NNAグローバルナビ アジア専門情報ブログ

新港の整備、2026年が節目豊通、西ジャワ港を軸に(上)

インドネシアの西ジャワ州スバン県のパティンバン港では、円借款で拡張工事中のコンテナ・自動車の両ターミナルが年内に完工する予定だ。同港では2021年から豊田通商が中心となり自動車ターミナルが運営されているが、コンテナターミナルの運営にも同社が参画することが決まった。両ターミナルの設備などがそろって整うのは26年の予定で、日本が官民で支援する港湾開発にとっても重要なマイルストーン(節目)となる見込み。パティンバン港を軸に地域開発の可能性を見据える豊田通商の取り組みを取り上げる。

拡張工事が進むパティンバン港の上空写真=24年12月(JICA専門家チーム提供)

豊田通商は2月上旬、コンテナ海運最大手MSCグループの物流会社アフリカ・グローバル・ロジスティクス、地場大手海運サムデラグループのサムデラ・プラブハン・インドネシアとともにコンテナターミナルの運営会社に資本参加することを発表した。世界・地場大手と連携し、相乗効果を生かして広く輸送需要を取り込んでいく狙いがある。
コンテナターミナル運営会社となるパティンバン・グローバル・ゲートウェイ・ターミナル(PGT)は現在、ターミナルで使用する大型クレーンなど設備を手配しており、26年内の稼働に向けて準備を進めている。
1月末時点でのコンテナターミナルの拡張工事(パッケージ6)の進捗(しんちょく)率は71.8%で、11月に完工を予定する。
パティンバン港が位置する西ジャワ州スバン県は、工場が集積する同州チカラン、カワラン地区からさらに東方の郊外に位置する。産業地帯として未成熟で、最低賃金も低く、次世代の産業地域と目されている。

豊田通商のインフラプロジェクト部交通インフラグループの上田亮グループリーダーは、「パティンバン港をドライバーに地域の産業を活性化させる役割が期待できる」と指摘した。現在、国際協力機構(JICA)が支援して計画中の港湾近くの後背地(約356ヘクタール)を含めて、「計画的な開発が可能な点がパティンバン港のメリットだ」(上田氏)といい、ジャカルタに一極集中する物流機能を分散させ、首都圏の物流を強化させる意義があると説明した。
上田氏は、コンテナターミナルについて、「26年には年50万~60万TEU(20フィートコンテナ換算)規模の取り扱い能力で運営を開始し、段階的に年375万TEUまで取り扱い能力を高めていくことになる」との見通しを明らかにした。
コンテナターミナルとなる区画は現在、運営パートナーのプラブハン・パティンバン・インターナショナル(PPI)が多目的ターミナルとして活用しており、3月中にPGTが運営を引き継ぐ。スバン県にある工業団地を中心とする新興都市「スバン・スマートポリタン」の建設用資材などの輸送需要に対応するために引き続き多目的ターミナルとして運用していく方針だ。

現在、多目的ターミナルとして機能するコンテナターミナルの区画=2月、西ジャワ州(NNA撮影)

コンテナターミナルは26年に工事が完了した後も、さらに拡張工事(パッケージ7)が計画されている。今年1月に円借款契約が締結されており、パッケージ7は2月下旬時点で入札に向けたインドネシア政府の入札書類確認中の段階にある。パッケージ7が完工した後には、取り扱い能力は年375万TEUに拡大する予定だ。

パティンバン港コンテナターミナル側から見える自動車ターミナルに停泊する貨物船=2月、西ジャワ州(NNA撮影)

一方、自動車ターミナルは、豊田通商、トヨフジ海運、日本郵船、上組が出資参画するパティンバン・インターナショナル・カーターミナル(PICT)が運営する。自動車ターミナル拡張工事の進捗率は72.3%で、10月に完工する予定だ。
パティンバン港の機能を最大化させる上での重要となるのが、建設中のパティンバン・アクセス高速道路(延長37.1キロメートル)の開通だ。政府が担当する建設区間(22.9キロ)の進捗率は2月16日時点で35.8%。残りの地場民間事業者の担当区間は2月下旬時点でまだ着工しておらず、開通時期は25年末から26年第1四半期(1~3月)にずれ込む見通し。ただ、ジャワ島横断高速道路とつながるアクセス高速道が開通すれば、チカランやカラワンの工業団地から港まで高速道路を使って輸送できるようになるため、26年に完成予定の最重要インフラの1つとなる。

■地域開発・産業形成のドライバーに
上田氏は、交易の玄関口としてさまざまな人、モノ、エネルギーが集まることが港の特徴だとした上で、「再生可能エネルギー、防災、住まいやヘルスケアなど豊田通商の多くの事業の知見をパティンバン周辺地域でも生かしていきたい」と述べた。


中長期的には衣食住をカバーする幅広い分野で事業機会を模索していく考えだ。
現在のところ具体的な形となっているのは、パティンバン港のターミナルの運営、西ジャワ州ブカシ県の自動車認証試験場の整備事業への運営参画だが、直近では港湾と工業団地をつなぐロジスティクス面でのグリーンエネルギー供給に向けた取り組みも進めている。
上田氏は、豊田通商は社内の初期調査を含めると約15年間、パティンバン港開発に携わってきたとし、「パティンバン港をドライバーにさまざまなパートナーとの協力を通じて、地域開発をリードする役割を担えれば」と意欲を示した。

年内に完工を予定するコンテナターミナルの拡張工事の様子=2月、西ジャワ州(NNA撮影)
object(WP_Post)#9816 (24) {
  ["ID"]=>
  int(25294)
  ["post_author"]=>
  string(1) "3"
  ["post_date"]=>
  string(19) "2025-03-12 00:00:00"
  ["post_date_gmt"]=>
  string(19) "2025-03-11 15:00:00"
  ["post_content"]=>
  string(8779) "インドネシアの西ジャワ州スバン県のパティンバン港では、円借款で拡張工事中のコンテナ・自動車の両ターミナルが年内に完工する予定だ。同港では2021年から豊田通商が中心となり自動車ターミナルが運営されているが、コンテナターミナルの運営にも同社が参画することが決まった。両ターミナルの設備などがそろって整うのは26年の予定で、日本が官民で支援する港湾開発にとっても重要なマイルストーン(節目)となる見込み。パティンバン港を軸に地域開発の可能性を見据える豊田通商の取り組みを取り上げる。[caption id="attachment_25295" align="aligncenter" width="620"]拡張工事が進むパティンバン港の上空写真=24年12月(JICA専門家チーム提供)[/caption]
豊田通商は2月上旬、コンテナ海運最大手MSCグループの物流会社アフリカ・グローバル・ロジスティクス、地場大手海運サムデラグループのサムデラ・プラブハン・インドネシアとともにコンテナターミナルの運営会社に資本参加することを発表した。世界・地場大手と連携し、相乗効果を生かして広く輸送需要を取り込んでいく狙いがある。
コンテナターミナル運営会社となるパティンバン・グローバル・ゲートウェイ・ターミナル(PGT)は現在、ターミナルで使用する大型クレーンなど設備を手配しており、26年内の稼働に向けて準備を進めている。
1月末時点でのコンテナターミナルの拡張工事(パッケージ6)の進捗(しんちょく)率は71.8%で、11月に完工を予定する。
パティンバン港が位置する西ジャワ州スバン県は、工場が集積する同州チカラン、カワラン地区からさらに東方の郊外に位置する。産業地帯として未成熟で、最低賃金も低く、次世代の産業地域と目されている。

豊田通商のインフラプロジェクト部交通インフラグループの上田亮グループリーダーは、「パティンバン港をドライバーに地域の産業を活性化させる役割が期待できる」と指摘した。現在、国際協力機構(JICA)が支援して計画中の港湾近くの後背地(約356ヘクタール)を含めて、「計画的な開発が可能な点がパティンバン港のメリットだ」(上田氏)といい、ジャカルタに一極集中する物流機能を分散させ、首都圏の物流を強化させる意義があると説明した。
上田氏は、コンテナターミナルについて、「26年には年50万~60万TEU(20フィートコンテナ換算)規模の取り扱い能力で運営を開始し、段階的に年375万TEUまで取り扱い能力を高めていくことになる」との見通しを明らかにした。
コンテナターミナルとなる区画は現在、運営パートナーのプラブハン・パティンバン・インターナショナル(PPI)が多目的ターミナルとして活用しており、3月中にPGTが運営を引き継ぐ。スバン県にある工業団地を中心とする新興都市「スバン・スマートポリタン」の建設用資材などの輸送需要に対応するために引き続き多目的ターミナルとして運用していく方針だ。
[caption id="attachment_25299" align="aligncenter" width="620"]現在、多目的ターミナルとして機能するコンテナターミナルの区画=2月、西ジャワ州(NNA撮影)[/caption]
コンテナターミナルは26年に工事が完了した後も、さらに拡張工事(パッケージ7)が計画されている。今年1月に円借款契約が締結されており、パッケージ7は2月下旬時点で入札に向けたインドネシア政府の入札書類確認中の段階にある。パッケージ7が完工した後には、取り扱い能力は年375万TEUに拡大する予定だ。
[caption id="attachment_25298" align="aligncenter" width="620"]パティンバン港コンテナターミナル側から見える自動車ターミナルに停泊する貨物船=2月、西ジャワ州(NNA撮影)[/caption]
一方、自動車ターミナルは、豊田通商、トヨフジ海運、日本郵船、上組が出資参画するパティンバン・インターナショナル・カーターミナル(PICT)が運営する。自動車ターミナル拡張工事の進捗率は72.3%で、10月に完工する予定だ。
パティンバン港の機能を最大化させる上での重要となるのが、建設中のパティンバン・アクセス高速道路(延長37.1キロメートル)の開通だ。政府が担当する建設区間(22.9キロ)の進捗率は2月16日時点で35.8%。残りの地場民間事業者の担当区間は2月下旬時点でまだ着工しておらず、開通時期は25年末から26年第1四半期(1~3月)にずれ込む見通し。ただ、ジャワ島横断高速道路とつながるアクセス高速道が開通すれば、チカランやカラワンの工業団地から港まで高速道路を使って輸送できるようになるため、26年に完成予定の最重要インフラの1つとなる。

■地域開発・産業形成のドライバーに
上田氏は、交易の玄関口としてさまざまな人、モノ、エネルギーが集まることが港の特徴だとした上で、「再生可能エネルギー、防災、住まいやヘルスケアなど豊田通商の多くの事業の知見をパティンバン周辺地域でも生かしていきたい」と述べた。

中長期的には衣食住をカバーする幅広い分野で事業機会を模索していく考えだ。
現在のところ具体的な形となっているのは、パティンバン港のターミナルの運営、西ジャワ州ブカシ県の自動車認証試験場の整備事業への運営参画だが、直近では港湾と工業団地をつなぐロジスティクス面でのグリーンエネルギー供給に向けた取り組みも進めている。
上田氏は、豊田通商は社内の初期調査を含めると約15年間、パティンバン港開発に携わってきたとし、「パティンバン港をドライバーにさまざまなパートナーとの協力を通じて、地域開発をリードする役割を担えれば」と意欲を示した。
[caption id="attachment_25300" align="aligncenter" width="620"]年内に完工を予定するコンテナターミナルの拡張工事の様子=2月、西ジャワ州(NNA撮影)[/caption]" ["post_title"]=> string(76) "新港の整備、2026年が節目豊通、西ジャワ港を軸に(上)" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(193) "%e6%96%b0%e6%b8%af%e3%81%ae%e6%95%b4%e5%82%99%e3%80%812026%e5%b9%b4%e3%81%8c%e7%af%80%e7%9b%ae%e8%b1%8a%e9%80%9a%e3%80%81%e8%a5%bf%e3%82%b8%e3%83%a3%e3%83%af%e6%b8%af%e3%82%92%e8%bb%b8%e3%81%ab" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2025-03-12 04:00:06" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2025-03-11 19:00:06" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=25294" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
 NNA
エヌエヌエー NNA
アジアの経済ニュース・ビジネス情報 - NNA ASIA

アジア経済の詳細やビジネスに直結する新着ニュースを掲載。
現地の最新動向を一目で把握できます。
法律、会計、労務などの特集も多数掲載しています。

【東京本社】
105-7209 東京都港区東新橋1丁目7番1号汐留メディアタワー9階
Tel:81-3-6218-4330
Fax:81-3-6218-4337
E-mail:sales_jp@nna.asia
HP:https://www.nna.jp/

国・地域別
インドネシア情報
内容別
ビジネス全般人事労務

コメントを書く

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

※がついている欄は必須項目です。

コメント※:

お名前:

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください