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日本酒、コロナ下も消費拡大高級志向の高まりで市場活況

マレーシアで、日本酒の消費が拡大している。日本の財務省の貿易統計によると、同国への日本酒の輸出額と輸出量は2019年以降、新型コロナウイルスが流行した時期を含め3年連続で拡大。今年は輸出額、量ともに、上半期(1~6月)時点で21年通年の8割を超えた。背景には、日本食の認知度向上や富裕層・中間層の所得拡大による高級志向の高まりがあるようだ。ウイスキーなど日本酒以外の日本産酒類の輸出額も伸びており、今後の市場拡大に期待が寄せられている。[2380619_2.png]
21年に日本からマレーシアに輸出された日本酒は334.4キロリットルで、10年前の11年の3.4倍となった。
マレーシアへの22年1~6月の輸出額は前年同期比78.6%増の3億1,320万円、輸出量は56.3%増の280キロリットル。日本酒業界最大の団体である日本酒造組合中央会(東京都港区)によると、輸出額は国・地域別では10位となり、東南アジア諸国連合(ASEAN)では、シンガポールに次ぐ2位となっている。輸出量は国・地域別で11位。ASEANでは、シンガポールとタイに次ぐ3位だった。
マレーシアはアルコールがタブーとなっているイスラム教徒(ムスリム)が人口の6割を占めるが、華人系などを中心に消費が急速に伸びているとみられる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール事務所の圓口(えんぐち)雄平氏によると、マレーシアへの日本産農産物や食品の輸出額は年々拡大。特に、12年以降の品目別内訳では、過去10年にわたりアルコール飲料が上位3位以内を維持しているという。
圓口氏は、「アルコール飲料を含めた日本産食品のマレーシアへの輸出拡大の背景には、まず経済成長に伴う富裕層・中間層の所得拡大と購買力向上がある」と指摘。加えて「日本への旅行者増加による日本食の認知度向上や、コロナ禍での嗜好(しこう)品需要の拡大も反映している」と分析する。
特に富裕層の購買力の向上については、マレーシアの都市部で料理長お勧めの高級メニューを食べられる「Omakase(オマカセ)」コースを提供する高級日本食レストランが20年以降に20店舗以上も新規開店し、人気を博していることからもうかがえる。圓口氏は、「消費者の高級志向は高まっており、バイヤーの高価格帯商品の取り扱いニーズも拡大傾向にある」と話す。
マレーシアで日本酒普及の第一人者として知られる林徳忠(トーマス・リン・テック・チョン)氏によると、日本酒の消費量が伸びているのは、首都クアラルンプールやペナン州、ジョホール州ジョホールバルなどの主要都市。居酒屋や焼き肉など日本食をコンセプトとするレストランが増加していることや、高級スーパーマーケットでの日本酒や焼酎といった日本産酒類の品ぞろえが拡大していることが背景にある。
トーマス氏は、「主要都市に住む上位中間層(アッパーミドル)層の30~55歳が主要な消費者だ」と説明。若い世代には吟醸香や甘口の日本酒が人気である一方で、シニア層には辛口の日本酒が好まれているという。
また、新型コロナの感染拡大時は、海外旅行ができなかったため、消費が国内に集中し、日本産の酒や食品の需要が伸びたという。トーマス氏は、「コロナ禍にありながら、輸入業者や販売業者によるオンライン試飲会も多かった」と話す。
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■コロナ下で需要拡大を実感
マレーシアで日本酒を取り扱う店舗も、需要拡大を肌で感じているようだ。クアラルンプールで日本酒や米を販売する十九代目鈴木商店では、ここ数年で華人系を中心に日本酒の認知が広がり、愛好家も増加。特に新型コロナの感染拡大により店内飲食ができなかった期間も、家飲み需要で小売り販売が伸びた。
担当者は、小売価格で150~200リンギ(約4,600~6,100円)の商品が人気で、主要顧客はここ数年で日本人から華人系に変わっていると指摘。「店内飲食も以前以上ににぎわっている」と話す。
同じクアラルンプールにある日本酒バー「のみとも酒バー」の担当者は、「お酒の知識が豊富な人などから指導を受けて日本酒に挑戦する人が増えた」と言う。主な利用者は20代から40代後半のマレーシア人で、「持ち帰りの利用者より仕事の帰りに立ち寄り、店内で焼き鳥などと楽しむ人が多い」と述べた。
最近、日本酒に親しんでいるスランゴール州在住の男性(35)は、「友人に連れて行ってもらったバーに日本酒があったことがきっかけで飲み始めた。飲みやすい」と語る。
クアラルンプールにあるすし店「寿司織部」のマスターシェフ、川崎直也氏は、「マレーシアの日本食レストランでは、ペアリングで日本酒を合わせて食事をするのが富裕層のステータスのようになっている」と指摘。「1番人気は純米大吟醸で、1本398~498リンギの価格帯を注文する人が多い」と話す。利用者の年齢層にばらつきはあるが、30代半ば以上の年齢層や女性が多いという。
オンラインでの販路も広がりつつある。日本酒販売ECサイト「SAKEKAMI」を運営する地場のK2マーケティングは、日本酒販売は既に数年前から勢いがあると分析。「ワインやウイスキーに比べると飲み慣れていない消費者が多いため、フルーティーで香りのいいものを好む消費者が多い」と述べた。
最も売れやすい価格帯は1本150~300リンギだが、愛飲家は1本1,000~3,000リンギのものを購入する人もいるという。最近はより高級な日本酒が売れる傾向にあるとし、「日本食だけでなく、中華やタイ料理、フレンチなどさまざまな料理に合わせてもらうよう、飲み方を啓発している」と話した。
■サワーなどの引き合いも増加
圓口氏によると、新型コロナ感染拡大や移動制限令の影響などにより、マレーシアの酒類市場は19年から21年にかけて市場規模は3割減となっているにもかかわらず、日本産酒類の輸出額は1.4倍に拡大。清酒だけではなく、ウイスキー、リキュールおよびコーディアル(濃縮飲料)の輸出額も大きく拡大しており、日本産酒類に対する市場ニーズは全体的に高まっている。
圓口氏は、「バイヤーによると、サワー・フルーツリカーなど、20~30代の若者や女性を狙った商品の売れ行きも好調で、蔵元指名で取引したいという相談も増加している」と話している。

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圓口氏は、「アルコール飲料を含めた日本産食品のマレーシアへの輸出拡大の背景には、まず経済成長に伴う富裕層・中間層の所得拡大と購買力向上がある」と指摘。加えて「日本への旅行者増加による日本食の認知度向上や、コロナ禍での嗜好(しこう)品需要の拡大も反映している」と分析する。
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マレーシアで日本酒普及の第一人者として知られる林徳忠(トーマス・リン・テック・チョン)氏によると、日本酒の消費量が伸びているのは、首都クアラルンプールやペナン州、ジョホール州ジョホールバルなどの主要都市。居酒屋や焼き肉など日本食をコンセプトとするレストランが増加していることや、高級スーパーマーケットでの日本酒や焼酎といった日本産酒類の品ぞろえが拡大していることが背景にある。
トーマス氏は、「主要都市に住む上位中間層(アッパーミドル)層の30~55歳が主要な消費者だ」と説明。若い世代には吟醸香や甘口の日本酒が人気である一方で、シニア層には辛口の日本酒が好まれているという。
また、新型コロナの感染拡大時は、海外旅行ができなかったため、消費が国内に集中し、日本産の酒や食品の需要が伸びたという。トーマス氏は、「コロナ禍にありながら、輸入業者や販売業者によるオンライン試飲会も多かった」と話す。
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■コロナ下で需要拡大を実感
マレーシアで日本酒を取り扱う店舗も、需要拡大を肌で感じているようだ。クアラルンプールで日本酒や米を販売する十九代目鈴木商店では、ここ数年で華人系を中心に日本酒の認知が広がり、愛好家も増加。特に新型コロナの感染拡大により店内飲食ができなかった期間も、家飲み需要で小売り販売が伸びた。
担当者は、小売価格で150~200リンギ(約4,600~6,100円)の商品が人気で、主要顧客はここ数年で日本人から華人系に変わっていると指摘。「店内飲食も以前以上ににぎわっている」と話す。
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最近、日本酒に親しんでいるスランゴール州在住の男性(35)は、「友人に連れて行ってもらったバーに日本酒があったことがきっかけで飲み始めた。飲みやすい」と語る。
クアラルンプールにあるすし店「寿司織部」のマスターシェフ、川崎直也氏は、「マレーシアの日本食レストランでは、ペアリングで日本酒を合わせて食事をするのが富裕層のステータスのようになっている」と指摘。「1番人気は純米大吟醸で、1本398~498リンギの価格帯を注文する人が多い」と話す。利用者の年齢層にばらつきはあるが、30代半ば以上の年齢層や女性が多いという。
オンラインでの販路も広がりつつある。日本酒販売ECサイト「SAKEKAMI」を運営する地場のK2マーケティングは、日本酒販売は既に数年前から勢いがあると分析。「ワインやウイスキーに比べると飲み慣れていない消費者が多いため、フルーティーで香りのいいものを好む消費者が多い」と述べた。
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圓口氏によると、新型コロナ感染拡大や移動制限令の影響などにより、マレーシアの酒類市場は19年から21年にかけて市場規模は3割減となっているにもかかわらず、日本産酒類の輸出額は1.4倍に拡大。清酒だけではなく、ウイスキー、リキュールおよびコーディアル(濃縮飲料)の輸出額も大きく拡大しており、日本産酒類に対する市場ニーズは全体的に高まっている。
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