花王が、タイで蚊を媒介とする感染症のデング熱の被害削減プロジェクトを進めている。タイではデング熱の患者の多くが子どもであり、重症型のデング出血熱は死に至ることもあるため、その抑制は長年にわたる社会課題となっている。花王は、独自に開発した蚊よけ商品の普及に加え、タイ政府との協力の下、デング熱の予報システム構築や蚊の発生を抑制する啓発活動などを積極的に展開。社会課題の解決を通じて、タイにおける企業ブランドの向上につなげる。[2380524_1.jpg]
蚊は人間にさまざまな病気を媒介することで、「世界で最もヒトを殺す生き物」と言われている。花王は今年、蚊から未来のいのちを守るプロジェクト「GUARD OUR FUTURE」を発足し、蚊が媒介するデング熱の被害削減の取り組みを本格的に開始した。
デング熱は、デングウイルスが感染して起きる急性の熱性感染症で、発熱や頭痛、筋肉痛、皮膚の発疹などの症状を引き起こす。デング熱による成人の死亡率は高くはないものの、まれに重症化してデング出血熱を発症した場合、適切な医療を受けないと死亡率は40~50%に高まる。デングウイルスに対する安全で有効なワクチンや治療薬は浸透していないため、症状を和らげる対症療法しかないのが実情だ。
デング熱にはタイでは年間5万~15万人が感染し、特に子どもの感染が目立つ。治療やそれに伴う労働の機会損失、被害拡大を防ぐための対応など、経済への負担という観点からもタイをはじめとした東南アジア諸国の共通の社会課題となっている。
デング熱は、ウイルスに感染した患者を蚊が吸血し、蚊の体内でウイルスが増殖。その蚊が他者を吸血することでウイルスが感染する。ヒトからヒトには感染しないため、蚊に刺されないようにすることが唯一の予防法だ。
花王パーソナルヘルスケア研究所の仲川喬雄博士によると、デング熱の感染被害は世界的に増えており、原因の一つとして考えられているのが、都市化の進展だ。東南アジアでデング熱を媒介するネッタイシマカは、都市化の進展によって増えることが分かっている。屋外に放置されたごみに雨水がたまることによって、ネッタイシマカの繁殖が進み、数が増えているという。
■独自技術を応用した蚊よけ商品
花王は、蚊から未来のいのちを守る「GUARD OUR FUTURE」プロジェクトの一環として、独自の技術を応用した蚊よけ商品「ビオレガード モスブロックセラム」を6月に発売。これに先立ち、2月には同製品8万個をタイ保健省への寄付を通じて無償配布している。[2380524_2.jpg]
同製品には、蚊が肌に降り立つ挙動に着目し、界面での濡れ現象を利用することで、蚊の吸血から身を守る技術が応用されている。それは、粘度の低いシリコーンオイルが塗られた肌に蚊の足が触れると即座にぬれ広がり、毛細管現象によって液体の方に引き込まれる力が働くというもの。肌に止まった蚊は、刺す前に脅威を覚えて回避行動をとる。
製品は、従来の揮発性有効成分DEETやイカリジンなどのを配合した忌避剤と異なり、ベタつきのない、ボディーローションのような軽い使い心地が特徴。べたつきや匂いを嫌って、従来の忌避剤の使用に消極的だった子どもにも使ってもらえるとみている。
花王のタイ子会社の花王インダストリアル・タイランドの神谷光俊副社長は、「ビオレガード モスブロックセラム」の販売を通じて、花王ブランドの認知度が高まることに期待を示す。「花王はタイ進出55年の歴史を持つが、企業認知度ということでは、欧米企業には及ばない」(神谷氏)。タイでは現在、「ビオレ」ブランドの日焼け止めを展開しているが、新開発の蚊よけ商品に「ビオレ」のブランド名称を冠することで、日焼け止めにとどまらない肌を守るブランドとしての認知度を高める狙いがあるという。
■デング熱予測モデル・予報システム構築に協力
花王がタイ保健省疾病管理局(DDC)やタイ高等教育・科学・研究・イノベーション省の科学技術開発機関(NASDA)傘下の国立エレクトロニクス・コンピューター技術研究所(NECTEC)と進めるデング熱予測モデル・予報システム構築の取り組みが、日本の経済産業省が推進する「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」に採択された。
取り組みでは、デング熱流行を早期に予測するモデル構築のための実証研究を行う。DDCが保有するデング熱罹患者情報と気候などの環境要因、蚊のデングウイルス伝播を合わせて、機械学習による解析を進める。
デング熱予測モデルの構築およびデング熱予報の提供を通じて、タイの生活者にデング熱のリスク増加を伝え、予防行動を促すことでデング熱患者の減少を目指す。また、適切な予防行動の啓発を通じて、蚊対策品の市場拡大に貢献し、デング熱による経済損失の回避を図る。
「GUARD OUR FUTURE」プロジェクトでは、このほか大手財閥チャロン・ポカパン(CP)グループ傘下でコンビニエンスストア「セブン—イレブン」を展開するCPオールなどとの協力の下、販売個数に応じて小児病院への商品寄付をする共同キャンペーンを展開し、子どもの感染者を減らす活動も行っている。「2026年までにデング熱を撲滅する」という目標を打ち出しているタイ政府に積極的に協力していく方針を示している。
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デング熱は、デングウイルスが感染して起きる急性の熱性感染症で、発熱や頭痛、筋肉痛、皮膚の発疹などの症状を引き起こす。デング熱による成人の死亡率は高くはないものの、まれに重症化してデング出血熱を発症した場合、適切な医療を受けないと死亡率は40~50%に高まる。デングウイルスに対する安全で有効なワクチンや治療薬は浸透していないため、症状を和らげる対症療法しかないのが実情だ。
デング熱にはタイでは年間5万~15万人が感染し、特に子どもの感染が目立つ。治療やそれに伴う労働の機会損失、被害拡大を防ぐための対応など、経済への負担という観点からもタイをはじめとした東南アジア諸国の共通の社会課題となっている。
デング熱は、ウイルスに感染した患者を蚊が吸血し、蚊の体内でウイルスが増殖。その蚊が他者を吸血することでウイルスが感染する。ヒトからヒトには感染しないため、蚊に刺されないようにすることが唯一の予防法だ。
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■独自技術を応用した蚊よけ商品
花王は、蚊から未来のいのちを守る「GUARD OUR FUTURE」プロジェクトの一環として、独自の技術を応用した蚊よけ商品「ビオレガード モスブロックセラム」を6月に発売。これに先立ち、2月には同製品8万個をタイ保健省への寄付を通じて無償配布している。[2380524_2.jpg]
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花王のタイ子会社の花王インダストリアル・タイランドの神谷光俊副社長は、「ビオレガード モスブロックセラム」の販売を通じて、花王ブランドの認知度が高まることに期待を示す。「花王はタイ進出55年の歴史を持つが、企業認知度ということでは、欧米企業には及ばない」(神谷氏)。タイでは現在、「ビオレ」ブランドの日焼け止めを展開しているが、新開発の蚊よけ商品に「ビオレ」のブランド名称を冠することで、日焼け止めにとどまらない肌を守るブランドとしての認知度を高める狙いがあるという。
■デング熱予測モデル・予報システム構築に協力
花王がタイ保健省疾病管理局(DDC)やタイ高等教育・科学・研究・イノベーション省の科学技術開発機関(NASDA)傘下の国立エレクトロニクス・コンピューター技術研究所(NECTEC)と進めるデング熱予測モデル・予報システム構築の取り組みが、日本の経済産業省が推進する「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」に採択された。
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