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低温物流で日系企業が躍動取扱量増加、都市部以外にも拡大

マレーシアで食品のコールドチェーン(低温物流)事業を展開する日系企業の取り扱い物量が増えている。中食の商品数の増加、中間所得者層の拡大による食生活の変化などが背景にある。この傾向は都市部にとどまらず、今後、低温物流事業をマレーシア全土に拡大することを検討している進出企業もある。

マレーシアのコンビニの中食売り場=18日、クアラルンプール(NNA撮影)

酒類・食品の卸売りを手がける国分グループ本社(東京都中央区)は、マレーシアの合弁会社の低温物流事業における食品の取り扱い物量が、新たな倉庫の稼働によって堅調に増えている。2018年には約1,600パレットだったが、23年末には約1万6,000パレットと10倍に増加した。コンビニエンスストアの店舗網が広がり、売り場での中食の商品数が増えていることが背景にあるという。
国分グループ本社は16年に、地場コングロマリット(複合企業)、テクスケム・リソーシズ(TRB)と合弁会社、国分フードロジスティクスマレーシアを設立。20年9月に新たな倉庫を稼働し、22年1月と23年5月に保管スペースを拡張した。主に、冷凍食品、チルド食品、加工食品、青果などを取り扱う。
郵船ロジスティクスは、グループのマレーシア法人における、食品の低温物流事業での取り扱い物量が22年に19年比で25%増、23年に10%増を記録したという。中間所得者層の拡大に伴う食生活の変化、冷凍・冷蔵食品需要の拡大などが寄与したと分析する。
郵船ロジスティクスのマレーシア法人タスコは18年、地元2社の買収を経て低温物流を担うタスコ・ユーセン・ゴールド・コールド(TYGC)を設立した。買収した会社はゴールド・コールド・トランスポート(GCT)とMILSコールド・チェーン・ロジスティクス(MCCL)。TYGCは21年、サバ州で低温物流を展開するハイパーコールド・ロジスティクスの株式50%も取得し、基盤を広げている。
タスコ傘下企業は主に、アイスクリームや冷凍チキン、生鮮品などを取り扱う。アイスクリームの取り扱いでは国内の流通量の半分以上を担う主要プレーヤーだ。
ニチレイロジグループ本社(東京都千代田区)は、食品の低温物流事業の取り扱い物量が、19年と比べ、在庫ベースで約3割増加したと説明。電子商取引(EC)やレストラン、コンビニでの食品の取り扱い増加に伴い、安全な食品を安定供給できる低温物流への需要が拡大しているという。
ニチレイロジグループは、18年に冷蔵・冷凍倉庫業や輸配送業を手がけるコールド・チェーン・ネットワーク(現NLコールド・チェーン・ネットワーク=NLCCN)の発行済み株式の40%を取得。23年に同社を完全子会社化した。22年には、同業の地場リット・タット・エンタープライズとリット・タット・ディストリビューションに49%を出資している。
国内流通向けをメインに鶏肉、ファストフードやレストランの業務用商品、アイスクリーム、チョコレートの保管配送を手がけている。
■対応エリアの拡張を検討
国分グループ本社は、コンビニやレストランチェーンの店舗網拡大やエリア拡張によって、今後首都クアラルンプール以外の他エリアでも低温物流の需要が拡大すると予想。現在はクアラルンプールで事業を展開しているが、他地域への参入やカバーエリアの拡大も検討していることを明らかにした。
郵船ロジスティクスも東マレーシアを含め、各地で保管倉庫の設置、配送網の整備を進める考えだ。日本式のコールドチェーン物流サービス規格「JSA—S1004」保有企業として競合他社との差別化を図るほか、今後医薬品の取り扱いも視野に入れていると説明する。
タスコは22年、子会社を通じてBtoB(企業間取引)におけるJSA—S1004の取得第1号となった。同規格を取得したのは国内外で初めてとなっている。
国土交通省が21年に日本式冷温物流の普及を目的に提示した情報によると、マレーシアの冷蔵・冷凍食品の消費量は拡大傾向にあり、25年には20年と比較して10.4%の増加が予想されている。また、食品などの温度管理に対応したコンビニやスーパーマーケットなどの「近代式商店」の割合を示したモダントレード率も20年の47.0%から25年には48.5%に高まることが見込まれており、これに対応して低温物流の需要がさらに拡大する見通しだ。

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国分グループ本社は16年に、地場コングロマリット(複合企業)、テクスケム・リソーシズ(TRB)と合弁会社、国分フードロジスティクスマレーシアを設立。20年9月に新たな倉庫を稼働し、22年1月と23年5月に保管スペースを拡張した。主に、冷凍食品、チルド食品、加工食品、青果などを取り扱う。
郵船ロジスティクスは、グループのマレーシア法人における、食品の低温物流事業での取り扱い物量が22年に19年比で25%増、23年に10%増を記録したという。中間所得者層の拡大に伴う食生活の変化、冷凍・冷蔵食品需要の拡大などが寄与したと分析する。
郵船ロジスティクスのマレーシア法人タスコは18年、地元2社の買収を経て低温物流を担うタスコ・ユーセン・ゴールド・コールド(TYGC)を設立した。買収した会社はゴールド・コールド・トランスポート(GCT)とMILSコールド・チェーン・ロジスティクス(MCCL)。TYGCは21年、サバ州で低温物流を展開するハイパーコールド・ロジスティクスの株式50%も取得し、基盤を広げている。
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ニチレイロジグループは、18年に冷蔵・冷凍倉庫業や輸配送業を手がけるコールド・チェーン・ネットワーク(現NLコールド・チェーン・ネットワーク=NLCCN)の発行済み株式の40%を取得。23年に同社を完全子会社化した。22年には、同業の地場リット・タット・エンタープライズとリット・タット・ディストリビューションに49%を出資している。
国内流通向けをメインに鶏肉、ファストフードやレストランの業務用商品、アイスクリーム、チョコレートの保管配送を手がけている。
■対応エリアの拡張を検討
国分グループ本社は、コンビニやレストランチェーンの店舗網拡大やエリア拡張によって、今後首都クアラルンプール以外の他エリアでも低温物流の需要が拡大すると予想。現在はクアラルンプールで事業を展開しているが、他地域への参入やカバーエリアの拡大も検討していることを明らかにした。
郵船ロジスティクスも東マレーシアを含め、各地で保管倉庫の設置、配送網の整備を進める考えだ。日本式のコールドチェーン物流サービス規格「JSA—S1004」保有企業として競合他社との差別化を図るほか、今後医薬品の取り扱いも視野に入れていると説明する。
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国土交通省が21年に日本式冷温物流の普及を目的に提示した情報によると、マレーシアの冷蔵・冷凍食品の消費量は拡大傾向にあり、25年には20年と比較して10.4%の増加が予想されている。また、食品などの温度管理に対応したコンビニやスーパーマーケットなどの「近代式商店」の割合を示したモダントレード率も20年の47.0%から25年には48.5%に高まることが見込まれており、これに対応して低温物流の需要がさらに拡大する見通しだ。
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