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中国での生産比率が過去最低輸出受注調査、ASEANは最高

台湾経済部(経済産業省)統計処がこのほど発表した2023年の台湾企業の輸出受注に関する調査で、輸出受注額に占める中国(香港含む)での生産比率は37.8%と過去最低を更新した。一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)の生産比率は7.0%となり、過去最高だった。統計処は米中の摩擦や地政学的リスクなどを背景に世界規模でサプライチェーン(供給網)の再編が進む中、「ASEANが台湾企業の海外展開において重要な生産拠点となっている」と指摘している。
統計処が実施した「海外生産実況調査」で明らかになった。台湾の製造業や貿易業の2,795社から有効回答を得た。
23年の輸出受注額のうち、中国の生産比率は前年から0.9ポイント縮小した。一方、台湾の生産比率は0.3ポイント拡大して49.1%となり、13年以降で最も高かった。統計処によると、人工知能(AI)やハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)などの新興テクノロジーの応用に関する需要が拡大する中、集積回路(IC)設計やサーバー、ノートパソコン、ネットワーク製品を手がける企業が台湾での生産比率を拡大させたことが影響した。
生産ラインの増強や新規設置先ではASEANの比率が最も高かった。生産ラインを増強した企業50社のうち、ASEANは56.0%に上った。このうちベトナムが46.0%を占めた。台湾は28.0%、中国(香港含む)は14.0%だった。
生産ラインを新たに設けた企業41社では、ASEANが73.2%を占め、うちベトナムが46.3%に上った。台湾は2.4%、中国(香港含む)は14.6%となった。統計処は、台湾政府が東南アジアやインドなどとの関係を重視する「新南向政策」を推し進める中、ASEANの地理的な利便性や人口ボーナス、地域内の関税に関する協定といった優位性が台湾企業を引きつけていると説明した。
一方、全てまたは一部の生産ラインを移した企業30社のうち、70.0%が中国(香港含む)から移設していた。
■中国で生産・米国へ輸出は縮小
中国と香港で生産した製品の販売先を尋ねたところ、「米国への輸出」は22.2%と、前年から1.3ポイント縮小した。統計処は、ハイテク分野などで米中摩擦が続く中、企業が米国に輸出する製品の生産を台湾またはその他海外の拠点に切り替えていると指摘した。「現地での販売」は28.2%で、前年から1.0ポイント拡大した。
貨物の種類別に販売先を見ると、「電子製品」と「光学器材」は「米国への輸出」が7.0%と4.1%にとどまった一方、「現地での販売」は61.4%と54.6%に上った。統計処は、電子部品やパネル関連の企業が中国で組み立て事業者に製品を供給しているためだと説明した。
調査では、主な競争相手の企業についても尋ねた。台湾の同業との回答が50.4%で最多だったが、前年からは1.5ポイント縮小した。一方、中国系企業は2.7ポイント拡大し25.1%と2番目に多かった。米系企業は5.8%、欧州系企業は3.3%でそれぞれ前年から横ばい。日系企業は4.9%で0.1ポイント縮小した。
調査対象の12品目全てで台湾の同業の比率が最も高かった。中国系企業の比率は各品目で前年から拡大した。
■製品の現地販売が拡大
海外で生産した製品の販売先に関しては、「第三国への販売」が69.1%で最も高かった。これに「現地での販売」が25.8%で続いた。前年から2.2ポイント拡大し、過去最高を更新した。企業が生産拠点を分散させる中、生産場所の近くで製品を供給する傾向が次第に強まっている。
海外で生産する理由を複数回答で尋ねたところ、「顧客の要求に応じるため」が53.4%で最も多かった。前年からは3.3ポイント拡大した。一方、「生産コストが低いため」は前年から4.0ポイント縮小の45.7%となった。10年の73.2%から大きく下がった。「現地の原材料の調達が便利なため」は37.7%だった。

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■中国で生産・米国へ輸出は縮小
中国と香港で生産した製品の販売先を尋ねたところ、「米国への輸出」は22.2%と、前年から1.3ポイント縮小した。統計処は、ハイテク分野などで米中摩擦が続く中、企業が米国に輸出する製品の生産を台湾またはその他海外の拠点に切り替えていると指摘した。「現地での販売」は28.2%で、前年から1.0ポイント拡大した。
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