日産自動車は3月31日、アライアンス(連合)を組む仏ルノーとの新たな戦略プロジェクトを発表し、インドの生産子会社、ルノー日産オートモーティブインディア(RNAIPL)の全株式を譲渡すると発表した。譲渡額は290億ルピー(約507億円)。日産はインド生産から撤退し、ルノーが日産車を供給する。一方で、研究・開発を担う合弁子会社への少数出資は維持する。生産コストを抑えつつ、新興国向けモデルを開発し、インド市場とアフリカ向け供給拠点としてインドを活用していくとみられる。
RNAIPLが引き続き生産する日産の小型SUV「マグナイト」=昨年10月、首都ニューデリー(NNA撮影)
日産は、同社グループが保有するRNAIPLの株式51%をルノー・グループに譲渡することを決めた。優先株式を合わせると、譲渡額は353億ルピーとなる。規制当局の承認を条件に、2025年5月末までに取引を完了する予定だ。
日産はインド生産を事実上撤退する。日産はインドで小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「マグナイト」と中型SUV「エクストレイル」を販売。エクストレイルは日本からの完成車輸入となっており、RNAIPLは引き続きマグナイトなどを南部チェンナイ近郊のオラガダム工場で生産する。
ルノー・グループのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は、「われわれは日産の業績回復を支援し、最も効果的な方法を協議した」と説明。1日付で日産グループの社長兼CEOに就任したイバン・エスピノーサ氏は、「インドでの新型SUVの計画に変更はなく、他の市場への輸出も継続する。まだ研究開発のハブでもあり続ける」と述べた。
日産は先月下旬、今年から来年前半にかけて新型2車種をインドで発売すると発表していた。本年度(25年4月~26年3月)に7人乗りの多目的車(MPV)を、来年度初めに5人乗り中型SUVを投入する計画に変更はないとみられる。また、日産が49%、ルノーが51%それぞれ保有し、インドで研究・開発を担うルノー・日産テクノロジー&ビジネスセンターインディア(RNTBCI)については今後も共同運営していくことになる。

■中国・吉利に朗報か
自動車調査会社フォーインの舟橋一晃氏(「アジア自動車調査月報」編集長)は、「日産にとって販売不振が続く米国と中国事業のテコ入れが優先課題で、相対的な重要性が低いインドの事業見直しに踏み切った」との見方を示した。相互出資の最低限比率の引き下げやRNAIPL保有株の譲渡などで財務の柔軟性が高まるほか、キャッシュフローの安定確保につながる。
舟橋氏は、「日産はインドに未練がないわけではない。研究・開発機能は維持して、インド・新興国向けモデルを手がけ、ルノーへの『委託生産』を通じて国内販売やアフリカ向け輸出を視野に入れているのだろう」と指摘。引き続きインドを活用していく方向性に変わりはないとみている。
舟橋氏は一方でルノー側のメリットにも言及した。RNAIPLの完全子会社化で経営の自由度が高まり、アフリカ向けなどの輸出を拡大することが可能になると話す。
さらに、ルノーがグローバル規模で提携を強化する中国自動車大手の浙江吉利控股集団に注目。インドは中国からの投資受け入れについて、一般的に事前承認制など厳しい制約を設けており、「吉利は、ルノーを前面にライセンス契約や部品供与などでインドへの参入機会をうかがう可能性もあるのではないか」との持論を述べた。
■存在感示せず、シェア1%未満
日産のインドでの販売台数は過去10年間で低下傾向にある。シェアはピークだった16/17年度の1.9%から、23/24年度は0.7%と1%台を割り込んだ。地場調査会社IPOセントラルの共同創業者で、自動車市場に詳しいアニル・シャルマ氏は1日、NNAに対し、「インドでメーカー各社が新モデルを投入し続けるなか、日産は展開車種が限定的で存在感を示せなかった。だが、先月に発売計画を発表した2車種は高成長するセグメントに的を絞っており、他社との競合が期待できる」と述べた。
日産は、新興国向けのブランド「ダットサン」をインドでも販売していたが、伸び悩んだ。ダットサンは22年にインドでの生産を終了している。

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日産はインド生産を事実上撤退する。日産はインドで小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「マグナイト」と中型SUV「エクストレイル」を販売。エクストレイルは日本からの完成車輸入となっており、RNAIPLは引き続きマグナイトなどを南部チェンナイ近郊のオラガダム工場で生産する。
ルノー・グループのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は、「われわれは日産の業績回復を支援し、最も効果的な方法を協議した」と説明。1日付で日産グループの社長兼CEOに就任したイバン・エスピノーサ氏は、「インドでの新型SUVの計画に変更はなく、他の市場への輸出も継続する。まだ研究開発のハブでもあり続ける」と述べた。
日産は先月下旬、今年から来年前半にかけて新型2車種をインドで発売すると発表していた。本年度(25年4月~26年3月)に7人乗りの多目的車(MPV)を、来年度初めに5人乗り中型SUVを投入する計画に変更はないとみられる。また、日産が49%、ルノーが51%それぞれ保有し、インドで研究・開発を担うルノー・日産テクノロジー&ビジネスセンターインディア(RNTBCI)については今後も共同運営していくことになる。

■中国・吉利に朗報か
自動車調査会社フォーインの舟橋一晃氏(「アジア自動車調査月報」編集長)は、「日産にとって販売不振が続く米国と中国事業のテコ入れが優先課題で、相対的な重要性が低いインドの事業見直しに踏み切った」との見方を示した。相互出資の最低限比率の引き下げやRNAIPL保有株の譲渡などで財務の柔軟性が高まるほか、キャッシュフローの安定確保につながる。
舟橋氏は、「日産はインドに未練がないわけではない。研究・開発機能は維持して、インド・新興国向けモデルを手がけ、ルノーへの『委託生産』を通じて国内販売やアフリカ向け輸出を視野に入れているのだろう」と指摘。引き続きインドを活用していく方向性に変わりはないとみている。
舟橋氏は一方でルノー側のメリットにも言及した。RNAIPLの完全子会社化で経営の自由度が高まり、アフリカ向けなどの輸出を拡大することが可能になると話す。
さらに、ルノーがグローバル規模で提携を強化する中国自動車大手の浙江吉利控股集団に注目。インドは中国からの投資受け入れについて、一般的に事前承認制など厳しい制約を設けており、「吉利は、ルノーを前面にライセンス契約や部品供与などでインドへの参入機会をうかがう可能性もあるのではないか」との持論を述べた。
■存在感示せず、シェア1%未満
日産のインドでの販売台数は過去10年間で低下傾向にある。シェアはピークだった16/17年度の1.9%から、23/24年度は0.7%と1%台を割り込んだ。地場調査会社IPOセントラルの共同創業者で、自動車市場に詳しいアニル・シャルマ氏は1日、NNAに対し、「インドでメーカー各社が新モデルを投入し続けるなか、日産は展開車種が限定的で存在感を示せなかった。だが、先月に発売計画を発表した2車種は高成長するセグメントに的を絞っており、他社との競合が期待できる」と述べた。
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