中国国家統計局が15日発表した2022年8月の主要経済指標は、7月の低調を覆し、好調を呈した。小売売上高と鉱工業生産額(一定規模以上の企業対象、付加価値ベース)はともに前年同月比の伸び幅が前月から拡大。固定資産投資も上向いた。自動車購入促進策やインフラ投資促進策などの政策が効果を発揮した。一方、不動産分野の数値は引き続き低水準で、経済全体の重しとなっている。
7月の主要経済指標は、局地的な新型コロナウイルスの流行や記録的な高温による経済活動の停滞などを背景に伸び悩んだ。8月も一部地域でのコロナ流行と高温による電力需給逼迫(ひっぱく)が発生したが、国家統計局の付凌暉報道官は「政府の経済政策が効果を発揮し、国内経済は引き続き発展した」との見方を示した。
■飲食が6カ月ぶりプラス、自動車も好調
8月の小売売上高は前年同月比5.4%増の3兆6,258億元(約74兆2,200億円)。増加幅は前月から2.7ポイント拡大し、直近6カ月で最大の増加幅となった。
商品小売りと飲食の内訳を見ると、全体の約9割を占める商品小売りが5.1%増の3兆2,510億元だった。増加幅は前月から1.9ポイント拡大した。
各商品の中でも好調だったのは自動車。自動車類の販売業者(一定規模以上の業者に限定)の売上高は15.9%増えた。中央政府による自動車購入税の減額措置、各地方政府による「新エネルギー車(NEV)」の購入促進策などが自動車販売を押し上げた。中国では自動車の小売売上高が全体の約1割を占める。
一方、不動産市況と連動する建材・内装材料は9.1%減、家具類は8.1%減となった。
飲食は8.4%増の3,748億元で、6カ月ぶりのプラスを記録した。新型コロナが局地的に流行する中でも、中国政府が過度な移動制限を控えたことで、夏休みの観光に絡む飲食需要が旺盛だった。昨夏は政府が厳しい移動制限を敷いたため、観光需要は大きく縮小していた。
地域別では、都市部が5.5%増の3兆1,593億元、農村部が5.0%増の4,665億元。
1~8月の小売売上高は前年同期比0.5%増の28兆2,560億元となり、1~7月の0.2%減からプラスに転じた。商品小売りは1.1%増の25兆5,078億元、飲食は5.0%減の2兆7,482億元。
1~8月のオンラインでの小売額は3.7%増の8兆4,295億元。うち商品は5.8%増の7兆2,414億元で、小売売上高全体の25.6%を占めた。
■鉱工業生産額は4.2%増
8月の鉱工業生産額は前年同月比4.2%増となり、増加幅は前月から0.4ポイント拡大した。前月比は0.32%増だった。
企業形態別では、国有企業が前年同月比5.6%増、外資企業が4.0%増だった。
主要業種の生産額の増加幅は、「電力、熱、ガス、水の生産・供給業」が13.6%、「採掘業」が5.3%、「製造業」が3.1%。製造業の中でも、自動車は増加幅が30.5%と好調で、付氏は自動車購入促進策が需要を押し上げ、メーカー側の生産も活発化したとの考えを表明した。
主要品目の生産量は◇自動車:39.0%増の242万6,000台◇集積回路(IC):24.7%減の247億個◇セメント:13.1%減の1億8,808万トン◇エチレン:8.6%減の222万トン◇板ガラス:0.9%減の8,789万重量箱——など。
鉄鋼・資源関連の主な内訳は◇鋼材:1.5%減の1億833万トン◇銑鉄:0.5%減の7,137万トン◇粗鋼:0.5%増の8,387万トン◇非鉄金属10種:6.7%増の574万トン◇石炭(原炭):8.1%増の3億7,044万トン——だった。
1~8月の鉱工業生産額は前年同期比3.6%増で、増加幅は1~7月から0.1ポイント拡大した。
■固定資産投資、今年初の拡大
1~8月の固定資産投資(農村を除く)は前年同期比5.8%増の36兆7,106億元となった。増加幅は1~7月から0.1ポイント拡大した。
今年の固定資産投資は、1~2月(1月と2月は単月発表なし)が12.2%増。今年の累計値の増加幅はその後、1~3月が9.3%、1~4月が6.8%、1~5月が6.2%、1~6月が6.1%と鈍化を続けていたが、1~8月にようやく拡大に転じた。
製造業の投資が引き続き活況を呈した上、政府の公共事業拡大を背景にインフラ投資が好調だったことが主な要因。地方政府は今年の「専項債券(レベニュー債、各地の省級政府がインフラ関連などの事業目的別に発行する債券)」の発行枠を既にほぼ使い終えており、債券発行で得た資金が直近で続々とインフラ建設に回っている。
産業別では、第1次産業が2.3%増の9,254億元、第2次産業が10.4%増の11兆5,865億元、第3次産業が3.9%増の24兆1,986億元。第2次産業では製造業の投資が10.0%増で、増加幅は1~7月から0.1ポイント拡大した。
第3次産業に分類されるインフラ投資(電力、熱、ガス、水の生産・供給業を除く)は8.3%増となり、増加幅が0.9ポイント広がった。
ハイテク産業への投資は20.2%増。うちハイテク製造業は23.0%増、ハイテクサービス業は14.2%増だった。
8月の固定資産投資は前月比で0.36%増えた。
■不動産業、低迷期継続
1~8月の不動産開発投資は前年同期比7.4%減の9兆809億元で、1~7月(6.4%減)から減少幅が拡大した。うち住宅投資は6.9%減の6兆8,878億元。
不動産販売は引き続き大幅なマイナスを記録。全国の不動産販売面積は23.0%減の8億7,890万平方メートルで、うち住宅は26.8%減の7億4,403万平方メートル。不動産販売額は27.9%減の8兆5,870億元となり、うち住宅は30.3%減の7兆5,288億元だった。減少幅は4項目とも1~7月からやや縮小するにとどまった。
不動産開発企業が取得した開発用地は49.7%減の5,400万平方メートルだった。新規着工面積は37.2%減となり、住宅は38.1%減。
■若年層の失業率がようやく下落
雇用関連の指標は、8月の全国都市部調査失業率が5.3%となり、前月から0.1ポイント下落した。22年の政府目標「5.5%以内」に収まった。ただ、前年同月比では0.2ポイント上昇した。
年代別の失業率を見ると、16~24歳の失業率が18.7%となった。前月から1.2ポイント下落した。4~7月は、統計局のデータベースに記録がある18年1月以降の最高を4カ月連続で更新していた。
1~8月の都市部新規就業者数は898万人で、通年目標の「1,100万人以上」の約82%の水準。
■識者は消費刺激策の継続を提言
8月は好調を呈した中国経済だが、識者からはまだ自力で力強い成長を継続できる段階にはないとの指摘が出ている。
第一財経日報(電子版)によると、不動産の投資管理などを行う米ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)の大中華地区の首席エコノミストを務めるホウ溟(ホウ=まだれに龍)氏は、「自動車や家電の消費促進策の効果が今後徐々に弱まる」と指摘。ホウ氏は、こうした政策の効果なくしては消費の回復に不安があるとみており、「今後の消費の回復には政策面のより強力かつ適格な支援が必要だ」と見通した。不動産市況を早期に改善し、不動産関連消費の回復を図る必要も訴えた。
一方、投資分野は今後も好調を維持できると予測。政策性銀行(政府の政策遂行を目的とする銀行)が経済下支えのため、投融資を積極化していることを理由に挙げた。
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7月の主要経済指標は、局地的な新型コロナウイルスの流行や記録的な高温による経済活動の停滞などを背景に伸び悩んだ。8月も一部地域でのコロナ流行と高温による電力需給逼迫(ひっぱく)が発生したが、国家統計局の付凌暉報道官は「政府の経済政策が効果を発揮し、国内経済は引き続き発展した」との見方を示した。
■飲食が6カ月ぶりプラス、自動車も好調
8月の小売売上高は前年同月比5.4%増の3兆6,258億元(約74兆2,200億円)。増加幅は前月から2.7ポイント拡大し、直近6カ月で最大の増加幅となった。
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各商品の中でも好調だったのは自動車。自動車類の販売業者(一定規模以上の業者に限定)の売上高は15.9%増えた。中央政府による自動車購入税の減額措置、各地方政府による「新エネルギー車(NEV)」の購入促進策などが自動車販売を押し上げた。中国では自動車の小売売上高が全体の約1割を占める。
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地域別では、都市部が5.5%増の3兆1,593億元、農村部が5.0%増の4,665億元。
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■鉱工業生産額は4.2%増
8月の鉱工業生産額は前年同月比4.2%増となり、増加幅は前月から0.4ポイント拡大した。前月比は0.32%増だった。
企業形態別では、国有企業が前年同月比5.6%増、外資企業が4.0%増だった。
主要業種の生産額の増加幅は、「電力、熱、ガス、水の生産・供給業」が13.6%、「採掘業」が5.3%、「製造業」が3.1%。製造業の中でも、自動車は増加幅が30.5%と好調で、付氏は自動車購入促進策が需要を押し上げ、メーカー側の生産も活発化したとの考えを表明した。
主要品目の生産量は◇自動車:39.0%増の242万6,000台◇集積回路(IC):24.7%減の247億個◇セメント:13.1%減の1億8,808万トン◇エチレン:8.6%減の222万トン◇板ガラス:0.9%減の8,789万重量箱——など。
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1~8月の鉱工業生産額は前年同期比3.6%増で、増加幅は1~7月から0.1ポイント拡大した。
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1~8月の固定資産投資(農村を除く)は前年同期比5.8%増の36兆7,106億元となった。増加幅は1~7月から0.1ポイント拡大した。
今年の固定資産投資は、1~2月(1月と2月は単月発表なし)が12.2%増。今年の累計値の増加幅はその後、1~3月が9.3%、1~4月が6.8%、1~5月が6.2%、1~6月が6.1%と鈍化を続けていたが、1~8月にようやく拡大に転じた。
製造業の投資が引き続き活況を呈した上、政府の公共事業拡大を背景にインフラ投資が好調だったことが主な要因。地方政府は今年の「専項債券(レベニュー債、各地の省級政府がインフラ関連などの事業目的別に発行する債券)」の発行枠を既にほぼ使い終えており、債券発行で得た資金が直近で続々とインフラ建設に回っている。
産業別では、第1次産業が2.3%増の9,254億元、第2次産業が10.4%増の11兆5,865億元、第3次産業が3.9%増の24兆1,986億元。第2次産業では製造業の投資が10.0%増で、増加幅は1~7月から0.1ポイント拡大した。
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ハイテク産業への投資は20.2%増。うちハイテク製造業は23.0%増、ハイテクサービス業は14.2%増だった。
8月の固定資産投資は前月比で0.36%増えた。
■不動産業、低迷期継続
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不動産販売は引き続き大幅なマイナスを記録。全国の不動産販売面積は23.0%減の8億7,890万平方メートルで、うち住宅は26.8%減の7億4,403万平方メートル。不動産販売額は27.9%減の8兆5,870億元となり、うち住宅は30.3%減の7兆5,288億元だった。減少幅は4項目とも1~7月からやや縮小するにとどまった。
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■若年層の失業率がようやく下落
雇用関連の指標は、8月の全国都市部調査失業率が5.3%となり、前月から0.1ポイント下落した。22年の政府目標「5.5%以内」に収まった。ただ、前年同月比では0.2ポイント上昇した。
年代別の失業率を見ると、16~24歳の失業率が18.7%となった。前月から1.2ポイント下落した。4~7月は、統計局のデータベースに記録がある18年1月以降の最高を4カ月連続で更新していた。
1~8月の都市部新規就業者数は898万人で、通年目標の「1,100万人以上」の約82%の水準。
■識者は消費刺激策の継続を提言
8月は好調を呈した中国経済だが、識者からはまだ自力で力強い成長を継続できる段階にはないとの指摘が出ている。
第一財経日報(電子版)によると、不動産の投資管理などを行う米ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)の大中華地区の首席エコノミストを務めるホウ溟(ホウ=まだれに龍)氏は、「自動車や家電の消費促進策の効果が今後徐々に弱まる」と指摘。ホウ氏は、こうした政策の効果なくしては消費の回復に不安があるとみており、「今後の消費の回復には政策面のより強力かつ適格な支援が必要だ」と見通した。不動産市況を早期に改善し、不動産関連消費の回復を図る必要も訴えた。
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