タイの首都バンコクで、18~19日にかけてアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催された。参加国の間での貿易を促進し、経済的な問題に対処していくことが確認された一方、アジアでの対立や紛争リスクが深刻化していることも浮き彫りになった。
タイで開催されたAPEC首脳会議に前後して、周辺国では各種の会議が開催された。カンボジアでは8~13日に東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が開催され、中国や日本、米国の代表者も参加。インドネシアのバリでは、16日まで20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催された。
APEC首脳会議の最終日となった19日、同会議の議長を務めたタイのプラユット首相は「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の策定に向けた計画に合意し、大きな進展があった」と発言。FTAAPは21カ国・地域が参加し、29億人をカバーする貿易圏構想。環太平洋連携協定(CPTPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)を束ねる構想ともされる。APECの首脳による宣言では、ルールに基づいた多国間貿易システムを促進する方針が示された一方、インフレや食糧の安全保障、気候変動、災害といった課題に対処していく必要性も確認された。
会期中には、タイが掲げる「バイオ・循環型・グリーン(BCG)」経済を各国が促進していく「バンコク・ゴールズ」が採択された。また、プラユット首相は、19日に中国の習近平国家主席と、16日にはベトナムのグエン・スアン・フック国家主席と会談。ワチラロンコン国王とスティダー妃は各国の首脳を接遇した。
16~19日には首都バンコクの中心部では交通規制が敷かれ、一部の企業では同期間中は在宅勤務が推奨された。各国の首脳の安全が脅かされる事態は免れたものの、18日には首都バンコク中心部で民主化デモが実施され、警察はデモ隊に対してゴム弾を発射する事態となった。
■中国は「冷戦」に警鐘
APEC参加国の人口は全世界の38%を占めるほか、国内総生産(GDP)は62%、貿易の48%を占める。アジアの経済的な協力を促進する枠組みとして一定の存在感を示した一方、域内での紛争リスクが高まっていることを感じさせる側面もあった。
17日にAPECフォーラムが開催される1時間前には、北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射。米国のハリス副大統領がオーストラリアや日本、韓国、カナダ、ニュージーランドの首脳と緊急会議を開いた。ロイター通信によると、14日には米国のバイデン大統領と習主席が会談し、北朝鮮問題についても話し合われた直後の出来事だった。ハリス氏は19日に習氏と短時間の会談を実施し、「米中両国が意思疎通のチャンネルを維持すること」の重要性を再確認したという。
習氏は17日、アジアで「冷戦」の緊張が高まることに対する懸念を表明。アジア太平洋は「どの国の『裏庭』であってもならない」と米国と同盟国をけん制。冷戦構造を先鋭化させる試みは、「決して許容されない」と警鐘を発した。
G20とAPECのメンバー国であるロシアからは、プーチン大統領は不参加。ベロウソフ第1副首相がAPECに参加した。APEC首脳会議の共同声明では、ウクライナ戦争についても言及され、「世界経済に不可逆的な影響を与える」と指摘した。共同宣言では、国連安全保障理事会による決議などに照らし、ロシアはウクライナから無条件で撤退するべきだと非難した。一方で、共同宣言では、「戦争や当事国に対する制裁について、異なる見解を持つ参加国がいることは認識している」とし、「APECは安全保障の問題を解決する場ではない」とし経済的な影響を指摘するにとどめた。ロシアのウクライナ侵攻については、G20でも同様の声明が全会一致で採択された。
次回のAPECは、米国のサンフランシスコで開催される。
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タイで開催されたAPEC首脳会議に前後して、周辺国では各種の会議が開催された。カンボジアでは8~13日に東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が開催され、中国や日本、米国の代表者も参加。インドネシアのバリでは、16日まで20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催された。
APEC首脳会議の最終日となった19日、同会議の議長を務めたタイのプラユット首相は「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の策定に向けた計画に合意し、大きな進展があった」と発言。FTAAPは21カ国・地域が参加し、29億人をカバーする貿易圏構想。環太平洋連携協定(CPTPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)を束ねる構想ともされる。APECの首脳による宣言では、ルールに基づいた多国間貿易システムを促進する方針が示された一方、インフレや食糧の安全保障、気候変動、災害といった課題に対処していく必要性も確認された。
会期中には、タイが掲げる「バイオ・循環型・グリーン(BCG)」経済を各国が促進していく「バンコク・ゴールズ」が採択された。また、プラユット首相は、19日に中国の習近平国家主席と、16日にはベトナムのグエン・スアン・フック国家主席と会談。ワチラロンコン国王とスティダー妃は各国の首脳を接遇した。
16~19日には首都バンコクの中心部では交通規制が敷かれ、一部の企業では同期間中は在宅勤務が推奨された。各国の首脳の安全が脅かされる事態は免れたものの、18日には首都バンコク中心部で民主化デモが実施され、警察はデモ隊に対してゴム弾を発射する事態となった。
■中国は「冷戦」に警鐘
APEC参加国の人口は全世界の38%を占めるほか、国内総生産(GDP)は62%、貿易の48%を占める。アジアの経済的な協力を促進する枠組みとして一定の存在感を示した一方、域内での紛争リスクが高まっていることを感じさせる側面もあった。
17日にAPECフォーラムが開催される1時間前には、北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射。米国のハリス副大統領がオーストラリアや日本、韓国、カナダ、ニュージーランドの首脳と緊急会議を開いた。ロイター通信によると、14日には米国のバイデン大統領と習主席が会談し、北朝鮮問題についても話し合われた直後の出来事だった。ハリス氏は19日に習氏と短時間の会談を実施し、「米中両国が意思疎通のチャンネルを維持すること」の重要性を再確認したという。
習氏は17日、アジアで「冷戦」の緊張が高まることに対する懸念を表明。アジア太平洋は「どの国の『裏庭』であってもならない」と米国と同盟国をけん制。冷戦構造を先鋭化させる試みは、「決して許容されない」と警鐘を発した。
G20とAPECのメンバー国であるロシアからは、プーチン大統領は不参加。ベロウソフ第1副首相がAPECに参加した。APEC首脳会議の共同声明では、ウクライナ戦争についても言及され、「世界経済に不可逆的な影響を与える」と指摘した。共同宣言では、国連安全保障理事会による決議などに照らし、ロシアはウクライナから無条件で撤退するべきだと非難した。一方で、共同宣言では、「戦争や当事国に対する制裁について、異なる見解を持つ参加国がいることは認識している」とし、「APECは安全保障の問題を解決する場ではない」とし経済的な影響を指摘するにとどめた。ロシアのウクライナ侵攻については、G20でも同様の声明が全会一致で採択された。
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