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遊んで稼ぎ社会変えるGameFiWeb3時代のアジア新潮流(4)

ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した「非代替性トークン(NFT)」の登場によって生まれた、ゲームをしながら収益を上げることができるビジネスモデル「GameFi(ゲームファイ)」市場がアジアで広がりをみせている。GameFiは新たなゲーム体験に加えて、貧困などの社会課題の解決につながる社会的インパクト(社会的価値)を創出する事業として、さまざまな活用事例が生まれている。暗号資産(仮想通貨)交換業大手FTXトレーディングが11日に破綻した余波が残る中でも前進するGameFi市場について、今回から3回にわたって特集する。

観光業に従事していたインドネシア・バリ島在住の男性は新型コロナウイルス流行下で家計が苦しくなったときにGameFiで生計を立てたという(DEA提供)

9月に千葉県の幕張メッセで3年ぶりの対面形式で開かれた「東京ゲームショウ2022」。37カ国・地域の605社・団体が出展し、アジアからも中国、香港、韓国、ベトナム、マレーシア、インドネシア、シンガポールなどのスタートアップ企業がブースを構えた。中にはブロックチェーン技術を基盤とした次世代のインターネット「Web3(Web3.0、ウェブスリー)」領域のゲーム形態であるGameFiをアピールする企業もあった。
そのうちの1社がシンガポールで日本人が創業したスタートアップ、デジタル・エンターテインメント・アセット(DEA)だ。「GameFiは、ブロックチェーンとNFTの誕生によってゲームとフィンテック(ITを活用した金融サービス)が初めて結び付いた新しい事業領域で、東京ゲームショウにおいても異端中の異端だ」。DEAの山田耕三・創業者兼共同最高経営責任者(CEO)は、自社ブースで開いた事業説明会でこう述べた。
GameFiは、ブロックチェーン技術を使って発行したトークン(デジタル資産)をゲーム内の基軸通貨として用いる。ゲームをプレーするとトークンを獲得できたり、ゲームに使うNFT化されたアイテムを売買したりでき、トークンは暗号資産取引所で換金することもできる。GameFiは「ブロックチェーンゲーム」「NFTゲーム」「Play to Earn(プレー・トゥ・アーン、PtoE、遊んで稼ぐ)」などとも呼ばれている。

GameFiという新たな事業領域で何が起こっているのかを知ってほしいと話す、DEAの山田氏=9月、千葉県・幕張メッセ(NNA撮影)

DEAは2020年5月に、さまざまな職業のキャラクターを使ったカードバトルゲーム「JobTribes(ジョブトライブス)」を同社初のPtoEゲームとして配信し、現在は計5タイトルを扱っている。DEAはゲーム配信のほか、ゲーム内で使うNFTのマーケットプレイスやメタバース(仮想空間)プロジェクトも手がけ、これらのサービスは「PlayMining(プレイマイニング)」と名付けた1つのプラットフォーム上で提供している。
各サービスには、DEAが発行するトークン「DEAPcoin(ディープコイン、DEP=デップ)」が基軸通貨として使われている。DEAが配信するゲームは初期投資なしで遊べるが、よりゲームを楽しむために使うアイテムを購入するにはDEPが必要となる。
DEPは、海外約15カ所と日本の3カ所の暗号資産取引所で購入できるほか、ブロックチェーン技術の「スマートコントラクト(設定された条件が満たされると自動で契約を履行するプログラム)」を使って取引する「分散型取引所(DEX)」でも流通している。PlayMiningには、世界100カ国・地域以上の計約250万人が登録している。地域別の内訳は、ベトナムとインドネシアが約3割、フィリピンが2割強、日本が1割弱などとなっており、東南アジアでの人気が高い。
DEAの22年7月期決算は、売上高が前期比7.4倍の6,962万シンガポールドル(約71億円)、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は同5.9倍の2,882万シンガポールドルだった。売上高の大半はゲームアイテムのNFTの販売だという。DEAは来年中に、配信するゲームを10本に増やす計画で、山田氏は「Web3を活用し、誰もが未体験の新しいエンターテインメントを世界へ届けていきたい」と意気込む。
■クリエーター支援に変革
山田氏はテレビ東京で15年間プロデューサーを務めた後、18年にDEAを立ち上げた。同社はゲーム事業を通じて◇新しいエンターテインメント体験の提供◇クリエーターの価値のエンパワーメント◇世界に対する社会的インパクトの実現——を目指している。
このうちクリエーターの価値のエンパワーメントに関しては、NFTの登場によってデジタルデータの二次流通が可能となったことで実現した。

「ジョブトライブス」のアイテムとして限定販売された、漫画『ドラゴン桜』のキャラクターが描かれたNFT。このNFTの売り上げや二次流通の取引額の一部が作者に還元されている(PlayMiningのマーケットプレイスより)

NFTは、特定のデジタルデータに「鑑定書」を付けることで、同じように見える他のデータと区別する機能がある。取引記録もブロックチェーンに残るため「本物のデータ」と照合ができる。この特性を活用し、クリエーターが制作したNFTが二次流通で売買されるたびに取引額の一部が、印税のように制作者に還元されるプログラムが作れるようになった。
DEAがゲーム用アイテムとして販売するNFTには、さまざまなクリエーターが制作したオリジナルキャラクターや既存漫画のキャラクターなどが描かれている。ユーザーはNFTを購入してゲームで使用した後にPlayMiningのマーケットプレイスで売買でき、取引額の一部がクリエーターや漫画家に還元されている。
山田氏によると、DEAでは過去2年半で、NFTの取引額から計約5億円分が100人のクリエーターに支払われた。紙の書籍や漫画は二次流通しても作家に還元されなかったため、NFTはクリエーターへの対価支払いに変革をもたらしている。
■ゲームの持続性を生む外部経済圏
東南アジアでPtoEゲームの人気があるのは、プレーするとトークンを獲得できることが理由の1つだ。ではなぜ、遊ぶだけでトークンがもらえるのか。山田氏は、ユーチューブの動画配信者が再生回数に応じて、広告収入の一部の分配を受けているのと同じで、PtoEも外部の経済圏から入る収入の一部をユーザーに還元する仕組みになっていると説明する。
PtoEゲームには、基軸通貨として発行するトークンの価値がゲームへの期待感によって変動する投機的な側面があり、PtoEゲームの開発会社は価値の上昇に応じて得られる差益をユーザーに還元している。
ほかにも、◇ユーザーが支払うアイテムなどの購入費◇ゲームプラットフォームへの広告料◇PtoEゲームを通じて社会課題の解決を試みようとする投資家などが拠出するスポンサー費用——といった外部からの収入がある。
しかし、山田氏は「現状ではGameFiのビジネスモデルのうち、トークンの投機的な価値に目がいき過ぎている。トークンはPtoEゲームが持つ本質的かつ社会的に意味のある価値を提供するための道具に過ぎない」と話す。

■雇用生み社会貢献に活用
山田氏が、PtoEゲームに可能性を感じているのは、ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)の価値をエンターテインメントに組み込むことができるからだという。
東南アジアなどの新興国では、新型コロナウイルスが流行する中で収入を得る手段としてPtoEゲームが注目され急速に広まった。普及した背景には、ゲームに使うNFTを保有するユーザーが、別のユーザーに貸し出し、プレーして獲得した暗号資産を分け合う「スカラーシップ制度」の存在もある。
NFTを貸し出すグループを「ギルド」、借り手を「スカラー」と呼ぶこの仕組みは、フィリピンで設立された世界初のゲームギルド「イールド・ギルド・ゲームス(YGG)」が構築し各地へ広がった。

「ジョブトライブス」をプレーするインドネシアのユーザーたち(DEA提供)

DEAのジョブトライブスなどのゲームもスカラーシップ制度でプレーされ、新たな雇用を生んでいる。例えばぜんそくを発症して職を失ったフィリピン人の男性がスカラーとなって生計を支えたり、インドネシア・バリ島の観光用ハイヤーの運転手だった男性が新型コロナ流行下での減収を補ったりしているという。
■「FTXショック」後も新作ゲーム投入
Web3の新たなビジネスモデルとして登場したGameFiが注目される一方、暗号資産市場では今月11日に暗号資産交換業大手のFTXトレーディングが米連邦破産法11条(チャプター11、日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。その数日前にFTXで取り付け騒ぎが起き破綻リスクが判明すると、暗号資産の時価総額が急落。情報サイトのコインマーケットキャップによると7日時点で約1兆550億米ドル(約147兆円)あった時価総額は、11日に約7,870億米ドルまで落ち込んだ。
ゲーム関連のプロジェクトでも時価総額の上位のトークンの価格が直近1週間で軒並み2~4割下落したが、DEAのDEPの下落率は15日午前0時時点で8%前後にとどまっている。「FTXショック」の余波が残る中でも、DEAは14日に予定通り5タイトル目の新作ゲームを正式にローンチした。
吉田直人・創業者兼CEOは14日のツイッターへの投稿で「われわれは一歩一歩事業を前進させるだけ。DEPは実需に基づく利用価値のあるトークンで、投機的トークンではない。世界中の人にもっと知ってもらいたい」とコメントした。

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そのうちの1社がシンガポールで日本人が創業したスタートアップ、デジタル・エンターテインメント・アセット(DEA)だ。「GameFiは、ブロックチェーンとNFTの誕生によってゲームとフィンテック(ITを活用した金融サービス)が初めて結び付いた新しい事業領域で、東京ゲームショウにおいても異端中の異端だ」。DEAの山田耕三・創業者兼共同最高経営責任者(CEO)は、自社ブースで開いた事業説明会でこう述べた。
GameFiは、ブロックチェーン技術を使って発行したトークン(デジタル資産)をゲーム内の基軸通貨として用いる。ゲームをプレーするとトークンを獲得できたり、ゲームに使うNFT化されたアイテムを売買したりでき、トークンは暗号資産取引所で換金することもできる。GameFiは「ブロックチェーンゲーム」「NFTゲーム」「Play to Earn(プレー・トゥ・アーン、PtoE、遊んで稼ぐ)」などとも呼ばれている。[caption id="attachment_10178" align="aligncenter" width="620"]GameFiという新たな事業領域で何が起こっているのかを知ってほしいと話す、DEAの山田氏=9月、千葉県・幕張メッセ(NNA撮影)[/caption]
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山田氏によると、DEAでは過去2年半で、NFTの取引額から計約5億円分が100人のクリエーターに支払われた。紙の書籍や漫画は二次流通しても作家に還元されなかったため、NFTはクリエーターへの対価支払いに変革をもたらしている。
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PtoEゲームには、基軸通貨として発行するトークンの価値がゲームへの期待感によって変動する投機的な側面があり、PtoEゲームの開発会社は価値の上昇に応じて得られる差益をユーザーに還元している。
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■雇用生み社会貢献に活用
山田氏が、PtoEゲームに可能性を感じているのは、ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)の価値をエンターテインメントに組み込むことができるからだという。
東南アジアなどの新興国では、新型コロナウイルスが流行する中で収入を得る手段としてPtoEゲームが注目され急速に広まった。普及した背景には、ゲームに使うNFTを保有するユーザーが、別のユーザーに貸し出し、プレーして獲得した暗号資産を分け合う「スカラーシップ制度」の存在もある。
NFTを貸し出すグループを「ギルド」、借り手を「スカラー」と呼ぶこの仕組みは、フィリピンで設立された世界初のゲームギルド「イールド・ギルド・ゲームス(YGG)」が構築し各地へ広がった。[caption id="attachment_10181" align="aligncenter" width="620"]「ジョブトライブス」をプレーするインドネシアのユーザーたち(DEA提供)[/caption]
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