東南アジア最大規模の半導体展示会「セミコン・東南アジア2024」が28日、マレーシアの首都クアラルンプールで開幕した。人工知能(AI)の急速な進歩や電気自動車(EV)の普及により半導体市場は拡大しており、世界の半導体市場は2030年までに1兆米ドル(約157兆円)に達すると見込まれている。旺盛な需要を取り込もうと、世界の半導体関連企業500社余りが出展している。出展企業は昨年より約7割も増えた。
半導体展示会「セミコン・東南アジア2024」が開幕した。30日まで開催されている=28日、クアラルンプール(NNA撮影)
同展示会には、半導体および半導体関連企業500社余りが、約1,100のブースを出展。昨年の295社・571ブースから大幅に増加した。半導体産業が盛んな韓国や台湾、中国のほか、マレーシア、シンガポールなどが国・地域ごとのパビリオンを設置している。
台湾の電子業界団体、台湾電子製造設備工業同業公会(TEEIA)は、台湾パビリオンの中にブースを出展。セミコン・東南アジアへの出展は初めてで、会員企業7社が自社製品をPRしている。
TEEIAの聶旭江(ヘンリー・ニー)組長(ディレクター)はNNAに対し、「今回の展示会には台湾企業40社が出展しており、東南アジア市場に強い関心も持っていることが表れている」とコメント。台湾の半導体企業は台湾や中国に製造拠点を構え、マレーシアなどの東南アジアに販売拠点を構えるケースが依然として多いが、東南アジアでの市場拡大に伴い、現地で製造拠点設置を検討する企業が増えてくるのではないかとの考えを示した。
実際、半導体封止・検査事業を手がける日月光投資控股(ASEテクノロジー・ホールディング)傘下のセキ品精密工業(SPIL、セキ=石へんに夕)が先ごろ、ペナン州でマレーシア初の工場を着工するなど、台湾半導体企業による製造拠点設置の動きは既に出ている。
台湾パビリオン=28日、クアラルンプール(NNA撮影)
日本はパビリオンを構えていないが、複数の企業が出展。長瀬産業は、半導体を光や熱、湿気、ほこり、衝撃などから保護する半導体封止材料に使用されるエポキシ樹脂などを訴求している。機能樹脂事業・営業部の田中哲哉氏は、「エポキシ樹脂など半導体関連製品の売れ行きが特に伸びている」と説明。これまで韓国や台湾、米国での展示会の出展に注力してきたが、今後は東南アジアやインドでも需要拡大を見込んでいるとした。
長瀬産業はマレーシアに販売会社ナガセ(マレーシア)を構えるほか、ドイツの子会社を通じて、半導体ウエハーバンピング事業を手がけている。
長瀬産業のブースには、補聴器最大手で計測機器や医療機器などの製造・販売も手がけるリオンも出展。長瀬産業が代理販売する微粒子計測器(パーティクルカウンター)を紹介している。半導体産業では、クリーンルームの空気中に浮遊するほこりなど微粒子の計測に使用される。
旭ダイヤモンド工業は、半導体部品を切削する工具や粘着テープ(UVテープ)などを展示。マレーシア法人アサヒ・ダイヤモンド・インダストリアル・マレーシアの寺田拓矢ビジネス・デベロップメント・マネジャーは、「マレーシアでは日系企業や世界企業と取引があるが、半導体関連の投資が盛んで魅力的な市場だ」と話し、販売拡大に意欲を示した。
■製造施設、東南アは8カ所のみ
米カリフォルニア州に本部を置く国際半導体製造装置材料協会(SEMI)によると、世界の半導体市場は2021年時点で6,000億米ドルで、30年には1兆米ドルに達すると見込まれている。このうちAIをはじめとするコンピューティング・データストレージ分野向けが3,510億米ドル、EVを中心とする自動車分野が1,470億米ドルを占めるとの見通しだ。
旺盛な需要に応えるためには、半導体製造施設(ファブ=Fab=)の新設が不可欠とされている。SEMIのアジット・マノチャ会長兼最高経営責任者(CEO)は会場で行った講演で、「23~27年に世界で稼働が見込まれている半導体製造施設103カ所のうち74カ所はアジアに位置するが、このうち41カ所が中国にあり、東南アジアは8カ所にとどまっている」と指摘。東南アジアは、半導体製造拠点として伸びしろが大きいとの見方を示した。
セミコン・東南アジアは、クアラルンプールのマレーシア国際貿易・展示センター(MITEC)で30日まで開催されている。3日間で1万8,000人の来場が見込まれている。
同展示会は20年以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いオンラインで開催されていたが、22年に会場での実開催が再開された。22年と昨年は、半導体産業の集積地となっているペナン州で開催されたが、今年はクアラルンプールとなった。30周年を迎える来年は、シンガポールで開催される予定だ。
開幕式にはザフルル・アブドゥル・アジズ投資貿易産業相(左から5人目)、SEMIのマノチャ会長兼CEO(同6人目)らが出席した=28日、クアラルンプール(NNA撮影)
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台湾の電子業界団体、台湾電子製造設備工業同業公会(TEEIA)は、台湾パビリオンの中にブースを出展。セミコン・東南アジアへの出展は初めてで、会員企業7社が自社製品をPRしている。
TEEIAの聶旭江(ヘンリー・ニー)組長(ディレクター)はNNAに対し、「今回の展示会には台湾企業40社が出展しており、東南アジア市場に強い関心も持っていることが表れている」とコメント。台湾の半導体企業は台湾や中国に製造拠点を構え、マレーシアなどの東南アジアに販売拠点を構えるケースが依然として多いが、東南アジアでの市場拡大に伴い、現地で製造拠点設置を検討する企業が増えてくるのではないかとの考えを示した。
実際、半導体封止・検査事業を手がける日月光投資控股(ASEテクノロジー・ホールディング)傘下のセキ品精密工業(SPIL、セキ=石へんに夕)が先ごろ、ペナン州でマレーシア初の工場を着工するなど、台湾半導体企業による製造拠点設置の動きは既に出ている。
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日本はパビリオンを構えていないが、複数の企業が出展。長瀬産業は、半導体を光や熱、湿気、ほこり、衝撃などから保護する半導体封止材料に使用されるエポキシ樹脂などを訴求している。機能樹脂事業・営業部の田中哲哉氏は、「エポキシ樹脂など半導体関連製品の売れ行きが特に伸びている」と説明。これまで韓国や台湾、米国での展示会の出展に注力してきたが、今後は東南アジアやインドでも需要拡大を見込んでいるとした。
長瀬産業はマレーシアに販売会社ナガセ(マレーシア)を構えるほか、ドイツの子会社を通じて、半導体ウエハーバンピング事業を手がけている。
長瀬産業のブースには、補聴器最大手で計測機器や医療機器などの製造・販売も手がけるリオンも出展。長瀬産業が代理販売する微粒子計測器(パーティクルカウンター)を紹介している。半導体産業では、クリーンルームの空気中に浮遊するほこりなど微粒子の計測に使用される。
旭ダイヤモンド工業は、半導体部品を切削する工具や粘着テープ(UVテープ)などを展示。マレーシア法人アサヒ・ダイヤモンド・インダストリアル・マレーシアの寺田拓矢ビジネス・デベロップメント・マネジャーは、「マレーシアでは日系企業や世界企業と取引があるが、半導体関連の投資が盛んで魅力的な市場だ」と話し、販売拡大に意欲を示した。
■製造施設、東南アは8カ所のみ
米カリフォルニア州に本部を置く国際半導体製造装置材料協会(SEMI)によると、世界の半導体市場は2021年時点で6,000億米ドルで、30年には1兆米ドルに達すると見込まれている。このうちAIをはじめとするコンピューティング・データストレージ分野向けが3,510億米ドル、EVを中心とする自動車分野が1,470億米ドルを占めるとの見通しだ。
旺盛な需要に応えるためには、半導体製造施設(ファブ=Fab=)の新設が不可欠とされている。SEMIのアジット・マノチャ会長兼最高経営責任者(CEO)は会場で行った講演で、「23~27年に世界で稼働が見込まれている半導体製造施設103カ所のうち74カ所はアジアに位置するが、このうち41カ所が中国にあり、東南アジアは8カ所にとどまっている」と指摘。東南アジアは、半導体製造拠点として伸びしろが大きいとの見方を示した。
セミコン・東南アジアは、クアラルンプールのマレーシア国際貿易・展示センター(MITEC)で30日まで開催されている。3日間で1万8,000人の来場が見込まれている。
同展示会は20年以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いオンラインで開催されていたが、22年に会場での実開催が再開された。22年と昨年は、半導体産業の集積地となっているペナン州で開催されたが、今年はクアラルンプールとなった。30周年を迎える来年は、シンガポールで開催される予定だ。
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