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中国勢、成長市場攻略に本腰車の祭典開幕、BYD初参加

ベトナム自動車業界の祭典ベトナム・モーターショーが23日、南部ホーチミン市で開幕した。メルセデス・ベンツやアウディ、フォルクスワーゲン(VW)などの欧州メーカーが出展を見送る一方、中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD)が初出展し、タイやインドネシアに続く東南アジアの成長市場攻略に本腰を入れ始めた。日本メーカーはいずれもEVは時期尚早との姿勢で、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車(HV)を充実させる販売戦略で足並みをそろえた。

2年ぶりとなるベトナム・モーターショーが23日開幕した=南部ホーチミン市7区

ベトナム・モーターショーはベトナム自動車工業会(VAMA)とベトナム自動車輸入業者協会(VIVA)などで組織する運営団体の主催。23年は自動車市場需要の低迷により開催されず、2年ぶりの開催となる。会場は同市7区のサイゴン展示会議センター(SECC)で、27日までの期間中、23万人以上の来場が見込まれている。
■欧州主要メーカーが参加見送り
今回のモーターショーは、メルセデス・ベンツやアウディ、VW、ボルボ、米フォードなどの欧州と米国の主要メーカーが参加を見送った。VWは、中国市場での販売不振や母国市場への中国勢の攻勢を受けて業績不振に陥り、コスト削減計画を進めている。1937年の創業以来初めて本拠地のドイツで工場の一部閉鎖を検討しているほか、中国でも人員削減に乗り出している。厳しい経営状況が続いていることを受けて、ベトナム市場の攻略をいったん先送りしたとみられる。代わりに、傘下のチェコの自動車メーカー「シュコダ」が初めて参加し、将来への布石を残した。
欧州メーカーや地場のEVメーカー、ビンファストが不参加のモーターショーで今年ひときわ注目を集めたのが中国のEV最大手BYDだ。
同社はベトナムで新たに販売するEVの多目的車(MPV)「M6」とセダン「HAN(漢)」など全7車種展示した。他国で販売している「DENZA(騰勢)」の「D9」とスポーツタイプ多目的車(SUV)「仰望U8」もベトナムでお披露目した。「M6」の販売価格は7億5,600万ドン(約451万円)から、HANの販売価格は14億8,900万ドンから。BYDベトナムのオーヤン・シャオチェン最高経営責任者(CEO)はNNAに「ベトナム市場での販売は想定以上に好調」と手応えの良さに胸を張った。現状では充電網が未整備なことなどから「省をまたぐ長距離の移動をしたい人には響かないが、主に市内移動が目的の人が中心に購入し、9月の販売は300台を超えた」という。
当面の販売目標は明かさなかったが、現在約20あるディーラー店を年末までに30~35店まで増やし、「協力して国内でのブランド認知度を高めていきたい」と強調した。
同社は7月からベトナム市場に本格参入し、小型ハッチバック「ドルフィン(中国名:海豚)」、セダン「シール(中国名:海豹)」、SUV「ATTO3(アットスリー、中国名:元プラス)」のEV3モデルを販売している。新たに販売するM6とHANを加えて、ベトナム市場での販売は5車種となる。「BYDはタイでは日系メーカーの市場を侵食し始めている。ベトナムもその二の舞にならないといいが」。同社のブースでは、日系メーカーの販売を支援する大手商社関係者なども販売方針の説明などに熱心に耳を傾けていた。

ベトナム・モーターショー初参加となる中国BYDのブースには大勢の報道陣や業界関係者が詰めかけた

■トヨタ、国内工場の稼働率上昇目指す
ベトナムで販売台数首位のトヨタは、セダン「カムリ」の新型HVモデルやEVコンセプトカー「FTー3e」などを展示した。トヨタの現地法人トヨタ・ベトナム(TMV)の仲野敬太社長は、9月から11月まで行われる国産車の登録料の半減措置が功を奏したことにより国内での販売が回復していると説明。この勢いが年末まで持続し、国内の新車市場全体で2年ぶりに約35万台の大台を回復することに期待を示した。国内工場で組み立てる完全ノックダウン(CKD)車の販売をさらに伸ばし、現在は生産能力の4割弱にとどまる稼働率の引き上げも課題だ。
ベトナム市場でEV勢の存在感が増していることについて、仲野氏は「顧客の選択肢が増えるのは良いこと」と静観する姿勢を示し、同社としては引き続き小型から大型までバランスよくガソリン車と、HVのラインアップを充実させていく方針だと説明した。
■ホンダ、「シビック」新モデルなどを展示
ホンダは、ベトナム市場で今月28日から販売を開始するセダン「シビック」のHVモデルなど新型9車種を展示した。「シビック」ハイブリッドの販売価格は9億9,999万ドンから。
ホンダ・ベトナム(HVN)の杉田宏治社長はNNAに対し、出展車について「カーボンニュートラルへの取り組みを進める中でも、乗る楽しみを大切にし続ける姿勢を打ち出した」と語った。
杉田氏はベトナムの自動車市場について「現状のインフラ環境や市場動向をみるとEVへの転換が急激に起きる可能性は低い」と述べ、環境対応は当面HVのラインアップ強化に注力する姿勢をみせた。来年も新たな新型HVモデルを発表する予定だという。
バイクについては、ベトナム初投入となる電動モペット(スクーター)「ICON e」などを展示した。来春にも販売を始める予定。
■三菱自動車、30周年記念特別モデル

三菱自動車「エクスフォース」のベトナム進出30周年記念モデル

三菱自動車はベトナムでの事業を開始して今年で30周年を迎えることを記念し、新型SUV「エクスフォース」と多目的車(MPV)「エクスパンダー」、コンパクトセダン「アトラージュ」の30周年記念特別モデルなどを展示した。3モデル合わせて650台の台数限定で販売する。販売価格は通常モデルと据え置き。
9月に販売開始したピックアップトラック「トライトン」も展示した。三菱自動車ベトナム(MMV)の柳川智樹社長はトライトンについて、販売台数は目標通りで推移しており、手応えを感じていると語った。環境対応については、「多くの人に普及してこその環境車だ」として、国内での充電網の未整備などを踏まえてEV販売を急がず、HVやプラグインハイブリッド車(PHV)を投入していく方針を示した。
■いすゞ、「LCVの認知を高める」
いすゞは、ピックアップトラック「D—MAX」の最新モデルなどを展示した。タイでは昨年の10月から販売されており、ベトナム市場では今年10月から販売する。いすゞベトナムの河野匡樹氏は、同社のトラックの認知は高く南部ホーチミン市ではシェア6割程度を占めるが、ピックアップを含む小型商用車(LCV)の認知は高くない。モーターショーの機会も使ってLCVの認知も高めていきたいと意気込みを語った。EVについては、価格の高さや充電網の未整備などを背景に、ベトナムでのEV販売は現時点で明確なロードマップ(行程表)はないと説明した。
そのほか、◇中国の広州汽車集団(広汽集団、GACグループ)◇SUBARU(スバル)◇スズキ◇中国・上海汽車集団(上汽集団、SAICモーター)傘下のMG◇ロシア・GAZグループ——などが参加した。
■今回も地場ビンファストは不参加
地場EVメーカーのビンファストも前回の22年に引き続き今回も参加を見送った。国内シェアで日本勢に匹敵する韓国・現代自動車も参加しなかった。
ビンファストは9月に9,300台以上の自動車を顧客に引き渡し、ベトナム市場で単月で首位になったと発表したが、多くは系列の配車・タクシー会社などへの販売とみられており、一般消費者向け市場では日系や韓国メーカーなどの後塵(こうじん)を拝している。
地元メディアのベトナムネットは、ベトナムでは複数の国際的な有名メーカーが参加しないことで、モーターショー自体の魅力が薄れていると主張。そのことが収益が苦しい欧州メーカーなどが参加を見送った一因だと分析した。

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ベトナム・モーターショーはベトナム自動車工業会(VAMA)とベトナム自動車輸入業者協会(VIVA)などで組織する運営団体の主催。23年は自動車市場需要の低迷により開催されず、2年ぶりの開催となる。会場は同市7区のサイゴン展示会議センター(SECC)で、27日までの期間中、23万人以上の来場が見込まれている。
■欧州主要メーカーが参加見送り
今回のモーターショーは、メルセデス・ベンツやアウディ、VW、ボルボ、米フォードなどの欧州と米国の主要メーカーが参加を見送った。VWは、中国市場での販売不振や母国市場への中国勢の攻勢を受けて業績不振に陥り、コスト削減計画を進めている。1937年の創業以来初めて本拠地のドイツで工場の一部閉鎖を検討しているほか、中国でも人員削減に乗り出している。厳しい経営状況が続いていることを受けて、ベトナム市場の攻略をいったん先送りしたとみられる。代わりに、傘下のチェコの自動車メーカー「シュコダ」が初めて参加し、将来への布石を残した。
欧州メーカーや地場のEVメーカー、ビンファストが不参加のモーターショーで今年ひときわ注目を集めたのが中国のEV最大手BYDだ。
同社はベトナムで新たに販売するEVの多目的車(MPV)「M6」とセダン「HAN(漢)」など全7車種展示した。他国で販売している「DENZA(騰勢)」の「D9」とスポーツタイプ多目的車(SUV)「仰望U8」もベトナムでお披露目した。「M6」の販売価格は7億5,600万ドン(約451万円)から、HANの販売価格は14億8,900万ドンから。BYDベトナムのオーヤン・シャオチェン最高経営責任者(CEO)はNNAに「ベトナム市場での販売は想定以上に好調」と手応えの良さに胸を張った。現状では充電網が未整備なことなどから「省をまたぐ長距離の移動をしたい人には響かないが、主に市内移動が目的の人が中心に購入し、9月の販売は300台を超えた」という。
当面の販売目標は明かさなかったが、現在約20あるディーラー店を年末までに30~35店まで増やし、「協力して国内でのブランド認知度を高めていきたい」と強調した。
同社は7月からベトナム市場に本格参入し、小型ハッチバック「ドルフィン(中国名:海豚)」、セダン「シール(中国名:海豹)」、SUV「ATTO3(アットスリー、中国名:元プラス)」のEV3モデルを販売している。新たに販売するM6とHANを加えて、ベトナム市場での販売は5車種となる。「BYDはタイでは日系メーカーの市場を侵食し始めている。ベトナムもその二の舞にならないといいが」。同社のブースでは、日系メーカーの販売を支援する大手商社関係者なども販売方針の説明などに熱心に耳を傾けていた。
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■トヨタ、国内工場の稼働率上昇目指す
ベトナムで販売台数首位のトヨタは、セダン「カムリ」の新型HVモデルやEVコンセプトカー「FTー3e」などを展示した。トヨタの現地法人トヨタ・ベトナム(TMV)の仲野敬太社長は、9月から11月まで行われる国産車の登録料の半減措置が功を奏したことにより国内での販売が回復していると説明。この勢いが年末まで持続し、国内の新車市場全体で2年ぶりに約35万台の大台を回復することに期待を示した。国内工場で組み立てる完全ノックダウン(CKD)車の販売をさらに伸ばし、現在は生産能力の4割弱にとどまる稼働率の引き上げも課題だ。
ベトナム市場でEV勢の存在感が増していることについて、仲野氏は「顧客の選択肢が増えるのは良いこと」と静観する姿勢を示し、同社としては引き続き小型から大型までバランスよくガソリン車と、HVのラインアップを充実させていく方針だと説明した。
■ホンダ、「シビック」新モデルなどを展示
ホンダは、ベトナム市場で今月28日から販売を開始するセダン「シビック」のHVモデルなど新型9車種を展示した。「シビック」ハイブリッドの販売価格は9億9,999万ドンから。
ホンダ・ベトナム(HVN)の杉田宏治社長はNNAに対し、出展車について「カーボンニュートラルへの取り組みを進める中でも、乗る楽しみを大切にし続ける姿勢を打ち出した」と語った。
杉田氏はベトナムの自動車市場について「現状のインフラ環境や市場動向をみるとEVへの転換が急激に起きる可能性は低い」と述べ、環境対応は当面HVのラインアップ強化に注力する姿勢をみせた。来年も新たな新型HVモデルを発表する予定だという。
バイクについては、ベトナム初投入となる電動モペット(スクーター)「ICON e」などを展示した。来春にも販売を始める予定。
■三菱自動車、30周年記念特別モデル[caption id="attachment_22852" align="aligncenter" width="620"]三菱自動車「エクスフォース」のベトナム進出30周年記念モデル[/caption]
三菱自動車はベトナムでの事業を開始して今年で30周年を迎えることを記念し、新型SUV「エクスフォース」と多目的車(MPV)「エクスパンダー」、コンパクトセダン「アトラージュ」の30周年記念特別モデルなどを展示した。3モデル合わせて650台の台数限定で販売する。販売価格は通常モデルと据え置き。
9月に販売開始したピックアップトラック「トライトン」も展示した。三菱自動車ベトナム(MMV)の柳川智樹社長はトライトンについて、販売台数は目標通りで推移しており、手応えを感じていると語った。環境対応については、「多くの人に普及してこその環境車だ」として、国内での充電網の未整備などを踏まえてEV販売を急がず、HVやプラグインハイブリッド車(PHV)を投入していく方針を示した。
■いすゞ、「LCVの認知を高める」
いすゞは、ピックアップトラック「D—MAX」の最新モデルなどを展示した。タイでは昨年の10月から販売されており、ベトナム市場では今年10月から販売する。いすゞベトナムの河野匡樹氏は、同社のトラックの認知は高く南部ホーチミン市ではシェア6割程度を占めるが、ピックアップを含む小型商用車(LCV)の認知は高くない。モーターショーの機会も使ってLCVの認知も高めていきたいと意気込みを語った。EVについては、価格の高さや充電網の未整備などを背景に、ベトナムでのEV販売は現時点で明確なロードマップ(行程表)はないと説明した。
そのほか、◇中国の広州汽車集団(広汽集団、GACグループ)◇SUBARU(スバル)◇スズキ◇中国・上海汽車集団(上汽集団、SAICモーター)傘下のMG◇ロシア・GAZグループ——などが参加した。
■今回も地場ビンファストは不参加
地場EVメーカーのビンファストも前回の22年に引き続き今回も参加を見送った。国内シェアで日本勢に匹敵する韓国・現代自動車も参加しなかった。
ビンファストは9月に9,300台以上の自動車を顧客に引き渡し、ベトナム市場で単月で首位になったと発表したが、多くは系列の配車・タクシー会社などへの販売とみられており、一般消費者向け市場では日系や韓国メーカーなどの後塵(こうじん)を拝している。
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