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首都の洪水対策、東京都が協力都市インフラ技術の知見共有

マレーシアの首都クアラルンプール中心部では、今年に入り鉄砲水による冠水被害が相次いだ。人口密集地で起きやすい「都市型水害」と呼ばれるもので、近年の気候変動や急速な都市化が原因とみられる。過去に同様の水害に悩まされてきた東京都は今月上旬、技術職員を派遣し、現地当局と現場の視察や意見交換を行った。今後、洪水対策のほか上下水道の整備といった都市インフラ技術において相互協力する。

今月上旬にクアラルンプール市を訪れた東京都の技術職員は、ダムや排水機能を兼ねたトンネル、建設中の雨水貯留施設を視察。現地当局と意見を交換した(在マレーシア日本大使館提供)

東京都の技術職員12人は今月5~6日にかけて、クアラルンプールを訪問。首都近郊のバトゥダムや首都中心部の排水路を兼ねた地下有料道路「SMARTトンネル」、建設中の雨水貯留施設を視察した。
訪問団の関係者によると、今年5月にマレーシアのシャヒダン・カシム連邦直轄区相やクアラルンプールのマハディ・チェ・ンガ市長が、洪水対策の参考として東京都の環状7号線地下調節池を視察。その際に、クアラルンプール訪問の招待を受けたという。
今回の視察先となったバトゥダムは、クアラルンプール市内の洪水防止のために建設されたダムで、中心部から16キロメートルの距離に位置する。完成から30年以上が経過しているため、老朽化がみられたという。
一方、SMARTトンネルは2007年に開通した。クアラルンプール郊外のスンガイベシ地区と市中心部を結ぶ9.7キロのトンネルで、豪雨で川が氾濫しそうな場合に道路を封鎖して、排水路とすることができる。こうした機能を持つトンネルは世界的にも珍しいため、17年には水問題の研究を専門とする天皇陛下が視察に訪れたこともある。昨年12月にマレー半島中央部を襲った大規模水害では、同トンネルの排水機能を活用して市内中心部の冠水を防いだ。
訪問団の関係者も「洪水対策と渋滞対策を兼ねたトンネルはマレーシアならではの取り組みで、参考になった」と話す。完成から15年を経た同トンネルは比較的新しいものの、「トンネルのような構造物はいったん老朽化すると更新が難しい。施設の老朽化は各国で大都市が抱える共通の課題になっている」(同関係者)との認識を示した。
東京都とクアラルンプール市は都市インフラ技術について経験や知見を共有し、洪水対策や上下水道の整備などで協力する方針。具体的な取り組みについては今後検討していくとしている。
■鉄砲水対策は喫緊の課題
クアラルンプールでは今年3、4月にも市内の広範囲で冠水被害が起きた。3月7日には、わずか2時間で通常時の半月分の降水量を記録。豪雨による鉄砲水で市内の幹線道路や高速道路、市中心部の繁華街などが浸水し、停電や交通の混乱などが起きた。
これらの水害は、人口密集地特有の「都市型水害」と呼ばれるもの。地表がアスファルトやコンクリートで覆われた都市部では雨水が地下に浸透しないため、人工的に作られた下水管や雨水管に処理能力を超えた水が流れ込み、排水用の河川が氾濫して起こる。クアラルンプールでも、近年の気候変動による降水量の増加に加え、急速に都市化が進んだことでこうした水害が起きやすくなったと考えられる。
そうした中、クアラルンプール市役所は「クアラルンプール鉄砲水軽減行動計画2022」を起案し、水害対策を急ぐ。シャヒダン連邦直轄区相が18日に連邦議会下院で明らかにした内容によると、同計画は「緊急」「短期」「中期」「長期」の4段階で実施する。
同相によると、鉄砲水が発生した地域では、水の流れを良くするための排水溝の改良、汚泥のしゅんせつ、貯水池や河川、排水溝の整備などの緊急対策をとった。また、市警察と連携し、100人以上を動員して鉄砲水が発生するリスクの高い地域での交通統制を行っている。
短期的な対策としては、河川への排水をスムーズにするためのゲートや浸水を防ぐ土のうを設置したほか、建設現場からの排水を管理するための取り締まりを強化している。さらに中長期的には、貯水池や排水システム、雨水貯留施設の建設といったインフラ整備を進める方針だ。

近年の気候変動や急速な都市化でクアラルンプール市は都市型水害に悩まされている=22年4月(イスマイルサブリ・ヤーコブ首相のツイッターより)
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訪問団の関係者によると、今年5月にマレーシアのシャヒダン・カシム連邦直轄区相やクアラルンプールのマハディ・チェ・ンガ市長が、洪水対策の参考として東京都の環状7号線地下調節池を視察。その際に、クアラルンプール訪問の招待を受けたという。
今回の視察先となったバトゥダムは、クアラルンプール市内の洪水防止のために建設されたダムで、中心部から16キロメートルの距離に位置する。完成から30年以上が経過しているため、老朽化がみられたという。
一方、SMARTトンネルは2007年に開通した。クアラルンプール郊外のスンガイベシ地区と市中心部を結ぶ9.7キロのトンネルで、豪雨で川が氾濫しそうな場合に道路を封鎖して、排水路とすることができる。こうした機能を持つトンネルは世界的にも珍しいため、17年には水問題の研究を専門とする天皇陛下が視察に訪れたこともある。昨年12月にマレー半島中央部を襲った大規模水害では、同トンネルの排水機能を活用して市内中心部の冠水を防いだ。
訪問団の関係者も「洪水対策と渋滞対策を兼ねたトンネルはマレーシアならではの取り組みで、参考になった」と話す。完成から15年を経た同トンネルは比較的新しいものの、「トンネルのような構造物はいったん老朽化すると更新が難しい。施設の老朽化は各国で大都市が抱える共通の課題になっている」(同関係者)との認識を示した。
東京都とクアラルンプール市は都市インフラ技術について経験や知見を共有し、洪水対策や上下水道の整備などで協力する方針。具体的な取り組みについては今後検討していくとしている。
■鉄砲水対策は喫緊の課題
クアラルンプールでは今年3、4月にも市内の広範囲で冠水被害が起きた。3月7日には、わずか2時間で通常時の半月分の降水量を記録。豪雨による鉄砲水で市内の幹線道路や高速道路、市中心部の繁華街などが浸水し、停電や交通の混乱などが起きた。
これらの水害は、人口密集地特有の「都市型水害」と呼ばれるもの。地表がアスファルトやコンクリートで覆われた都市部では雨水が地下に浸透しないため、人工的に作られた下水管や雨水管に処理能力を超えた水が流れ込み、排水用の河川が氾濫して起こる。クアラルンプールでも、近年の気候変動による降水量の増加に加え、急速に都市化が進んだことでこうした水害が起きやすくなったと考えられる。
そうした中、クアラルンプール市役所は「クアラルンプール鉄砲水軽減行動計画2022」を起案し、水害対策を急ぐ。シャヒダン連邦直轄区相が18日に連邦議会下院で明らかにした内容によると、同計画は「緊急」「短期」「中期」「長期」の4段階で実施する。
同相によると、鉄砲水が発生した地域では、水の流れを良くするための排水溝の改良、汚泥のしゅんせつ、貯水池や河川、排水溝の整備などの緊急対策をとった。また、市警察と連携し、100人以上を動員して鉄砲水が発生するリスクの高い地域での交通統制を行っている。
短期的な対策としては、河川への排水をスムーズにするためのゲートや浸水を防ぐ土のうを設置したほか、建設現場からの排水を管理するための取り締まりを強化している。さらに中長期的には、貯水池や排水システム、雨水貯留施設の建設といったインフラ整備を進める方針だ。
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