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GDP目標「5%前後」維持6年ぶりに下げず、減速阻止へ

中国の李強首相は5日、北京市で開かれた第14期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第2回会議で政府活動報告(施政方針演説に相当)を行い、今年の国内総生産(GDP)の実質成長率目標を「前年比5%前後」に設定したと発表した。前年と同じ目標。政府はこれまで目標を年々引き下げる傾向にあり、前年の目標を維持するのは18年以来となった。経済の減速感打破に注力する決意を示した格好だ。
中国政府は2000年代初期から全人代でその年の成長率目標を発表することを習慣化。近年は中国経済の成長力が峠を越したことを背景に目標を引き下げる傾向にあり、2年連続で同じ目標を掲げるのは17~18年(6.5%前後)以来。金融機関やエコノミストの間では4%台の目標設定が妥当との声もあり、やや高めの目標設定になったといえる。
中国国家発展改革委員会(発改委)は同日に行った2024年度国民経済・社会発展計画案の報告で、24年の成長率目標に関して「現在と将来をともに考慮したもの」と説明。「35年までに社会主義現代化を基本的に実現する」などの長期目標の達成を見据えて、成長率目標を決めたと明らかにした。
政府は35年までに社会主義現代化に伴って1人当たりGDPを中進国水準にするとの目標を持ち、こうした経済面の長期目標の実現に向けては現段階で5%前後の成長が必要と判断したとみられる。
ただ、目標達成の難易度は前年から上がる。中国経済は22年に新型コロナウイルス流行の影響を強く受け、成長率が3.0%に低下。23年は前年のGDPが低いことによるベース効果で成長率の上振れを期待できたが、24年は同効果を見込めない。
加えて、23年から低迷する外需はまだ回復の見通しが立たず、国内景気も物価低迷が目立つなど芳しくない状態だ。
国内景気に関わる指標の目標は、◇消費者物価指数(CPI)の上昇率:3%前後◇個人所得の増加率:経済成長と同ペース◇都市部新規就業者数:1,200万人以上◇都市部調査失業率:5.5%前後——などと定めた。
CPIの目標は前年と同じだが、直近月の前年同月比はマイナスとなっているため、目標達成に向けては早期に消費者マインドを改善する必要がある。個人所得の増加率の目標は、前年の「経済成長とほぼ同ペース」から「ほぼ」を削除しており、事実上の引き上げ。都市部新規就業者数の目標は前年の「1,200万人前後」から「1,200万人以上」に引き上げた。
■外資誘致に注力、製造業の規制全面撤廃へ
目標達成の難易度が上がっているため、政府には経済政策の強化が求められる。中でも内需のてこ入れは急務で、李氏は24年の政府活動任務の一つに「内需拡大に力を入れ、経済の好循環の実現を推進する」を盛り込んだ。
消費拡大の面では、所得拡大、規制緩和などを通じて潜在需要を掘り起こすとの方針を表明。文化・娯楽・観光分野、スポーツ分野といった成長分野の消費を一層盛り上げる。中国ブランドの製品を評価する機運「国潮」の拡大にも力を入れる。「新エネルギー車(NEV)」などの耐久消費財、高齢者介護や保育などのサービスの消費拡大も図り、消費促進キャンペーンを実施する考え。
投資拡大に向けては、乗数効果(投資が経済の好循環を生み、投資額以上の経済効果を生む現象)が大きい政府投資を積極的に推進する方針を示した。ITなど成長分野のインフラを中心とする新型インフラへの投資、低炭素化につながる投資を推進する。
外資の投資誘致に注力する意向も表明。「対中投資のネガティブリスト(規制対象を列挙したリスト)を引き続き縮小して、製造業参入規制を全面的に撤廃し、電気通信、医療などサービス業への参入規制を緩和する」と明らかにした。
さらに、対中投資への行政支援を強化し、「INVEST CHINA(インベストチャイナ)」をブランド化するとの方針を掲げた。
中国では昨年、外資の投資が大きく縮小。国家外貨管理局が先月18日に発表した23年の国際収支(速報値)によると、海外から中国への直接投資(FDI)は前年比81.7%減の330億米ドル(約4兆9,500億円)だった。1993年以来30年ぶりの低水準。
李氏は景気の足かせになっている不動産不況に関して、不動産政策を改正し、「不動産業者の合理的な資金需要を分け隔てなく平等に支援」すると表明。低・中所得者向け住宅「保障性住宅」の建設に力を入れることも付け加えた。
発改委は、各都市の当局が地元の不動産市況の実情に合わせて「政策ツールキットをフル活用」し、市況改善を図るよう促した。
■財政赤字の拡大許容せず
財政省は同日、24年度中央・地方予算案についての報告を行った(中国の会計年度は1~12月)。24年の中央と地方を合わせた全国の一般公共予算(一般会計)の収入は前年の執行額に比べ(以下、前年比)3.3%増の22兆3,950億元(約468兆円)とする。内訳は中央が10兆2,425億元、地方が12兆1,525億元。
全国の一般公共予算に他予算からの繰入金、前年からの繰越金などを加えた歳入は24兆4,890億元となる。
一方、全国の一般公共予算の歳出は前年比4.0%増の28兆5,490億元となり、4兆600億元の財政赤字を見込む。赤字額は前年比1,800億元の増加となる。
財政赤字の対GDP比の目標は3.0%に設定した。前年と同じ目標。経済のてこ入れに向け積極的な財政出動が求められる中、対GDP比の上昇を許容するのではないかとの声があったが、財政省は引き続き財政規律に気を配る意向だ。
■特別国債1兆元、来年以降も発行
一方で、財政省は一般会計に計上されない「超長期特別国債」を1兆元発行すると発表した。同国債の発行で得た資金は「国家重要戦略の実施と重点分野の安全保障能力整備に充てる」としており、内需の拡大につながる見通しだ。
さらに、李氏は「今年から数年連続して超長期特別国債を発行する」と表明した。中国政府が一般会計に計上されない特別国債を発行するのは新型コロナ流行初期の20年以来。これまでは財源を増やす特別な必要がある年のみ発行しており、数年で立て続けに発行するのは異例だ。政府は昨秋も1兆元の特別国債を発行すると発表したが、同国債は一般会計に計上されている。
財政省は、インフラ投資の強度を左右する「専項債券(レベニュー債、各地の省級政府がインフラ関連などの事業目的別に発行する債券)」の発行枠を3兆9,000億元に設定した。前年の発行枠から1,000億元拡大した。

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■外資誘致に注力、製造業の規制全面撤廃へ
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さらに、対中投資への行政支援を強化し、「INVEST CHINA(インベストチャイナ)」をブランド化するとの方針を掲げた。
中国では昨年、外資の投資が大きく縮小。国家外貨管理局が先月18日に発表した23年の国際収支(速報値)によると、海外から中国への直接投資(FDI)は前年比81.7%減の330億米ドル(約4兆9,500億円)だった。1993年以来30年ぶりの低水準。
李氏は景気の足かせになっている不動産不況に関して、不動産政策を改正し、「不動産業者の合理的な資金需要を分け隔てなく平等に支援」すると表明。低・中所得者向け住宅「保障性住宅」の建設に力を入れることも付け加えた。
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