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東芝、二次電池の受注で本腰使用範囲が限定的な用途に狙い

東芝グループ独自のリチウムイオン電池「SCiB」の受注を巡り、東芝の完全子会社の東芝インドが本腰を入れ始めた。10月には、三つ目の受注案件となった商用電気自動車(EV)メーカー、EVエイジ(EVage、北部チャンディガル)との契約締結を発表。モディ首相が掲げる「2070年までに温室効果ガス排出の実質ゼロ」を追い風に、電気バスや電気トラック、電動オートリキシャなど、使用範囲が限定的でSCiBの特性を生かせる用途に狙いを定め、受注拡大を目指す。伊藤修一社長(55)ら東芝インド幹部がNNAの単独取材に応じた。【鈴木健太】

安全性など六つのメリットを持つ、東芝グループ独自のリチウムイオン電池「SCiB」のセル(東芝インド提供)

SCiBは、2000年に入る前から東芝グループが研究を始め、08年に日本で生産販売にこぎ着けた。これまで、米国や中国、欧州、日本を中心に多岐にわたる用途で納入実績を有し、セルの生産は現在、全世界分を日本の柏崎工場(新潟県柏崎市)が担っている。SCiB事業は、成長が期待されるグループ事業の一つ。東芝グループは、22年3月期に549億円だったSCiB事業の売上高を、31年3月期に2,000億円に拡大する方針だ。
SCiBは負極材料に、グラファイト(黒鉛)など炭素系物質は使わず、充電時の熱安定性が高いチタン酸リチウム(LTO)を採用している。このため、▽発火の可能性が極めて少ない「安全性」▽充放電のサイクル寿命が2万回以上の「長寿命」▽6分間で80%以上を充電できる「急速充電」▽短時間に大きなパワーを出し入れできる「高入出力」▽マイナス30度でも使用が可能な「低温性能」▽100%まで充電でき、ほぼ0%まで使い切ることができる「広い実効SOC(充電状態)レンジ」——の六つのメリットを持っている。
デメリットは、他のリチウムイオン電池と比べ、エネルギー密度が低いこと。他の電池と同じ容量を得ようとすると、多くの電池が必要になり、価格も高くなりがちだ。例えば、平日の近距離での買い物から休日の長距離ドライブまで、使う日によって走行距離が大きく変わる乗用車は、電池の必要量が読みづらいため、やや不向きだ。
一方、バスや船、工場・倉庫内ロボットの動力源だったり、乗用車でもメイン動力源に使わずマイルドハイブリッドシステム用のバッテリーだったりすれば、距離や時間など使用範囲がある程度決まっている。電池の量を必要以上に積まずに済み、SCiBのデメリットを気にせず使える。
■印では20年に電動船で初受注
東芝グループはSCiBの販売を始めて以来、スズキのマイルドハイブリッド車や米国の産業用ロボット、中国の電気バスなど、使用範囲が限定的な用途に的を絞り、世界各地で受注を重ねてきた。
インドでは20年8月に電動船向けでSCiBを初受注。その後も、22年5月に産業用ロボット向け、8月には小型商用EVメーカーのEVエイジ向けで受注した。
EVエイジは現在、オンライン通販大手の米アマゾンや地場物流ベンチャーのデリーベリーにSCiBを搭載した小型EVバンを提供するべく、量産化の準備を進めている。東芝インドによると、EVエイジとは20年8月ごろから本格的な協議を開始。電池価格は安くないものの、安全性や長寿命に加え、電池の量を抑えながら急速充電をこまめに繰り返せば、貨物の積載効率やバンの回転率が上がる点を評価されたという。
東芝インドはこのほか、約2年前から空港の電気バス向けにSCiBを試験供給中。さらに、商標登録のルール上、SCiBと呼んでいないが、スズキ、デンソーとの合弁会社の工場(西部グジャラート州)では、スズキグループのマイルドハイブリッド車向けにリチウムイオン電池パックを生産している。

東芝インドからEVエイジへのSCiB供給契約を結び、記念撮影する東芝インドの伊藤修一社長(右)とEVエイジのインダルビール・シン創業者兼CEO(東芝インド提供)

■「いずれ大きなビジネスに」
インドのモディ首相は21年11月、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、「70年までに温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す」と表明。国内の電動化の機運は日増しに高まっており、電池事業を担当する東芝インドの西村和孝取締役(56)は「SCiBの受注は今年度から本格的に見込めるようになってきた」と手応えを語る。
22年上半期は、地場メーカーの電動二輪で発火事故が相次ぎ、死者が出るケースも発生。電池の安全性をいかに高めるかは喫緊の課題で、SCiBの安全性は重要なアピールポイントになりそうだ。
東芝インドは今後、電気バスや電気トラック、電動オートリキシャ、電動の配送ドローンなど、SCiBの特性を生かせる使い方に的を絞り、受注増を狙う。鉱山で使う電気トラックやデータセンター、鉄道分野への営業も強化する。
また、インドで再生可能エネルギーの普及がこのまま進むと、余剰電力を吸収する蓄電設備が一層必要になる。SCiBはモビリティーに載せるだけでなく、地面などに据え置く大型タイプもあり、将来的にはそうした設備受注も視野に入れる。
伊藤社長は「インドのSCiB事業の数値目標はこれから策定する段階。いずれ米国や中国向けの供給規模に匹敵する大きなビジネスに育てたい」と話した。

NNAの単独取材に応じる東芝インドの伊藤社長=11月、インド北部グルガオン(NNA撮影)
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SCiBは負極材料に、グラファイト(黒鉛)など炭素系物質は使わず、充電時の熱安定性が高いチタン酸リチウム(LTO)を採用している。このため、▽発火の可能性が極めて少ない「安全性」▽充放電のサイクル寿命が2万回以上の「長寿命」▽6分間で80%以上を充電できる「急速充電」▽短時間に大きなパワーを出し入れできる「高入出力」▽マイナス30度でも使用が可能な「低温性能」▽100%まで充電でき、ほぼ0%まで使い切ることができる「広い実効SOC(充電状態)レンジ」——の六つのメリットを持っている。
デメリットは、他のリチウムイオン電池と比べ、エネルギー密度が低いこと。他の電池と同じ容量を得ようとすると、多くの電池が必要になり、価格も高くなりがちだ。例えば、平日の近距離での買い物から休日の長距離ドライブまで、使う日によって走行距離が大きく変わる乗用車は、電池の必要量が読みづらいため、やや不向きだ。
一方、バスや船、工場・倉庫内ロボットの動力源だったり、乗用車でもメイン動力源に使わずマイルドハイブリッドシステム用のバッテリーだったりすれば、距離や時間など使用範囲がある程度決まっている。電池の量を必要以上に積まずに済み、SCiBのデメリットを気にせず使える。
■印では20年に電動船で初受注
東芝グループはSCiBの販売を始めて以来、スズキのマイルドハイブリッド車や米国の産業用ロボット、中国の電気バスなど、使用範囲が限定的な用途に的を絞り、世界各地で受注を重ねてきた。
インドでは20年8月に電動船向けでSCiBを初受注。その後も、22年5月に産業用ロボット向け、8月には小型商用EVメーカーのEVエイジ向けで受注した。
EVエイジは現在、オンライン通販大手の米アマゾンや地場物流ベンチャーのデリーベリーにSCiBを搭載した小型EVバンを提供するべく、量産化の準備を進めている。東芝インドによると、EVエイジとは20年8月ごろから本格的な協議を開始。電池価格は安くないものの、安全性や長寿命に加え、電池の量を抑えながら急速充電をこまめに繰り返せば、貨物の積載効率やバンの回転率が上がる点を評価されたという。
東芝インドはこのほか、約2年前から空港の電気バス向けにSCiBを試験供給中。さらに、商標登録のルール上、SCiBと呼んでいないが、スズキ、デンソーとの合弁会社の工場(西部グジャラート州)では、スズキグループのマイルドハイブリッド車向けにリチウムイオン電池パックを生産している。
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■「いずれ大きなビジネスに」
インドのモディ首相は21年11月、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、「70年までに温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す」と表明。国内の電動化の機運は日増しに高まっており、電池事業を担当する東芝インドの西村和孝取締役(56)は「SCiBの受注は今年度から本格的に見込めるようになってきた」と手応えを語る。
22年上半期は、地場メーカーの電動二輪で発火事故が相次ぎ、死者が出るケースも発生。電池の安全性をいかに高めるかは喫緊の課題で、SCiBの安全性は重要なアピールポイントになりそうだ。
東芝インドは今後、電気バスや電気トラック、電動オートリキシャ、電動の配送ドローンなど、SCiBの特性を生かせる使い方に的を絞り、受注増を狙う。鉱山で使う電気トラックやデータセンター、鉄道分野への営業も強化する。
また、インドで再生可能エネルギーの普及がこのまま進むと、余剰電力を吸収する蓄電設備が一層必要になる。SCiBはモビリティーに載せるだけでなく、地面などに据え置く大型タイプもあり、将来的にはそうした設備受注も視野に入れる。
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