ベトナムの食品流通大手タンロングループは、ベトナム産ジャポニカ米を日本の大手スーパーチェーン複数社のプライベートブランド(PB)として販売する最終調整に入った。早ければ3月末にも都市部の店舗で販売が始まるとみられる。2025年は前年6倍超の年間2万トン出荷を目標に、3月に収穫が始まった春作からは合計1万5,000トン超を輸出する。タンロンには日本全国のスーパーから「日本水準のコメが欲しい」との問い合わせが続いており、他国向けの在庫を振り向けて供給を拡大することも検討している。
タンロングループが契約しているコメ農家の水田=12日、南部キエンザン省(タンロングループ提供)
タンロンは南部メコンデルタ地域(主にキエンザン省、カントー省、アンザン省、ドンタップ省)の契約農家に低農薬など日本の安全基準をクリアできる農業技術を指導し、高品質ジャポニカ米の輸出拡大に力を入れている。
PB販売を行う大手スーパー複数社は非公表。その他、中小の小売店が商社や卸売業者と購入に向けた最終調整を行っている。日本企業との調整は、地方銀行のきらぼし銀行(東京都港区)が協力している。
タンロンは、輸入米で一般的な産地を伏せたノーブランドのブレンド米販売ではなく、ベトナム産を前面に打ち出した形で展開する。タンロンは24年からすでに東京や大阪のアジア人向け食品店で販売を始めており、販売価格は24年11月時点で5キログラムで2,399円など。高騰している日本産米の2~5割の水準だ。
■「令和の米騒動」長期化で方針を転換
タンロンは昨年は日本政府が輸入米を無関税で受け入れるミニマムアクセス(最低輸入量、民間事業者が自由に用途を決められる枠は10万トン)の入札に参加していたが、輸出量と頻度を増やすため今年から一般輸入に切り替えている。輸入米の関税は1キログラム当たり341円で、ミニマムアクセス枠(最大1キロ上限292円の納付金がかかる)よりもコストがかかるが、日本のコメ価格高止まりをふまえると価格競争力は維持できると判断した。
農林水産省の発表によれば、3月10日の週の全国のスーパーのコメ販売価格は前年同期2倍強の5キロ当たり4,172円。販売数量は前年同期12%減で800トンを割っている。
一方でベトナムの南部メコンデルタ地域は今年、例年水準を2割ほど上回る豊作で、日本向けに販売可能な高品質な粒の収量も増え、単価も低下した。「安くてうまい」を掲げ売り込むにあたって、大きな追い風となっている。
■日本並みの品質に好評価
タンロンは、日本が業務用に多く輸入している「カルローズ」(米国カリフォルニア州などで栽培されている中粒種のジャポニカ米)よりも日本のコメに味わいが近く、かつ、日本産よりも価格が安いという位置づけで越産米の売り込みを狙う。
きらぼし銀担当者は、日本の小売り各社は安定供給が見込める代替生産地としてベトナムに注目しており、タンロンのコメは大手バイヤーからも評価を受けていると自信を示す。試食した大手スーパーの商品開発部担当者からも「特に春作の新米については日本産と並ぶレベルだ」との太鼓判を押された。
春作の収穫時期には大手スーパーの各部門担当者らがタンロンの水田や精米工場を視察。きらぼし銀担当者は、「特に21年に稼働し始めたばかりの精米工場の衛生管理面の評価が非常に高かった」と強調する。「特に自動化のレベルは日本以上の水準といえるのでは」と驚かれたという。
タンロングループ工場内の精米機(きらぼし銀行提供)
同銀は幅広い規模の小売店や、卸売りや商社を介した販売に向けて最終調整を進めている。2月に幕張メッセ(千葉市)で開催した国際見本市では、地域密着型の商店などからも「地元産のコメでも足りない」として問い合わせを受けた。
タンロンは2月、幕張メッセのスーパーマーケット向け見本市に出展した(きらぼし銀行提供)
■海外米の輸入が急拡大
国産米の価格が高止まりする日本では、関税が上乗せされても海外産の割安感が高まっている。
農林水産省によると、民間企業によるコメ輸入量は24年度は1月までで991トンで、23年度通年の2.6倍以上に急増した。
昨年11月にはスーパーの西友が台湾米の販売を開始。他のスーパーチェーンによる米国産カルローズの販売も相次いでいる。
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タンロンは、輸入米で一般的な産地を伏せたノーブランドのブレンド米販売ではなく、ベトナム産を前面に打ち出した形で展開する。タンロンは24年からすでに東京や大阪のアジア人向け食品店で販売を始めており、販売価格は24年11月時点で5キログラムで2,399円など。高騰している日本産米の2~5割の水準だ。
■「令和の米騒動」長期化で方針を転換
タンロンは昨年は日本政府が輸入米を無関税で受け入れるミニマムアクセス(最低輸入量、民間事業者が自由に用途を決められる枠は10万トン)の入札に参加していたが、輸出量と頻度を増やすため今年から一般輸入に切り替えている。輸入米の関税は1キログラム当たり341円で、ミニマムアクセス枠(最大1キロ上限292円の納付金がかかる)よりもコストがかかるが、日本のコメ価格高止まりをふまえると価格競争力は維持できると判断した。
農林水産省の発表によれば、3月10日の週の全国のスーパーのコメ販売価格は前年同期2倍強の5キロ当たり4,172円。販売数量は前年同期12%減で800トンを割っている。
一方でベトナムの南部メコンデルタ地域は今年、例年水準を2割ほど上回る豊作で、日本向けに販売可能な高品質な粒の収量も増え、単価も低下した。「安くてうまい」を掲げ売り込むにあたって、大きな追い風となっている。
■日本並みの品質に好評価
タンロンは、日本が業務用に多く輸入している「カルローズ」(米国カリフォルニア州などで栽培されている中粒種のジャポニカ米)よりも日本のコメに味わいが近く、かつ、日本産よりも価格が安いという位置づけで越産米の売り込みを狙う。
きらぼし銀担当者は、日本の小売り各社は安定供給が見込める代替生産地としてベトナムに注目しており、タンロンのコメは大手バイヤーからも評価を受けていると自信を示す。試食した大手スーパーの商品開発部担当者からも「特に春作の新米については日本産と並ぶレベルだ」との太鼓判を押された。
春作の収穫時期には大手スーパーの各部門担当者らがタンロンの水田や精米工場を視察。きらぼし銀担当者は、「特に21年に稼働し始めたばかりの精米工場の衛生管理面の評価が非常に高かった」と強調する。「特に自動化のレベルは日本以上の水準といえるのでは」と驚かれたという。
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■海外米の輸入が急拡大
国産米の価格が高止まりする日本では、関税が上乗せされても海外産の割安感が高まっている。
農林水産省によると、民間企業によるコメ輸入量は24年度は1月までで991トンで、23年度通年の2.6倍以上に急増した。
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