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GDPの米国超えは37年3年で9年先送り、英研究機関

英シンクタンクの経済ビジネスリサーチセンター(CEBR)は昨年末、中国の国内総生産(GDP)の米国超えが2037年になるとの予測を発表した。中国の米国超えは28年としていた3年前の予測から9年先送りにした。中国の不動産不況が深刻化していること、人口が想定よりはるかに早く減り始めたことが背景にある。
CEBRは毎年末に各国のGDPに関する長期予測を発表しており、中国のGDPが米国をいつ上回るかに関しても触れている。
20年末には中国の米国超えが28年になると予測し、19年末の33年との予測から5年前倒しした。中国が20年に新型コロナウイルス流行を早期に抑え込み、諸外国に比べ経済が好調だったことを考慮した。
しかし、以降は米国超えの予測時期を毎回先送りにしている。21年末には30年、22年末には36年、23年末には37年と予測し、20年末以降の3年間で9年遅らせた。
CEBRは中国経済に関して、主に二つの問題点を指摘している。
一つ目は足元の不動産不況で、多くの不動産デベロッパーの経営状況がここ数年で急速に悪化していること、不動産開発投資が大幅に縮小していることが経済成長の大きな足かせになっているという。
二つ目の問題点には人口動態の悪化を挙げた。中国の人口を巡っては、22年に減少局面に入ったことが国内外で大きな話題を呼んだ。中国は少子高齢化がかねて深刻で、将来的に減少局面に入ることは確実視されてきたが、国連は19年発表の人口中位予測(複数の予測のうち中間的な予測)で中国の減少開始は32年と見通していた。想定より10年も早く人口が減り始めたことになる。
一方、米国の人口は増え続ける見通しで、米国超え時期の先送りは必然といえる。
■1位は約20年間
不動産市況の悪化は数年以内に落ち着く可能性があるものの、人口減少は食い止められる手だてがほとんどない。中国の人口ピラミッドは既に尻すぼみの形になっており、年々子育て世代が減少し、それに伴って出生数が減少するという悪循環が続く。
CEBRは、今世紀の残り期間に中国の人口が5億9,000万人減る見通しとなっていることを紹介。中国の成長率が長期間、間断なく人口減少によって圧迫され続けるとみている。
こうしたことを踏まえ、中国のGDPは米国超えを果たした20年余り後に再び米国を下回ることになると予測した。
米金融大手のゴールドマン・サックスは22年末に発表した長期経済見通しで、中国の成長率が50年代以降、米国を下回るとの見方を示している。
■他の国には大差
ただ米国以外との比較では、今後も中国は圧倒的な規模を誇る見通し。CEBRは、少なくとも2080年まで中国のGDPが米国以外の国に抜かれることはないとみている。
米国超え翌年の38年のGDP3~5位は、インド、日本、ドイツの順になり、それぞれ12兆8,810億米ドル、8兆8,940億米ドル、7兆4,340億米ドルになると予測。一方、中国は48兆8,110億米ドル(現在のレートで約7,000兆円)で、3~5位の国に3.8~6.6倍の差をつけると見通した。
世界的に事業を展開する企業にとっては、中国は引き続き重要な市場といえる。

■1人当たり、38年に現在の日本並みか
また、個人の豊かさの指標となる1人当たりGDPは大幅に増加する可能性がある。国連の22年の人口中位予測によると、中国の38年の人口は約13億8,700万人。CEBRのGDP予測に当てはめれば、中国の同年の1人当たりGDPは約3万5,200米ドルとなる。22年の2.8倍に当たり、現在の日本やイタリアと同水準になる。
岡三証券の久保和貴シニアエコノミスト(同社上海代表処の首席代表)は、1人当たりGDPの大幅な増加を遂げられるかどうかは都市化の進捗(しんちょく)に左右されると指摘。「都市に住む人が増えるということは、所得が低い農業に従事する人が減り、所得が高い製造業・サービス業につく人が増えることを意味する」と述べた。
さらに、都市住民の増加は多様な情報・文化に接する人の増加につながると指摘。消費が多様化し、とりわけ文化・レジャー分野の消費は今後の成長が見込めるとみている。
中国の22年の都市化率(都市住民比率)は65%。以前に比べれば大幅に上昇したが、大半が80%台から90%台の先進諸国とはまだ大きな差がある。

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■1位は約20年間
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■他の国には大差
ただ米国以外との比較では、今後も中国は圧倒的な規模を誇る見通し。CEBRは、少なくとも2080年まで中国のGDPが米国以外の国に抜かれることはないとみている。
米国超え翌年の38年のGDP3~5位は、インド、日本、ドイツの順になり、それぞれ12兆8,810億米ドル、8兆8,940億米ドル、7兆4,340億米ドルになると予測。一方、中国は48兆8,110億米ドル(現在のレートで約7,000兆円)で、3~5位の国に3.8~6.6倍の差をつけると見通した。
世界的に事業を展開する企業にとっては、中国は引き続き重要な市場といえる。

■1人当たり、38年に現在の日本並みか
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