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【ポストコロナ 新潮流】シェア自転車が新たな足に4都市展開、バイク社会に風穴も

ベトナムで自転車シェアサービスが順調に拡大している。新型コロナウイルス禍を機に人々の健康意識が高まり、ガソリン価格の高騰がコスト意識に拍車を掛けたことも理由だ。昨年12月に南部ホーチミン市で試行が始まったサービスは、すでに首都ハノイなど4省市に広がった。政府の旗振りで環境への意識も芽生える中、自転車は世界一の「バイク大国」に風穴を開けつつあるようにみえる。【濱田慎平、Lan Phuong】

健康意識の向上などを追い風に、シェア自転車の利用が拡大している(チーナム・グループ提供)

南部ホーチミン市中心部を歩くと、バイクの群れの中にライトブルーの自転車にまたがる若者を見かける機会が増えてきた。地場IT企業チーナム・グループの自転車シェアサービス「TNGO」の利用者だ。
■「安くて使いやすい」
「今回が初めての利用だが、アプリは使いやすいし利用料金も安い」。同市中心部の1区で男子高校生のチュオン・ティエン・カインさん(18歳)が、笑顔で答えてくれた。今後も週末には学校の友達とシェア自転車を借りて町を散策する予定だといい、「自転車のおかげで行動範囲が広くなった」と喜ぶ。
ダン・ゾン・ミーさん(23歳・女性)は、「普段はバイクで移動することが多いが、気分転換の際にたまに利用するのにちょうどいい」と話した。

「TNGO」のアプリのスクリーンショット。最寄りの駐輪ステーションを検索できるほか、現在の駐輪台数も把握できる

TNGOの利用料は1台30分に付き5,000ドン(約0.21米ドル、約29円)。5万ドンの1日利用チケットなども選択できる。電子決済ブランド「ZaloPay(ザロペイ)」や「MoMo(モモ)」などを介して支払う仕組みだ。ホーチミン市内では、バス停や公園、観光名所など43カ所に駐輪ステーション(貸し出しと返却ができる保管施設)が設置されており、自転車には衛星利用測位システム(GPS)機能付きの小型錠が付き、専用アプリを使って施錠・解錠する。
■健康意識向上も追い風
チーナム・グループ傘下でシェア自転車事業を担当するチーナム・デジタル交通サービス社のドー・バー・クアン社長はNNAに対し、6月時点のアプリ登録者数はホーチミン市内で約18万人だと明かし、「想定を上回るペースで利用者が増えている」と説明した。年末までに登録者数80万人の達成を目標にしているという。
同社は今年5月以降に首都ハノイ、北部ハイズオン省、南部バリアブンタウ省にもサービスを広げており、今後も対象エリアを増やす方針だ。
事業急拡大の追い風になったのが、新型コロナによる巣ごもり生活で市民が健康により価値を見いだすようになったことだ。クアン氏は、移動手段としてだけではなく、「手軽な運動手段としてシェア自転車を利用する人が多い」ことを当初から予想していたという。
新型コロナの流行とほぼ同時期に意識が芽生えた「脱炭素社会」を目指す意識も高まっており、クアン氏は「バイクから自転車への転換は思ったより早く起きるだろう」との見方を示した。

「TNGO」の駐輪ステーション=10日、ホーチミン市1区

ベトナムでは、今年3月から外国人観光客の受け入れも約2年ぶりに全面再開した。同社は外国人観光客向けのシェア自転車サービスを計画中だ。クアン氏は「(バイクタクシーなどに代わる)新しい観光スタイルとして定着することを期待している」と述べた。
■着実な変化、自転車通勤も増加
ベトナムでは、依然としてバイクが道路を埋め尽くす光景が日常だが、通勤の足として自転車を見直す動きも出始めている。
VNエクスプレスによると、ハノイやホーチミンなどの大都市では、会員制交流サイト(SNS)上で、自転車通勤を呼び掛けるグループが50以上活動し、共感の輪が広がっている。特に今年以降のガソリン価格高騰を受けて、通勤費を切り詰める人が増えたことも自転車を見直す動きにつながっているという。
 ◆  ◆
新型コロナウイルスの感染収束に伴い、ベトナム経済が復活を遂げている。従来の生活のすべてに困難をもたらしたパンデミックが人々の意識や生活様式に与えた影響は大きい。
「健康志向」「キャッシュレス」「Z世代」などをキーワードに、コロナ禍を乗り越えたベトナム社会の変容を経済の現場から報告する。(随時掲載)

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南部ホーチミン市中心部を歩くと、バイクの群れの中にライトブルーの自転車にまたがる若者を見かける機会が増えてきた。地場IT企業チーナム・グループの自転車シェアサービス「TNGO」の利用者だ。
■「安くて使いやすい」
「今回が初めての利用だが、アプリは使いやすいし利用料金も安い」。同市中心部の1区で男子高校生のチュオン・ティエン・カインさん(18歳)が、笑顔で答えてくれた。今後も週末には学校の友達とシェア自転車を借りて町を散策する予定だといい、「自転車のおかげで行動範囲が広くなった」と喜ぶ。
ダン・ゾン・ミーさん(23歳・女性)は、「普段はバイクで移動することが多いが、気分転換の際にたまに利用するのにちょうどいい」と話した。[caption id="attachment_5398" align="aligncenter" width="620"]「TNGO」のアプリのスクリーンショット。最寄りの駐輪ステーションを検索できるほか、現在の駐輪台数も把握できる[/caption]
TNGOの利用料は1台30分に付き5,000ドン(約0.21米ドル、約29円)。5万ドンの1日利用チケットなども選択できる。電子決済ブランド「ZaloPay(ザロペイ)」や「MoMo(モモ)」などを介して支払う仕組みだ。ホーチミン市内では、バス停や公園、観光名所など43カ所に駐輪ステーション(貸し出しと返却ができる保管施設)が設置されており、自転車には衛星利用測位システム(GPS)機能付きの小型錠が付き、専用アプリを使って施錠・解錠する。
■健康意識向上も追い風
チーナム・グループ傘下でシェア自転車事業を担当するチーナム・デジタル交通サービス社のドー・バー・クアン社長はNNAに対し、6月時点のアプリ登録者数はホーチミン市内で約18万人だと明かし、「想定を上回るペースで利用者が増えている」と説明した。年末までに登録者数80万人の達成を目標にしているという。
同社は今年5月以降に首都ハノイ、北部ハイズオン省、南部バリアブンタウ省にもサービスを広げており、今後も対象エリアを増やす方針だ。
事業急拡大の追い風になったのが、新型コロナによる巣ごもり生活で市民が健康により価値を見いだすようになったことだ。クアン氏は、移動手段としてだけではなく、「手軽な運動手段としてシェア自転車を利用する人が多い」ことを当初から予想していたという。
新型コロナの流行とほぼ同時期に意識が芽生えた「脱炭素社会」を目指す意識も高まっており、クアン氏は「バイクから自転車への転換は思ったより早く起きるだろう」との見方を示した。
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ベトナムでは、今年3月から外国人観光客の受け入れも約2年ぶりに全面再開した。同社は外国人観光客向けのシェア自転車サービスを計画中だ。クアン氏は「(バイクタクシーなどに代わる)新しい観光スタイルとして定着することを期待している」と述べた。
■着実な変化、自転車通勤も増加
ベトナムでは、依然としてバイクが道路を埋め尽くす光景が日常だが、通勤の足として自転車を見直す動きも出始めている。
VNエクスプレスによると、ハノイやホーチミンなどの大都市では、会員制交流サイト(SNS)上で、自転車通勤を呼び掛けるグループが50以上活動し、共感の輪が広がっている。特に今年以降のガソリン価格高騰を受けて、通勤費を切り詰める人が増えたことも自転車を見直す動きにつながっているという。
 ◆  ◆
新型コロナウイルスの感染収束に伴い、ベトナム経済が復活を遂げている。従来の生活のすべてに困難をもたらしたパンデミックが人々の意識や生活様式に与えた影響は大きい。
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