熊本、宮崎、鹿児島の南九州3県と沖縄県が一丸となり、香港への焼酎・泡盛の売り込みを本格化している。当地の人気ホテル「The Hari(ザ・ハリ)香港」で1カ月間、4県の食材を使った料理に4県の焼酎・泡盛をベースにしたカクテルをペアリングした特別コースを提供。日本酒の人気がうなぎ上りの香港だが、焼酎・泡盛はまだなじみが薄いことから、産地各県が一致団結して認知度の向上を目指す。【天野友紀子】
4県の食材を使った先付けには、輸出専用の奄美大島産「八 黒糖焼酎」を使ったフルーティーなカクテルをペアリング=5日、湾仔(NNA撮影)
フェアは「ア・フィースト・フロム南九州&沖縄」と題し、香港島・湾仔のザ・ハリ香港2階にある日本食レストラン「族(ZOKU)」で10月5日から11月4日まで開催する。焼酎・泡盛は4県から2銘柄ずつ計8銘柄を持ち寄り、各料理と合うカクテルにして提供する。
■焼酎を新たな食中酒に
フェア初日の5日午後には、香港メディアや香港のバー・飲食・食品業界関係者らを招いた試食会を開催。在香港日本総領事館の岡田健一総領事(大使)が駆けつけ「フェアを通じて焼酎・泡盛の魅力を知ってほしい」とあいさつした。
岡田氏は、焼酎・泡盛はウイスキーなどと同じ蒸留酒だが「コメ、サツマイモ、麦、ゴマ、野菜と原材料がバラエティーに富み、産地によっても味に個性がある」と紹介。「食事と一緒に楽しめるお酒だ」とアピールした。
開催に先立ち、香港メディアやバー業界関係者を招待して試食会を実施。岡田総領事(右)も焼酎の魅力をアピールした=5日、湾仔(NNA撮影)
族はペルー人シェフのエドウィン・グズマン氏が腕を振るう。「革新的で洗練された日本食」が評判のレストランだ。
鹿児島県産の豚肉を使ったクリスピーなカツサンドには、宮崎県産の芋焼酎「八重桜 千」を使ってライムを効かせた「八重桜サワー」をペアリング。熊本県産のコメを使ったロブスターの雑炊には、沖縄県の泡盛「さくらいちばん」の3年古酒をベースとしたシソ風味の「シソお湯割り」を合わせた。
試食会の参加者は、料理とカクテルに舌鼓を打った。鹿児島産のサバを使った一皿と鹿児島産芋焼酎「クールミントグリーン」を使ったカクテルが出されると、九龍地区・尖沙咀で焼酎専門バーを経営するフランキー・ラム氏は「サバの濃厚なうま味に、キリッとした強めの焼酎カクテルがよく合う」とうなずいた。
フェアで提供するコースは「料理6品+カクテル5杯」で1,286HKドル(約2万3,700円、サービス料別)、「料理8品+カクテル6杯」で1,616HKドルとなる。料理のみ(888HKドル~)注文することも可能。
4県は今年6月、日本総領事館が事務局を務める「香港日本産食品等輸入拡大協議会」の下に「焼酎・泡盛分科会」を設立し、輸出拡大に向けた共同の取り組みを始めた。
分科会の代表を務める熊本県香港事務所の宮原智彦・共同代表によると、第1弾として6月30日~7月3日に香港島・ソク魚涌(クオリーベイ、ソク=うおへんに則)で開かれた「カクテル・フェスティバル」に共同出展。4県の焼酎・泡盛を使ったカクテルを販売した。
今回のフェアではさらに一歩踏み込み、創作和食とペアリングしてそのおいしさや味わい方を提案。グルメな香港人でもまだ知らない「新たな食中酒」としての周知を図る。
■伸びしろは「十分」
産地4県が売り込みに今まで以上に力を入れる背景には、日本酒と比べて焼酎・泡盛の香港への輸出が伸び悩んでいることがある。
香港は酒類を含む日本の食品の主要な仕向け先で、香港にある飲食店の8%が日本料理店であるなど、日本食は絶大な人気を誇る。中でも日本酒は普及の勢いがすさまじく、昨年の香港向け輸出額は前年比50.6%増の93億1,000万円に拡大。人口約730万人の一都市であるにもかかわらず、日本にとって中国本土、米国に次ぐ3番目に大きな仕向け先となっている。
一方で、焼酎・泡盛の昨年の輸出額は11.1%減の8,000万円にとどまっていることから、まだまだ伸びしろがあると各県は期待する。
宮崎県香港事務所の植木史徳代表と河野孝昌所長はNNAに対し、焼酎は香港人に広く親しまれるウイスキーと同じ蒸留酒であるため「普及のポテンシャルがある」とコメント。熊本県香港事務所の宮原氏は、知名度の低い現状では「店に焼酎が置いてあるだけでは手に取ったり飲んだりしてもらえない」と指摘した上で、バーテンダーや酒店・飲食店の担当者といった「消費者に紹介してくれる人たちを巻き込んで活動を広めたい」と意気込んだ。
焼酎・泡盛分科会には先ごろ、福岡県が新たに加入。今後は九州・沖縄5県で市場拡大に向けた取り組みを行っていく。
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■焼酎を新たな食中酒に
フェア初日の5日午後には、香港メディアや香港のバー・飲食・食品業界関係者らを招いた試食会を開催。在香港日本総領事館の岡田健一総領事(大使)が駆けつけ「フェアを通じて焼酎・泡盛の魅力を知ってほしい」とあいさつした。
岡田氏は、焼酎・泡盛はウイスキーなどと同じ蒸留酒だが「コメ、サツマイモ、麦、ゴマ、野菜と原材料がバラエティーに富み、産地によっても味に個性がある」と紹介。「食事と一緒に楽しめるお酒だ」とアピールした。
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族はペルー人シェフのエドウィン・グズマン氏が腕を振るう。「革新的で洗練された日本食」が評判のレストランだ。
鹿児島県産の豚肉を使ったクリスピーなカツサンドには、宮崎県産の芋焼酎「八重桜 千」を使ってライムを効かせた「八重桜サワー」をペアリング。熊本県産のコメを使ったロブスターの雑炊には、沖縄県の泡盛「さくらいちばん」の3年古酒をベースとしたシソ風味の「シソお湯割り」を合わせた。
試食会の参加者は、料理とカクテルに舌鼓を打った。鹿児島産のサバを使った一皿と鹿児島産芋焼酎「クールミントグリーン」を使ったカクテルが出されると、九龍地区・尖沙咀で焼酎専門バーを経営するフランキー・ラム氏は「サバの濃厚なうま味に、キリッとした強めの焼酎カクテルがよく合う」とうなずいた。
フェアで提供するコースは「料理6品+カクテル5杯」で1,286HKドル(約2万3,700円、サービス料別)、「料理8品+カクテル6杯」で1,616HKドルとなる。料理のみ(888HKドル~)注文することも可能。
4県は今年6月、日本総領事館が事務局を務める「香港日本産食品等輸入拡大協議会」の下に「焼酎・泡盛分科会」を設立し、輸出拡大に向けた共同の取り組みを始めた。
分科会の代表を務める熊本県香港事務所の宮原智彦・共同代表によると、第1弾として6月30日~7月3日に香港島・ソク魚涌(クオリーベイ、ソク=うおへんに則)で開かれた「カクテル・フェスティバル」に共同出展。4県の焼酎・泡盛を使ったカクテルを販売した。
今回のフェアではさらに一歩踏み込み、創作和食とペアリングしてそのおいしさや味わい方を提案。グルメな香港人でもまだ知らない「新たな食中酒」としての周知を図る。
■伸びしろは「十分」
産地4県が売り込みに今まで以上に力を入れる背景には、日本酒と比べて焼酎・泡盛の香港への輸出が伸び悩んでいることがある。
香港は酒類を含む日本の食品の主要な仕向け先で、香港にある飲食店の8%が日本料理店であるなど、日本食は絶大な人気を誇る。中でも日本酒は普及の勢いがすさまじく、昨年の香港向け輸出額は前年比50.6%増の93億1,000万円に拡大。人口約730万人の一都市であるにもかかわらず、日本にとって中国本土、米国に次ぐ3番目に大きな仕向け先となっている。
一方で、焼酎・泡盛の昨年の輸出額は11.1%減の8,000万円にとどまっていることから、まだまだ伸びしろがあると各県は期待する。
宮崎県香港事務所の植木史徳代表と河野孝昌所長はNNAに対し、焼酎は香港人に広く親しまれるウイスキーと同じ蒸留酒であるため「普及のポテンシャルがある」とコメント。熊本県香港事務所の宮原氏は、知名度の低い現状では「店に焼酎が置いてあるだけでは手に取ったり飲んだりしてもらえない」と指摘した上で、バーテンダーや酒店・飲食店の担当者といった「消費者に紹介してくれる人たちを巻き込んで活動を広めたい」と意気込んだ。
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