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セミコン台湾で日系がPR熊本県や九大も、TSMC進出で

半導体関連の装置や材料の見本市「国際半導体展(セミコン台湾)」が台北市南港区の南港展覧館で開かれている。今年は過去最大規模となる約700社・団体が計約2,450ブースを出展。日本勢では、ファウンドリー(半導体の受託製造)世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が新工場を建設する九州から熊本県や九州大学などが出展し、台湾企業の誘致などに取り組んだ。

半導体関連の装置や材料の見本市「国際半導体展(セミコン台湾)」には多くの人が訪れた=15日、台北(NNA撮影)

セミコン台湾は14日に開幕。◇先端製造プロセス◇異素材接合◇化合物半導体◇車載半導体◇スマート製造◇持続可能な製造◇半導体の情報セキュリティー◇人材——の8分野をテーマとし、16日までの会期中に5万人の来場を見込んでいる。2日目となった15日は、午前10時の開場前から入場口に多くの人が列を作った。
熊本県は7年ぶりの出展。TSMCの同県進出が決まり、台湾企業の熊本への関心が今まで以上に高まっているとみて、台湾企業の誘致とそのサポートを目的に出展を決めた。県や市町村の補助金の紹介、地元の不動産業者と提携した土地情報の提供などの支援を考えているという。
同県産業振興局の担当者によると、熊本県ではかねて半導体や自動車を産業の柱と位置付け、他の産業よりも優遇して誘致を進めてきたため、県内には半導体関連の企業が多い。「TSMCが来れば終わりではなく、TSMCの操業を支えるサプライヤーが必要。熊本には比較的そういった素地があると思っている」と述べた上で、「残りの開催期間はTSMCのサプライヤーのブースなどをこちらから訪問するつもり。1社でも2社でも多く進出を考えている企業と接触し、県からのサポートを提供していきたい」と意気込みを示した。
九州大学は単独で初の出展。同大学はTSMCの工場設置に伴い、九州への進出を考えている台湾企業に対し、九州地区の企業の紹介や人材育成、共同開発などに関して橋渡しの役割を果たすことを目指している。大学には半導体関連の四つのセンターがあり、TSMCの進出を受けて、半導体関係者に対応できる窓口の整備を今年から加速したという。
ブースでは九州大学が参加する内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)での取り組みなどを紹介。初日には台湾の半導体製造装置や材料メーカーなどの関係者50人以上が訪問した。九州大学の担当者は「思っていたより九州進出を考えている企業が多い。いろいろな話が聞けたので、これを持ち帰って大学として企業に何ができるか考えたい」と話した。
別の担当者は「台湾企業の進出だけでなく、九州の地場企業も盛り上がってくる。働く人も集まってくるとみられ、われわれは九州で一番大きな大学として、技術要員を育成していくことも責務だと思っている」と強調した。
九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会(SIIQ)によると、九州の半導体関連企業・団体の会員企業は200以上に上る。
九州への拠点設置を既に計画している台湾企業もある。半導体部材の販売を手がける台湾の崇越科技(TOPCO)は、5月に日本での子会社設立を発表。TSMCにサービスを提供するためとしている。今後は名古屋と熊本に拠点を設ける計画だ。
崇越科技は「第3世代半導体と第5世代(5G)移動通信システム応用」「循環経済」をテーマにブースを出展。半導体の先端プロセスの生産能力拡充が続いていることを受け、先端材料関連製品も展示した。
陳徳懿営運長は「米国、日本、東南アジアに進出する台湾企業を今後も支援していきたい」と目標を語った。
■日本の設備をアピール
半導体設備や材料を手がける日系企業も100ブース近くを設け、来場者に自社製品をPRした。
堀場エステック(京都市)の台湾子会社である台湾堀場は、主力製品で半導体製造で使用される流量制御機器「マスフローコントローラー」に加え、半導体製造に必要な超純水や廃水処理に関わる機器など半導体工場に必要なトータルソリューションをPR。担当者は「マスフローコントローラーでは60%の世界シェアがありよく知られているが、他にどういう事業を行っているかはあまり知られていない。今回の出展では、顧客に違ったイメージを与えたい」と話した。
半導体業界で需要が縮小していると伝えられていることについては「今のところそうは感じていない。台湾の顧客の投資は引き続き多く、前向きに捉えている」とコメントした。
半導体製造用のバルブ・継手を手がけるフジキン(大阪市)の現地法人、台湾富士金閥門はフローコントロールシステム製品を展示。本田泰二董事長は「今回の展示会を通じ、顧客のニーズを受け取ることで、製品開発につなげたい」と意気込みを示した。
■フォーラムも開催
イベント期間中は半導体関連企業のトップや専門家を招いたフォーラムが数多く開かれている。
中央通信社によると、EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手、鴻海精密工業の新興技術研究拠点「鴻海研究院」は15日、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)と共同で半導体に関するフォーラムを開いた。
ドイツのインフィニオン・テクノロジーズや米テキサス・インスツルメンツ、KLAテンコール、台湾の聯華電子(UMC、聯電)、穏懋半導体(ウィン・セミコンダクターズ)などの半導体関連企業を招き、窒化ガリウム(GaN)や炭化ケイ素(SiC)を用いた化合物半導体の応用と今後の動向について意見を交わした。
14日夜には台北君悦酒店(グランドハイアット台北)で各企業のトップらを招いた交流会が開かれ、蔡英文総統が出席した。
蔡氏は「半導体産業が台湾の世界経済における地位を引き上げた」と指摘。政府として引き続き産学と連携し人材育成や技術開発を進め、台湾の半導体分野における優位性を維持する考えを示し、「半導体は未来のテクノロジーの核心。台湾の半導体産業はさらなる高みに到達するだろう」と述べた。

熊本県が出展したブース。担当者は同県進出を検討するTSMCのサプライヤーなどをサポートしたい考えを示した=15日、台北(NNA撮影)
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熊本県は7年ぶりの出展。TSMCの同県進出が決まり、台湾企業の熊本への関心が今まで以上に高まっているとみて、台湾企業の誘致とそのサポートを目的に出展を決めた。県や市町村の補助金の紹介、地元の不動産業者と提携した土地情報の提供などの支援を考えているという。
同県産業振興局の担当者によると、熊本県ではかねて半導体や自動車を産業の柱と位置付け、他の産業よりも優遇して誘致を進めてきたため、県内には半導体関連の企業が多い。「TSMCが来れば終わりではなく、TSMCの操業を支えるサプライヤーが必要。熊本には比較的そういった素地があると思っている」と述べた上で、「残りの開催期間はTSMCのサプライヤーのブースなどをこちらから訪問するつもり。1社でも2社でも多く進出を考えている企業と接触し、県からのサポートを提供していきたい」と意気込みを示した。
九州大学は単独で初の出展。同大学はTSMCの工場設置に伴い、九州への進出を考えている台湾企業に対し、九州地区の企業の紹介や人材育成、共同開発などに関して橋渡しの役割を果たすことを目指している。大学には半導体関連の四つのセンターがあり、TSMCの進出を受けて、半導体関係者に対応できる窓口の整備を今年から加速したという。
ブースでは九州大学が参加する内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)での取り組みなどを紹介。初日には台湾の半導体製造装置や材料メーカーなどの関係者50人以上が訪問した。九州大学の担当者は「思っていたより九州進出を考えている企業が多い。いろいろな話が聞けたので、これを持ち帰って大学として企業に何ができるか考えたい」と話した。
別の担当者は「台湾企業の進出だけでなく、九州の地場企業も盛り上がってくる。働く人も集まってくるとみられ、われわれは九州で一番大きな大学として、技術要員を育成していくことも責務だと思っている」と強調した。
九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会(SIIQ)によると、九州の半導体関連企業・団体の会員企業は200以上に上る。
九州への拠点設置を既に計画している台湾企業もある。半導体部材の販売を手がける台湾の崇越科技(TOPCO)は、5月に日本での子会社設立を発表。TSMCにサービスを提供するためとしている。今後は名古屋と熊本に拠点を設ける計画だ。
崇越科技は「第3世代半導体と第5世代(5G)移動通信システム応用」「循環経済」をテーマにブースを出展。半導体の先端プロセスの生産能力拡充が続いていることを受け、先端材料関連製品も展示した。
陳徳懿営運長は「米国、日本、東南アジアに進出する台湾企業を今後も支援していきたい」と目標を語った。
■日本の設備をアピール
半導体設備や材料を手がける日系企業も100ブース近くを設け、来場者に自社製品をPRした。
堀場エステック(京都市)の台湾子会社である台湾堀場は、主力製品で半導体製造で使用される流量制御機器「マスフローコントローラー」に加え、半導体製造に必要な超純水や廃水処理に関わる機器など半導体工場に必要なトータルソリューションをPR。担当者は「マスフローコントローラーでは60%の世界シェアがありよく知られているが、他にどういう事業を行っているかはあまり知られていない。今回の出展では、顧客に違ったイメージを与えたい」と話した。
半導体業界で需要が縮小していると伝えられていることについては「今のところそうは感じていない。台湾の顧客の投資は引き続き多く、前向きに捉えている」とコメントした。
半導体製造用のバルブ・継手を手がけるフジキン(大阪市)の現地法人、台湾富士金閥門はフローコントロールシステム製品を展示。本田泰二董事長は「今回の展示会を通じ、顧客のニーズを受け取ることで、製品開発につなげたい」と意気込みを示した。
■フォーラムも開催
イベント期間中は半導体関連企業のトップや専門家を招いたフォーラムが数多く開かれている。
中央通信社によると、EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手、鴻海精密工業の新興技術研究拠点「鴻海研究院」は15日、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)と共同で半導体に関するフォーラムを開いた。
ドイツのインフィニオン・テクノロジーズや米テキサス・インスツルメンツ、KLAテンコール、台湾の聯華電子(UMC、聯電)、穏懋半導体(ウィン・セミコンダクターズ)などの半導体関連企業を招き、窒化ガリウム(GaN)や炭化ケイ素(SiC)を用いた化合物半導体の応用と今後の動向について意見を交わした。
14日夜には台北君悦酒店(グランドハイアット台北)で各企業のトップらを招いた交流会が開かれ、蔡英文総統が出席した。
蔡氏は「半導体産業が台湾の世界経済における地位を引き上げた」と指摘。政府として引き続き産学と連携し人材育成や技術開発を進め、台湾の半導体分野における優位性を維持する考えを示し、「半導体は未来のテクノロジーの核心。台湾の半導体産業はさらなる高みに到達するだろう」と述べた。
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