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日系は「全方位戦略」強化首都近郊でモーターショー開幕

タイの首都バンコク近郊で27日、自動車展示・販売会「第45回バンコク国際モーターショー」が開幕した。今年は日系や中国系などに加え、ベトナムのビンファストも出展しタイ市場での販売に向けた口火を切った。世界的にバッテリー式電気自動車(BEV)の需要が減速するなか、日系メーカーは、BEV展開を視野に入れつつ販売が好調なハイブリッド車(HV)を中心にシェア拡大を目指す「全方位戦略」を強化する姿勢を見せた。

TMTは4月にピックアップトラック「ハイラックスREVO」のBEVを東部チョンブリ県パタヤの当局に引き渡す式典を予定している=26日、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)

タイの2023年の自動車販売数は78万台。今年は70万~75万台で推移すると予想されている。タイでは23年にBEVの登録台数が7万8,000台になり普及が一気に進んだ一方、欧米や中国といった主要市場ではBEVの販売は減速。タイ市場への影響に不透明感が増している。27日にバンコク近郊で開幕したモーターショーで日系メーカーは、BEVへの移行を見据えながらもHVや低燃費のモデルを訴求する「マルチパスウェー(全方位戦略)」を強化する姿勢が目立った。
トヨタ自動車のタイ法人、タイ国トヨタ自動車(TMT)は今月に発表したピックアップトラック「ハイラックスREVO(レボ)」2024年版モデルなどを中心に展示。「モビリティ・フォー・エブリワン」のキャッチフレーズで、あらゆるニーズに応えることに改めて意欲を示した。TMTの山下典昭社長は「タイの自動車市場で、BEVのシェアは23年に10%に急拡大したが、HVのシェアも12%にまで拡大した」と指摘。今年1~2月ではBEVは14%に達した一方、HVも22%にまで拡大している。TMTはセダン「カムリ」のHVを09年にタイに投入しており、今年2月に投入したスポーツタイプ多目的車(SUV)「カローラ・クロス」や昨年末に発売したSUV「ヤリス・クロス」といったHVも「タイの消費者から、大きな反響を得ている」(山下氏)。HVの累計販売数は19万6,000台に達しており、山下氏は「消費者に多くの選択肢を提供している」と今後の展開に自信を見せた。
■トヨタ、電動ピックアップを量産・発売へ
23年のタイ市場では、主力のピックアップの販売が3割近く減った。山下氏は「ピックアップは厳しい1年だったが、ハイラックスREVOのシェアは40%を超え、11年以降で最大になった」と言及。「(ピックアップトラックの)ハイラックスチャンプも発売し、新たな顧客層にも訴求できる多彩なラインアップになっている」と話した。今年1~2月のピックアップのセグメントでは、トヨタのシェアが47%と、好調な滑り出しになったようだ。TMTは4月、ハイラックスREVOのBEVを東部チョンブリ県パタヤの当局に引き渡す式典を予定している。このモデルをベースにTMTは25年末までに量産を開始し、投入する計画だ。

■ホンダはBEV「e:N1」を展示

ホンダオートモービル(タイランド)、東部プラチンブリ県の工場で生産したBEV「e:N1」を展示した=26日、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)

ホンダのタイ法人、ホンダオートモービル(タイランド)は15日、東部プラチンブリ県の工場で生産したBEV「e:N1」を初公開。モーターショーでも展示した。e:N1はスポーツタイプ多目的車(SUV)で、容量68.8キロワット時のリチウムイオンバッテリーを搭載。最高出力は204ps(馬力)。駆動モーターとギアボックス、パワードライブユニットを一体化して駆動システムを大幅にコンパクトにした。最大トルクは310ニュートンメートル(N・m)となる。自動ブレーキなどの安全運転支援システム「ホンダ センシング」も備える。ホンダはタイのxEV(電動車)市場で22年に続いて23年もシェアトップ。e:N1のタイ市場への投入で顧客のさまざまなニーズに応える。
顧客は住友三井オートリーシング&サービスなどを通じて、e:N1をレンタル利用できる。毎月の支払いは2万9,000バーツ(約12万円)。ホンダオートモービル(タイランド)の川坂英生社長は「e:N1の投入は、xEVセグメントで貴重なマイルストーンとなる」とコメントした。

■三菱自、エクスパンダーが好調

MMThは、今年2月に発売した多目的車(MPV)「エクスパンダークロス」のHVなどを展示した=26日、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)

三菱自動車のタイ法人ミツビシ・モーターズ・タイランド(MMTh)は、今年2月に発売した多目的車(MPV)「エクスパンダークロス」のHVなどを展示。MMThの辻昇会長は「MPVでHVを出しているのは三菱自動車だけ」とし、「エクスパンダーは月1,000台以上の注文が入っており非常に好調」と話した。今月発売を発表したSUV「ニュー三菱パジェロスポーツ2024」にも期待していると述べた。
いすゞ自動車のタイ販売会社トリペッチいすゞセールスは、初のBEVピックアップトラック「D—MAX」のコンセプト車と小型トラック「エルフ」のEVを公開した。同社の波多隆社長は声明で「いすゞは、すべての車両を欧州の排ガス規制『ユーロ5』に適合させるというタイ政府の政策に呼応していく」と述べた。同社は今回、15モデルを展示。D—MAXのBEVはタイで生産され、来年にはノルウェーへの輸出も予定している。
タイ日産自動車(NMT)は、コンセプトEVのMPV「ハイパーツアラー」を展示。日本国外では初展示となる。タイでの発売は未定だが、「EV展開については仕込みを続けている」(タイの代表を務める関口勲氏)状況だ。
マツダセールス(タイランド)は「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」をお披露目。車外から充電する機能をもったハイブリッドシステムとなり、モーターのみでの走行や、発電システムとモーターを併用して走行することで、優れた燃費性能と動力性能を両立させている。
スズキのタイ法人、スズキ・モーター・タイランドは、SUV「XL7」のHVを発売すると発表。プロモーション期間の価格は79万9,000バーツからとなる。同社はこのほか、BEVのコンセプトモデル「eWX」も展示した。同社の鈴木忠臣社長は、「タイのエコカー政策の期限は25年までで、後続の政策の方針がまだ定まっていない」とし、「今後のタイ市場の戦略については、政府のエコカー政策を待ってから定めていく」と話した。
「第45回バンコク国際モーターショー」は、バンコク北郊ノンタブリ県ムアントンタニの展示会場「インパクト」で3月27日~4月7日に開催される。49のブランドが出展している。

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トヨタ自動車のタイ法人、タイ国トヨタ自動車(TMT)は今月に発表したピックアップトラック「ハイラックスREVO(レボ)」2024年版モデルなどを中心に展示。「モビリティ・フォー・エブリワン」のキャッチフレーズで、あらゆるニーズに応えることに改めて意欲を示した。TMTの山下典昭社長は「タイの自動車市場で、BEVのシェアは23年に10%に急拡大したが、HVのシェアも12%にまで拡大した」と指摘。今年1~2月ではBEVは14%に達した一方、HVも22%にまで拡大している。TMTはセダン「カムリ」のHVを09年にタイに投入しており、今年2月に投入したスポーツタイプ多目的車(SUV)「カローラ・クロス」や昨年末に発売したSUV「ヤリス・クロス」といったHVも「タイの消費者から、大きな反響を得ている」(山下氏)。HVの累計販売数は19万6,000台に達しており、山下氏は「消費者に多くの選択肢を提供している」と今後の展開に自信を見せた。
■トヨタ、電動ピックアップを量産・発売へ
23年のタイ市場では、主力のピックアップの販売が3割近く減った。山下氏は「ピックアップは厳しい1年だったが、ハイラックスREVOのシェアは40%を超え、11年以降で最大になった」と言及。「(ピックアップトラックの)ハイラックスチャンプも発売し、新たな顧客層にも訴求できる多彩なラインアップになっている」と話した。今年1~2月のピックアップのセグメントでは、トヨタのシェアが47%と、好調な滑り出しになったようだ。TMTは4月、ハイラックスREVOのBEVを東部チョンブリ県パタヤの当局に引き渡す式典を予定している。このモデルをベースにTMTは25年末までに量産を開始し、投入する計画だ。

■ホンダはBEV「e:N1」を展示
[caption id="attachment_19135" align="aligncenter" width="620"]ホンダオートモービル(タイランド)、東部プラチンブリ県の工場で生産したBEV「e:N1」を展示した=26日、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)[/caption]
ホンダのタイ法人、ホンダオートモービル(タイランド)は15日、東部プラチンブリ県の工場で生産したBEV「e:N1」を初公開。モーターショーでも展示した。e:N1はスポーツタイプ多目的車(SUV)で、容量68.8キロワット時のリチウムイオンバッテリーを搭載。最高出力は204ps(馬力)。駆動モーターとギアボックス、パワードライブユニットを一体化して駆動システムを大幅にコンパクトにした。最大トルクは310ニュートンメートル(N・m)となる。自動ブレーキなどの安全運転支援システム「ホンダ センシング」も備える。ホンダはタイのxEV(電動車)市場で22年に続いて23年もシェアトップ。e:N1のタイ市場への投入で顧客のさまざまなニーズに応える。
顧客は住友三井オートリーシング&サービスなどを通じて、e:N1をレンタル利用できる。毎月の支払いは2万9,000バーツ(約12万円)。ホンダオートモービル(タイランド)の川坂英生社長は「e:N1の投入は、xEVセグメントで貴重なマイルストーンとなる」とコメントした。

■三菱自、エクスパンダーが好調
[caption id="attachment_19134" align="aligncenter" width="620"]MMThは、今年2月に発売した多目的車(MPV)「エクスパンダークロス」のHVなどを展示した=26日、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)[/caption]
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いすゞ自動車のタイ販売会社トリペッチいすゞセールスは、初のBEVピックアップトラック「D—MAX」のコンセプト車と小型トラック「エルフ」のEVを公開した。同社の波多隆社長は声明で「いすゞは、すべての車両を欧州の排ガス規制『ユーロ5』に適合させるというタイ政府の政策に呼応していく」と述べた。同社は今回、15モデルを展示。D—MAXのBEVはタイで生産され、来年にはノルウェーへの輸出も予定している。
タイ日産自動車(NMT)は、コンセプトEVのMPV「ハイパーツアラー」を展示。日本国外では初展示となる。タイでの発売は未定だが、「EV展開については仕込みを続けている」(タイの代表を務める関口勲氏)状況だ。
マツダセールス(タイランド)は「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」をお披露目。車外から充電する機能をもったハイブリッドシステムとなり、モーターのみでの走行や、発電システムとモーターを併用して走行することで、優れた燃費性能と動力性能を両立させている。
スズキのタイ法人、スズキ・モーター・タイランドは、SUV「XL7」のHVを発売すると発表。プロモーション期間の価格は79万9,000バーツからとなる。同社はこのほか、BEVのコンセプトモデル「eWX」も展示した。同社の鈴木忠臣社長は、「タイのエコカー政策の期限は25年までで、後続の政策の方針がまだ定まっていない」とし、「今後のタイ市場の戦略については、政府のエコカー政策を待ってから定めていく」と話した。
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