NNAグローバルナビ アジア専門情報ブログ

日系、タイで脱炭素に本腰ブーム到来の太陽光発電(上)

タイに製造拠点を構える日系企業が脱炭素に本腰を入れ始めた。その最初の入り口として注目を集めているのが太陽光発電だ。電力料金の削減にもつながるだけでなく、気候変動に対する取り組みのアピールにもなる。サステナビリティー(持続可能性)という観点からも、サプライチェーン(供給・調達網)における脱炭素化の必要性も高まっており、市場は空前の盛り上がりを見せている。[2359993_1.png]
太陽光発電事業者によると、本社から脱炭素対策を取るよう求められる日系の製造業が増えているという。日射量が日本よりも多いタイでは、太陽光発電設備の導入は脱炭素に向けた企業の最初の取り組みとしては最適とされる。工場の屋根には太陽光発電設備を設置するスペースが十分あり、周囲には太陽光を遮る建物はほとんどない。
日系企業の間では、ロシアのウクライナ侵攻を発端とするエネルギーコストの上昇に対する懸念も高まっている。その点、太陽光から作られる電気は自家消費型であるため、為替や燃料価格によって変動する電気料金とは違い、価格変動の影響を受けないメリットもある。
■PPA需要が拡大
タイでは、資本力のある大手日系企業は建物の屋上や敷地の中に発電設備を自ら導入して、発電した電力を自家消費している。タイ投資委員会(BOI)の恩典を活用すれば、設備投資額を50%抑えることができる。
発電事業者と長期契約を結んで直接電力を買う「コーポレートPPA(電力購入契約)」も需要が大きい。需要家は発電した電気料金をPPA事業者に支払い、自家消費する。設備を購入する場合と比べて、初期費用と維持費を抑えられるのがメリットだ。契約期間は20年など長期となる。
関西電力のタイ子会社、関西エナジーソリューションズ(タイランド)とアルミニウム圧延日本最大手のUACJのタイ子会社、UACJタイランドは、UACJタイランドがラヨーン県で操業している工場に今年6月、太陽光発電システムを完成させた。屋上に設置した太陽光発電パネルの数は4万枚。出力は1万8,000キロワットと、発表された21年6月8日時点では世界最大規模だという。発電した電力は全て同工場に供給する。同工場で1年間に排出される二酸化炭素(CO2)の約6%に相当する約1万4,000トンの削減を見込む。
■レンタルを利用
設備をレンタルするという選択肢もある。需要家は毎月のレンタル料を払うだけで済む。センコーグループホールディングス(東京都江東区)のタイ法人、センコー・ロジスティクス・ディストリビューション(タイランド)は、東部チョンブリ県にある物流倉庫の屋上にパネル出力172.8キロワットの太陽光発電設備を設置した。エネルギー商社の伊藤忠エネクスのタイのグループ会社、ITCエネクス(タイランド)からレンタルした。太陽光パネル・モジュールやインバーターなどの必要な設備は同社が負担した。
ITCエネクス(タイランド)は、太陽光発電を効率的に使えるように、電力需要を予測して最適な容量を提案している。センコーの場合、使用電力は導入前に比べて年平均33%、CO2の排出量は年平均125トン程度、それぞれ削減できる見通しだ。
レンタルの場合、契約期間は一般に10~13年。年2回のパネル清掃や設備点検など運営・保守(O&M)も行う。期間終了後、顧客が望めば、設備を譲渡する。太陽光パネルの場合、寿命は25年くらいだという。譲渡後も、顧客からメンテナンス費用を受け取る。ITCエネクス(タイランド)の相川晃次郎社長は「累計の契約件数は3年間で100件まで増やしたい」と手応えを感じている様子だ。
[2359993_2.jpg]
■JCMを活用
食品大手プリマハムの現地法人プリマハムフーズ・タイランドは、首都バンコク東郊サムットプラカン県で操業する工場の屋上に出力1メガワット強の太陽光発電システムを東京センチュリーからリースする。駐車場には、太陽光パネルを載せた簡易車庫「ソーラーカーポート」も設置する。
自動車部品などの製造・販売を手がけるニチアスのタイ子会社、ニチアス・タイランドは、東部チャチュンサオ県の工場に電気使用量の約6割を補う太陽光発電システムを導入する。こちらも屋根置きタイプで、東京センチュリーからのリース。プリマハムとニチアスは、いずれも23年3月までの稼働を目指している。
東京センチュリーはタイで21年から、日本の環境省が温暖化対策技術を輸出する支援策として用意した「JCMエコリース事業」を活用した脱炭素設備のリース事業に注力している。途上国を中心とするJCMパートナー国(17カ国)を対象に温室効果ガス排出量を削減したら日本側も一部削減したとみなされる。
JCMエコリース事業は、リース料の一部を国が補助するため、企業は導入コストを低減できるメリットがある。リース期間は5年以上。東京センチュリーの担当者は「設備費用の一部を国が補助する『JCM設備補助事業』に比べてエコリース事業は手続きが簡易で、排出削減量のモニタリング期間も短いため、お客さまも活用しやすい」と説明する。設備のリース契約は、東京センチュリーのタイ連結子会社のTISCO Tokyo Leasingが担う。
[2359993_3.jpg]

object(WP_Post)#9817 (24) {
  ["ID"]=>
  int(5921)
  ["post_author"]=>
  string(1) "3"
  ["post_date"]=>
  string(19) "2022-08-17 00:00:00"
  ["post_date_gmt"]=>
  string(19) "2022-08-16 15:00:00"
  ["post_content"]=>
  string(6386) "タイに製造拠点を構える日系企業が脱炭素に本腰を入れ始めた。その最初の入り口として注目を集めているのが太陽光発電だ。電力料金の削減にもつながるだけでなく、気候変動に対する取り組みのアピールにもなる。サステナビリティー(持続可能性)という観点からも、サプライチェーン(供給・調達網)における脱炭素化の必要性も高まっており、市場は空前の盛り上がりを見せている。[2359993_1.png]
太陽光発電事業者によると、本社から脱炭素対策を取るよう求められる日系の製造業が増えているという。日射量が日本よりも多いタイでは、太陽光発電設備の導入は脱炭素に向けた企業の最初の取り組みとしては最適とされる。工場の屋根には太陽光発電設備を設置するスペースが十分あり、周囲には太陽光を遮る建物はほとんどない。
日系企業の間では、ロシアのウクライナ侵攻を発端とするエネルギーコストの上昇に対する懸念も高まっている。その点、太陽光から作られる電気は自家消費型であるため、為替や燃料価格によって変動する電気料金とは違い、価格変動の影響を受けないメリットもある。
■PPA需要が拡大
タイでは、資本力のある大手日系企業は建物の屋上や敷地の中に発電設備を自ら導入して、発電した電力を自家消費している。タイ投資委員会(BOI)の恩典を活用すれば、設備投資額を50%抑えることができる。
発電事業者と長期契約を結んで直接電力を買う「コーポレートPPA(電力購入契約)」も需要が大きい。需要家は発電した電気料金をPPA事業者に支払い、自家消費する。設備を購入する場合と比べて、初期費用と維持費を抑えられるのがメリットだ。契約期間は20年など長期となる。
関西電力のタイ子会社、関西エナジーソリューションズ(タイランド)とアルミニウム圧延日本最大手のUACJのタイ子会社、UACJタイランドは、UACJタイランドがラヨーン県で操業している工場に今年6月、太陽光発電システムを完成させた。屋上に設置した太陽光発電パネルの数は4万枚。出力は1万8,000キロワットと、発表された21年6月8日時点では世界最大規模だという。発電した電力は全て同工場に供給する。同工場で1年間に排出される二酸化炭素(CO2)の約6%に相当する約1万4,000トンの削減を見込む。
■レンタルを利用
設備をレンタルするという選択肢もある。需要家は毎月のレンタル料を払うだけで済む。センコーグループホールディングス(東京都江東区)のタイ法人、センコー・ロジスティクス・ディストリビューション(タイランド)は、東部チョンブリ県にある物流倉庫の屋上にパネル出力172.8キロワットの太陽光発電設備を設置した。エネルギー商社の伊藤忠エネクスのタイのグループ会社、ITCエネクス(タイランド)からレンタルした。太陽光パネル・モジュールやインバーターなどの必要な設備は同社が負担した。
ITCエネクス(タイランド)は、太陽光発電を効率的に使えるように、電力需要を予測して最適な容量を提案している。センコーの場合、使用電力は導入前に比べて年平均33%、CO2の排出量は年平均125トン程度、それぞれ削減できる見通しだ。
レンタルの場合、契約期間は一般に10~13年。年2回のパネル清掃や設備点検など運営・保守(O&M)も行う。期間終了後、顧客が望めば、設備を譲渡する。太陽光パネルの場合、寿命は25年くらいだという。譲渡後も、顧客からメンテナンス費用を受け取る。ITCエネクス(タイランド)の相川晃次郎社長は「累計の契約件数は3年間で100件まで増やしたい」と手応えを感じている様子だ。
[2359993_2.jpg]
■JCMを活用
食品大手プリマハムの現地法人プリマハムフーズ・タイランドは、首都バンコク東郊サムットプラカン県で操業する工場の屋上に出力1メガワット強の太陽光発電システムを東京センチュリーからリースする。駐車場には、太陽光パネルを載せた簡易車庫「ソーラーカーポート」も設置する。
自動車部品などの製造・販売を手がけるニチアスのタイ子会社、ニチアス・タイランドは、東部チャチュンサオ県の工場に電気使用量の約6割を補う太陽光発電システムを導入する。こちらも屋根置きタイプで、東京センチュリーからのリース。プリマハムとニチアスは、いずれも23年3月までの稼働を目指している。
東京センチュリーはタイで21年から、日本の環境省が温暖化対策技術を輸出する支援策として用意した「JCMエコリース事業」を活用した脱炭素設備のリース事業に注力している。途上国を中心とするJCMパートナー国(17カ国)を対象に温室効果ガス排出量を削減したら日本側も一部削減したとみなされる。
JCMエコリース事業は、リース料の一部を国が補助するため、企業は導入コストを低減できるメリットがある。リース期間は5年以上。東京センチュリーの担当者は「設備費用の一部を国が補助する『JCM設備補助事業』に比べてエコリース事業は手続きが簡易で、排出削減量のモニタリング期間も短いため、お客さまも活用しやすい」と説明する。設備のリース契約は、東京センチュリーのタイ連結子会社のTISCO Tokyo Leasingが担う。
[2359993_3.jpg]" ["post_title"]=> string(78) "日系、タイで脱炭素に本腰ブーム到来の太陽光発電(上)" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(198) "%e6%97%a5%e7%b3%bb%e3%80%81%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%81%a7%e8%84%b1%e7%82%ad%e7%b4%a0%e3%81%ab%e6%9c%ac%e8%85%b0%e3%83%96%e3%83%bc%e3%83%a0%e5%88%b0%e6%9d%a5%e3%81%ae%e5%a4%aa%e9%99%bd%e5%85%89%e7%99%ba" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2022-08-17 04:00:02" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2022-08-16 19:00:02" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(33) "https://nnaglobalnavi.com/?p=5921" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
 NNA
エヌエヌエー NNA
アジアの経済ニュース・ビジネス情報 - NNA ASIA

アジア経済の詳細やビジネスに直結する新着ニュースを掲載。
現地の最新動向を一目で把握できます。
法律、会計、労務などの特集も多数掲載しています。

【東京本社】
105-7209 東京都港区東新橋1丁目7番1号汐留メディアタワー9階
Tel:81-3-6218-4330
Fax:81-3-6218-4337
E-mail:sales_jp@nna.asia
HP:https://www.nna.jp/

国・地域別
タイ情報
内容別
ビジネス全般人事労務

コメントを書く

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

※がついている欄は必須項目です。

コメント※:

お名前:

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください