ミネベアミツミは20日、カンボジア首都プノンペンから北西約170キロメールに位置するプルサット州クラコー地区で第2工場の起工式を行った。新工場では精密加工品の製造を手がける。カンボジア経済の発展と製造業の高度化への貢献を目指す。
起工式に出席したカンボジアのスン・チャントール副首相(左)とミネベアミツミの貝沼由久会長=20日、カンボジア・プルサット州(NNA撮影)
カンボジアの新工場は50万平方メートルと、東京ドーム10.6個分の広さで、同国のプノンペン経済特区(PPSEZ)にある第1工場の2.5倍に相当する。新工場では、ベアリングを組み込んだ自動車向け部品や機械向け部品などを製造する。2025年3月期中に一部建設を開始し、27年3月期中に一部稼働を目指す。
ミネベアミツミは11年、カンボジアに自社工場を建設した。当時のカンボジアはエレクトロニクス産業の基盤は脆弱(ぜいじゃく)だったという。需要の拡大に応じ13年に第2棟、16年に第3棟を稼働させ、生産ラインを拡張したことで余剰スペースが不足。同社の工場の生産能力が世界的に飽和状態となる中、相対的に人件費の低いカンボジアでの追加投資を決めた。
カンボジアの工場は操業当初、タイから輸送した部品の組み立てを手がけていた。現在は部品の内製化を進めており、各製品でバラツキはあるものの、内製化率を平均70~80%まで引き上げるなど、技術力を高めてきた。現在は7,000人近い従業員を抱え、ミニチュア・小径ボールベアリングのほか、◇OA機器に使用されるステッピングモーター◇AV機器向けなどブラシ付きの直流(DC)モーター◇スマート発光ダイオード(LED)道路灯——を生産している。
ミネベアミツミは今回、カンボジアで初めて精密加工品を製造するにあたり、同国の社員が必要な技術を習得できるよう、同社タイ工場に順次派遣して研修を実施している。起工式に出席したミネベアミツミの貝沼由久会長兼社長は、「カンボジアを精密加工品の一大供給地に育てたい」と抱負を述べた。
起工式には、カンボジアのスン・チャントール副首相ら政府要人も出席。ミネベアミツミのこれまでのカンボジア経済の発展や人材育成への貢献に感謝の意を表した。
起工式終了後に開催された記者会見では、貝沼会長はNNAの問いに対し、投資先としてのカンボジアの魅力について、カンボジア政府の投資誘致と人材育成に対する強い意欲に加え、若年層の多い人口構成や経済規模の大きいタイとベトナムに近い地理的な利点を挙げた。
記者の質問に答えるスン・チャントール副首相(中央)=20日、カンボジア・プルサット州(NNA撮影)
米中対立の深化を背景に、米国は半導体の調達先の多様化を進めており、中国以外の国や地域に投資や生産拠点を分散させる「チャイナ・プラスワン」の動きも加速している。「カンボジア政府は今後、プリント基板(PCB)メーカーや半導体の後工程の誘致を目指す計画はあるか」とのNNAの質問に対して、スン・チャントール副首相は「カンボジアは50年までに高所得国入りを目指している。そのために労働集約的産業依存からの脱却が重要だ」と述べ、産業の高度化に強い意欲を見せた。
一方、このところカンボジアへの日系企業の新規進出は停滞している状況だ。カンボジア政府としては、ミネベアミツミの今回の追加投資を機に一層の企業誘致に力を入れていきたい考えだ。
■100%再生エネ
ミネベアミツミがカンボジアで追加投資を決定した背景には、同国でカーボンニュートラルを実現しやすいとの判断もあったもよう。一般社団法人日本カンボジア協会(東京都港区)のカンボジア通信によると、ニュースサイト「クメール・タイムズ」は、22年時点でカンボジア国内エネルギーの総消費量のうち、再生可能エネルギーまたはクリーンエネルギーが62%を占めると報じている。
ミネベアミツミは2050年のカーボンニュートラルの達成を目指しており、ミネベアミツミのカンボジアのすべての工場で必要となる電力の全量を再生可能エネルギーで対応する計画。すでにカンボジア現地の政府認定電力事業者であるSchneiTec社と協働で、プルサット州クラコー地区で50メガワット規模の太陽光発電事業を26年3月期中に操業を開始する内容の覚書をカンボジア鉱業エネルギー省と締結している。
ミネベアミツミの貝沼会長はカーボンニュートラルについて「顧客からの要求があるなしにかかわらず、サステナビリティー(持続可能性)の観点からも必ず取り組まなければならないもの」との認識を示した。
ミネベアミツミの第2工場の建設予定地=20日、カンボジア・プルサット州(NNA撮影)
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ミネベアミツミは11年、カンボジアに自社工場を建設した。当時のカンボジアはエレクトロニクス産業の基盤は脆弱(ぜいじゃく)だったという。需要の拡大に応じ13年に第2棟、16年に第3棟を稼働させ、生産ラインを拡張したことで余剰スペースが不足。同社の工場の生産能力が世界的に飽和状態となる中、相対的に人件費の低いカンボジアでの追加投資を決めた。
カンボジアの工場は操業当初、タイから輸送した部品の組み立てを手がけていた。現在は部品の内製化を進めており、各製品でバラツキはあるものの、内製化率を平均70~80%まで引き上げるなど、技術力を高めてきた。現在は7,000人近い従業員を抱え、ミニチュア・小径ボールベアリングのほか、◇OA機器に使用されるステッピングモーター◇AV機器向けなどブラシ付きの直流(DC)モーター◇スマート発光ダイオード(LED)道路灯——を生産している。
ミネベアミツミは今回、カンボジアで初めて精密加工品を製造するにあたり、同国の社員が必要な技術を習得できるよう、同社タイ工場に順次派遣して研修を実施している。起工式に出席したミネベアミツミの貝沼由久会長兼社長は、「カンボジアを精密加工品の一大供給地に育てたい」と抱負を述べた。
起工式には、カンボジアのスン・チャントール副首相ら政府要人も出席。ミネベアミツミのこれまでのカンボジア経済の発展や人材育成への貢献に感謝の意を表した。
起工式終了後に開催された記者会見では、貝沼会長はNNAの問いに対し、投資先としてのカンボジアの魅力について、カンボジア政府の投資誘致と人材育成に対する強い意欲に加え、若年層の多い人口構成や経済規模の大きいタイとベトナムに近い地理的な利点を挙げた。
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米中対立の深化を背景に、米国は半導体の調達先の多様化を進めており、中国以外の国や地域に投資や生産拠点を分散させる「チャイナ・プラスワン」の動きも加速している。「カンボジア政府は今後、プリント基板(PCB)メーカーや半導体の後工程の誘致を目指す計画はあるか」とのNNAの質問に対して、スン・チャントール副首相は「カンボジアは50年までに高所得国入りを目指している。そのために労働集約的産業依存からの脱却が重要だ」と述べ、産業の高度化に強い意欲を見せた。
一方、このところカンボジアへの日系企業の新規進出は停滞している状況だ。カンボジア政府としては、ミネベアミツミの今回の追加投資を機に一層の企業誘致に力を入れていきたい考えだ。
■100%再生エネ
ミネベアミツミがカンボジアで追加投資を決定した背景には、同国でカーボンニュートラルを実現しやすいとの判断もあったもよう。一般社団法人日本カンボジア協会(東京都港区)のカンボジア通信によると、ニュースサイト「クメール・タイムズ」は、22年時点でカンボジア国内エネルギーの総消費量のうち、再生可能エネルギーまたはクリーンエネルギーが62%を占めると報じている。
ミネベアミツミは2050年のカーボンニュートラルの達成を目指しており、ミネベアミツミのカンボジアのすべての工場で必要となる電力の全量を再生可能エネルギーで対応する計画。すでにカンボジア現地の政府認定電力事業者であるSchneiTec社と協働で、プルサット州クラコー地区で50メガワット規模の太陽光発電事業を26年3月期中に操業を開始する内容の覚書をカンボジア鉱業エネルギー省と締結している。
ミネベアミツミの貝沼会長はカーボンニュートラルについて「顧客からの要求があるなしにかかわらず、サステナビリティー(持続可能性)の観点からも必ず取り組まなければならないもの」との認識を示した。
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