月29日のオンライン会見で、先進的な技術プロバイダーとの協力の下で、地場タクシー最大手ブルーバードや陸運公社ダムリのような事業者が24年中に自動運転を始めることに期待を示した。
ブループリントでは、都市航空交通システム(UAM)の開発についても触れられており、空飛ぶタクシーの運行も含まれている。UAMについて、アリ次官は、技術開発段階でまだ商業化に至っていないからこそ、プレーヤーとして参画する機会があると指摘。「ブループリントを示すことで、先進技術をヌサンタラで実現することを促し、技術移転をする企業は、45年に先進国入りを目指すという国家目標にも貢献できる」と述べた。
UAMを巡っては、韓国の現代自動車との導入計画が進行中で、アリ氏は、国営航空機製造ディルガンタラ・インドネシア(DI)との開発協力が進むことにも期待を示した。ほかにも、米ボーイングの子会社で電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発する新興企業ウィスク・エアロと協議しており、近く協業内容の大枠に合意したい意向を明らかにした。
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人の移動に限らず、ドローンを利用した荷物の配送も計画されている。共通プラットフォームによる効率的な物流システムを構築し、指定時間に沿った配送システムの構築などを目指す。
こうした先端技術の導入計画が示される一方、足元ではモビリティーを担う民間企業による具体的な動きが出ている。ブルーバードは昨年末、2,500億ルピア(約23億4,500万円)を投じて、電気バスを利用した高速バス輸送(BRT)システムやEVタクシーなど、環境に配慮した公共交通開発をヌサンタラで行う計画を発表した。
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■スマート技術によるネットゼロへの貢献
また、スマートシティーの実現に向けて導入される技術は、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現に貢献するとみられるものが多い。ヌサンタラでは、国の国際公約よりも15年早い45年に、ネットゼロの達成を目指す。
ブループリントで定めている天然資源・エネルギー領域では、EVを交通手段としてだけではなく、効率的にエネルギーを利用するための電力源として使用し、低炭素化に貢献することも想定している。EVの蓄電池に蓄積されている電気エネルギーをスマートグリッドに送る「V2G(ビークル・ツー・グリッド)」、建物に送る「V2B(ビークル・ツー・ビルディング)」、住宅に送る「V2H(ビークル・ツー・ホーム)」を実装することが示されている。
アリ次官は、面積の75%を緑地とするヌサンタラでは、生育する木々のデータを迅速に把握するための大量のデータ収集と分析なども必要になるとし、ハイパフォーマンス・コンピューティング (HPC)を活用することが重要になるとの認識を示した。
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ヌサンタラでの市民生活を支える「スマートリビング」領域は、「保健・福祉」「公共の安全と空間マネジメント」の大きく2つに分けた。前者では遠隔診療やデジタル保険証サービスの提供、後者では犯罪予防のためのビデオ録画体制、安全・災害情報通知サービス、市街地の混雑情報の共有、大気質のモニタリングなどを行うことが計画されている。
スマートシティーを支える通信インフラとしては、第5世代(5G)やLTEなどの移動通信システムの、低消費電力で長距離のデータ通信を可能とする「LPWAN」、クラウドを含むデータセンター構築などを主要技術とする。
さらに、モノのインターネット(IoT)、5Gやセンサーのアンテナなどを搭載するスマートポールの設置、微生物を活用した廃棄物処理から環境に優しい燃料までカバーするバイオテクノロジーなど、多岐にわたる分野をヌサンタラで活用が期待される支援・補助技術として示した。
■データセンター、米国や韓国が関心
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