シンガポールのローレンス・ウォン副首相兼財務相が2024年度(24年4月~25年3月)予算案に合わせて発表した経済政策では、国際課税の新ルール「グローバルミニマム課税」が25年から適用されることが盛り込まれた。既存の税制優遇措置の内容も見直される。大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤング(EY)のASEAN・ジャパンビジネスサービス(JBS)リーダー・パートナー、松尾和弘氏は、「企業はより柔軟に支援・優遇制度を選べるようになる」と評価する。
2024年度予算案に合わせて発表された経済政策では、国際課税の新ルール適用や、税制優遇措置の見直しが盛り込まれた=シンガポール中心部(NNA撮影)
——経済協力開発機構(OECD)が主導する「税源浸食と利益移転(BEPS)に関する国際課税改革の枠組み(BEPS2.0)」を巡り、シンガポールに拠点を置く企業が留意すべき点は。
BEPS2.0は、法人税の最低税率を15%とする国際課税の新ルールとして(OECD加盟国など)約140カ国・地域が合意しており、24年から導入が進む。シンガポールでも25年から同ルールが適用されるのに伴い、外資系の大企業は税効率の観点から事業戦略や世界的なサプライチェーン(供給網)、資金調達方法などを見直す必要に迫られる。
シンガポール政府はこうした動きに伴い、既存の優遇制度について、24年2月17日から適用できる軽減税率を追加することも発表した。
シンガポールでの新規事業実施や事業拡大を支援する政府の「成長・拡大優遇制度(DEI)」や、知的財産権の使用や商業化を促進する「知的財産開発インセンティブ(IDI)」の軽減税率は従来5%、10%だったが、2月に15%が新たに加わった。「金融・財務センターへの優遇制度(FTC)」「航空機リーシング・スキーム」の軽減税率は従来8%だったが、2月から10%が追加された。
今回複数の制度が見直されたことで、企業はより柔軟に自社の事業に合わせて支援・優遇制度を選べるようになった。軽減税率は今年4~6月期、リファンダブル投資控除は7~9月期に、それぞれ詳細が発表される予定だ。
——ウォン副首相兼財務相は予算案発表で、今後5年間で人工知能(AI)産業の育成に10億Sドル(約1,120億円)以上を投じる計画に言及した。
生成AIなどAIに関するビジネスは22年以来、大きな関心を呼んでいる。企業は生産性向上、技術革新を促す「ゲームチェンジャー的」なソリューションを活用できるようになる。シンガポールもAI分野で世界的な戦略拠点としての地位確立を狙える。
AIに必要な画像処理装置(GPU)などの重要部品の確保や、大手AI企業との提携を通じた中核的研究拠点(センター・オブ・エクセレンス)の開設などに向けた動きも広がっている。政府の政策を通じてAIのエコシステム構築が促進される。
——これまで発表された予算案と同様に、国民のキャリア向上を支援する「スキルズフューチャー」関連の政策も発表された。
こうした政策の発表は、政府が「未来に対応できる労働力」の確保を重視していることの表れだ。今回は中堅社員のキャリア向上を中心とした支援策となった。政府から付与されたクレジット(支援金)を自分の受けたい職業訓練や生涯学習コースの受講料に充てることができる既存の制度「スキルズ・フューチャー・クレジット」などで、支援金を4,000Sドル分上乗せするなど内容が拡充された。
技能向上を支援する多くの政策が充実化していることを受け、受講料の自己負担分のうち年間5,000Sドルを限度に所得控除が適用される現行措置については、26賦課年度から廃止される。(メールインタビュー:清水美雪)
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シンガポール政府はこうした動きに伴い、既存の優遇制度について、24年2月17日から適用できる軽減税率を追加することも発表した。
シンガポールでの新規事業実施や事業拡大を支援する政府の「成長・拡大優遇制度(DEI)」や、知的財産権の使用や商業化を促進する「知的財産開発インセンティブ(IDI)」の軽減税率は従来5%、10%だったが、2月に15%が新たに加わった。「金融・財務センターへの優遇制度(FTC)」「航空機リーシング・スキーム」の軽減税率は従来8%だったが、2月から10%が追加された。
今回複数の制度が見直されたことで、企業はより柔軟に自社の事業に合わせて支援・優遇制度を選べるようになった。軽減税率は今年4~6月期、リファンダブル投資控除は7~9月期に、それぞれ詳細が発表される予定だ。
——ウォン副首相兼財務相は予算案発表で、今後5年間で人工知能(AI)産業の育成に10億Sドル(約1,120億円)以上を投じる計画に言及した。
生成AIなどAIに関するビジネスは22年以来、大きな関心を呼んでいる。企業は生産性向上、技術革新を促す「ゲームチェンジャー的」なソリューションを活用できるようになる。シンガポールもAI分野で世界的な戦略拠点としての地位確立を狙える。
AIに必要な画像処理装置(GPU)などの重要部品の確保や、大手AI企業との提携を通じた中核的研究拠点(センター・オブ・エクセレンス)の開設などに向けた動きも広がっている。政府の政策を通じてAIのエコシステム構築が促進される。
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こうした政策の発表は、政府が「未来に対応できる労働力」の確保を重視していることの表れだ。今回は中堅社員のキャリア向上を中心とした支援策となった。政府から付与されたクレジット(支援金)を自分の受けたい職業訓練や生涯学習コースの受講料に充てることができる既存の制度「スキルズ・フューチャー・クレジット」などで、支援金を4,000Sドル分上乗せするなど内容が拡充された。
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