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空気で作るタンパク質や昆虫食食料安全保障に多様な取り組み

微生物と空気から作るタンパク質に昆虫食、先端技術を取り入れた都市農業や人工知能(AI)を駆使したスマート農場——。食料自給率が低いシンガポールは食料安全保障の強化に向けて多様なアプローチを取っている。2030年までに食料自給率30%を目指す同国のハイテク食品・農業関連の最近の動向をまとめた。【鈴木あかね】

シンガポール食品庁が認可した、微生物と空気から作られるソーラーフーズのタンパク質粉末「ソレイン」(同社提供)

食品庁は10月26日、フィンランドのフードテック(先端食品技術)企業ソーラーフーズが開発した代替タンパク質粉末「ソレイン(Solein)」を、ノベルフード(新規食品)として世界で初めて認証した。
ノベルフードは、欧州連合(EU)が1997年に提唱した概念。これまで人間によって食用として消費されていなかった食品や食品原料を指す。ソーラーフーズは今回の認証取得により、シンガポール国内でソレインを販売できるようになる。同社は24年にフィンランドでソレインの商用生産を開始する。
ソレインは「微生物と空気」から作られるタンパク質の粉末で、全ての必須アミノ酸を含有する。単細胞生物に二酸化炭素(CO2)、水素、酸素、ほんの少しの栄養素を与えることで増殖させて生産するため、従来の畜産のように大量の食料やエネルギーを必要としない持続可能な生産手法という。
成分は65~70%がタンパク質、5~8%が脂質、10~15%が食物繊維、3~5%がミネラル。乾燥大豆や乾燥藻類に近い成分となる。
シンガポールはタンパク質の供給源として、植物や菌類由来の代替肉、細胞培養で作る鶏肉や魚介類の開発を積極的に支援してきた。最近では食用昆虫の活用も模索し始めた。
食品庁は10月16日、食用昆虫の輸入や国内での養殖の認可に関する基本方針を公表。同月28日には、シンガポール企業庁が昆虫産業の現況に関する報告書の中で、同国を拠点とする昆虫関連企業15社による資金調達額が過去4年で約4,000万米ドル(約59億円)に達したと明らかにした。
人間の食用だけでなく飼料や肥料用の昆虫関連企業も含まれるが、同国の昆虫産業に成長潜在性があるため、今後の研究開発(R&D)にシンガポールを活用してもらいたい意向も示した。
■砂漠のハイテク温室導入へ
都市農業の分野では食品庁が10月27日、先端技術を取り入れた5事業に計780万Sドル(約8億1,000万円)を助成すると発表した。屋内農業や水耕栽培農業向けに、病害虫対策技術や栄養価の向上、鮮度保存技術など先端技術の発展を支援する方針だ。
食品庁は同日、アラブ首長国連邦(UAE)の農業企業ピュアハーベスト・スマートファームズとも提携。砂漠地帯でもトマトやフルーツを栽培し、年中収穫できるようにした同社のハイテク温室を、赤道直下で熱帯性気候のシンガポールでも導入する。
日本人が経営に関わるシンガポールのイセ・フーズ・ホールディングスは25日、食品庁から鶏卵農場の建設認可について原則承認を得たと発表。AIやモノのインターネット(IoT)などの技術を導入したスマート農場を24年にも稼働し、シンガポールの鶏卵自給率を現在の30%未満から50%まで高められるよう後押しする。
食品庁のシニアディレクター(科学技術部門担当)、ニン・フーントン氏は27日に行われた農業食品関連の科学シンポジウムで、「(シンガポールにとって)食料安全保障は無視できない課題」と指摘。研究機関、企業、食品生産者などの関係者同士で協力し、国内の食料システムを強化するための新しい技術や生産体制を作っていかなければならないとの考えを示した。

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ソレインは「微生物と空気」から作られるタンパク質の粉末で、全ての必須アミノ酸を含有する。単細胞生物に二酸化炭素(CO2)、水素、酸素、ほんの少しの栄養素を与えることで増殖させて生産するため、従来の畜産のように大量の食料やエネルギーを必要としない持続可能な生産手法という。
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食品庁は10月16日、食用昆虫の輸入や国内での養殖の認可に関する基本方針を公表。同月28日には、シンガポール企業庁が昆虫産業の現況に関する報告書の中で、同国を拠点とする昆虫関連企業15社による資金調達額が過去4年で約4,000万米ドル(約59億円)に達したと明らかにした。
人間の食用だけでなく飼料や肥料用の昆虫関連企業も含まれるが、同国の昆虫産業に成長潜在性があるため、今後の研究開発(R&D)にシンガポールを活用してもらいたい意向も示した。
■砂漠のハイテク温室導入へ
都市農業の分野では食品庁が10月27日、先端技術を取り入れた5事業に計780万Sドル(約8億1,000万円)を助成すると発表した。屋内農業や水耕栽培農業向けに、病害虫対策技術や栄養価の向上、鮮度保存技術など先端技術の発展を支援する方針だ。
食品庁は同日、アラブ首長国連邦(UAE)の農業企業ピュアハーベスト・スマートファームズとも提携。砂漠地帯でもトマトやフルーツを栽培し、年中収穫できるようにした同社のハイテク温室を、赤道直下で熱帯性気候のシンガポールでも導入する。
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