NNAグローバルナビ アジア専門情報ブログ

AIが文字から動画生成集雅科技、広告収益増加に自信

人工知能(AI)によるコンテンツ生成が話題を集めている。台湾の集雅科技(グリアクラウド)は、AIがテキストデータなどを基に動画素材とテロップなどを組み合わせて動画を作り上げるサービスを手がける。執行長の陳建勲氏は、同サービスで動画制作にかかる時間を9割、費用を5割それぞれ削減することを目標に掲げると同時に、インプレッション数(広告の表示回数)の引き上げを通じた収益増もかなえると語る。【山田愛実】

集雅科技の陳建勲執行長は、AI生成の動画によるコンテンツの収益増に自信を示す=台北(NNA撮影)

サービス名は「グリアスタジオ」。顧客は主にメディアやブログ管理会社で、台湾では現在、大手ニュースメディアを含む100社以上と契約している。このうちある新聞社のサイトでは、記事のページ上でアニメ風の3Dキャラクターがニュースを読み上げる動画を視聴することができる。実際に視聴してみると、音声が流れるだけでなく、テロップが表示されるなど画面に動きがあるのでつい目を引かれる。
陳氏は大学院でAIを研究。当時、AIの応用分野は工学や金融がメインだったが、そのほかの分野にも活用したいと考えていた。卒業後に広告関係の仕事をしたことで、コストが高いが今後の旺盛な需要が見込める映像制作にAIを活用するべきだとの思いを強くし、2015年に集雅科技を設立した。
グリアスタジオの動画は、個別に詳しい内容を指定して生成する以外に、サイト内の記事またはサイト自体を指定して自動生成することが可能。プランによっては図表など文章化されていない情報から動画を生成することもできる。
動画に登場するキャラクター「アバター」はアニメやカートゥーン、マスコットといった多彩な3Dキャラクターのほか、実在の人物を3Dスキャンしたリアルアバターから選べる。独自デザインのキャラクターを設定することも可能。音声も性別、年齢、速度、ピッチ、トーンなど全て細かく調整でき、中国語のほか、日本語や英語に対応する。
その他の動画素材は複数の動画・画像素材サイトと連携して提供しており、幅広いジャンルの内容に対応する。企業のグラフなど個別の素材や、特定の素材が必要な場合は、カスタマイズで追加することが可能となる。
利用は1カ月から可能(18万円~)。月額プランは現在◇720p解像度の動画を50本まで作成でき、20ギガバイトのファイルアップロード容量を備える「プロ」◇1,080pの動画を100本まで作成でき、60ギガバイトの容量を備える「ビジネス」◇カスタマイズ制の「エンタープライズ」——をそろえる。
陳氏は設立当時を振り返り、「新しいビジネスモデルだったため、周りから(成功すると)信じてもらえなかった」と語る。ただ集雅科技のデータによると、グリアスタジオの動画の表示率は90%で、視聴完了率は80%に上り、従来のスライドショー動画の56%、50%を大きく上回る。
集雅科技は、「グリアスタジオの動画で広告収益を増やし、視聴者とメディア、広告主の3者による『トリプルウィン』の関係を築くことができる」と強調する。実際に動画でインプレッション数を増やし、コンテンツの収益を従来の5倍に引き上げた実績もあるという。
■年間売上高は3~4倍で推移
設立当初は動画向けプラットフォームをターゲットとし、米グーグルや中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などに動画を提供。TikTokへは1日当たり200本のニュースやエンタメ関連の動画を提供していた。19年にはニュースメディアなどテキスト媒体向けにサービスを製品化。以降、年間売上高は前年の3~4倍で推移している。
日本ではマネタイズ(収益化)を含めたトータルソリューションを提供する。顧客は動画サービス会社やイベント運営会社など。インターネット経由で申し込みがあるほか、22年にグーグルと提携したことで、グーグルを通じた契約も獲得した。今後も引き続き顧客を開拓し、日本向けのビジネスモデルを構築していきたい考え。今年半ばには東京に日本子会社を設立する予定もあるという。
陳氏によると、現在の売上高比率は台湾と東南アジアが半々。長期的には日本を5割に引き上げることを目指す。このほか動画生成の表現の幅を広げて完成度を高めることに加え、長期的には顧客が収益を得るために必要なことを追求していくとした。
映像・広告業界の見通しについては、「AI技術は今後ますます変化が大きくなる。業界としては有効な活用法が課題になる」との見方を示した。
AIによるコンテンツ生成が発展していることについては、「AIはコンテンツをシェアする手段に過ぎない」と指摘。「われわれのAI技術に価値と意味を与えるのはあなたのストーリーだ」との自社のキャッチコピーを示し、「AIの時代であっても、メディアや個人が発信する情報が最も重要だ」と強調した。

集雅科技のサービスを使って作られたニュース動画(集雅科技提供)
object(WP_Post)#9817 (24) {
  ["ID"]=>
  int(12177)
  ["post_author"]=>
  string(1) "3"
  ["post_date"]=>
  string(19) "2023-03-07 00:00:00"
  ["post_date_gmt"]=>
  string(19) "2023-03-06 15:00:00"
  ["post_content"]=>
  string(6762) "人工知能(AI)によるコンテンツ生成が話題を集めている。台湾の集雅科技(グリアクラウド)は、AIがテキストデータなどを基に動画素材とテロップなどを組み合わせて動画を作り上げるサービスを手がける。執行長の陳建勲氏は、同サービスで動画制作にかかる時間を9割、費用を5割それぞれ削減することを目標に掲げると同時に、インプレッション数(広告の表示回数)の引き上げを通じた収益増もかなえると語る。【山田愛実】
[caption id="attachment_12178" align="aligncenter" width="620"]集雅科技の陳建勲執行長は、AI生成の動画によるコンテンツの収益増に自信を示す=台北(NNA撮影)[/caption]
サービス名は「グリアスタジオ」。顧客は主にメディアやブログ管理会社で、台湾では現在、大手ニュースメディアを含む100社以上と契約している。このうちある新聞社のサイトでは、記事のページ上でアニメ風の3Dキャラクターがニュースを読み上げる動画を視聴することができる。実際に視聴してみると、音声が流れるだけでなく、テロップが表示されるなど画面に動きがあるのでつい目を引かれる。
陳氏は大学院でAIを研究。当時、AIの応用分野は工学や金融がメインだったが、そのほかの分野にも活用したいと考えていた。卒業後に広告関係の仕事をしたことで、コストが高いが今後の旺盛な需要が見込める映像制作にAIを活用するべきだとの思いを強くし、2015年に集雅科技を設立した。
グリアスタジオの動画は、個別に詳しい内容を指定して生成する以外に、サイト内の記事またはサイト自体を指定して自動生成することが可能。プランによっては図表など文章化されていない情報から動画を生成することもできる。
動画に登場するキャラクター「アバター」はアニメやカートゥーン、マスコットといった多彩な3Dキャラクターのほか、実在の人物を3Dスキャンしたリアルアバターから選べる。独自デザインのキャラクターを設定することも可能。音声も性別、年齢、速度、ピッチ、トーンなど全て細かく調整でき、中国語のほか、日本語や英語に対応する。
その他の動画素材は複数の動画・画像素材サイトと連携して提供しており、幅広いジャンルの内容に対応する。企業のグラフなど個別の素材や、特定の素材が必要な場合は、カスタマイズで追加することが可能となる。
利用は1カ月から可能(18万円~)。月額プランは現在◇720p解像度の動画を50本まで作成でき、20ギガバイトのファイルアップロード容量を備える「プロ」◇1,080pの動画を100本まで作成でき、60ギガバイトの容量を備える「ビジネス」◇カスタマイズ制の「エンタープライズ」——をそろえる。
陳氏は設立当時を振り返り、「新しいビジネスモデルだったため、周りから(成功すると)信じてもらえなかった」と語る。ただ集雅科技のデータによると、グリアスタジオの動画の表示率は90%で、視聴完了率は80%に上り、従来のスライドショー動画の56%、50%を大きく上回る。
集雅科技は、「グリアスタジオの動画で広告収益を増やし、視聴者とメディア、広告主の3者による『トリプルウィン』の関係を築くことができる」と強調する。実際に動画でインプレッション数を増やし、コンテンツの収益を従来の5倍に引き上げた実績もあるという。
■年間売上高は3~4倍で推移
設立当初は動画向けプラットフォームをターゲットとし、米グーグルや中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などに動画を提供。TikTokへは1日当たり200本のニュースやエンタメ関連の動画を提供していた。19年にはニュースメディアなどテキスト媒体向けにサービスを製品化。以降、年間売上高は前年の3~4倍で推移している。
日本ではマネタイズ(収益化)を含めたトータルソリューションを提供する。顧客は動画サービス会社やイベント運営会社など。インターネット経由で申し込みがあるほか、22年にグーグルと提携したことで、グーグルを通じた契約も獲得した。今後も引き続き顧客を開拓し、日本向けのビジネスモデルを構築していきたい考え。今年半ばには東京に日本子会社を設立する予定もあるという。
陳氏によると、現在の売上高比率は台湾と東南アジアが半々。長期的には日本を5割に引き上げることを目指す。このほか動画生成の表現の幅を広げて完成度を高めることに加え、長期的には顧客が収益を得るために必要なことを追求していくとした。
映像・広告業界の見通しについては、「AI技術は今後ますます変化が大きくなる。業界としては有効な活用法が課題になる」との見方を示した。
AIによるコンテンツ生成が発展していることについては、「AIはコンテンツをシェアする手段に過ぎない」と指摘。「われわれのAI技術に価値と意味を与えるのはあなたのストーリーだ」との自社のキャッチコピーを示し、「AIの時代であっても、メディアや個人が発信する情報が最も重要だ」と強調した。
[caption id="attachment_12179" align="aligncenter" width="620"]集雅科技のサービスを使って作られたニュース動画(集雅科技提供) [/caption]" ["post_title"]=> string(75) "AIが文字から動画生成集雅科技、広告収益増加に自信" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(198) "%ef%bd%81%ef%bd%89%e3%81%8c%e6%96%87%e5%ad%97%e3%81%8b%e3%82%89%e5%8b%95%e7%94%bb%e7%94%9f%e6%88%90%e9%9b%86%e9%9b%85%e7%a7%91%e6%8a%80%e3%80%81%e5%ba%83%e5%91%8a%e5%8f%8e%e7%9b%8a%e5%a2%97%e5%8a%a0" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2023-03-07 04:00:03" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2023-03-06 19:00:03" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=12177" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
 NNA
エヌエヌエー NNA
アジアの経済ニュース・ビジネス情報 - NNA ASIA

アジア経済の詳細やビジネスに直結する新着ニュースを掲載。
現地の最新動向を一目で把握できます。
法律、会計、労務などの特集も多数掲載しています。

【東京本社】
105-7209 東京都港区東新橋1丁目7番1号汐留メディアタワー9階
Tel:81-3-6218-4330
Fax:81-3-6218-4337
E-mail:sales_jp@nna.asia
HP:https://www.nna.jp/

国・地域別
台湾情報
内容別
ビジネス全般人事労務

コメントを書く

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

※がついている欄は必須項目です。

コメント※:

お名前:

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください