大塚ホールディングス(HD)が、看板製品に当たる健康飲料「ポカリスエット」のインド投入を検討している。同国販売を念頭に新しい現地法人を3月に設立したことがNNAの取材で分かった。人口増や所得増が進むインドで、スポーツ時の補給を含む市場創出に一から挑み、将来的な販売拡大に期待を寄せる。【鈴木健太、Atul Ranjan】
大塚ホールディングスがインド販売を検討している健康飲料「ポカリスエット」。粉末やペットボトル入り、缶入りなど、どんな種類の商品を投入するかにも注目だ=6月(NNA撮影)
インド企業省の資料によると、新会社名は「大塚ニュートラシューティカル・インディア」。3月4日、西部グジャラート州アーメダバード近郊のサナンドで設立した。同14日には取締役会を開き、会計監査人を選んだ。
NNAの取材によると、新会社は、大塚製薬(東京都千代田区)と大塚製薬インド(サナンド)の2社が出資し、大塚グループによる独資企業。ポカリスエットの輸入やマーケティング、販売をインドで行い、将来的には現地生産も視野に入れている。
並行輸入とみられる商品はインドで見かけるものの、大塚グループとしてはこれまで、ポカリスエットを同国で販売していない。販売を始める場合は、インドネシアなど国外の主力工場から製品をインドに輸入し、供給するもようだ。販売の開始時期は不明だが、戦略策定などに一定の時間がかかるため、現時点から半年以上はかかる見通しだ。
ポカリスエットは、発汗で失った水分やイオン(電解質)をスムーズに補給できる健康飲料。体液に近い成分を適切な濃度で含んだ電解質溶液で、体内にすばやく吸収される。大塚グループは、スポーツ時だけでなく、仕事中や入浴前後、就寝前、起床時などさまざまシーンで「渇いたからだを潤す」と日頃からアピールしている。
インドのスポーツ飲料市場は、米ペプシコの「ゲータレード」など一部製品が売られているが、まだゼロに等しい。国民的スポーツであるクリケットや人気が近年高いマラソンを通じ、製品の魅力をいかに伝えることができるか。入念な宣伝計画が必要になりそうだ。
■輸液事業の供給網活用か
大塚グループは元々、大塚製薬インドを通じ、点滴に用いる生理食塩水など基礎輸液や臨床栄養製品の製造販売にインドで取り組み、病院などへの供給網を持っている。そうした供給網を活用し、発熱時の水分補給飲料として認知度を上げる方法もある。
インドで機能性を理解してもらいながら市場創出に挑む点は、インド販売を2008年10月に始めたヤクルトに似ている。同社の場合、ヤクルトレディが顧客一人一人に機能性を丁寧に説明。15年以上かけ、1日当たり20万本以上を売る今の地位を築いた。インド市場に詳しい関係者の一人は「時間はかかるかもしれないが、ポカリの良さを地道に訴えれば成功すると思う」と話した。
ポカリ販売が軌道に乗れば、インドネシアなどのように、炭酸栄養飲料「オロナミンC」や大豆バー「SOYJOY(ソイジョイ)」といった大塚グループの別商品投入も検討するとみられる。
■20以上の国・地域で販売
ポカリスエットは1980年4月、日本で発売。その後、82年の台湾を皮切りに、販売国・地域を世界各地に広げた。現在は東アジアや東南アジア、中東、メキシコなど20以上の国・地域で販売する。生産工場は、日本、韓国、中国、台湾、インドネシア、タイの6カ国・地域にある。
大塚HDの2023年12月期連結決算は、売上高が2兆185億円、純利益が1,216億円。ポカリスエットの年間販売量は日本が前年比1.4%増の2,778万ケース、海外が5.2%増の3,650万ケース。海外の販売量が日本をすでに上回っている。
■ノンアル飲料市場は189億ドル
独調査会社スタティスタによると、ボトルウオーターや炭酸飲料、果物・野菜ジュースなど、インドのノンアルコール飲料市場は24年に189億米ドル(約3兆円)に達する見通しだ。うち9割弱は、レストランやバーではなく、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで売る家庭向け商品で、市場規模は165億7,000万米ドル。この家庭向け商品の販売額は、24~28年までの間、年平均成長率(CAGR)6.72%で市場が拡大する。
主要メーカーは米コカ・コーラやペプシコ、オーストリアのレッドブル、仏ダノン、米キューリグ・ドクター・ペッパー。最近は、健康上の利点があるなど、機能性が高い商品への人気が高まっている。
大塚グループの中で、ポカリスエットの製造販売は大塚製薬が手がけている。同社の広報担当者はNNAの取材に対し、「3月に当社グループ会社の登記が完了したのは事実」などとしつつ、新会社の事業内容については「具体的な業務を開始していないため、詳細は控えたい」とコメントした。
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NNAの取材によると、新会社は、大塚製薬(東京都千代田区)と大塚製薬インド(サナンド)の2社が出資し、大塚グループによる独資企業。ポカリスエットの輸入やマーケティング、販売をインドで行い、将来的には現地生産も視野に入れている。
並行輸入とみられる商品はインドで見かけるものの、大塚グループとしてはこれまで、ポカリスエットを同国で販売していない。販売を始める場合は、インドネシアなど国外の主力工場から製品をインドに輸入し、供給するもようだ。販売の開始時期は不明だが、戦略策定などに一定の時間がかかるため、現時点から半年以上はかかる見通しだ。
ポカリスエットは、発汗で失った水分やイオン(電解質)をスムーズに補給できる健康飲料。体液に近い成分を適切な濃度で含んだ電解質溶液で、体内にすばやく吸収される。大塚グループは、スポーツ時だけでなく、仕事中や入浴前後、就寝前、起床時などさまざまシーンで「渇いたからだを潤す」と日頃からアピールしている。
インドのスポーツ飲料市場は、米ペプシコの「ゲータレード」など一部製品が売られているが、まだゼロに等しい。国民的スポーツであるクリケットや人気が近年高いマラソンを通じ、製品の魅力をいかに伝えることができるか。入念な宣伝計画が必要になりそうだ。
■輸液事業の供給網活用か
大塚グループは元々、大塚製薬インドを通じ、点滴に用いる生理食塩水など基礎輸液や臨床栄養製品の製造販売にインドで取り組み、病院などへの供給網を持っている。そうした供給網を活用し、発熱時の水分補給飲料として認知度を上げる方法もある。
インドで機能性を理解してもらいながら市場創出に挑む点は、インド販売を2008年10月に始めたヤクルトに似ている。同社の場合、ヤクルトレディが顧客一人一人に機能性を丁寧に説明。15年以上かけ、1日当たり20万本以上を売る今の地位を築いた。インド市場に詳しい関係者の一人は「時間はかかるかもしれないが、ポカリの良さを地道に訴えれば成功すると思う」と話した。
ポカリ販売が軌道に乗れば、インドネシアなどのように、炭酸栄養飲料「オロナミンC」や大豆バー「SOYJOY(ソイジョイ)」といった大塚グループの別商品投入も検討するとみられる。
■20以上の国・地域で販売
ポカリスエットは1980年4月、日本で発売。その後、82年の台湾を皮切りに、販売国・地域を世界各地に広げた。現在は東アジアや東南アジア、中東、メキシコなど20以上の国・地域で販売する。生産工場は、日本、韓国、中国、台湾、インドネシア、タイの6カ国・地域にある。
大塚HDの2023年12月期連結決算は、売上高が2兆185億円、純利益が1,216億円。ポカリスエットの年間販売量は日本が前年比1.4%増の2,778万ケース、海外が5.2%増の3,650万ケース。海外の販売量が日本をすでに上回っている。
■ノンアル飲料市場は189億ドル
独調査会社スタティスタによると、ボトルウオーターや炭酸飲料、果物・野菜ジュースなど、インドのノンアルコール飲料市場は24年に189億米ドル(約3兆円)に達する見通しだ。うち9割弱は、レストランやバーではなく、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで売る家庭向け商品で、市場規模は165億7,000万米ドル。この家庭向け商品の販売額は、24~28年までの間、年平均成長率(CAGR)6.72%で市場が拡大する。
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