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不動産の「二極化」鮮明に高級住宅街は最高値、格差を助長

韓国の不動産市場で二極化が加速している。高級住宅街のソウル市南部のマンション取引価格が軒並み過去最高を更新する一方、比較的価格が安い地域は、韓国銀行(中央銀行)の金融政策の引き締めなどの影響を受けて価格下落が続いている。複数の物件を保有する世帯への課税が厳しくなる中、富裕層などが住宅の一本化に動いていることが背景にある。格差のさらなる拡大の懸念も広がっている。

日系駐在員が多く暮らすソウル市竜山区のマンションも高級物件に位置付けられる(NNA撮影)

韓国国土交通省によると、ソウル市瑞草区盤浦洞にある最高級マンション「アクロリバーパーク」の129平方メートルの中古物件(19階)が今月23日、68億ウォン(約7億1,000万円)の過去最高額で取引された。2016年に入居が開始されたアクロリバーパークは、ソウル市内を流れる漢江沿いにある人気地区で、周辺の学校の学力レベルも高いことから、富裕層の象徴的なマンションとして知られる。
19年まで30億ウォン(129平方メートル)ほどで推移していたが、20年の超低金利時代を契機に昨年6月には50億ウォンの大台を突破。昨年からの金利上昇の影響もどこ吹く風で、今年3月には取引額が60億ウォン台をつけた。70億ウォン台を超えるのは時間の問題で、数年後には100億ウォンに到達するとの見方さえある。
韓国不動産院によると、ソウル市の今年1月~6月20日までのマンション価格変動率は前年同期比で0.16%下落と、昨年の高騰期からマイナスに転じた。しかし、富裕層が集まる瑞草区は0.59%上昇、江南区は0.33%上昇と、底堅い成長を続けているのが実情だ。
■ソウル城北区が最大下落
一方、ソウル市北部の「ノ(芦原区)・ト(道峰区)・カン(江北区)」と呼ばれる比較的価格が安い地域は下落が進む。「ノ・ト・カン」の3区のマンション価格変動率はそれぞれ同0.5%前後の下落で、マンション団地の多い城北区は0.85%下落と最大のマイナス幅を記録した。
数字でみれば、それぞれの下落幅は小さく見えるが、市場では買い手が全く見つからない状態だ。昨年秋ごろのピーク値から1億ウォン単位で値下げしても売買が成立しないケースが相次ぐなど、数字以上に停滞感が強まっている。
地方では、バブル感の強かった世宗市が同7.02%下落、大邱市が同3.67%下落と下げに歯止めがかからなくなっている。首都圏広域急行鉄道「GTX」の新設期待から高騰した「東灘新都市」がある京畿道華城市も同2.47%下落。韓国メディアによると、10億ウォン以上の物件はピークに比べて最大5億ウォン規模で値下がりしているという。
■厳しい税制に「多住宅者」脱却
二極化が進む理由には、韓国政府の税制が大きく関与している。文在寅(ムン・ジェイン)前政権時から不動産市場の高騰抑制策として、住宅を複数保有する「多住宅者」に厳しい税制が課されるようになっている。
不動産市場の先行き不透明感に加えて税負担が重荷となる中、多住宅者はソウル郊外や地方などの投資価値の低い物件を売却し、ソウルの一等地のマンションに資産を一本化する動きが広がっている。
■来年の住宅ローン9%台も
金融政策の引き締めで、若年層などの購買意欲が著しく低下していることも要因だ。
韓国の政策金利は21年8月まで過去最低の0.5%だったが、計5回の利上げで1.75%まで引き上がっている。米国の急速な利上げを受けて、韓国銀行が7月に開く金融通貨委員会では0.5%の大幅利上げに踏み切る可能性も示唆されている。
大手銀行の住宅担保ローンの現在の金利は5~6%水準で、信用度が低い借り手の場合は7%を超える。政策金利が一段と上昇する来年は9%台の商品も登場するとみられる。
仮に9%で5億ウォンの30年ローン(元利均等返済)を組めば、毎月の返済額は400万ウォンとなる計算で、簡単には住宅購入に踏み切れない状況となる。高金利の下で需要が低迷すれば、投資価値の低い物件はさらに下押し圧力がかかりそうだ。
■尹政権は減税で供給拡大狙う
尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、住宅譲渡税の減税を通じて多住宅者が保有する一部物件を売りに出させ、市場への供給量を増やすことで不動産価格の抑制を目指す。住宅譲渡税が減税されれば、多住宅者の住宅一本化もさらに進むとみられている。
ソウル大学のキム・ギョンミン環境大学院教授は、NNAに対して「減税措置で負担軽減となれば、富裕層はソウルの江南区周辺の高級マンションを積極的に買い向かうため、不動産の二極化はしばらく続く可能性がある」との見方を示した。

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19年まで30億ウォン(129平方メートル)ほどで推移していたが、20年の超低金利時代を契機に昨年6月には50億ウォンの大台を突破。昨年からの金利上昇の影響もどこ吹く風で、今年3月には取引額が60億ウォン台をつけた。70億ウォン台を超えるのは時間の問題で、数年後には100億ウォンに到達するとの見方さえある。
韓国不動産院によると、ソウル市の今年1月~6月20日までのマンション価格変動率は前年同期比で0.16%下落と、昨年の高騰期からマイナスに転じた。しかし、富裕層が集まる瑞草区は0.59%上昇、江南区は0.33%上昇と、底堅い成長を続けているのが実情だ。
■ソウル城北区が最大下落
一方、ソウル市北部の「ノ(芦原区)・ト(道峰区)・カン(江北区)」と呼ばれる比較的価格が安い地域は下落が進む。「ノ・ト・カン」の3区のマンション価格変動率はそれぞれ同0.5%前後の下落で、マンション団地の多い城北区は0.85%下落と最大のマイナス幅を記録した。
数字でみれば、それぞれの下落幅は小さく見えるが、市場では買い手が全く見つからない状態だ。昨年秋ごろのピーク値から1億ウォン単位で値下げしても売買が成立しないケースが相次ぐなど、数字以上に停滞感が強まっている。
地方では、バブル感の強かった世宗市が同7.02%下落、大邱市が同3.67%下落と下げに歯止めがかからなくなっている。首都圏広域急行鉄道「GTX」の新設期待から高騰した「東灘新都市」がある京畿道華城市も同2.47%下落。韓国メディアによると、10億ウォン以上の物件はピークに比べて最大5億ウォン規模で値下がりしているという。
■厳しい税制に「多住宅者」脱却
二極化が進む理由には、韓国政府の税制が大きく関与している。文在寅(ムン・ジェイン)前政権時から不動産市場の高騰抑制策として、住宅を複数保有する「多住宅者」に厳しい税制が課されるようになっている。
不動産市場の先行き不透明感に加えて税負担が重荷となる中、多住宅者はソウル郊外や地方などの投資価値の低い物件を売却し、ソウルの一等地のマンションに資産を一本化する動きが広がっている。
■来年の住宅ローン9%台も
金融政策の引き締めで、若年層などの購買意欲が著しく低下していることも要因だ。
韓国の政策金利は21年8月まで過去最低の0.5%だったが、計5回の利上げで1.75%まで引き上がっている。米国の急速な利上げを受けて、韓国銀行が7月に開く金融通貨委員会では0.5%の大幅利上げに踏み切る可能性も示唆されている。
大手銀行の住宅担保ローンの現在の金利は5~6%水準で、信用度が低い借り手の場合は7%を超える。政策金利が一段と上昇する来年は9%台の商品も登場するとみられる。
仮に9%で5億ウォンの30年ローン(元利均等返済)を組めば、毎月の返済額は400万ウォンとなる計算で、簡単には住宅購入に踏み切れない状況となる。高金利の下で需要が低迷すれば、投資価値の低い物件はさらに下押し圧力がかかりそうだ。
■尹政権は減税で供給拡大狙う
尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、住宅譲渡税の減税を通じて多住宅者が保有する一部物件を売りに出させ、市場への供給量を増やすことで不動産価格の抑制を目指す。住宅譲渡税が減税されれば、多住宅者の住宅一本化もさらに進むとみられている。
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