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【現場で語る2023年】日立、金融IT事業に注力基幹システムへの参入視野に

日立製作所のベトナム統括会社、日立アジア(ベトナム)の須藤一徳社長は、ベトナムでの注力事業の一つとして金融機関を対象にしたIT事業を挙げ、銀行や消費者金融、保険会社向けビジネスを強化する方針を示した。当初は基幹システムの周辺分野に注力し、段階的に規模の大きなシステムの受注を目指す。需要増が続くエネルギー分野では、エネルギーの利用効率を改善する機器とモノのインターネット(IoT)技術を送電分野で展開し、事業の拡大を狙う。

日立製作所のベトナム事業について語る日立アジア(ベトナム)の須藤一徳社長

■先行分野を見極め
——2022年の事業環境を振り返って大きな変化は。
IT分野では年ごとの状況よりもトレンドに着目すべきだと思っている。世界的にIT技術が浸透していくのは確実だが、ITが貢献する分野と程度には国ごとに差異がある。
ベトナムでは行政と金融分野のIT技術が先行し、これにつられる形で製造業や社会インフラ分野にもITが広まっていくと考えている。ただ現状では利便性を追求するための「機能」部分が重視され、ITシステム自体の健全性やセキュリティー性を維持するための「非機能」部分に目を向けている企業やシステム開発者が少ないように見える。日立としては機能と非機能の両面にバランスよくリソースを充てていきたい。
——ベトナムでは電力グリッド(送・配電網)、交通、水処理のシステムなど多岐にわたる事業を手がけているが、中核的な事業は。
日立のグループ会社はベトナムに12社あり、規模が大きいのは自動車や自動二輪の部品を扱う日立アステモ、エネルギー事業の日立エナジー・ベトナム、ソフトウエアシステムを手がける日立ヴァンタラ・ベトナムだ。
その中でベトナム統括会社である日立アジア(ベトナム)が最も注力しているのが、日立ヴァンタラ・ベトナムとの金融分野での事業拡大だ。
■求められる信頼性、周辺分野で足場固め
——なぜ金融分野に注目するのか。
金融機関の事業活動は一国の経済活動に大きな影響を及ぼす。したがって金融機関のシステムは、堅牢(けんろう)性や安全性の確保に高度な技術と先進性が求められ、グループの技術が生かせるからだ。
日立は日本でメガバンクなどに基幹の勘定系システムなどを提供して信頼関係を築いてきた。その蓄積と日立ヴァンタラ・ベトナムの実務力を融合させ、ベトナムの金融分野で事業を拡大していきたい。
——金融といっても幅が広い。
日立は日本ではIT分野でも60年以上の歴史を持つ。しかし、ベトナムでIT分野に本格的に参入したのは5年ほど前と日が浅い。金融機関の中核のシステム分野に参入するのはまだ難しい段階にある。まずは金融機関の心臓部を取り巻く周辺のシステムで力を蓄え、ベトナムでの総合力を育みながら、一歩一歩ビジネスを拡大していく。
ベトナムの消費者金融は、最近5~7年ほどで飛躍的な成長を遂げた。そのため、システムを構築するためのリソースに難点を抱えている企業が多いと想定している。ここにわれわれが貢献できる余地があるとみている。
——現在提供しているシステム事例は。
人工知能(AI)を用いた与信管理システムや、個人ローンの申請・契約の自動契約機の提供などの領域で実績がある。与信管理にAIを活用することで、審査担当者に依存していた判断の基準が画一化され透明性が高まる。自動契約機では、紙媒体での契約手続きなどで起こる転記などのミスを防ぎ、承認プロセスを大幅に短縮し業務効率を高める利点がある。
22年5月から自動契約機はベトナム郵便総公社(ベトナムポスト)に設置している。今後利用率などの実績が高まれば全国で1万3,000カ所ほどある郵便局に展開される可能性もある。
■送電分野での技術提供を検討
——電力分野へはどう関与していくか。
政府が2050年までの炭素中立(カーボンニュートラル)実現を表明したことで、発電量の確保に加えて再生可能エネルギーの活用が必要不可欠になった。特に風力発電の一大拠点になるとみられる中南部ニントゥアン省およびその周辺の省と、電力が不足している北部の首都ハノイを結ぶ送電線の能力増強は、今後のベトナム経済の発展を考える上で非常に大切な課題だと考えている。日立はその具体的な手法として高圧直流送電(HVDC)という技術を保有している。ベトナムの電力問題の解決の一助になる技術だ。
再生可能エネルギーは出力変動の大きい電源のため、送・配電網の健全性や安定性を保つ仕組みが必要となる。日本で確立した各種技術を海外でも提供できるよう対応を進めており、タイでは実証事業を行っている。ベトナムでも同様の取り組みを進めたい。
——再エネ分野の蓄電、発電事業についてどう考えるか。
ベトナムでは蓄電システム(揚水発電を含む)の重要性は今後も高まる。蓄電システムには電力システム上の調整力、供給力、バックアップ等の機能があるため、再生可能エネルギーとの組み合わせでより効率的なエネルギー利用を実現することが可能だ。日立もこの分野では具体的な技術と提案力があり、今後ベトナムでも事業機会を探っていきたい。
原子力発電については、現在、さまざまな国で再検討が行われている。使用済み燃料処理の課題解決に向けた研究開発を重視しながら、有効利用について考えることは大切な検討課題だと思う。もちろん安全性を確保することが大前提になる。
■鉄道は既存事業の完遂に集中
——日立はベトナム政府が検討している南北高速鉄道への参入を考えているか。
これについては現段階では何も答えられない。それよりも現在参加しているプロジェクトを完遂することに日立は注力している。個人的には南北を結ぶ高速鉄道も重要であることは認識しているが、その前に基幹港湾である北部のハイフォン港やクアンニン港と首都ハノイ、南部の重要港湾であるバリアブンタウと周辺省を結ぶ輸送ルートの増強が必要なのではと考える。(聞き手=石黒咲紀)
<会社概要>
日立製作所のベトナム事業
1994年に南部ホーチミン市、96年に首都ハノイに駐在員事務所を設立後、2013年に地域統括会社の日立アジア(ベトナム)を設立し、本格的にベトナム市場に参入した。主な事業内容は、IT、発電、送・配電用機器、自動車用部品およびコンポーネントの製造販売。日立製作所は円借款事業であるホーチミン市都市鉄道(メトロ、地下鉄)1号線(1区ベンタイン市場—市直属トゥードゥック市スオイティエン公園)の車両製造と鉄道システムを受注している。

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ベトナムでは行政と金融分野のIT技術が先行し、これにつられる形で製造業や社会インフラ分野にもITが広まっていくと考えている。ただ現状では利便性を追求するための「機能」部分が重視され、ITシステム自体の健全性やセキュリティー性を維持するための「非機能」部分に目を向けている企業やシステム開発者が少ないように見える。日立としては機能と非機能の両面にバランスよくリソースを充てていきたい。
——ベトナムでは電力グリッド(送・配電網)、交通、水処理のシステムなど多岐にわたる事業を手がけているが、中核的な事業は。
日立のグループ会社はベトナムに12社あり、規模が大きいのは自動車や自動二輪の部品を扱う日立アステモ、エネルギー事業の日立エナジー・ベトナム、ソフトウエアシステムを手がける日立ヴァンタラ・ベトナムだ。
その中でベトナム統括会社である日立アジア(ベトナム)が最も注力しているのが、日立ヴァンタラ・ベトナムとの金融分野での事業拡大だ。
■求められる信頼性、周辺分野で足場固め
——なぜ金融分野に注目するのか。
金融機関の事業活動は一国の経済活動に大きな影響を及ぼす。したがって金融機関のシステムは、堅牢(けんろう)性や安全性の確保に高度な技術と先進性が求められ、グループの技術が生かせるからだ。
日立は日本でメガバンクなどに基幹の勘定系システムなどを提供して信頼関係を築いてきた。その蓄積と日立ヴァンタラ・ベトナムの実務力を融合させ、ベトナムの金融分野で事業を拡大していきたい。
——金融といっても幅が広い。
日立は日本ではIT分野でも60年以上の歴史を持つ。しかし、ベトナムでIT分野に本格的に参入したのは5年ほど前と日が浅い。金融機関の中核のシステム分野に参入するのはまだ難しい段階にある。まずは金融機関の心臓部を取り巻く周辺のシステムで力を蓄え、ベトナムでの総合力を育みながら、一歩一歩ビジネスを拡大していく。
ベトナムの消費者金融は、最近5~7年ほどで飛躍的な成長を遂げた。そのため、システムを構築するためのリソースに難点を抱えている企業が多いと想定している。ここにわれわれが貢献できる余地があるとみている。
——現在提供しているシステム事例は。
人工知能(AI)を用いた与信管理システムや、個人ローンの申請・契約の自動契約機の提供などの領域で実績がある。与信管理にAIを活用することで、審査担当者に依存していた判断の基準が画一化され透明性が高まる。自動契約機では、紙媒体での契約手続きなどで起こる転記などのミスを防ぎ、承認プロセスを大幅に短縮し業務効率を高める利点がある。
22年5月から自動契約機はベトナム郵便総公社(ベトナムポスト)に設置している。今後利用率などの実績が高まれば全国で1万3,000カ所ほどある郵便局に展開される可能性もある。
■送電分野での技術提供を検討
——電力分野へはどう関与していくか。
政府が2050年までの炭素中立(カーボンニュートラル)実現を表明したことで、発電量の確保に加えて再生可能エネルギーの活用が必要不可欠になった。特に風力発電の一大拠点になるとみられる中南部ニントゥアン省およびその周辺の省と、電力が不足している北部の首都ハノイを結ぶ送電線の能力増強は、今後のベトナム経済の発展を考える上で非常に大切な課題だと考えている。日立はその具体的な手法として高圧直流送電(HVDC)という技術を保有している。ベトナムの電力問題の解決の一助になる技術だ。
再生可能エネルギーは出力変動の大きい電源のため、送・配電網の健全性や安定性を保つ仕組みが必要となる。日本で確立した各種技術を海外でも提供できるよう対応を進めており、タイでは実証事業を行っている。ベトナムでも同様の取り組みを進めたい。
——再エネ分野の蓄電、発電事業についてどう考えるか。
ベトナムでは蓄電システム(揚水発電を含む)の重要性は今後も高まる。蓄電システムには電力システム上の調整力、供給力、バックアップ等の機能があるため、再生可能エネルギーとの組み合わせでより効率的なエネルギー利用を実現することが可能だ。日立もこの分野では具体的な技術と提案力があり、今後ベトナムでも事業機会を探っていきたい。
原子力発電については、現在、さまざまな国で再検討が行われている。使用済み燃料処理の課題解決に向けた研究開発を重視しながら、有効利用について考えることは大切な検討課題だと思う。もちろん安全性を確保することが大前提になる。
■鉄道は既存事業の完遂に集中
——日立はベトナム政府が検討している南北高速鉄道への参入を考えているか。
これについては現段階では何も答えられない。それよりも現在参加しているプロジェクトを完遂することに日立は注力している。個人的には南北を結ぶ高速鉄道も重要であることは認識しているが、その前に基幹港湾である北部のハイフォン港やクアンニン港と首都ハノイ、南部の重要港湾であるバリアブンタウと周辺省を結ぶ輸送ルートの増強が必要なのではと考える。(聞き手=石黒咲紀)
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日立製作所のベトナム事業
1994年に南部ホーチミン市、96年に首都ハノイに駐在員事務所を設立後、2013年に地域統括会社の日立アジア(ベトナム)を設立し、本格的にベトナム市場に参入した。主な事業内容は、IT、発電、送・配電用機器、自動車用部品およびコンポーネントの製造販売。日立製作所は円借款事業であるホーチミン市都市鉄道(メトロ、地下鉄)1号線(1区ベンタイン市場—市直属トゥードゥック市スオイティエン公園)の車両製造と鉄道システムを受注している。" ["post_title"]=> string(103) "【現場で語る2023年】日立、金融IT事業に注力基幹システムへの参入視野に" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(193) "%e3%80%90%e7%8f%be%e5%a0%b4%e3%81%a7%e8%aa%9e%e3%82%8b2023%e5%b9%b4%e3%80%91%e6%97%a5%e7%ab%8b%e3%80%81%e9%87%91%e8%9e%8d%ef%bd%89%ef%bd%94%e4%ba%8b%e6%a5%ad%e3%81%ab%e6%b3%a8%e5%8a%9b%e5%9f%ba" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2023-02-03 04:00:03" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2023-02-02 19:00:03" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=11580" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
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