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高齢女性の労働参加率が上昇高齢化社会へ、社会保障が課題

高齢化社会の到来を前に、マレーシアでは法令上の定年年齢である60歳を過ぎても働く人が増加している。2023年時点で60~64歳の女性の約5人に1人が働いていた。自営業が多い華人系の女性が目立つ。背景には社会保障の不足などが指摘されているが、当事者からは「健康を維持するためにも、体が動く限り働き続けたい」との声も聞かれる。

マレーシアでは60歳の定年を過ぎても働く女性が増えている。特に、自営業の華人系女性の増加が寄与している=4日、クアラルンプール(NNA撮影)

マレーシア統計局のデータによると、23年時点で60~64歳の女性の労働参加率は20.9%で、22年との比較では5ポイント増加した。特に都市部は前年から6ポイント増の21.2%と、地方よりも伸びが目立つ。
スター(電子版)によると、統計局のモハド・ウジル・マヒディン局長は「労働参加率の上昇は主に、華人系女性の自営業者が増加したためだ」と指摘した。
民族別に見ると、同年代の華人系の女性の労働参加率は36.5%と、ブミプトラ(マレー系と先住民の総称)の14.1%、インド系の12.3%と比べて突出している。いずれの民族も新型コロナウイルスの感染が拡大した20~22年にかけて労働参加率が下降したが、華人系は23年になって大きく増加したのも特徴だ。
モハド・ウジル氏によると、60~64歳の華人系女性の就業者は6万7,500人で、68%が企業の従業員、26.4%が自営業者だった。多くは食品販売、露天商、市場などで働いているという。
マレーシア・プトラ大学マレーシア高齢化研究所のチャイ・センティン上級研究員は「この年代の女性は若い頃に教育や仕事の機会が少なく、正規の労働力として働くためのハードルが高かった」と指摘。経済的なセーフティーネットを持たない人が多いため、高齢になっても働き続ける人が多いという。
一方、60~64歳の男性の労働参加率は、23年に前年から4.9ポイント低下した。男性は正規の職に就くことが多く、公的年金に当たる従業員積立基金(EPF)などの備えがある。それでも49.1%の人が働いており、生活費が上昇する中で、定年年齢を過ぎても働き続けることが重要になっているようだ。

■活動的であることが重要
国民の平均年齢が若く人口ボーナス期にあるマレーシアでも、40年までに60歳以上の人口が人口の17%に達し、高齢化社会が到来すると予想されている。出生時の平均寿命は、1970年の61.6歳から2023年には74.8歳に延びた。
華人系女性の平均寿命は80.2歳で、全民族の男女で最も長い。高齢になっても働き続ける人の多くは、経済的理由とともに、活動的であることで人生を充実させようという意識があるようだ。
首都クアラルンプール中心部で、オフィスワーカー向けのフードトラックを運営するジェニー・チャンさん(64)も、働くことに喜びを見いだしている一人だ。
ジェニーさんは看護学校で学び、大学病院や民間診療所に勤めた経験があるが、結婚や家族の病気がきっかけで看護師を辞めた。その後、ホーカーの屋台で調理の仕事をする傍ら、35年間にわたりスクールバスの運転手を務めた。数年前に息子が始めたフードトラックが軌道に乗ったことで、運転手を辞めて全面的に手伝うようになったという。日替わりで店頭に並ぶ色とりどりのおかずやめん類、中華風のデザートなど全てジェニーさんの手作りだ。毎朝3時に起きて、家事やフードトラックの仕込みをする。
先日は転んで足にけがをしたが、すぐ仕事に復帰した。楽しみはたまに出かける旅行で、生活費を除いたフードトラックの収益は息子に渡し、引退後の蓄えなどは特段気にしていないという。ジェニーさんは活動的であることが健康維持のこつだと考えており、「料理が大好きだから、体が動く限り働き続けたい」と話した。

「体が動く限り働き続けたい」と話すジェニーさん。看護師からホーカー、スクールバス運転手、フードトラックとマルチタスクで家族を支えてきた=4日、クアラルンプール(NNA撮影)
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スター(電子版)によると、統計局のモハド・ウジル・マヒディン局長は「労働参加率の上昇は主に、華人系女性の自営業者が増加したためだ」と指摘した。
民族別に見ると、同年代の華人系の女性の労働参加率は36.5%と、ブミプトラ(マレー系と先住民の総称)の14.1%、インド系の12.3%と比べて突出している。いずれの民族も新型コロナウイルスの感染が拡大した20~22年にかけて労働参加率が下降したが、華人系は23年になって大きく増加したのも特徴だ。
モハド・ウジル氏によると、60~64歳の華人系女性の就業者は6万7,500人で、68%が企業の従業員、26.4%が自営業者だった。多くは食品販売、露天商、市場などで働いているという。
マレーシア・プトラ大学マレーシア高齢化研究所のチャイ・センティン上級研究員は「この年代の女性は若い頃に教育や仕事の機会が少なく、正規の労働力として働くためのハードルが高かった」と指摘。経済的なセーフティーネットを持たない人が多いため、高齢になっても働き続ける人が多いという。
一方、60~64歳の男性の労働参加率は、23年に前年から4.9ポイント低下した。男性は正規の職に就くことが多く、公的年金に当たる従業員積立基金(EPF)などの備えがある。それでも49.1%の人が働いており、生活費が上昇する中で、定年年齢を過ぎても働き続けることが重要になっているようだ。

■活動的であることが重要
国民の平均年齢が若く人口ボーナス期にあるマレーシアでも、40年までに60歳以上の人口が人口の17%に達し、高齢化社会が到来すると予想されている。出生時の平均寿命は、1970年の61.6歳から2023年には74.8歳に延びた。
華人系女性の平均寿命は80.2歳で、全民族の男女で最も長い。高齢になっても働き続ける人の多くは、経済的理由とともに、活動的であることで人生を充実させようという意識があるようだ。
首都クアラルンプール中心部で、オフィスワーカー向けのフードトラックを運営するジェニー・チャンさん(64)も、働くことに喜びを見いだしている一人だ。
ジェニーさんは看護学校で学び、大学病院や民間診療所に勤めた経験があるが、結婚や家族の病気がきっかけで看護師を辞めた。その後、ホーカーの屋台で調理の仕事をする傍ら、35年間にわたりスクールバスの運転手を務めた。数年前に息子が始めたフードトラックが軌道に乗ったことで、運転手を辞めて全面的に手伝うようになったという。日替わりで店頭に並ぶ色とりどりのおかずやめん類、中華風のデザートなど全てジェニーさんの手作りだ。毎朝3時に起きて、家事やフードトラックの仕込みをする。
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