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川上から一貫生産体制を構築変革期の越アルミ産業(上)

ベトナムのアルミ産業が変革期を迎えている。ボーキサイトの埋蔵量は世界2位にもかかわらず、従来はアルミ製品の材料となる新地金を輸入に頼っていたが、政府は精錬や電解といった川上工程の振興に本腰を入れ始めた。中部では民間企業が国内初となるアルミナの電気分解工場を建設中で、稼働すれば新地金の国内生産が可能になる。これまで輸出に回されてきたアルミナを国内で電解できるようになれば、ボーキサイトの有効活用の道が開かれ世界のアルミサプライチェーン(供給網)での地位向上が期待できる。
米地質調査所(USGS)によると、ベトナムのボーキサイトの埋蔵量は2024年基準で58億トンと、ギニアの74億トンに続いて世界2位。ベトナムのボーキサイト鉱山は全国に75カ所あり、うちダクノン省が29カ所、中部ラムドン省が22カ所と中部高原に集中する。
ただ韓国の大韓貿易投資振興公社(KOTRA)によれば、ボーキサイトから精製され、アルミの中間原料となるアルミナのベトナムでの生産量は、全世界の0.9~1%にとどまる。国内での精錬能力の増強は長年の課題だ。
■30年にアルミナ生産3倍に
豊富なボーキサイトの埋蔵量を生かすべくアルミナの製錬所の整備に取り組んでいるのが、ベトナム石炭鉱産グループ(ビナコミン)だ。ビナコミンが操業するラムドン省タンライとダクノン省ニャンコーの既存2カ所の精錬所のアルミナ生産能力はそれぞれ年65万トンだが、30年までに各200万トンに引き上げる計画だ。
ダクノン省では、新たに4件のボーキサイト採掘とアルミナ精錬を行う複合施設の開発計画が進んでいる。うち1件は、エネルギー・鉱物資源事業や不動産事業などを展開する地場ベトフオン・グループ(VPG)が年産能力100万~200万トンのアルミナ工場複合施設の建設を提案している。投資額は21兆ドン(約1,224億円)余り。ボーキサイトの埋蔵量は1億トン近くで、採掘期間は30年余りを想定している。

■初の電解工場建設へ
ダクノン省ではさらに、アルミナを電解して新地金を製造する工場を民間企業のチャンホンクアン冶金が建設中だ。
国内初となる電解工場は26年第2四半期(4~6月)の稼働を目指しており、年産規模は15万トン。27年第2四半期には30万トン、28年第1四半期(1~3月)には45万トンに引き上げる計画だ。
電解工場が稼働すれば、原料となるアルミナの輸出を減らして国内生産に振り向けることが可能になると期待されているが、アルミ製品の一貫生産には加工技術の集積という課題が残る。
業界関係者はNNAに対し、「ベトナムには押出工場はあるものの、圧延メーカーがないため、ベトナムで生産したアルミ地金は国内だけで消費できず国外にも輸出されるのではないか」と指摘する。
■南部でもアルミナ生産
新たなボーキサイト鉱脈の採掘も計画されている。南部ビンフオック省では、ビンフオック鉱石採掘社がボーキサイトの採掘・選鉱・アルミナ加工生産コンプレックスの建設を計画している。アルミナの年産能力は約200万トンを予定する。
ビンフオック省のボーキサイト鉱脈は、10年にベトナム鉱山科学技術研究所(VIMSAT)が発見した。埋蔵量は約10億トンと報じられている。
コンプレックスの総投資額は約22兆7,800億ドン。第1期は26年第2四半期に着工し、30年第1四半期の完成、第2期は29年第2四半期に着工し、31年第4四半期(10~12月)の完成を目指す。
業界関係者は「ベトナムはボーキサイトが潤沢にあることから、アルミナやアルミ地金などの川上事業として有望な投資先だ」と話している。

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■30年にアルミナ生産3倍に
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■初の電解工場建設へ
ダクノン省ではさらに、アルミナを電解して新地金を製造する工場を民間企業のチャンホンクアン冶金が建設中だ。
国内初となる電解工場は26年第2四半期(4~6月)の稼働を目指しており、年産規模は15万トン。27年第2四半期には30万トン、28年第1四半期(1~3月)には45万トンに引き上げる計画だ。
電解工場が稼働すれば、原料となるアルミナの輸出を減らして国内生産に振り向けることが可能になると期待されているが、アルミ製品の一貫生産には加工技術の集積という課題が残る。
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■南部でもアルミナ生産
新たなボーキサイト鉱脈の採掘も計画されている。南部ビンフオック省では、ビンフオック鉱石採掘社がボーキサイトの採掘・選鉱・アルミナ加工生産コンプレックスの建設を計画している。アルミナの年産能力は約200万トンを予定する。
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