日本の高級食パンブームの火付け役となった高級食パン専門店「銀座に志かわ」が広東省深セン市に同市1号店を出店した。昨年5月に上海市で開業した中国1号店は話題を呼び、一部で転売が起きるほどの人気となった。中国では近年コーヒー市場が拡大しており、それに伴っておいしいパンの需要も高まっている。に志かわはコーヒーブームの波に乗って、中国の高級食パン市場の開拓を目指す。【広州・川杉宏行】
開業式典であいさつする「銀座に志かわ」の親会社OSGコーポレーションの湯川剛代表取締役会長(写真中央)=20日、深セン市
に志かわは20日、深セン市の大型商業施設「深セン湾万象城」で深セン1号店を開業した。中国では3店目となる。深セン店の高級食パンを食べた女性客からは、「柔らかくて弾力がある」「何もつけなくてもほんのり甘い」といった声が聞かれた。
に志かわの親会社OSGコーポレーション(大阪市北区)の湯川剛代表取締役会長は開業式典のあいさつで、「に志かわのパンは最高級の食材を使っている」と述べ、商品への自信を示した。
に志かわは親会社が機能水の総合メーカーであることを生かし、高級食パンに独自のアルカリイオン水を使用。仕込み水として使うことで、風味豊かな味わいや独特のしっとり感を生み出した。高級なカナダ産の小麦粉を使うなど、材料にもこだわる。
に志かわが深センで販売するのは当面、「定番食パン」の1商品のみ。大きさは2斤で、価格は98元(約2,000円)。中国の一般的な食パンの3倍以上の価格だ。
高い価格設定にもかかわらず、消費者からは強く支持されている。に志かわが昨年5月に上海市で開業した中国1号店では食パンが飛ぶように売れた。店舗内で手作りするため、1日の生産量は600本(1本=2斤)が限界だが、連日売り切れが続いた。
■「アイフォーン4」以来の行列
に志かわの中国進出は交流サイト(SNS)で話題となり、1号店の開店当日には店舗が入居する上海市の商業施設「香港広場」の前に長蛇の列ができた。に志かわの関係者によると、香港広場の米アップル販売店の従業員は「香港広場の前にこれほど長い行列ができるのは、(2010年の)スマートフォン『iPhone(アイフォーン)4』の発売時以来だ」と驚いたという。あまりの人気に、に志かわの高級食パンを転売する人まで現れた。
東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出による影響もあり、昨年7月以降は1号店の売り上げが落ち着いたものの、湯川氏は「当初の売れ行きが想定外だった。現在はあらかじめ想定していた範囲で販売できている」と話す。
■「贈答品」に需要
なぜ通常の3倍もする高級食パンが飛ぶように売れるのか。湯川氏は二つの要因を挙げる。
一つは「自分へのご褒美」。週末に売れ行きが増えることを踏まえ、「消費者ががんばった自分へのご褒美として休日にいつもより高めのパンを買う」と分析する。
もう一つは「贈答品」としての利用だ。に志かわの高級食パンは日本で贈答品としての地位を確立しており、ゴルフコンペの景品などに利用されている。そして、中国でも贈答品としての地位を築きつつある。
湯川氏が引き合いに出したのは昨年の「教師節」での受注。教師節は教師に感謝を表す日で、上海市のある学校の卒業生らが在職中と退職した教師へに志かわの高級食パンを贈った。購入数は600本。1店舗の1日の生産量に匹敵し、2日に分けて納入した。
湯川氏は「パンは贈答品として優れている」と強調する。例えば、酒やたばこの場合、喜ばれるかどうかは相手の年齢や嗜好(しこう)に左右されるが、食パンは「老若男女を問わない」(湯川氏)のが強みだ。
に志かわの商品のレプリカ(深セン1号店での販売は当面右側の商品のみ)=12日、深セン市(同社提供)
■相性の良さも追い風
湯川氏は、近年中国で起こっているコーヒーブームも追い風とみている。
英調査会社によると、中国のコーヒーチェーン店は昨年12月中旬までに4万9,691店となり、米国を抜いて世界最多となった。25年には中国コーヒー市場が21年比2.6倍の1兆元規模になるとの予測もある。
湯川氏は「中国の伝統的な朝食とコーヒーはぴったり合う組み合わせではないが、パンならコーヒーとぴったり合う」と指摘する。
中国ではベーカリー市場も成長している。「25年前は中国においしいと思えるパンはなかった」(中国に長年暮らすパンに詳しい日本人女性)が、その後次第に味が向上。10年代には店内がおしゃれで味もおいしい外資系の店舗などが増えたことで、中国ベーカリー市場のレベルが大きく上がったといわれる。
に志かわはこうした流れにも乗りながら、中国での店舗拡大を狙う。上海では3号店(中国4号店)の開店準備も進んでおり、中国1~3号店にはなかった飲食スペースを店内に設けるほか、パンの食べ方の提案も行う計画で、パン文化の浸透を図る。中国では今後、長江デルタ地域を中心に出店を進める予定だ。
<メモ>
銀座に志かわ:18年9月に銀座で本店をオープン。店舗数は現在、日本が136店、米国が1店、中国が3店。上海の2店は中国企業との合弁会社が運営、深センの1店は加盟店が運営する。上海2号店(長寧竜之夢店)の開業は23年10月。
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に志かわの親会社OSGコーポレーション(大阪市北区)の湯川剛代表取締役会長は開業式典のあいさつで、「に志かわのパンは最高級の食材を使っている」と述べ、商品への自信を示した。
に志かわは親会社が機能水の総合メーカーであることを生かし、高級食パンに独自のアルカリイオン水を使用。仕込み水として使うことで、風味豊かな味わいや独特のしっとり感を生み出した。高級なカナダ産の小麦粉を使うなど、材料にもこだわる。
に志かわが深センで販売するのは当面、「定番食パン」の1商品のみ。大きさは2斤で、価格は98元(約2,000円)。中国の一般的な食パンの3倍以上の価格だ。
高い価格設定にもかかわらず、消費者からは強く支持されている。に志かわが昨年5月に上海市で開業した中国1号店では食パンが飛ぶように売れた。店舗内で手作りするため、1日の生産量は600本(1本=2斤)が限界だが、連日売り切れが続いた。
■「アイフォーン4」以来の行列
に志かわの中国進出は交流サイト(SNS)で話題となり、1号店の開店当日には店舗が入居する上海市の商業施設「香港広場」の前に長蛇の列ができた。に志かわの関係者によると、香港広場の米アップル販売店の従業員は「香港広場の前にこれほど長い行列ができるのは、(2010年の)スマートフォン『iPhone(アイフォーン)4』の発売時以来だ」と驚いたという。あまりの人気に、に志かわの高級食パンを転売する人まで現れた。
東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出による影響もあり、昨年7月以降は1号店の売り上げが落ち着いたものの、湯川氏は「当初の売れ行きが想定外だった。現在はあらかじめ想定していた範囲で販売できている」と話す。
■「贈答品」に需要
なぜ通常の3倍もする高級食パンが飛ぶように売れるのか。湯川氏は二つの要因を挙げる。
一つは「自分へのご褒美」。週末に売れ行きが増えることを踏まえ、「消費者ががんばった自分へのご褒美として休日にいつもより高めのパンを買う」と分析する。
もう一つは「贈答品」としての利用だ。に志かわの高級食パンは日本で贈答品としての地位を確立しており、ゴルフコンペの景品などに利用されている。そして、中国でも贈答品としての地位を築きつつある。
湯川氏が引き合いに出したのは昨年の「教師節」での受注。教師節は教師に感謝を表す日で、上海市のある学校の卒業生らが在職中と退職した教師へに志かわの高級食パンを贈った。購入数は600本。1店舗の1日の生産量に匹敵し、2日に分けて納入した。
湯川氏は「パンは贈答品として優れている」と強調する。例えば、酒やたばこの場合、喜ばれるかどうかは相手の年齢や嗜好(しこう)に左右されるが、食パンは「老若男女を問わない」(湯川氏)のが強みだ。
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■相性の良さも追い風
湯川氏は、近年中国で起こっているコーヒーブームも追い風とみている。
英調査会社によると、中国のコーヒーチェーン店は昨年12月中旬までに4万9,691店となり、米国を抜いて世界最多となった。25年には中国コーヒー市場が21年比2.6倍の1兆元規模になるとの予測もある。
湯川氏は「中国の伝統的な朝食とコーヒーはぴったり合う組み合わせではないが、パンならコーヒーとぴったり合う」と指摘する。
中国ではベーカリー市場も成長している。「25年前は中国においしいと思えるパンはなかった」(中国に長年暮らすパンに詳しい日本人女性)が、その後次第に味が向上。10年代には店内がおしゃれで味もおいしい外資系の店舗などが増えたことで、中国ベーカリー市場のレベルが大きく上がったといわれる。
に志かわはこうした流れにも乗りながら、中国での店舗拡大を狙う。上海では3号店(中国4号店)の開店準備も進んでおり、中国1~3号店にはなかった飲食スペースを店内に設けるほか、パンの食べ方の提案も行う計画で、パン文化の浸透を図る。中国では今後、長江デルタ地域を中心に出店を進める予定だ。
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