4月に着任した森健朗・在ダナン日本総領事はNNAのインタビューに応じ、所管する中部9省市への日本企業の進出支援に注力する考えを明らかにした。中部は工業団地の建設など投資環境の整備が進んでおり、各地の人民委員会などからの日本企業の進出への期待は強く「有力な投資先の一つだ」と強調。日本と中部の関係強化に向けて、現在は成田—ダナンの1路線にとどまる直行便のさらなる誘致や邦人の子どもたちへの教育拡充に意欲を示した。
森総領事は日本企業の支援に力を入れる方針を強調した=2日、ダナン
森氏との主なやりとりは以下の通り。
——中部への日本企業の現在の関心は。
従来から引き続き非常に高い。ダナン日本商工会議所(JCCID)の会員数はコロナ禍でも減らず、コロナ後は順調に伸びており、7月末現在で184。最近は製造業だけでなくソフトウエアのオフショア開発などIT企業の進出が目立っている。
——中部各地の人民委員会の日本企業への期待はどうか。
いずれも「ぜひ日本企業に投資してほしい」と言ってくれている。分野としてはITや人工知能(AI)、ソフト開発などを重視しているようだ。中部はいずれの省市にも工業団地やハイテクパークがあり、それぞれの優遇方針と合致すれば投資手続きなどが非常に早く進むこともある。日本企業にとって中部は有力な投資先の一つだ。
■「日越関係は特別」
——最近は中部でも韓国企業など日本企業以外の存在感が高まっている。
確かにベトナム側は日本企業以外からも投資を誘致しており、観光客も韓国人などが増えているが、日本に対しては国造り自体を学びたいという特別な思いがあると感じている。
日越の関係は深く長く、そして重い。20世紀初頭の「東遊運動」に始まった日本から近代化を学ぼうとする歴史は脈々と続いている。こうした日本との間のより質の高い特別な関係を長期的・歴史的な視点を持ちながら強化させていきたいというベトナム側の思いは、外交官の肌感覚として非常に感じている。
——中部の日本企業はどのような課題に直面しているか。
進出日本企業とは日常的に連絡を取り合って意見交換をしているが、(日本企業からの)クレームや、撤退を考えなければならないような問題は実はあまり聞いていない。
中部の省市は、日本企業の抱える問題に必ず耳を傾けてくれる。こうした真摯(しんし)な姿勢をわれわれは歓迎している。もし何か問題があれば日本大使館とも連携し、あらゆるルートを通じて解決を支援していく。
——コロナ禍でダナンと日本を結ぶ定期直行便が減り、現在はベトナム航空の成田線のみ。投資を増やすには直行便の拡充が欠かせない。
(直行便を増やすため)各所で働きかけをしている。個人的には、今の成田線1本では需要を満たせていないとは思う。成田以外の都市への就航も含めて路線が広がってくれるといい。航空会社などが決めることだが、なんとか結果につなげていきたい。
■短期ビザの申請も可能に
——中部からのインバウンド(訪日客)誘致への対応は
活性化に向けて努力していきたい。7月に開催した「ダナン市日越フェスティバル」や8月の「ホイアン日本祭り」(クアンナム省)などを契機とした日本への観光客の増加を期待している。
6月からダナン総領事館でも短期査証(ビザ)の申請が可能になり、訪日の促進材料になるだろう。さらに多くのベトナムの方々に日本に行ってもらえるようできることは全てやりたい。
——改めて総領事としての抱負を教えてほしい。
昨年は日越外交関係樹立50周年を迎え、日越関係は「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされた。24年からは新たなパートナーシップを実行していく段階だ。あらゆる点で全力で取り組んでいくのが基本方針だ。
総領事館の一番の優先事項は邦人保護と日本企業支援だ。日本人、日本からの投資の保護と促進に取り組んでいく。
邦人の子どもたちの教育については、ダナンに日本人補習校がある。将来的には日本人学校があった方がいいと思うが、まずは補習校を拡充していきたい。日本人の教育の充実は、重要な課題の一つと捉えている。また日本とベトナムの地方都市間交流も進めていきたい。
<プロフィル>
森健朗(もり・たけろう) 1988年外務省入省。 ジュネーヴ国際機関代表部、在タイや在エジプト日本大使館、国際連合日本政府代表部などを経て、2020年3月に国際協力局開発協力総括課開発協力企画室長。 24年4月に在ダナン総領事に着任。 ベトナムへの赴任は初めて。 ダナン総領事館は22年1月に設置された。
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森氏との主なやりとりは以下の通り。
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従来から引き続き非常に高い。ダナン日本商工会議所(JCCID)の会員数はコロナ禍でも減らず、コロナ後は順調に伸びており、7月末現在で184。最近は製造業だけでなくソフトウエアのオフショア開発などIT企業の進出が目立っている。
——中部各地の人民委員会の日本企業への期待はどうか。
いずれも「ぜひ日本企業に投資してほしい」と言ってくれている。分野としてはITや人工知能(AI)、ソフト開発などを重視しているようだ。中部はいずれの省市にも工業団地やハイテクパークがあり、それぞれの優遇方針と合致すれば投資手続きなどが非常に早く進むこともある。日本企業にとって中部は有力な投資先の一つだ。
■「日越関係は特別」
——最近は中部でも韓国企業など日本企業以外の存在感が高まっている。
確かにベトナム側は日本企業以外からも投資を誘致しており、観光客も韓国人などが増えているが、日本に対しては国造り自体を学びたいという特別な思いがあると感じている。
日越の関係は深く長く、そして重い。20世紀初頭の「東遊運動」に始まった日本から近代化を学ぼうとする歴史は脈々と続いている。こうした日本との間のより質の高い特別な関係を長期的・歴史的な視点を持ちながら強化させていきたいというベトナム側の思いは、外交官の肌感覚として非常に感じている。
——中部の日本企業はどのような課題に直面しているか。
進出日本企業とは日常的に連絡を取り合って意見交換をしているが、(日本企業からの)クレームや、撤退を考えなければならないような問題は実はあまり聞いていない。
中部の省市は、日本企業の抱える問題に必ず耳を傾けてくれる。こうした真摯(しんし)な姿勢をわれわれは歓迎している。もし何か問題があれば日本大使館とも連携し、あらゆるルートを通じて解決を支援していく。
——コロナ禍でダナンと日本を結ぶ定期直行便が減り、現在はベトナム航空の成田線のみ。投資を増やすには直行便の拡充が欠かせない。
(直行便を増やすため)各所で働きかけをしている。個人的には、今の成田線1本では需要を満たせていないとは思う。成田以外の都市への就航も含めて路線が広がってくれるといい。航空会社などが決めることだが、なんとか結果につなげていきたい。
■短期ビザの申請も可能に
——中部からのインバウンド(訪日客)誘致への対応は
活性化に向けて努力していきたい。7月に開催した「ダナン市日越フェスティバル」や8月の「ホイアン日本祭り」(クアンナム省)などを契機とした日本への観光客の増加を期待している。
6月からダナン総領事館でも短期査証(ビザ)の申請が可能になり、訪日の促進材料になるだろう。さらに多くのベトナムの方々に日本に行ってもらえるようできることは全てやりたい。
——改めて総領事としての抱負を教えてほしい。
昨年は日越外交関係樹立50周年を迎え、日越関係は「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされた。24年からは新たなパートナーシップを実行していく段階だ。あらゆる点で全力で取り組んでいくのが基本方針だ。
総領事館の一番の優先事項は邦人保護と日本企業支援だ。日本人、日本からの投資の保護と促進に取り組んでいく。
邦人の子どもたちの教育については、ダナンに日本人補習校がある。将来的には日本人学校があった方がいいと思うが、まずは補習校を拡充していきたい。日本人の教育の充実は、重要な課題の一つと捉えている。また日本とベトナムの地方都市間交流も進めていきたい。
<プロフィル>
森健朗(もり・たけろう) 1988年外務省入省。 ジュネーヴ国際機関代表部、在タイや在エジプト日本大使館、国際連合日本政府代表部などを経て、2020年3月に国際協力局開発協力総括課開発協力企画室長。 24年4月に在ダナン総領事に着任。 ベトナムへの赴任は初めて。 ダナン総領事館は22年1月に設置された。 "
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