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子の将来守れ、ダルニー奨学生800人に

東南アジア諸国連合(ASEAN)5カ国で教育支援を行う公益財団法人「民際センター」(東京都中央区)は、11月15日までに2022年度のミャンマー向けの奨学金授与を終えた。「ダルニー奨学金」と呼ぶ、日本人や日系企業など支援者と恵まれない境遇にある奨学生をつなげる事業で、ミャンマーでの対象者は約800人。政情不安などで教育が停滞する中、国境を越えて子どもの将来を守ろうと懸命に取り組んでいる。【小故島弘善】

ダルニー奨学金の支援者からの手紙を読む子ども=11月15日、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)

民際センターは同日、最大都市ヤンゴン中心部とティラワ経済特区(SEZ)の中継地であるタンリン郡区にある公立の東ミョーハウン中学校で、奨学金給付の式典を熊谷組(東京都新宿区)と合同で開催した。
奨学生となったユーサンダーアウンさん(12)は、「支援者からの手紙を読むと意欲が湧いてくる」と話した。
ダルニー奨学金は、支援者と奨学生を1対1でつなぐ仕組み。支援者は1口当たり年間1万4,400円を寄付して中学校の学費を補助する。ミャンマーでは、大人が得る収入は最低賃金レベルでは、休みなしで働いても月1万円に満たない。奨学金は貧困層にとって重要な学資だ。
東ミョーハウン中学校のキンチョーチョーテット校長は、「今年は55人の子どもが民際センターの支援を受けた。貧しい保護者の負担を減らし、子どもの学業を続けさせるための大きな支援となる」と歓迎した。
民際センターのミャンマー事務所「地域開発教育基金(EDF)ミャンマー」のジンゾーゾーマウン(ゾーゾー)事務所長は、「新型コロナウイルス感染症の発生や政情不安により、ミャンマーでは約2年にわたり教育が停滞した」と指摘。「今年6月に始まった新年度は、子どもの登校を再開させようというムードになっているが、物価高が特に貧困層の生活を圧迫しており、子どもの教育にしわ寄せがいってしまう」と話した。
ただ、ダルニー奨学金は対象が5カ国(タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、ミャンマー)だが、ミャンマーの奨学生数が最も少ない。民際センターは、ミャンマーの教育支援を日本に訴え続けるとともに、現地で事業を継続する日系企業などとの協力体制を強化していきたい考えだ。
熊谷組はミャンマーで、教育改革に関する企業の社会的責任(CSR)事業「KUMAGAI STAR PROJECT」を15年から展開し、校舎を建設してきた。第3弾の東ミョーハウン中学校支援で、民際センターと協力している。

ダルニー奨学金の支援者に手紙を書く子ども=11月15日、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)

民際センターとしても、ミャンマーの支援対象を子どもだけでなく、学校そのものにも広げようとしている。今年4月には、学校に浄水装置を設置するプロジェクトを立ち上げると発表した。ゾーゾー氏は「郊外の教育現場では電力不足が深刻。太陽光発電設備の導入プロジェクトなども検討していきたい」と話した。
■教員の負担、日本平均の6倍も
ミャンマーでは、昨年2月のクーデターで全権を掌握した国軍に抵抗する市民不服従運動(CDM)が広がり、公立校の教員の多くが離職した。農村部などでは、政権を追われて国外に逃亡した民主派議員らが呼びかける武装闘争が続く中、国軍統制下の公共サービスを拒絶する人もおり、公立校の教育環境の悪化を引き起こしている。
特に深刻なのが教員不足だ。キンチョーチョーテット氏は、「今年は、全校で757人の子どもがいるが、教員は私を含めて、わずか9人だ」と打ち明けた。教員1人が担当する生徒数は約84人。日本の国公立中学校の6倍以上に相当する。
日本では、文部科学省の統計によると、国公立中学校で教員1人が担当する生徒数(ST比)は1955年時点で30人だったが、年を追うごとに減少。20年度には13人まで減った。
ヤンゴンの公立校に子どもを通わせるある父親は「政争を教育にまで持ち込むのはおかしい。何よりも家族が大事だ。子どもの教育を受ける権利を守りたい」とこぼした。子どもの登校を再開させた6月時点では、公立校に子どもを通わせることを認めない同調圧力が強かったが、最近は和らいできているという。ただ、民主派勢力から「裏切り者」と後ろ指を指される恐れがあり、安心して生活できない状況が続いている。

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ダルニー奨学金は、支援者と奨学生を1対1でつなぐ仕組み。支援者は1口当たり年間1万4,400円を寄付して中学校の学費を補助する。ミャンマーでは、大人が得る収入は最低賃金レベルでは、休みなしで働いても月1万円に満たない。奨学金は貧困層にとって重要な学資だ。
東ミョーハウン中学校のキンチョーチョーテット校長は、「今年は55人の子どもが民際センターの支援を受けた。貧しい保護者の負担を減らし、子どもの学業を続けさせるための大きな支援となる」と歓迎した。
民際センターのミャンマー事務所「地域開発教育基金(EDF)ミャンマー」のジンゾーゾーマウン(ゾーゾー)事務所長は、「新型コロナウイルス感染症の発生や政情不安により、ミャンマーでは約2年にわたり教育が停滞した」と指摘。「今年6月に始まった新年度は、子どもの登校を再開させようというムードになっているが、物価高が特に貧困層の生活を圧迫しており、子どもの教育にしわ寄せがいってしまう」と話した。
ただ、ダルニー奨学金は対象が5カ国(タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、ミャンマー)だが、ミャンマーの奨学生数が最も少ない。民際センターは、ミャンマーの教育支援を日本に訴え続けるとともに、現地で事業を継続する日系企業などとの協力体制を強化していきたい考えだ。
熊谷組はミャンマーで、教育改革に関する企業の社会的責任(CSR)事業「KUMAGAI STAR PROJECT」を15年から展開し、校舎を建設してきた。第3弾の東ミョーハウン中学校支援で、民際センターと協力している。[caption id="attachment_10488" align="aligncenter" width="620"]ダルニー奨学金の支援者に手紙を書く子ども=11月15日、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)[/caption]
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■教員の負担、日本平均の6倍も
ミャンマーでは、昨年2月のクーデターで全権を掌握した国軍に抵抗する市民不服従運動(CDM)が広がり、公立校の教員の多くが離職した。農村部などでは、政権を追われて国外に逃亡した民主派議員らが呼びかける武装闘争が続く中、国軍統制下の公共サービスを拒絶する人もおり、公立校の教育環境の悪化を引き起こしている。
特に深刻なのが教員不足だ。キンチョーチョーテット氏は、「今年は、全校で757人の子どもがいるが、教員は私を含めて、わずか9人だ」と打ち明けた。教員1人が担当する生徒数は約84人。日本の国公立中学校の6倍以上に相当する。
日本では、文部科学省の統計によると、国公立中学校で教員1人が担当する生徒数(ST比)は1955年時点で30人だったが、年を追うごとに減少。20年度には13人まで減った。
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