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イオンに国内最大の植物工場地場新興アグロズ、多国展開も視野

マレーシアの都市型農業のスタートアップ、アグロズ・グループは、日系小売り大手イオンマレーシアと組み、首都クアラルンプール市内のイオンモール内で国内最大となる植物工場を運営している。太陽光発電や先端技術を取り入れたアグリテック(ITを活用した農業)で葉物野菜やハーブを育て、地産地消の食料生産を目指す。マレーシア国内を皮切りに、デジタル化された都市型農業を東南アジア域内や中東でも展開する計画だ。【降旗愛子】

イオンモール内に設けた国内最大となる植物工場では、太陽光発電による電力供給も受けている=クアラルンプール(NNA撮影)

アグロズは昨年8月、クアラルンプール北部のワンサマジュ地区にある商業施設「イオンモール・アルファアングル」に植物工場を開設した。広さ約743平方メートルで、ショッピングモール内に設けられた植物工場としては国内最大。同社の主力生産拠点として、コーラルレタスやバターヘッドなどサラダに使用される葉物野菜のほか、ルッコラやケールなどのハーブを月5~6トン生産し、首都圏のイオン9店舗とオンラインモール「マイイオントゥーゴー(myAEON2go)」を通じて販売している。販売店舗の拡大も検討中だ。
植物工場の制御された環境下で育てた野菜は食感や味が良く、「アグロズの野菜だけは、子どもがよく食べる」という消費者の声も寄せられているという。水耕栽培で農薬を使用していないため、パッケージを開ければそのまま食べられる手軽さも好評を得ている。人件費や光熱費の上昇が続く中、調理コストを削減したい飲食店からの引き合いも増えているという。

アグロズの野菜は首都圏のイオン9店舗とオンラインモールで販売されている=クアラルンプール(NNA撮影)

中間層が多く暮らす住宅街に位置するため、「エデュファーム」として一般の買い物客や近隣の学校の社会科見学にも開放している。子どもたちには、先端技術を駆使した水耕栽培による生産の仕組みを説明し、自分たちの手で収穫した野菜をその場でサラダやサンドイッチにして食べてもらう。

食育を目的に、植物工場は一般の買い物客にも開放している=クアラルンプール(NNA撮影)

■太陽光発電から電力供給
アグロズの創業者、ジェラルド・リム最高経営責任者(CEO)によると、マレーシアは人口約3,300万人の国ながら、年500億リンギ(約1兆6,000億円)以上を食料輸入に費やしている。工業化による農業の縮小に伴い、食料自給率が低下しているためだ。特に、2019年に始まった新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)では、食料の安定的確保や健康を維持するための食生活に関心が集まった。アグロズは、人々の生活の場に近いショッピングモール内に農業生産の現場を設け、広く公開することで食の安全保障に対する意識を高めることを目的としている。
イオンマレーシアは22年10月、国営電力テナガ・ナショナル(TNB)と提携し、イオンモール・アルファアングルで太陽光発電装置を導入した。全国のイオン店舗に太陽光発電装置を設ける計画の第1弾で、建屋屋上および屋外駐車場に設置し、発電容量は1,513キロワットピークとなる。温度や光量などを管理するため、植物工場は多くの電力を必要とするが、アグロズの施設で消費する電力も、駐車場に設置された太陽光発電装置から一部を賄っている。
リム氏によると、ショッピングモール内に地産地消の植物工場を設けるというアイデアも、イオン側から提案されたものだという。

アグロズのリムCEO=クアラルンプール(NNA撮影)

■マイクロソフトと技術協力
リム氏は、マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)の最高デジタル責任者(CDO)を務めるなど、IT業界で30年以上のキャリアを誇る。
アグロズは数年前から、植物工場運営のシステム基盤となるオペレーション・システム(OS)を開発。これらのシステムを他国でも展開するため、米マイクロソフトと提携し、OSの「アグロズ・ファーム・オペレーションシステム(アグロズOS)」および農家向け支援システム「アグロズ・コパイロット(Agroz Copilot)」を開発すると発表した。
アグロズOSはマイクロソフトのクラウド・コンピューティング・プラットホーム「Microsoft Azure」と統合し、植物工場の監視・管理効率を向上させることができる。一方、アグロズ・コパイロットはAzureのクラウドプラットフォーム上で提供される人工知能(AI)サービスである「Azure OpenAI」を用い、生成AIが農業生産を支援する。
アグロズはこうした技術をひっさげて、インドネシア、タイといった近隣諸国や中東でも植物工場を展開する計画だ。
21世紀の今でも、東南アジアの農業はテクノロジーからほど遠い世界にある。インドネシアでは特に、人口の40%は農業に従事しているとされ、先端技術の導入も進んでいないため、多くの商機があるとみている。一方、中東ではオマーン政府などから、同国での大規模植物工場設立について提案を受けているという。
テクノロジー企業として世界的認知を得て、事業展開に必要な資金調達を果たすため、米店頭市場ナスダックでの新規株式公開(IPO)の準備も進めている。リム氏は、今年6月までの上場を目指すと明らかにした。

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植物工場の制御された環境下で育てた野菜は食感や味が良く、「アグロズの野菜だけは、子どもがよく食べる」という消費者の声も寄せられているという。水耕栽培で農薬を使用していないため、パッケージを開ければそのまま食べられる手軽さも好評を得ている。人件費や光熱費の上昇が続く中、調理コストを削減したい飲食店からの引き合いも増えているという。
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中間層が多く暮らす住宅街に位置するため、「エデュファーム」として一般の買い物客や近隣の学校の社会科見学にも開放している。子どもたちには、先端技術を駆使した水耕栽培による生産の仕組みを説明し、自分たちの手で収穫した野菜をその場でサラダやサンドイッチにして食べてもらう。
[caption id="attachment_19086" align="aligncenter" width="620"]食育を目的に、植物工場は一般の買い物客にも開放している=クアラルンプール(NNA撮影)[/caption]
■太陽光発電から電力供給
アグロズの創業者、ジェラルド・リム最高経営責任者(CEO)によると、マレーシアは人口約3,300万人の国ながら、年500億リンギ(約1兆6,000億円)以上を食料輸入に費やしている。工業化による農業の縮小に伴い、食料自給率が低下しているためだ。特に、2019年に始まった新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)では、食料の安定的確保や健康を維持するための食生活に関心が集まった。アグロズは、人々の生活の場に近いショッピングモール内に農業生産の現場を設け、広く公開することで食の安全保障に対する意識を高めることを目的としている。
イオンマレーシアは22年10月、国営電力テナガ・ナショナル(TNB)と提携し、イオンモール・アルファアングルで太陽光発電装置を導入した。全国のイオン店舗に太陽光発電装置を設ける計画の第1弾で、建屋屋上および屋外駐車場に設置し、発電容量は1,513キロワットピークとなる。温度や光量などを管理するため、植物工場は多くの電力を必要とするが、アグロズの施設で消費する電力も、駐車場に設置された太陽光発電装置から一部を賄っている。
リム氏によると、ショッピングモール内に地産地消の植物工場を設けるというアイデアも、イオン側から提案されたものだという。
[caption id="attachment_19087" align="aligncenter" width="620"]アグロズのリムCEO=クアラルンプール(NNA撮影)[/caption]
■マイクロソフトと技術協力
リム氏は、マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)の最高デジタル責任者(CDO)を務めるなど、IT業界で30年以上のキャリアを誇る。
アグロズは数年前から、植物工場運営のシステム基盤となるオペレーション・システム(OS)を開発。これらのシステムを他国でも展開するため、米マイクロソフトと提携し、OSの「アグロズ・ファーム・オペレーションシステム(アグロズOS)」および農家向け支援システム「アグロズ・コパイロット(Agroz Copilot)」を開発すると発表した。
アグロズOSはマイクロソフトのクラウド・コンピューティング・プラットホーム「Microsoft Azure」と統合し、植物工場の監視・管理効率を向上させることができる。一方、アグロズ・コパイロットはAzureのクラウドプラットフォーム上で提供される人工知能(AI)サービスである「Azure OpenAI」を用い、生成AIが農業生産を支援する。
アグロズはこうした技術をひっさげて、インドネシア、タイといった近隣諸国や中東でも植物工場を展開する計画だ。
21世紀の今でも、東南アジアの農業はテクノロジーからほど遠い世界にある。インドネシアでは特に、人口の40%は農業に従事しているとされ、先端技術の導入も進んでいないため、多くの商機があるとみている。一方、中東ではオマーン政府などから、同国での大規模植物工場設立について提案を受けているという。
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